忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
(ヤバイヤバイ、思った以上に、ミリムがヤバイ!)
リムルの心の叫びが、頭の中で木霊する。
そう、クレイマンへの怒りが吹き飛ぶ程に、ミリムの攻撃は
〝
だがまだ、フォビオが見たという戦闘形態は取っていない。
本気ではあるが、真の実力はまだ見せていないミリム。
それでも、その強さは常識外。
一方リムルは、既に全力全開だった。
だが、この戦いにおいて
ミリムが繰り出すあらゆる攻撃の軌道予測等で、リムルを支援していた。
それ故、ミリムの苛烈な猛攻をギリギリで凌いでいたのだ。
だから、リムルがこのまま変な隙を見せずにいけば……。
リムルがミリムに手一杯の中、配下達は。
ランガは
ランガは進化の過程で、三体まで眷属の同時召喚が可能になっていた。
もう一体はゴブタが召喚しているので、今は二体しか召喚出来ないが、それで十分だった。
それでランガは、終始優勢に戦えていたのだが……。
ただし、
高い知能を有し連携攻撃を行う、非常に厄介な魔獣。
その中を
三対の必殺連携攻撃。
ランガはその連携攻撃を見抜き、三体の連携を崩し戦っている。
大技を使えば勝負は早いのだが、何故かランガは
優勢ではあるが、何か決定打に欠ける戦いのようにリムルには見えていた。
そしてシオンは――
気合でクレイマンと黒ローブの猛攻を
黒ローブの正体。
それは、精巧に作られた魔人形で、ボディは鈍く光るメタル色を放っていた。
「フハハハハ、この私の最高傑作であるビオーラはどうです? 美しいでしょう?」
自身満々に言い放つクレイマン。
(美しい?……。あれが、か? あの身体中から節操無しに飛び出す剣や槍……やりすぎだろ? もっとこう、洗練されたギミックに隠された武器が、ガシャッと音を響かせ飛び出す、そんなカッコよさがないだろうがー! 無秩序に出せばいいってもんじゃねえぞ!!)
リムルの中のオタク魂が火を噴く!
(で、飛び出す武器の一つ一つが
クレイマンの人形を見て(しょうもな)と思い半目になりながら、ミリムの攻撃を避けるリムルだが……そんなリムルも中々に常識外であり、気付いてないのは本人だけである。
炎熱、雷撃、氷雪、圧壊、共鳴、その他諸々の攻撃がシオンを襲う。
だがそんな攻撃を、シオンは物ともしない。
敵に回すと凄まじく厄介な
如何なるダメージを受けようとも、シオンは瞬時に回復してのけるのである。
クレイマンとビオーラの連携攻撃の前に、攻撃に転じられず……。
その分、シオンの怒りゲージが着実に溜まっていくのを感じるリムル。
(あれが爆発すると怖いぞ)
と、思うリムル。
そこへ、シオンの所へ助っ人が飛び込んで来た。
「お待たせして申し訳ありません。リムル様、ワレの力もお役立て下さいませ」
(おお!? ベレッタ!)
ベレッタがどうやって来たのかわからないリムルだが、それに歓喜の声を上げる。
「待ってたよ、ベレッタ!」
「ハハッ!」
「余計な手出しを……。もう直ぐこの私が、この愚か者どもを血祭りに上げるところだったのです!」
シオンの負け惜しみが炸裂するが、リムルはサラッと聞き流す。
「遠慮はいらん。叩き潰せ!」
「「「ハハーーッ!!」」」
これで状況は、イーブンに戻った。
(よし、これで当初の計画通りだな。後は……)
いまだ、真の力を見せていないミリム。
(いくぞ。ミリムを解放すれば、俺達の、勝ちだ!)
リムルの意識から、周囲の雑音が消えた。
更に、超感覚をもって意識を研ぎ覚ましミリムを見る、リムル。
先程よりもハッキリとミリムの拳の軌道が見えた。
まるで、身体中の細胞を全て演算に用いる勢いで、集中する。
何としてもミリムの呪縛を解かなければならない。
そんな思いがリムルを、最適な回避行動へと導く。
文字通りの紙一重で通り過ぎる、ミリムの拳。
『さあ、
リムルは、他人を他力本願と
(いや、これは俺の
『という事で、お願いします』
《解。『解析鑑定』結果……該当なし》
『え?……は? はああ!?』
一瞬呆けた顔を見せるリムル。
「ん? あれ、『解析鑑定』しましたどすなぁ」
「ぶっ、ブハハハハハハッ! あれ、あ、ウワハハハハッ。き、き、きづ、ない、アハハハハハ!」
そのリムルの顔を見て、ツキハが両手で腹を抱えて笑い声を上げた。
『えっと、どういう意味? 何でアイツが大笑いしてるんだ? まさかとは思うけど、クレイマン如きの呪術が見抜けないとか?』
《呪法が確認できませんでした。これは――》
『解析鑑定』の結果がない、その事実に
(おいおい役立たずって、レベルじゃねーぞ! ってかさ、今までは集中していなかったから解析出来ないのかと思ってたけど、全力でも駄目だった? それどころか、呪いそのものを発見出来ないとか。肝心な時に
リムルの盛大なる勘違い。
既にミリムに関しては答えが出ていたのにも関わらず、リムルはそうだと思い込んでいた。
単に考え過ぎではあるのだが……しかし、この世界に来てからまだ日が浅いリムルには、仕方のない事かも知れないし、元いた世界の知識によるものもあるのだろう。
そう、〝異世界人〟に取ってこの世界の常識は、計り知れないのである
(不味い。このままでは非常ーに不味い! 俺がミリムに正面から勝利する確率なんて、言っちゃあなんだが……滅茶苦茶低いぞ。でも、それでもやらないとな)
自虐とも取れる思いを垂れ流し、それでも何とか自分が粘って、この状況を打開するしかないと覚悟を決めるリムル。
以前のリムルなら、ミリムとの手合わせは一分も持たずに地に伏していた。
だが今は、既に全力戦闘で十数分は維持出来ている。
(うーん……。案外本気で殴ってみたら元に戻ったりして?)
そんな考えがチラッと頭の中を
《案。『
『お? おおっ!? その手があったか!!』
即実行に移すリムル。
直撃はこちらが大ダメージを負うので、あくまでも受け流しがメインとなる。
ミリムのパンチやキックの軌道を変えるように、そっと横からの力を加え軌道を
この技法は武術を極めたものならば
今はハクロウに剣術や体
いくら〝真なる魔王〟に覚醒したからといって、太古の魔王であるミリムの戦闘経験には、遠く及ばない。
ならば、リムルがここまでミリムに抗えるのは何故か? それは――
三上 悟、人間の頃は趣味でネットに
その中には、何度も死にながらボスの動きを覚え、頭の中でトレースしながら自分の使うキャラクターの動きを最適化して、ボスを倒すアクションゲームなどもあった。
そして、三上 悟はこのようなゲームも得意としていたのだ。
更に、ネット内にある大手の動画サイトなどでは、色々な動画を見て楽しみ、その中には現代の格闘家や現代武術者、また古流武術を一子相伝で伝承した武術者などの動画も見ていた。
三上 悟の頃の記憶。
その武術動画を見た記憶から
それをリムルは無意識にトレースし、自分の動きに昇華させていっていた。
リムルは戦闘経験では、到底ミリムには敵わない。
戦闘経験の差を少しでも埋めるべく
三上 悟の頃の記憶をサルベージして、その中にあった動画内で達人が体捌きを説明する動きを、リムルにトレースさせる。
これは、戦闘経験の少なさを補う、実戦訓練を兼ねた
事実リムルは、最初こそミリムの攻撃が
急激にリムルの動きが洗練されたものへと変貌していく様は、〝真なる魔王〟としての力もあるかも知れないが、戦うセンスも持ち合わせていた事になる。
そのセンスが、先天的に身についていたのか? 後天的に身に付いたのか? といえば――
恐らく、魂が界渡りした時に精神が鍛えられた同時に、このようなセンスも身に付けた事になるかも知れない。
『
とにかく、着実に戦闘経験を積んでいくリムルであった。
リムルはミリムのパンチやキックを受け流しながら『
すると、これはかなり有効だったらしく、ミリムはあからさまに嫌そうな顔をして距離を取った。
小さな小さなダメージだが、積もり積み重ねられると馬鹿には出来ないダメージである。
ミリムの攻撃は、全てが〝
だから、触れるだけでそれを奪って行けば、少しずつでもミリムの体力を奪える計算になる。
だが、それで勝てるかは話が別である。
本気でミリムを抑え勝つつもりならば、全ての力を発揮する必要がある。
しかし、そうしても勝てる保証はどこにも無い。
仮に勝てても、他の魔王達の前で手の内を全て
今リムルに出来る事は、こうして少しずつミリムの体力を削る事のみ。
(くそっ。早く、ミリムの呪縛が解ければいいんだが……。シオン、ランガ、ベレッタ、頑張れよ)
どれだけの攻撃を受け流して来たか、リムルは一切の攻撃は行わず防御に徹していた。
失敗したら即退場という過激なルールで、ミリムの攻撃を
『へえー、ちゃんと打撃の受け流し方が出来てるじゃん。まあ、何か急遽受け流し方を教わりました感が最初あったんだけど。かなり形になって来てるよねぇ』
『せやねぇ。ほとんど最初に感じたぎこちなさは、なくなりましたなぁ』
『でも、虚と実の織り交ぜをミリムはまだ抑えてるから、そろそろかな?』
『そろそろどすな。でもほんと、何か魔王リムルと遊んでるみたいに見えますなぁ。フフッ』
『ほんとそうだよね。ククッ』
ツキハとコハクは『思念伝達』で会話しながら、ツキハは右目の〝魔隻眼〟で、コハクは左目の〝忍魔眼〟でリムルとミリムの戦いを見ていた。
仄かに金色に光るツキハの右目とコハクの左目が、二人の攻防を漏らさず注視する。
(ん? 何か……攻撃のテンポが、変わった、か?)
そんな会話をツキハとコハクがしてると、リムルが何かの異変に気が付く。
集中……そして、集中。
ミリムの動きの先を読む、先の先。
そこへ――
ミリムの右ストレートが、リムルの左頬を
瞬間ミリムの拳が変化した。
ミリムのパンチに見せた、〝竜牙〟という技だ。
さっきと同じように頬を掠め通るパンチだが、通り過ぎた瞬間に右拳を変化させて引き戻す技。
拳は引き戻す瞬間に爪を立てるようにガバッと開き、それで首を
それはまさしく、竜の牙。
リムルの首は、胴体から切り離される事になるだろう。
刹那の攻防――リムルはその刹那の間に、この技の対処方法は横受けと判断した。
放たれた竜牙を左手で受け、その受けた左手を螺旋のように内に捻り、竜牙を内側から外へと受け流し躱す。
受け流した瞬間に床を蹴り、ミリムから距離を取るリムル。
そこへ、左手に灼熱の様な感覚が襲う。
バツン! 左手内で激しいエネルギーが爆ぜ、肘から先が弾け飛び大ダメージを喰らう。
「チッ、受け流しでこれか!?」
弾け飛んだ左腕を押さえながら、思わず口にするリムル。
リムルは〝無限再生〟で弾けた左腕を瞬時に再生し、腕と一緒に弾けた服の袖は魔素で代用修復する。
(受け流しただけでこの威力……。正面から交差とか、正気の沙汰じゃないな、全く)
絶対的なパワー、それだけで相手を圧する必殺技となる。
リムルは今、それを体感として学習していたのだ。
更に激しくなるミリムの攻撃。
左ジャブの連打を囮に、右ストレートを放つと見せ掛け、右肘でリムルの顔面を打つ。
それを半歩身を引き、左掌底で送るように受け流すリムル。
だがミリムはその場で身体を回転させ、追撃の左裏拳のバックブローを見舞う。
スッと姿勢を低くしてそれを躱すリムルだが――
そこへ待ってかのようにミリムの右前蹴りが、リムルの顔面に放たれた。
低くい姿勢のままリムルは床に左手をついて、左側に転がるように前蹴りを
躱されたミリムの前蹴りは空を切る。
転がり跳ね起きたリムル。
そこへ、いきなり目の前に広がる黒い大きな布。
跳ね起きた瞬間にミリムのマントが、リムルの視界を
前蹴りを躱されたのと同時にミリムは、着けていたマントを外しリムルの前に投げていた。
視界を遮られても『万能感知』がある。
しかし、ミリムの攻撃はそれを掻い潜って来て、虚の攻撃を仕掛けた。
攻撃予測――目の前に広がったマントの中心、その中心から斜め右下、更にその中心から真横に攻撃の兆しが見えた。
(どれがフェイントだ……水面蹴りか!?)
三つとも虚。
本命は意識の外の足元――
ではなく、それも虚。
『腹、来るよ』
『な!?』
五つ目が実。
ミリムはリムルに背を向け、姿勢を低く取り床に両手を付き、右後ろ蹴りをジャンプしようとしたリムルの腹部を目掛け放つ。
〝海老蹴り〟
リムルは
ミリムの海老蹴りを両手の平真ん中で受け、勢いに逆らわず後方に蹴り飛ばされていく。
凄まじい蹴りの衝撃を後方に飛んで殺したが、全部は相殺できず両腕があらぬ方向に折れ曲がった。
床に着地してザザッーと滑るように数十メートル程滑って行くと、もうそこにはミリムが飛び込んで来ていた。
(早っ!!)
両腕を再生しながら、眼前に迫るミリムの左回し蹴りを
チリッと紙一重で鼻先を通り過ぎていくミリムの左足先。
『さっきの『思念伝達』、ツキハか?』
《解。個体名ツキハが、個体名ミリムの攻撃を読み切ったと断言します》
リムルの言葉に
何でアイツがと考ようとするリムルだが、今はそれどころではなかった。
ヒートアップ。
更に攻撃速度を上げて来るミリム。
(何ッ? また竜牙か?)
またリムルは右腕で受け流そうとすると――
今度は、左ストレートからの竜牙の変形技がリムルの右肩を襲う。
ミリムはリムルの右頬を自分の拳が通り過ぎた刹那――
リムルの首ではなく、右肩を狙って竜牙を下に降ろしたのだ。
咄嗟に身体を右後ろに捻じり、下に振り降ろされた竜牙を躱そうとしたリムル。
(ヤバッ!!)
ジャギギッ! 躱しきれずに掠った竜牙がリムルの右腕を、ズタズタに斬り裂いていった。
右ストレートからの竜牙が、虚。
下に落とした竜牙が、実である。
お手本の様に〝虚と実〟を仕掛けて来るミリム。
ミリムの〝虚と実〟を用いた攻撃にリムルは、内心焦りの色が見え始めるが、内心嫌な予感にも襲われていた。
お手本の様に――不規則ではなく、リムルに教えるかの如く〝虚と実〟を仕掛けているミリム。
その〝お手本〟という〝虚〟に、リムルは……。
知らず知らずの内に、引きずり込まれていっていた。
(流石に戦い慣れているミリムの攻撃は、完全には
幾度となく腕を犠牲にしながら、ミリムの攻撃を受け流していくリムル。
ミリムの仕掛ける〝虚と実〟の攻撃にも、感覚が慣れていくリムル。
そして、その粘りに一筋の好機が訪れる――が。
リムルがミリムの右回し蹴りを受け流した時、ミリムの左軸足がほんの僅かずれて、ミリムがバランスを崩す。
それでもミリムはバランスを崩した態勢のまま、右ストレートを放って来た。
(チャンス!)
『それ罠じゃん』
《告。罠と推定――》
リムルが(あっ!?)っと思った時は、時すでに遅し。
ツキハと
リムルは、ミリムの右手を掴み投げ飛ばそうと考えた。
バランスの崩れたミリムなら、背負って投げれると思ったのだ。
だが、それこそがミリムの仕掛けた、〝必殺の虚〟。
ミリムは右手をピタリと止め、ニンマリと笑みを浮かべていた。
してやったり! という表情で。
(やっべええええーーーーっ!?)
ミリムの目の前で身体を回転させようとしており、両手はミリムの右手を掴もうと伸ばした状態。
そう、一本背負いに入る態勢のリムル。
リムルは『万能感知』で他人事のようにその動きを見られるのだが、完全に隙だらけだった。
既に放たれている、ミリムの〝実の攻撃〟左拳。
(詰んだ。ゲームオーバーだ……)
ミリムの左拳がリムルの頭に直撃――する寸前、リムルとミリムの間に何者かが割って入った。
ズゴンッ!!
激しく鈍い音が結界内に響き渡る。
「グオッ!? いきなり何をする? 酷いではないか」
現れたのは、褐色の肌に金髪の男。
頭を抱え
「はあ? 何でヴェルドラがあそこにいるのよ」
「どこから湧いて出て来たんや?」
半目でヴェルドラを見ながら言い放つ、ツキハとコハク。
「どことなく面影が俺に似ている……って、ヴェルドラかよ!?」
リムルも変な声を出し掛けながら言う。
突如として乱入して来た、ヴェルドラ。
リムルとクレイマンの戦い。
否応が無しにそれは、終焉に向かって加速していくのであった。
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