忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
今回はストーリーが短いです。
ラプラスがクレイマンが死んだことを知る話なのですが、この部分は原作でも好きな部分でもあって、ヴェルドラとツキハが戦う話の中に入れていたのですけど。
やっぱりこの部分だけは短いけど一つの話にしたいなと思い、この様な形での投稿になりました。
なので、急遽65話から切り離してこれを65話としました。
ほんとに読者の皆様、申し訳ないです。
66話は半分程出来てますので、そう遅くない内に投稿します!
バレンタインの従者ロイが
神聖法皇国ルベリオスにある、聖神殿内部の大聖堂に向かう一人の侵入者がいた……。
(マジ、死ぬかと思ったで)
そう思いつつ逃げる者がいた――
中庸道化連のラプラスである。
打ち合わせ通り
その者は最強の麗人、〝法皇直属近衛師団筆頭騎士〟にして聖騎士団長の肩書を持つ、
(ちょ、ちょ、ちょおぃ! どないなってんねん、約束が違うで!?)
この場にはいない雇い主に、心の中で文句を言うラプラス。
打ち合わせでは、雇い主がヒナタを誘い出すという話になっていたのだ。
雇い主が、あはは、ごめんごめん! という気軽な謝罪が聴こえた気がして、ラプラスをイラッとさせる。
そこへ――
『この聖なる場所に潜り込むとは、本当に虫って嫌いだわ』
そんな冷たい声が聞こえたと同時に、ラプラスは一瞬の
(あんなん、無理や! ほんま、どないせえーっちゅうねん!?)
〝奥の院〟へ向かうどころではなく、潜入作戦は失敗。
(せっかく魔王ヴァレンタインが留守でも、あの女がおったら意味ないやないかい……)
「勝てる事あるかい、あんな化け物――」
そう呟き、ラプラスは早々に諦めて撤退を決意する。
ラプラスは風を切るような速さで駆け、聖都外れの近くにまで達していた。
とりあえず、ヒナタから逃げ延びただけでも大金星と自分を褒めてやりたい、そう思った時。
星都の外れに空間の
「ちょ……マジかいな……(やってらんねーわ!)」
その魔力反応は上位魔人どころではなく、明らかに別格の強大な魔力。
しかも、その魔力波長にラプラスは覚えがあったのだ。
「虫ケラめが。余の前に、今一度姿をみせるか!!」
烈火の如き怒りを見せ、
「クソッたれ! 今度は魔王かいッ!?」
マジについてない、ラプラスは自分の不幸を心底嘆きたくなった。
だが、そんな事を嘆く場合では無く、全力での逃亡を試みようとして――
「フンッ! 虫ケラは皆同じだな。逃げ回るのがそんなに好きか?」
――ヴァレンタインが言った言葉に、ふと、何か感じるものがあり、ラプラスは足を止める。
「なんの話や?」
剣呑な雰囲気を漏らし出しながら、ラプラスがヴァレンタインに問う。
それにヴァレンタインは、「クレイマンはな、無様に命乞いをしながら逃げ回り。最後には、助けてくれと泣き叫びながらな。くくっ、死んだのだよ。はあっはははは」と、嫌らしく嘲笑しつつ、言う。
「なんやと?」
「はっはっは、何を怒る? 貴様には関係ないのではないか?」
「黙らんかい! おい、クレイマンが死んだっちゅうんは、本当の話なんか? おい、言わんかい!」
「はーーーーっはっはっは! ゴミ虫が、語るに落ちたな。やはり貴様等は繋がっていたのだな。全てはルミナス様の思し召し通りよ!!」
大きく嘲笑いをするヴァレンタインを前に、ラプラスは唖然としていた――
クレイマンの死を信じられなくて。
いや、信じられないのではなく、信じたくない、それがラプラスの本心だった。
ラプラスにとってクレイマンは、少し神経質だが気のいい仲間であり、友、いや大切な友だったから。
仮面の右側から覗く目が、猛烈な怒りを込めたようにヴァレンタインを睨み上げ、隠していた
「何を笑っとるんじゃ、クソボケが!」
「虫ケラが、誰に向かって………………ゴブゥーーッ!?」
「ド阿呆が! ワイの、友達を、笑うなちゅうとんじゃい!」
激昂の殴殺。
その言葉が表すように、ラプラスの豪拳は止まらない。
拳の連打に見舞われながら、ヴァレンタインは怒りと屈辱で顔を真っ赤に染まった顔で、ラプラスを睨み叫んだ――。
そう、どれだけ殴られようとも、『超速再生』を持つヴァレンタインの前では無意味。
愚か者には、死によって報いを与えるのみなのだ。
吹き出る血は、真紅の霧となり周囲に立ち込めてーー
「――死ね、
絶対の血結界の中、逃げ場などないラプラスへ鮮血の粒子砲が迫――
らなかった。
「無駄や。お前はもう死んどる」
「――ッ!?」
ヴァレンタインには、今何が起こっているのか、理解出来なかった。
今宵は新月で、自分の力がもっとも落ちる日
しかし、魔王級であれば、そんな事は誤差でしかない。
何故、
考えられる原因は、一つ。
ラプラスが、ヴァレンタインより強いのだ。
それを理解した時、ヴァレンタインは信じられない物を見る。
もう、終わったとばかりにヴァレンタインに背を向け、数歩ほど歩いたラプラスが足を止め、背を向けたまま右手に持った脈打つ物体を掲げ見せた。
「――ッ!!」
「せや。これはお前の
「……(いつの間に……抜き取られたのだ……?)」
無感情な言葉で、冷酷に告げるラプラス。
ヴァレンタインの体が小刻みに震えだし、ありえない感情に(恐怖? 余が、恐怖している!?)、押し潰されていく。
「気付くのが、ちいとばかし遅かったな」
ラプラスの目が研ぎ澄まされた刃のように、スーッと細くなり。
「せや。ワイは強いんや。ほな、さいなら」
死の言葉をヴァレンタインに告げた。
その言葉に青褪め、絶望の表情に顏を崩すヴァレンタイン。
ラプラスの手にあるのが、本当に自分の心臓だと気付き、敗北を悟った。
その表情を見もせずに感じ取ったラプラスは――
狂ったように笑い、グシャリと一気に握り潰した。
勝敗は一瞬にして、ついたのだった。
ラプラスは笑い続けている。
――ああ、フットマンは怒るやろ。
――ああ、ティアは泣くやろな。
――せやから、ワイが笑ったるわ。
ラプラスに気付いた警備兵を血祭りに上げながら、一直線に聖都から脱出をしていくラプラス。
――お前は本当に馬鹿だったなと、ワイだけが笑ったるんや。
(それこそが、〝
怒るでもなく 泣くでもなく
もう 笑う事のない 友の代わりに
ラプラスは 嗤う
65話を読んで頂きありがとうございます!
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