忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。五十六話です









56話 クレイマンの演説 

 

 魔王達の宴(ワルプルギス)の開催を宣言したクレイマンは、立ったまま魔王達を見回し、満足そうな笑みを(たた)える。

 

 

 そして、独壇場になったその場で演説を開始した。

 

 

 クレイマンは得意げに事の説明を始めていく。

 

 一つ、魔王カリオンがリムルを(そそのか)し、魔王を名乗るよう仕向けた事。

 その証拠として、魔国連邦(テンペスト)に滞在している。

 

 一つ、ファルムス王国をたきつけ、ジュラの大森林へと侵攻させた。

 それを迎え撃つべくリムル達に協力を申し出て、それを理由に人間に手を出した。

 

 一つ、ファルムス王国に勝利したリムルが魔王を僭称(せんしょう)し、カリオンがそれを裏で支援する。

 

「この様な勝手な真似は、魔王間の協定違反であると――」

 

 様々な言い分を並べ言うクレイマン。

 時系列を無視した強引なイチャモンなのだが……。

 

『ねえ、コハク。これ、完全にイチャモン付けてるだけだけど、結構理論武装してね?』

 

 相変わらず机に突っ伏したままコハクに、『思念伝達』で話しかけるツキハ。

 

『せやねえ。今()うた、〝一連の動きが魔王間でのジュラへの大森林不可侵条約撤廃〟と同時とか、言い様によっては言い逃れ出来まへんなぁ』

『まあでも、それをカリオンが裏で手を引いていたとか、明らかに無理があるんだよねぇ。だって、知力など腕力で打ち砕いてやるわ! ってな感じだもんカリオン』

『ククッ、言い得て妙どすなそれは。確かに裏でコソコソ動くような魔王ではないと、クレイマン以外は、皆思ってるんちゃいますか?』

『だよね、ウククッ。まあ、実際はどれだけ状況証拠を揃えられるかなんだけど……それからすると――』

『クレイマンは詰んでますな。なんせ、宝物庫にある状況証拠の品を押さえられましたからな』

『だね~。後は魔王リムルがどう使うかかだけど、あ!? あれ、どうした? ロモコに聞かれてあんたに回したんだけど?』

あれどすか(・ ・ ・ ・ ・)? 抜かりはあらへん、きちんとロモコに取らせましたえ』

『あれ、ロモコがどうしますか? と聞いて来た時は、判断に迷ったんだよねぇ』

『あれは、金になりますからな。それに、黒幕に簡単に辿り着かれても面白くありまへんえ。どの道魔王リムルなら、遠からず辿り着きますさかいな。魔王リムル、かなりの切れ者やで』

『そっかー。あんたがそこまで言うなら、相当なもんだねえ。だから、取れる時に取る、だね。ククッ』

『せやで。どの道あそこには辿り着くんや、遅いか早いかで言ったら、早い。なら、先に稼いでおきまへんと、な。フフッ』

 

 そんな事を『思念伝達』で話すツキハとコハク、その間にもクレイマンの演説は続いていく。

 

「――とこの様に、私は証言を得たのです。ですが、それを知らせてくれた私の配下ミュウランは、そこのリムルという()れ者によって、殺されたのです。そこで私は復讐を決意したのですよ」

 

(役者か! と、言いたくなるような……俺までホロリと、なるか! 俺のところで生きてるしな)

 

 半目でクレイマンを見て、内心毒づくリムル

 

「そこのリムルは、カリオンと共謀して私を殺そうとしていました。ミュウランが最後の力で、私に〝魔法通信〟で知らせてくれたのです」

 

 クレイマンはそこまで言い切ると、感極まった仕草を取っていた。

 ハンサムなので絵になるのだが、ツキハは机に突っ伏したまま笑いを必死に堪えていて、体を小刻みに揺らしていた。

 

(ちょっ、これ、は、腹が、うはっ、はっ……だめ、ちょっ、おかしくて……うはっ、く、くっ)

  

 クレイマンの話しは続いていく。

 

 裏切ったカリオンが、激怒したミリムに獣王国を滅ぼされ、死亡したと言った。

 

(死亡? 行方不明じゃなくて、死亡? 何か不自然じゃないか、これ……)

 

 カリオンが死亡したとクレイマンが言ったのにリムルが疑念を抱くも、とりあえずクレイマンの話しを大人しく聞く事にするリムル。

 

「それで私は、そこのリムルとカリオンが繋がってる証拠を確保する為に、出兵を決意したのです――」 

 

(なるほどなぁ。自分を殺して魔王を名乗る俺が、よほど気に喰わないのか。お? 宴で俺を処分する提案まで言い出したぞ、クレイマンの奴。まあ、ここまで自分に都合のいい筋書きを、よくぞ描けたものだわ。逆に感心するぞ。しかし、クレイマンの話は長過ぎるわ)

 

 リムルは、クレイマンの言い分を聞いた上で、筋道立てて反論しようと思っていた。

 自分の無実を証明した上で、正当性を得てからクレイマンを叩き潰すつもりだったから。

 

 しかしそれも……。

 

(もう、いいかな?)

 

 リムルの脳裏には、クレイマンの話には決定的に欠けているものがあると、判明したからだ。

 

 そう、証拠である。

 

 

 クレイマンの言い分には、証言以外の証拠がない。

 しかもその証言は、クレイマンの言う忠義の配下、ミュウランからの証言が大半だったからだ。 

 

(ほんま、笑わせますな。用意周到なあんさんが、ここまで愚行を犯すなんてな。証拠の捏造も間に合わず、しかも既に拠点は落とされ、逆に証拠の数々を押収されてるなんて、夢にも思わへんのやろなぁ。うちらが一部魔王リムルに手を貸したのもあるけども、余りにもお粗末すぎますえ。もっと、配下に気を配らな、誰も付いては来てくれまへんのやで……。あんなにもラプラスや、カザリーム、フットマンとティアを大事にしてはるのに、最後で蹴躓(けつまず)きましたな、クレイマン……。誰が、あんさんを――たきつけた(・ ・ ・ ・ ・)んや……?)

 

 クレイマン、コハク達が依頼を受けるようになったのはクレイマンが魔王になってからであるが、その前に何度かクレイマンから接触を図って来ていた。

 

 魔王クレイマン。

 狡猾で残忍で、配下の誰一人すら信用しない。

 配下を道具のように使い潰す……。

 

 だがしかし、こんな事はこの世界では日常茶飯事である。

 こんな事は別段珍しくも無く、またその逆も存在するのも事実。

 

 実際コハクとツキハはやり過ぎだなと思っても、リムル達に同情はしてはいない。

 魔物に取って生存競争は――強いか、弱いか、それだけである。

 

 それをコハクとツキハも体感し、千年以上生きてきた。

 そして、戦国乱世を生きてきた忍びの頃も、そう今と大差はない。

 

 だから、魔物として転生した己を素直に受け入れ、魔物として生きる自分に誇りを持っている。

 コハクとツキハに悪とか正義とかの定義はない、しいて言うならば――勝った者が正義であり、負けた者が悪なのだ。

 

 そう、弱ければ強くなればいい、何者にも奪われない為には、強くなれ。

 これが忍びとして生き、忍びとして死に、魔物として転生したコハクとツキハの定義かも知れない。

 

 

 そして、そんなクレイマンだが、中庸道化連の仲間はとても大切にしている。

 特にラプラスとクレイマンは、親友と呼べる間柄だとコハクは知っている。

 

 その一番の友であるラプラスの忠告すら聞かずにこの戦争を起こした――コハクはそこに小さな疑問を抱いていた。

 

 あの用意周到なクレイマンが、周りをよく見ずに突き進むのを見ながらコハクは――

 まるで目に見えない何かが、裏で糸を引いているようだ、と。

 

 コハクは心の内でそう思いながら、物静かな目でクレイマンを見る。

 それに気付いたクレイマンは〝どうだ見たか〟と言う目でコハクに返す、コハクの真意には気付かずに。

 

 

「――以上で、私の話は終わりです。これで皆様にも御理解頂けたと存じますが、そこのリムルなる卑小(ひしょう)な魔人は、魔王を僭称(せんしょう)する愚か者。粛清するのが宜しいかと――」

 

 そう締めくくりクレイマンの説明は終わった。

 

(魔王達もよくこんな長話に付き合うなんて、かなり気の長い事だなぁ。中には寝ている者が二人いるけども。あぁ、そうだった。ラミリスが言っていたな、邪魔しなければ許されるらしいと。それに、発議者が説明を終えるまでは全員黙って聞く、というルールだったか)

 

 そんな事を考えていると。

 司会を任されているのか、レインがリムルに視線を向け――

 

「それでは次に、来客よりの説明となります」

 

 リムルは来たか、というようにゆっくりと席を立ち、口を開く。

 

「クレイマンだっけ? お前、嘘つきだな」

「ぶはっ……くっ、くくっ……」

 

 いきなりの言葉に寝たふりのツキハが突っ伏したまま、笑いを漏らす。

 ヴァンパイアの美少女がツキハを凄まじい殺意を込めた目で睨むが、リムルは気にしない。

 

「何ぃ?」

「ぶっちゃけ、俺は魔王なんざどうでもいいんだよ。カリオンさんが俺を(そそのか)したってのも出鱈目だし、ファルムス王国は欲をかいて勝手に攻めて来ただけだしね。この二つには、何の関連性もないんだよな」

 

 リムルの言葉にクレイマンはイライラしたように、リムルを睨み上げる。

 

「ハンッ! そんな言い訳だけで、誰が信じると言うのだ。こちらは手下を殺されているのだぞ」

 

 クレイマンが吐き捨てた言葉に、リムルはニヤリと口端に笑みを浮かべ告げる。

 

「ミュウランだろ? 別に殺してはいないし、今も生きているぞ」

「ハッ! 何を言うかと思えば――」

「まあ聞けよ、クレイマン。お前の言い分はさ、ほとんどが証言とお前の推測でしかない」

「だから何だと言う――」

「いいから黙って聞けよ。まあ、格下の相手なら言い通せたかも知れないが、俺には通用しないぞ。その証言をしたミュウランは、俺の保護下にある。だから手出しは許さんし、お前の証言の信憑性など無きに等しいんだよ。わかったか?」

 

 そこまでリムルが説明すると、流石のクレイマンも顔色が変わった。

 

 しかし、それでもリムルの言い分を認めようとしない。

 

「フ、フフッ、そこまで卑劣な真似をするか。ミュウランの死体に細工し、悪霊でも取り憑かせたか」

 

 咄嗟にクレイマンはリムルの言い分を潰しに来た。

 

 そう、魔法が存在するこの世界では、生死すらも誤魔化せる。

 非常に厄介極まりないのだ。

 

 だがしかし、裏を返せば証言など当てにはならない、という事にもなる。

 

「まあ、お前が何を言っても信じないとは思っていたさ。だから直接ぶちのめそうと思っていた訳だが、少し気が変わった――」

「何を今更……」

 

 ここで、クレイマンから余裕が消えた。

 

「フッ、この宴が始まるまでにな、俺の仲間達が証拠を集めてくれたんだよ」

 

 リムルはクレイマンを見下すように笑みを浮かべる。

 それを見たクレイマンが、明らかに激昂するのがリムルにはわかった。

 

「何が言いたいのです? それほどに死にたいのなら、そう言えば――」

「だから慌てるなよ、クレイマン。証拠があるって言ったろ?」

 

 リムルがクレイマンの言葉を遮り、懐から幾つかの水晶球を取り出し、机の上にコトリと置く。

 それを円卓の中央へ転送させ、次々と魔法効果を発動させていった。

 

 その一つ一つは、とある映像を記録させたものだった。

 

 豚頭将軍(オークジェネラル)と戦う、リムルの配下達の姿。

 ゲルミュッドから見た視線の映像。

 これらはシュナが、クレイマンの居城で見つけたもの。

 

 一方、先程の戦争状況を記録したものもあった。

 これはベニマルが戦場全体を見渡し、その記憶を記録したものであった。

 

 その中には面白い映像が幾つも、あった。

 

『や、止めろ!! お止めくださいクレイマン様!!』

 

 絶叫しながら暴風大妖渦(カリュブディス)の成り損ないへと、変わり果てる配下であるヤムザの姿。

 

『――驚きましたね、ヤムザの裏切りは予想通り――』

『――クレイマンの軍勢は壊滅。作戦は失敗。この損失はあまりにも大きく――』

『――ラプラスも忠告してたし、今回はクレイマンが悪い――』

『――あの方に報告をしなければ――』

 

 等々。

 

 ゲルドやフォビオの前で、怪しげな会話をする道化達。

 

(そうか……。コイツ等が中庸道化連の、フットマンとティアなのだろう。ラプラスの名も出ているし、舞い違いないな。それに、〝あの方〟か……やはり、クレイマン以外にも黒幕がいたか。ひょっとして――)

 

《解。全ては繋がっていると推測されます》

 

(――やはり、な。俺とヒナタを戦わせるように暗躍していた何者かは、クレイマンをも操っていた……。だからこその、あのタイミング、か。西方聖教会と俺を戦わせ、その隙にクレイマンがファルムス王国を唆して、あの惨劇に到った。俺が気に喰わないってだけなら、理解出来なくもなかったんだが……)

 

 そこまで考えると、リムルの瞳には凄まじい殺意が渦巻き始めた。

 

(だがな、お前達はやり過ぎた。だから――潰す)

 

 リムルの瞳に殺意が込められていくのを察知したコハクが、どこか嬉しそうに口元を薄く(ほころ)ばせ――

 そのコハクを見たリムルは理由はわからないが、同じように口元を綻ばせる。

 

 

 ここは弱肉強食の世界、故に。

 

「これが証拠ってもんだよ、クレイマン」

 

 そう笑い言い放つリムル。

 

「ば、馬鹿なっ! こんなもの出鱈目だ! 魔法で作った偽の映像をハッタリに使うなど、程度の低い真似をするなよスライム!!」

「ハッタリ? ハッタリじゃねーよ、馬鹿。お前の軍は潰したぞ。次は、お前の番なんだよ」

 

 怒りの表情でリムルを睨むクレイマン。

 

「み、皆様、(だま)されては駄目ですよ! このリムルというスライムは、ハッタリを得意としているのです。ヴェルドラの封印を解いてファルムス軍を滅ぼしておきながら、それを自分の力として誇示しているだけの小者なのですよ! こんなヤツに、栄光ある魔王を騙らせるなど言語道断でありましょう!」

 

 言葉巧みに必死に熱演するクレイマン。

 

「おい、クレイマンよ。貴様はさっき、そこのリムルがファルムス王国をたきつけたと言っておっただろう? ヴェルドラの復活が事実として、何故そんな回りくどい真似をする必要があるのだ? それに、ここにいるツキハとコハクに発言を許して、聞いてもよいかのう?」

「そ、それはですね……」

 

 思わぬところから質問が飛び出した。

 ダグリュールが重々しく、クレイマンに問い質したのである。

 

 クレイマンの失言。

 

 ツキハとコハクがこの場にいるのに、怒りに任せヴェルドラ復活の事を持ち出した事。

 ヴェルドラが復活したならば、必ず駆け付けるこの二人がいる。

 特にツキハは、全てを投げ打ってでも駆け付ける――それを知っているのだ太古の魔王達は。

 

 ヴェルドラとツキハ、コハクの関係を甘く見ていたクレイマンの失策である。

 

 そして、ツキハとコハクに宴での発言権は無い、二人は魔王ではないから。

 しかし、その場にいる魔王達の許可が一人でもあれば、発言を許されるのだ。

 

 そこへ――

 

「駄目だ、発言は無しだ。続けろ」

 

 素っ気なくギィが声を上げる。

 

 それを聞いたコハクは顔色一つ変えずに、「あらまあ」とだけ言い、ツキハは机に突っ伏したままピクリとも体を動かさなかった。

 

 ギィの言葉を聞いたダグリュールはそれに無言で頷き、クレイマンは一瞬悩む素振りを見せたが、渡りに船とばかりに覚悟を決め口を開く。

 

「いいでしょう。では、説明しようではありませんか」

 

 そうしてクレイマンは、身振り手振りを交えて大仰(おおぎょう)に、その理由を説明し始めた。

 

 それは。

 

 人の魂を集める事で真なる魔王へと覚醒する――と。

 

 他の魔王に抜け駆けされたくなかったのか、秘匿したい情報だったのかクレイマンの表情が一瞬曇る。

 

 しかし今、ダグリュールに問われた事と、ツキハとコハクに発言されて余計な事を言われる前にと、情報開示に踏み切ったのだ。

 

「――この、物も知らぬ下等なスライムは、幸運にも魔王の種を得たのでしょう。それで調子に乗って、人間の世界でその真実を調べたのだと思われます。そして自分勝手にも人間達と戦争まで引き起こし、封印されたヴェルドラを利用し、あまつさえその場に駆け付けた〝番外魔王〟の二人をも利用して大虐殺を行ったのです。この様な者を野放しにしては、我等の魔王としての格も落ちるというもの。粛清せねばならぬと考えますが、如何に?」

 

 大仰な身振り手振りで、魔王達の説得を試みるクレイマン。

 

「だからよ、証拠を出せよ。出せないだろ? お前のはな、だったらいいなという願望なんだよ。そんなんじゃあ、誰も納得しないって言ってるだろ?」

 

 憎々し気にリムルを見るクレイマン。

 

「クッ……舐めるなよ、邪竜の威を借るスライムが!! 貴様如きが魔――」

「あ゛あ? 今、ヴェルドラの事を、邪竜って言ったか? クレイマン」

 

 机に突っ伏していたツキハが表を上げ、重く身を斬られるような殺気を放ち言う。

 

「え、え? 何も――」

「邪竜って言ったよな、今?」

「い、いや、それは世間一般で言われてる事であって――」

「あぁ、もういいわ。黙れクレイマン」

 

 めんどそうな表情を浮かべ、言うツキハ。

 かなりヤバイ状態になりつつあるツキハに、ギィがやれやれといった表情を浮かべコハクを見るも「うちは知らんで」と、つっけんどんな言葉を返す。

 

 完全に身を起こし、机に左手で頬杖をつき、魔王達を見回しながら次の言葉を言い放つ。

 

「おい、クレイマン。今から、一言でもヴェルドラを邪竜呼ばわりしたら……なんもかんも放り出して、あたしは、お前に宣戦布告すんぞ?――」

「わかったわかった。ツキハ、もうそれくらいにしてやれ。まったくお前と来たら、ヴェルドラの事になると、いきなり豹変するのは相変わらずだな。クレイマン邪魔したな、続けてくれ」

 

 ギィがツキハを(なだ)めながら、クレイマンに話の続きを促す。

 

 それを見たリムルは、何故二人が〝番外魔王〟と呼ばれているのかを、完全に理解した。

 魔王を名乗ってなくとも、実力は太古の魔王達とタメを張れるだけの力がある、と。

 

(古い文献にも出てくる〝番外魔王〟。伊達ではないと、いう事か……)

 

 そして、ツキハの殺気に完全に気圧されたクレイマンだが、着ている服の襟を両手でピッと直すと、気を取り直しリムルを突き刺すような目で見て言葉をぶつける。

 

「とにかく、貴様如きが魔王を名乗るのは、我等魔王に対する冒涜! 卑小(ひしょう)なるスライムが魔王になれる訳がないのだ!!」

「スライムがどうとか関係ねえし、ヴェルドラは俺の友達だ。お前のクソつまんねー話を聞きに来てるんじゃねーんだよ。認めろよ、お前の配下がカリュブディスに変身して暴走した。カリュブディスを復活させたのは、お前の指示だとな。その証拠は、そこに映ってる魔人フォビオが証言してくれるぜ? これが明確な証拠ってもんだ。ハッタリだ嘘だと思うなら、それでもいいさ。そう思ったまま、死ね」

 

 リムルは隣の椅子を蹴り飛ばし立ち、クレイマンに凄んだ。

 

 そのまま何気ない動作で目の前の円卓に触れると、一瞬で大きな円卓が消え去った。

 リムルが『暴食之王(ベルゼビュート)』に収納したのだ。

 

 そこには大きな円卓が消え去った事により、広いスペースが生まれた。

 

 蹴り飛ばされた椅子がクレイマンの後方へと吹き飛び、壁に激突して派手な音を響かせ砕ける。

 それでも魔王達と〝番外魔王〟の二人は平然としていた。

 

 動揺したのは、クレイマン一人。

 

「皆さん、こんなヤツの暴挙を許してもいいのか!? コイツは魔王を舐めている。全員で制裁すべきではないですか!?」

「魔王舐めてんの、あんたじゃん」

「何ッ!?」

 

 クレイマンの言葉にツキハが、いかにもつまならそうに吐き捨てる。

 その言葉にクレイマンがツキハを睨むも、ツキハは知らんとばかりにプイッとそっぽを向く。

 

 それを不敵な笑みで聞きながらリムルは、椅子に囲まれた円形の空白の、中心地に進む。

 

「確かにな。言っておくけどな、俺は魔王なんざどうでもいいんだよ。俺は俺が楽しく過ごせる国を作りたいだけでね。それには人間の協力が必要不可欠だし、だから人間を守ると決めたんだ。それを邪魔する者は、人も魔王も聖教会も、全て等しく俺の敵だ。クレイマン、お前のようにな」

 

 リムルは、クレイマンよりも熱心に己の理想を語った。

 

「何を――ッ!?」

「それに暴挙というなら、だ。魔王達の宴(ワルプルギス)では、喋りながら精神支配を仕掛けるのはアリなのかよ?」

 

 クレイマン見据え、リムルは問う。

 

 リムルは気付いていた、演説の途中から精神攻撃を仕掛けていたのだ。

 

 だがしかし、リムルには智慧之王(ラファエル)がいる。

 そんな精神攻撃など、既に対策済みなのだ。

 

 リムルは己の正当性を主張し、先に仕掛けて来たのもクレイマン。

 もし、自分の敵に回る魔王がいたら、その時はその時と覚悟を決めての実力行使に出たリムルであった。

 

 それに応えたのは、クレイマンでなくギィだった。

 

「否。この場では全員公平なように、自分の言葉でのみ、相手に訴える事を是とするよ」

 

 ギィはそう答え、面白そうに嫣然(えんぜん)とした笑みを浮かべる。

 

「しかし、ギィよ。コイツは魔王を侮辱して――」

「黙れよ。俺が気に食わないっていうなら、これはお前と俺の問題だろ?」

「その通りだな、クレイマン。お前も魔王なら、お前自身の力でもって、そこの魔人を倒してみせよ。そしてお前――」

 

 そう言ってクレイマンを黙らせたギィは、リムルを見て、続けていく。

 

「魔王を名乗るつもりはあるのか?」

「ああ。既にジュラの大森林の盟主を引き受けているし、人から見れば魔王だからな」

「ならば良し。丁度ここには見届け人が揃っている。オレ達の前でクレイマンに勝てたなら、魔王を名乗る事を許そう」

 

 ギィが、リムルにそう告げた。

 

 これで、クレイマンに勝つだけで全てに片が付くという、リムルの望んだ展開が訪れる。

 

 

 リムルとクレイマン。

 

 

 ここに、両者が激突する事になる。

 

 

 

 




 五十六話を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!






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