忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。64話です









64話 八星魔王(オクタグラム)

 

 会議も終わり、これでお開きかと思われたが、一つの問題が持ち上がっていた。

 

 それは、何気ないリムルの呟きから始まった。

 

「そうか、もう十大魔王じゃなくなったんだな」

 

 この一言に、魔王達がピクリと反応し、〝番外魔王〟の二人が不穏な気を放ち始めたのだ。

 

「困ったのう? 威厳的な問題として、また新たな名称を考えねばなるまいよ」

 

 と、言い出すダグリュール。

 

(え? そんな重要な事なの?)

 

 ダグリュールの言葉に、少し驚くリムル。

 

「幸いにも、今は魔王達の宴(ワルプルギス)の真っ只中。ここに全魔王が揃っておるのだし、良い知恵も浮かぼうというものよな」

 

 なんとバレンタインまでも、大真面目に相槌を打ちながら、何故かツキハとコハクを凄まじい眼光で睨み上げる。

 

 すると、ギィが仕方なさそうに口を開く。

 

「ああー、まあ、そう言う訳だ。ツキハ、コハク、お前達今度こそ魔王を名乗れ。ってか、もう観念して魔王に、なれ!――」

「断る!」

「いやおす!」

「テメエら、いい加減にしろ! テメエらの力はな、既に魔王を名乗るには十分過ぎる程なんだよ!」

 

 即答で拒否する二人。

 それでもギィが引き下がらず、言い合いに発展し始める。

 

 そんなツキハとコハクを見てリムルは不思議に思う。

 

(何でそんなに魔王になりたくないんだろう? うーん、俺は魔王になりたいから、魔王を名乗ったんだけ、ど……)

 

 何でだ? と考えながらリムルは、ある事を思いだす。

 

(……あ!?)

 

 それは――

 

 ミリムと最初に出会った時に問われた事と、同じだった。

 

『なあなあお前は魔王を名乗ったり、なろうとは思わないのか?』

『何でそんな面倒な事をしないといけないんだよ』

 

 そうミリムに問われ、その時にリムルは面倒だと返したのだ。

 

(ああーー、そうかそうか! あの二人、魔王という地位に全く興味がなくて、多分――魔王やるより今の方が面白いんだ)

 

 自分が一度は思い、拒否した理由。

 リムルは、その事を思いだし納得したのだ。

 

(なら……。今の二人を説得するのは、無理だよなぁ)

 

 ギィと言い合うツキハとコハクを見て、リムルがそう思っていたら。

 

「ギィよ。ツキハとコハクは我侭なのだ、何を言っても無駄なのだぞ?」

 

 そうミリムが口を挟んで来た。

 

 それにリムルは、(君がそれを言うかね?)と、心の内で一人突っ込みを入れる。

 

 ツキハの黒髪ボブカット風の髪がザワザワと揺れ始め、コハクの黒髪ロングの後ろ髪がふわりふわりと小さく舞っていく。

 

 二人の隠していた妖気(オーラ)が、漏れ出始めていた。

 それを察したギィが諦め顔で、二人に告げる。

 

「わかったわかった。この話は終わりだ。お前達は今まで通り、〝番外魔王〟でいい。まったく、こんな時なら、魔王を名乗ると思ってたんだが、マジに、何でいやなんだ?」

 

 呆れ顔になったギィが、二人に問う。

 

「面倒、次に面倒、やっぱり面倒、何はともあれ面倒、なので面倒、以上」

 

 ツキハが如何にもめんどくさそうに答える。

 

「何で? と聞かれても、正直困りますなぁ。しいて()うなら、魔王という地位には興味がない、という事おすな。それに、今のままで十分に楽しいんやで、うちらは。フフッ」

 

 含み笑いを浮かべながらコハクは言った。

 

 それを見たダグリュールは「ほんとに、厄介者だのう」としみじみ言い、レオンはフンッと一つ鼻を鳴らし、バレンタインは「邪猫共が」と吐き捨てる様に呟く。

 

 ディーノは、「まあ、いいんじゃねーの?」と眠そうに言って、カリオンとフレイは「「え? そんな理由?」」と、呆気(あっけ)に取られていた。

 

 ミリムが「ほんとに、ブレないなお前達は。ワハハハハ」と笑い言う。

 

「ミリムの言う通りだな。いい加減に魔王になれと、千年以上も言ってきたが、流石のオレも呆れるばかりだぜ」

 

 やれやれと疲れ顔で言い放つギィ。

 

 そこにラミリスが。

 

「それよりもさ、名称を決めるのはどうするのよさ? 前回は散々だったからね。名称を決める度に増えたり減ったりしてさ、何度も魔王達の宴(ワルプルギス)を開催する羽目になったもんねー」

 

 と、言ってきた。

 

(え!? そんなつまんない用件で魔王達の宴(ワルプルギス)って開催されるものなの? 確かラミリスは、魔王全員が集まる特別な会合って言って……。あ! そういえば最初は、単なるお茶会って言ってたんだっけ? その、延長線上なのかぁ……)

 

 何か、どうでも良くなってくるリムルであった。

 

「そうそう。前回の〝十大魔王〟って呼称もさ、結局は人間が呼び出したんだぜ? 俺達が必死に考えたのも無駄になったんだよな。だから俺はもう無理。考える気力が湧いてこねーわ」

 

(いやいや。無理以前に、何も考える気がないだけだろ、君は。さも今まで頑張って考えてました、みたいな言い方するんじゃない)

 

 リムルがそう思ってるところへ。

 

「何も、考える気がないじゃん、アンタは。ギィ、少しは自分で考えてみたら?」

「ほう。なら、お前が魔王になって考えてみるか、ツキハ?」

「なるか、ボケ!」

「黙れ、二人共。邪猫は魔王ではないからいなかったが、貴様等は文句ばかり言って、建設的な意見を言わなかったであろうが!」

「何言ってんだよバレンタイン。そういうお前は、ロイに全部任せっきりだったじゃねーの。それとツキハ、ギィとの喧嘩はここではやめろ。とばっちりは勘弁だっつーの」

 

 リムルの気持を代弁するかのようなツキハとバレンタインの突っ込みだったが、ディーノがそれを軽く一蹴した。

 

(何で名前を考えるのに、そんなに時間がかかるんだよ……。これ、本気で言ってるようだけど、魔王って実は暇なんじゃ……?)

 

 そうリムルは考えると、こっそり『思念伝達』を使ってミリムに聞いてみた。 

 

 聞けばなんと、前回は何年も持ち越して考えている間に、人間達の間で〝十大魔王〟の呼び名が定着してしまったそうだ。この原因は魔王の数の増減によるもので、いいと思える呼称が出たタイミングで減ったり増えたりして、その度にギィがツキハとコハクに魔王になれと説得をしていたかららしい。

 

 で、結局はそれを名乗る事にした魔王達だが、納得はしていなかったのだ。

 

(あー、本当にどうでいい事だわ)

 

 ミリムから聞いたリムルの結論である。

 

「落ち着け、お前達。こんな時こそ、普段は見せない協調性で乗り切ろうじゃねーか! 〝番外魔王〟の二人にも、今回は特別に呼称を考える権利を与える!」

「いらん!」

「いりまへん!」

「頼むぞ、二人共!」

「「はあっ!?」」

 

 ギィが魔王達に高らかに告げ、ツキハとコハクにも考えろと押し付け、二人が全力で拒否するも敢えて無視する。

 

(おいおい。普段は協調性がないって言い切っちゃったよ。しかも、アイツらもしれっと巻き込んでるし)

 

 リムルが呆れたようにジト目でギィを見ると、そこへラミリスがポツリと呟く。

 

「え、でも……今回は、八大――」

 

 しかしその呟きは、周囲の無言の圧力によって掻き消される。

 

 だが、それをものともせずに、声を上げる者がいた。

 

「〝八大魔王〟でいいじゃん」

「十から二人減ったんや。八人になったんやから、〝八大魔王〟でいいやおまへんか。何考え込んでるんや、あんさんらは?」

 

 その無言の圧力をあざ笑うかのようにツキハとコハクが言い放つ。

 

「コハク、ツキハ、やっぱテメエらは駄目だ! 現魔王達で考えようじゃねーか!」

 

 ギィの言葉にすかさずラミリスが、誤魔化すように「そうよ。今ギィがいい事言った! 魔王である皆で頑張るのよ!」と、先程の呟きを虚空の彼方に蹴り飛ばし、言い直した。

 それを聞いたツキハとコハクは、ニヤリと口元に笑みを小さく浮かべる。

 

 流石に八大魔王では、安直過ぎて誰も納得しなかったのだ。

 

「わははははは! お前達、そういのは任せるぞ!」

「俺は疲れた、寝る」

 

 早速現れる、協調性の欠片も無い者達。

 

 流石は魔王達、協調性なんて〝何だそれ?〟 を地でいく者達である。

 

 そんな気まずげな雰囲気を破る一声が、皆の耳に飛び込む。

 

 空気を読まないその男は――

 

「お? そういう話ならば、我が友リムルが得意としておるわ!」

 

 ヴェルドラである。

 

 退屈して来たのか、そんな事を言い出すヴェルドラ。

 

(チッ、魔王達の視線が俺に集中しやがった)

 

 リムルに嫌な予感が強烈に走る。

 

(こんな事を言い出すなんて、漫画を読み終えたのか? 最終巻を)

 

 そんなヴェルドラの手の中にある漫画に、ミリムとツキハの目が釘付けになっていた。

 その目は獲物を狙う鷹より鋭く、リムルには悪い予感しか感じられなかった。

 

 そしてヴェルドラの言葉に頷く者が現れる。

 

「そう言えばアタシのベレッタにも、サクッと名付けてくれたもんね!」

 

 ラミリスの、丸投げをする構えが炸裂した。

 

(こ、コイツ……段々と俺に対して遠慮がなくなってきたな。そのままなし崩しに、俺に頼ろうとする意図が見え隠れしてんじゃね? それよりも、あー、これは不味くねえか?)

 

 そこへトドメの一声。

 

「あー、そういえばラミリスがめっちゃ喜んでたよねえ。あっさり良い名を付けてくれたと」

「どすなぁ。あの時のラミリスの喜びようったら、なかったで。フフフ」

 

(はあっ? 何言ってんだ、お前ら……!?)

 

 ツキハとコハクが再度自分達に火の粉がかからない様に、全力でラミリスの言葉の後押しをする。

 

 リムルがふと見回せば、他の魔王達の視線にも期待が満ちていた。

 

「二人共、上出来だ」

 

 ギィがニヤリと呟いた。

 

 それを聞いたリムルは。

 

(え? しまったー。既に包囲網が完成してしまったか!?)

 

 魔王達は無言で目配せし合い、代表してギィが立ち上がる。

 

「今日、新たな魔王として立つリムルよ、君に素晴らしい特権を与えたい」

「あ、いらないんで、遠慮しときます」

 

 リムルはその先を言わせないように、速やかにお断り入れたのだが。

 しかし、リムルの考えは甘すぎた、あの〝番外魔王〟への対応を見てれば一目瞭然であった。

 

 ドゴン! という轟音とともに、黒曜石のような光沢を放つ高価そうな大円卓が、真っ二つに割れたのだ。

 

 ギィは笑顔のまま、リムルのお断りを無視する。 

 あの〝問題児〟の二人を有無を言わせずに黙らせられるのは、伊達ではなかったのだ。

 

「そうだとも。我等の新たなる呼び名を付ける権利、それを君に進呈する。これは大変名誉な事だから、当然引き受けてくれるよな?」

 

 ギィはリムルの隣まで歩み寄り、リムルの頬を撫でながら告げる。

 

(これが、有無を言わさない猫撫で声かぁ)

 

 一見すると優しげに聞こえるが、その声は否定を許さぬ気配を纏っていた。

 

 リムルは無言で肯定も否定もせず、黙秘を行使しようとするも。 

 ギィは、ツツゥーッと頬を撫で。

 

「というかよ、お前が人数を減らしたのがこの問題の原因なんだぜ? 勿論責任を取って、名前くらい考えるよな?」

 

 傍から見れば恋人に甘えられているようにしか見えないが、現実は違う。

 ふと、リムルが怪しげな視線に気付き、その視線の主を探ると。

 

 コハクが右手を頬に当てて少し首を傾げて、ほんのり頬を赤らめてほわっとした表情でリムルとギィを見ていたのだ。

 

(ええ!? 何で……?)

 

 そのリムルの疑問は後にわかるのだが、その時にリムルの目が点になったのは言うまでもない。

 

 とりあえずその疑問を余所に追いやり、目の前の問題を片付けることにするリムル。

 

(あーもう。そこまで面倒なのか……まあ、いいや)

 

「わかったよ、まったく。気に食わないからって、文句を言うなよ?」

 

 リムルは諦めて、不承不承(ふしょうぶしょう)引き受ける事にした。

 

 魔王達は良かった一安心とばかりに、満面の笑みを浮かべる。

 

 お茶のお代わりをして寛ぐ者、談笑を始める者などいて、もう終わったとばかりに完全に人任せであった。

 

(さて、コイツ等は放置でいい。八人の魔王だから、ツキハとコハクが言った通り八大魔王でいいと思うのだが……いや、流石に安直過ぎるよな。ラミリスの言いかけたのも多分八大魔王だろうし。うーん、これは却下だな。何しろあの瞬間、周囲のそれ以上言うなよと圧力は、中々に凄かったからなぁ。その圧力を意に介さずに言い放つあの二人も凄いんだけど、あの威圧付の視線に晒されるのは、俺はゴメンだ)

 

 目を閉じ腕を組んだまま思案を続けるリムルは、八大魔王という呼称を却下する。

 

(となれば……。そういえば、今夜は新月だったな。夜空に星が(きら)めいてとても綺麗な夜空――)

 

「〝八星魔王(オクタグラム)〟。八芒星から連想(イメージ)してみたんだけど? これで、どうだ?」

 

 その言葉の後、訪れる沈黙の時。

 魔王達と〝番外魔王〟の二人は目を(つむ)り、その言葉を吟味して……。

 皆が、一斉に目を開いた。

 

「決まり、だな。素晴らしい」

「これで勝てる! 新たな時代の到来なのだ!」

「やっぱりね! リムルならやってくれるとアタシは信じていたさ!」

「流石よな、ヴェルドラが推薦するだけの事はある」

「ふん。まあいいわね、少しは認めてあげましょう」

「一瞬かよ! スゲーな。前回の俺達の苦労はなんだったんだよ!」

「……ふむ」

「八芒星から考えるかぁ、センスいいじゃん」

「せやねえ、中々にええ呼称おすなぁ」

 

 反対意見はなく、その呼称は皆から受け入れられた。

 

(ああー、よかった。もし反対意見が出たら、そいつに名前考えさせようと思っていたんだけどな。ってか、ミリムは何に勝つ気でいるんだ? 聞いてみたい気もあるけど、やめておこう。そして、ディーノよ、お前達って、何を話し考えていたんだよ……)

 

 

 

 こうして――

 

 今日この時より魔王達は、新たなる呼称で畏れられる事になったのだ。

 

 

 その呼び名は、八星魔王(オクタグラム)――

 

 

 悪魔族(デーモン)――〝暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)〟ギィ・クリムゾン。

 

 竜人族(ドラゴノイド)――〝破壊の暴君(デストロイ)〟ミリム・ナーヴァ。

 

 妖精族(ピクシー)――〝迷宮妖精(ラビリンス)〟ラミリス。

 

 巨人族(ジャイアント)――〝大地の怒り(アースクエイク)〟ダグリュール。

 

 吸血鬼(ヴァンパイア)――〝夜魔の女王(クィーン・オブ・ナイトメア)〟バレンタイン。

 

 堕天族(フォールン)――〝眠る支配者(スリーピング。ルーラー)〟ディーノ。

 

 人魔族(デモンノイド)――〝白金の剣王(プラチナムセイバー)〟レオン・クロムウェル。

 

 

 そこに新たな魔王。

 

 妖魔族(スライム)――〝新星(ニュービー)〟リムル・テンペスト。

 

 ――以上八名。

 

 

 そして、変わらず〝番外魔王〟の名を名乗る二人。

 

 真幻魔族(ゲシュペンスト)――〝抜刀戦魔(ソードマスター)〟ツキハ・イザヨイ。

 

 真幻魔族(ゲシュペンスト)――〝忍魔閃舞(ソーサリーダンサー)〟コハク・ヤミヨ。

 

 

 この日より、新たな魔王の時代の幕が開ける。

 

 

 それに伴い、支配領域の分配が始まった。

 

 リムルの支配領域はジュラの大森林全域となり、新参の魔王には破格の待遇である。

 

 しかし、ミリムの支配領域はもっと凄い。

 フレイとカリオン、それにクレイマンの領地までもが統合されて、ミリムの支配領域となった。

 

 と、言っても支配とは名ばかりで、領地運営はフレイとカリオン、そして竜を祀る民が行うのだから。

 それに旧クレイマン領は、東の帝国との緩衝地帯であり、クレイマンがどういう管理をしていたのかを調べて、新たな防衛線を築く必要があるだろう。

 

 これに関しては、フレイとカリオンが忙しくなるのは明白であった。

 

 他の魔王達の領地に変動はない。

 

 因みに〝番外魔王〟の二人は領地を持っていない、表向きは。

 この事は完全に〝秘密〟にされていて、詳細を知る者は最古の魔王ラミリス、只一人である。

 ギィは噂だけは聞いていて、ミリムは一度だけ話を聞いた事がある程度であった。

 

 これを含めて、〝傭兵商会・ルヴナン〟共々実態が掴めないので、人間達から畏れられている要因でもあるのだ。

 

 

 そんな自分勝手な魔王達だが、連絡を取る手段が存在する。

 

 それは、魔王の証として与えられた指輪――〝魔王の指輪(デモンズリング)

 魔王としての本人を証明するだけではなく、魔王間での『超時空通話』が可能になる代物なのだ。

 因みにツキハとコハクもこれを持っている。呼び出そうとすれば、どこにいるかわからない掴まらないで、それにギィが業を煮やし、無理やり二人に持たせたのがこれなのだ。

 

 ツキハとコハク(いわ)く、これを猫の鈴と呼んでいる。

 

 リムルは指輪を受け取り説明を聞きながら、この指輪は『無限牢獄』の中からでも通話出来ると聞き、今度『解析鑑定』して、秘密裏に量産しようかなと、リムルは思う。

 このような便利な物は、直ぐに作ってしまおうと考えるのが、リムルの恐いところであった。

 

 

 

 こうしてリムルは、八星魔王(オクタグラム)一柱(ヒトリ)となった。

 

 魔王の宴(ワルプルギス)も終わりを迎え、この後は会食でもというところで、ヴェルドラが何気なくツキハに話し掛けた。

 

 それは――

 

「おお、そうだ。ツキハよ、あの勝負はいつやるのだ?」

 

 その言葉を聞き、一斉に魔王達が〝何だと!?〟と言う様にヴェルドラとツキハを見る。

 

「ん? 明日でもいいんじゃない?」

「おい、ツキハ。その勝負とはなんだ? 隠さずに全部言え」

 

 あっけらかんと答えたツキハに、ギィが真剣な顔で問い。

 

「何っ!? 勝負だと、ワタシも混ぜるのだ!」

 

 ミリムが食い付き、案の定混ぜろと言い出す。

 

「クワハハハハ! ミリムよ、この勝負は我とツキハの一対一の勝負故、お前は混ざるのは駄目だぞ。それに、この勝負には魔国(テンペスト)の命運が掛かっておるからな。ウワハハハ」

「命運? なんだそれは? おいリムル説明しろ」

 

 魔国の命運と聞き、ギィが真顔でリムルに詰め寄り説明を求めた。

 ミリムが「いやだ、ワタシもやるのだ」と駄々をこね始め、コハクが「あれは、二人のタイマン勝負なんや。邪魔は、あきまへんで!」とミリムを諭していた。

 

 リムルは、クレイマンとの戦争が始まる前から、〝傭兵商会・ルヴナン〟がクレイマンから受けていた依頼で、魔国を攻める契約を交わしていたと説明した。

 

「おい、本当なのかコハク?」

「せやで、ギィ。もう依頼料ももろとるし、契約は既に成立してるんやで」

「そうか。なら仕方ねえな」

 

 契約は成立してると聞くと、ギィはあっさりと納得をした。

 悪魔族(デーモン)に取っても契約は厳正なものであり、コハクが正式に契約は成立してると言ったのですんなり引き下がったのである。

 

 それからは、他の魔王達にも事の経緯を説明し、ヴェルドラとツキハだけが戦うので他の被害は出ないと言うと、バレンタインが「(たわ)けが! あ奴等が本気で戦えば人的被害は出なくとも、周辺の被害は甚大なものとなるのだぞ!」と、リムルは盛大なお叱りを受けた。

 

「あー、そうなの?」と、リムルがミリムに尋ねると、「うむ。恐らくジュラの大森林の地形が、大幅に変わるかも知れぬぞ?」、そう真顔で言い切った。 

 

「それは不味いな――」

 

 とりあえず、場所は何とかするからとリムルは言い。

 他の支配領域ではやらないから安心してくれと皆を説得して、その場を収めた。

 

 

 そして、ヴェルドラとツキハの戦いは、明日の早朝と決まった。

 

 

 魔国(テンペスト)の命運を賭ける戦い、勝者は敗者に何を望むのか……?

 

 

 

 ヴェルドラが勝つのは当たり前、それが魔王達の声。

 

 しかし、相手は何をするかわからないツキハである。

 

 

 ツキハが真の力を見せるのか? 

 

 

 そしてこの戦いは、リムル達の記憶の中に深く残る戦いと、なるのであった。

 

 

 

 




 64話を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!


 ※物語の中で新たな魔王の時代が到来し、レオンも元人間から〝人魔族〟と種族名が変わりました(これは原作でも人魔族と変わっています)。
 それに伴いツキハとコハクの種族名からも猫人が外れ、〝真幻魔族〟と変わりました。

 これは二次創作物語を作る中で、最初から設定していたものなので、急に変更とか間違いではないので、御了承頂けたら幸いです。



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