忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。66話です


 ツキハ

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 コハク

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66話 V duel T (前編

 

 

 

 魔王達の宴も終わり、この後に豪華な食事が用意されていた。

 

 会議の終了と同時に、レオンとバレンタインは帰って行った。

 ツキハとコハクも即帰ろうとすると、ギィが美味い酒を用意したと言う。

 

「年代物のワインなんだがな。そうか、いらないか? じゃあな――」と、早よ帰れというように、右手をピッピッと振ると。

 

「いや飲もう。ってか飲んだら帰る」とツキハは即答し、コハクも「せやな。せっかくやから、よばれましょかぁ」と、二人も残って食事を食べる事になった。

 

 で、結局食事会に参加したのが、ギィ、ラミリス、ミリム、ダグリュール、ディーノ、リムル、ツキハ、コハク達だった。

 

 リムルも、魔王の中でも実力者のギィがどのような食事を取っているのか、興味津々であった。

 

 ギィの配下のミザリーとレインは、料理の腕も一流だったようだ。

 こうして出された世界最高峰の料理を、皆が舌鼓を打ちつつ楽しんでいく。

 

 余談だが、出された料理の数々を智慧の王(ラファエル)が『解析』をしていたのは秘密である。

 このレシピは直ぐにシュナへと渡り、完全再現されるであろう。

 

 

 料理をがっつくミリムに、リムルが自分を騙していた事について文句を言っていたが、当の本人は料理に夢中で、リムルが「お前なあ」そう言いながら、周りを見ていると。

 

 ラミリスが移住の件をしつこくねだってきたので、リムルが今は無理だから、色んな事が片付いてからその件は考えると言ったら。

 

「ん? あらら、あんな〝便利能力(スキル)〟持ってるのに、お断りするんだ?」とツキハが口を挟み、それにラミリスが「そうようそうよ。ツキハ、リムルにもっと言ってやって!」そうツキハに促すと。

 

「いや、自分で言えばいいじゃん。自分の事だし」

「なんですってー! ちょっと冷たいんじゃない?」

 

 と、リムルからツキハに矛先が変わり、言い合いを始めるラミリスとツキハを見て、ホッとするリムル。

 リムルは、ツキハが〝便利能力(スキル)〟と言ったのに「ん?」と思うも、その場の雰囲気で聞き流してしまう。

 しかし、その意味を後に知る事になるのだが、それが魔国を救う事になるとは思いもしなかったリムルである。

 

 

  ダグリュールはヴェルドラと話が弾み、ミリムとツキハ、コハク、ラミリスが何かを話ながら、喧嘩というじゃれ合いを始め、ギィとディーノは楽しそうに世間話を話し始めていた。

 

 そんな彼等を見てリムルは、魔国連邦(テンペスト)印の特産品――

 葡萄酒(ワイン)を蒸留したブランデー提供した。

 

 そう、自国のイメージアップ戦略の一環で。

 たとえ魔王が相手でも、やるべきことは一緒だとばかりに、抜け目のないリムル。

 

「美味いな」

「ほう、これはなかなか――」

「ゲホッゲホッ、これ、きつすぎ……」

 

 ギィやダグリュールには好評でディーノはむせていた。

 

(おい。だからさ、土産(みやげ)を全部飲もうとするのは()めような、ヴェルドラ君、そしてツキハ君。まだ、俺の『胃袋』には大量のストックはあるんだけど……。はあ!? あれは何だ?)

 

 ヴェルドラが何やらブランデーの樽を持ち上げて、ツキハが持つ水筒のような物にブランデーを注いでいた。

 

 ツキハの持つそれは――

 ひょうたん型水筒〝酒樽君〟である。

 

 その酒樽君にヴェルドラがブランデーをどんどん注いでいく。

 既に六樽分は入っていた、そのひょうたん型水筒〝酒樽君〟に。

 

(へえー、なるほどねえ。空間収納型かぁ)

 

「何やってんの、ヴェルドラ君?」

「!? お、おうリムルよ。何、ツキハに土産(みやげ)でもと思ってな。そう、土産としてだな――」

「ほおぉ。それで、七樽も入れたんだ? みんなの分もあるから、ほ・ど・ほ・ど・に、な。頼むよヴェルドラ君」

「う、うむわかっておるぞリムルよ。もうこれくらいでよかろう、ツキハよ?」

「うん、ありがとヴェルドラ君。後で一緒に吞む約束は忘れないよ。にゃふッ♪」

「おい。なんだって?」

「な!? つ、ツキハよ、それは内緒だろう?――」

「――ヴェルドラ君。帰ったらOHANASHIな」

「え?……」

 

 さりげなくヴェルドラに注意しに来たリムルにヴェルドラが慌てて言い訳をして、それにツキハが悪戯(いたずら)っ子みたいに笑みを浮かべ言い、リムルが後でお話(説教)があると告げる。 

 OHANASHIを告げられ絶句するヴェルドラであった。

 

 そこに当たり前のように手を伸ばしたミリムに、リムルから待ったがかかり、ぶーたれるミリム。

 

 更に横から「あたしはいいよね!」と、止める間もなくラミリスがグラスに取り付き、一瞬にして泥酔する。

 

(何やってんだラミリスのヤツ……。それでミリム、君が飲んだら暴れ出す未来しか()えないから。それに俺を騙した事も考慮して、ミリムに酒を飲ますのは、今回は断固阻止だね。と、思ったが……。そこは流石ミリムというか、早速ツキハにブランデーをねだりにいってるし。よくわかってらっしゃる、ミリムさん。俺がツキハに飲ますなと、言えない事を……。うん、次の〝蜂蜜〟はお預け決定だな)

 

 そろそろ手持ちが無くなるであろう、ミリム大好物のアピト産蜂蜜がお預け確定になった。

 そんな事を露知らずミリムはブランデーを飲み、案の定ツキハに絡み出すミリム。

 

(やっぱりね。俺の勘は正しかった。クク)

 

 絡まれたツキハが怒ってミリムにゲンコツを落とし、更に怒ったミリムがゲンコツをやり返す。

 リムルは二人を見ながら、クスリと笑みを(こぼ)していた。

 

 そんな賑やかな食事の時間も過ぎ、ツキハとコハクは「次は魔国連邦(テンペスト)で」と言葉を残し、何処かへと帰って行った。

 

 

 そして、リムルも魔国連邦(テンペスト)へと帰還する。

 

 

 リムルが街に入った途端、住民達や巡回の兵士達が道の端に下がって(ひざまず)く。

 そうして、一つの道が出来上がり、その一糸乱れぬ動きは圧巻だった。

 

(一体何をしてるんだ?)

 

 リムルがそう思って見ていると、道の先からディアブロが出て来る。

 

 そして、リグルドと目配せし合い――

 

「お帰りなさいませ。リムル様!」

「この度は八星魔王(オクタグラム)襲名の儀、(まこと)に御目出度き事に御座います! 何よりも、よくぞご無事でお戻り下さいました!!」

 

 代表のリグルドから出迎えの言葉を述べられ、ディアブロからは祝いの言葉を贈られる。

 

(んん? 何で正式に魔王に認められた事を、お前が知ってるんだ? それにその呼称も、あの会議で初めて世に出たハズ。なんせ、俺が考えたんだしな。だいたいディアブロは、ファルムス王国攻略に向かったはずだよね? なんでここにいるんだよ?)

 

 リムルは、この尽きない疑問をディアブロに問うてみた。

 

 すると。

 

「簡単ですよ、リムル様。ヴェルドラ様に頼んでいたのです」

 

 そう笑顔で答えるディアブロ。

 

 リムルはすかさずヴェルドラを見ると、サッと視線を(そら)らされた。 

 

(おい。おい、オッサン)

 

 その反応見たリムルは、何か(やま)しい事があるに違いないと察し、ヴェルドラを問い詰めると、アッサリ白状したヴェルドラ。

 

 内容は、食事の際に出されるデザート三食分で、情報を流すと約束をしていたのだ。

 

 これを聞いたリムルは、ヴェルドラという実力者を買収するというその行動力、普通の者なら思いついても行動に移せない、それを事無げにやってみせるディアブロの情報収集能力を内心で褒め、本人達が納得をしているならいいだろうと、それ以上追及するのは()めにした。

 

「そうだ、ヴェルドラ。お前ってさ、別に食事をする必要ないよね?」

「ば、馬鹿な事を言うでないぞリムルよ! 食べる必要があるとかないとかいう問題ではなく、我が食べたいから食べるのだ。ツキハも言っておったぞ。どんな生命体だろうと、料理が美味しいから食べて酒を飲む、これでいいのだとな! そもそも、お前だって食事の必要がないであろうが!」

「む!? ま、まあ、そうだな」

 

 リムルはヴェルドラに反論され、確かに言われてみればそうだと納得をする。

 

 そう、最近はシュナの料理の腕も凄まじいものになって来て、作るデザートの種類も多岐に渡るのだ。

 

 特にデザートに関しては、イングラシア王国にある喫茶店の店長である〝吉田さん〟の作るお菓子は絶品で、その〝吉田さん〟が作るシュークリームの再現にも成功して、魔国連邦(テンペスト)で売られ始めている。また最近では魔国連邦(テンペスト)産の酒の種類が豊富になった事で、〝吉田さん〟にこの酒を定期的に卸すという約束をして、新たなレシピの開発にも協力してもらう事になっていた。

 因みにこの〝吉田さん〟、料理の腕も相当なものである。

 

 そして、これがリムルの楽しみの一つになっていてるので、流石に強く言えないのであった。

 

 リムルがそんな事を考えていると、ふいにディアブロが尋ねて来た。

 

「ところでリムル様。ヴェルドラ様とツキハの戦いが、明日に決まったらしいですね?」

「ああ。明日の日の出を合図に、戦いが始まる」

「そうですか。では、立会人に、わ――」

「――いや、立会人はもう決まったんだ」

「なんと!? どなたに決まったのでしょうか?」

「ミリムだ」

「ミリム様に、ですか。何故にミリム様が立会人になどに?」

「うーん。それはだなぁ、あの二人が全力で戦うと、周辺の被害が甚大になるとかならないとかでな。まあ、ギィの勧めでもあるから、断れなくてな」

「……そうですね。確かに、人的被害が出なくとも、周辺の被害は相当な物でしょうね」

「そう、だから『結界』で周辺の被害を最小限に抑えると言ってたな」

「わかりました。それで、私達も観戦する手段はあるのでしょうか?」

「ああ、それはもう考えてあるよ。とりあえず映像を記録できる水晶球を使って、浮遊しながら映像をもう一つの水晶球に映し出す術式を略式で作ったからさ、それで皆が見れるようにするつもりだ。まあ、これに関しては、その内にもっと精度の高い物を作るつもりだから、間に合わせの物だよ」

「おお、流石はリムル様! それは皆も喜びますな!」

「クフフ、リグルド殿の言う通り。明日が待ち遠しいですね」

 

 立会人の事を告げ、皆の観戦が出来る手段も用意したと告げるリムルにリグルドが歓喜の声を上げ、それにディアブロも頷き、明日を待ちわびる。

 

 

 リムルからの報告も終わり、明日の魔国連邦(テンペスト)の運命を決める戦いを待ちながら、皆が久しぶりの安寧とした一日を過ごした。

 

 

 

 そして、漆黒の地平線に薄っすらと日の線が走り、薄っすらと明かりが差してくる。

 

 その漆黒の闇を斬り裂きながら飛ぶ、二つの影。

 ツキハとコハクが魔国連邦(テンペスト)を目指して飛行していたのだ

 

 『空間転移』を使わず飛行して来たのは、これは正式な戦いであり宣戦布告ではないから、指定された広場に敢えて飛行して向かっていたのである。

 

 

「もうすぐ日の出だね」

「せやねぇ。ほんまに久しぶりやねぇ、ツキハとヴェルドラはんが〝遊ぶ(ガチ手合わせ)〟んは」

「立会人はミリムが来るってさ」

「まあ、そうなるやろねぇ。なんせ、あんさんらがガチでやりあうと、地形が変わりますさかい」

「〝星をぶっ壊す〟つもりはないんだけどねぇ。ふふっ」

「なんにしろ、ミリムが来るんや。その心配はありまへんやろ」

「だね。あ、大広場が見えて来たよ」

「あらあら。また、えらく住民が集まってますえ」

「みんな、気になるんだろ。ヴェルドラとあたしの戦いが」

「ほな、降りますか、ツキハ」

「いこか、コハク」

 

 まだ薄暗い大広場にツキハとコハクは、静かに降り立った。

 

 するとそこには既に、ヴェルドラとリムル、立会人のミリムに、幹部達が勢ぞろいしていた。

 ツキハとコハクがそこに歩き近づくと、ヴェルドラが一歩前に出て二人を出迎える。

 

「よく来たな、ツキハ。それにコハクよ」

「うん。クレイマンの依頼に付き、魔国連邦(テンペスト)代表ヴェルドラに、一騎打ちを所望する」

「うむ。受けよう」

 

 真剣な顔付で告げるツキハに、同じように真剣な顔付で答えるヴェルドラ。

 そして、同じように真剣な顔付なミリムが二人の前に出る。

 

「今回の勝負の立会人は、ワタシがするのだぞ。双方、勝負の条件は決まっておるのか?」

 

 条件は聞いて知っているが、再度ミリムが二人に尋ねる。

 

「条件は、あたしが四日目の朝を迎えたら勝ち。その時に一つだけ敗者に自分の望みを叶えさせる。それが、どんなことでもね。そして、〝妖刀時雨〟は使わない。攻撃は体術のみ。魔法系は一度だけあたしは使う。以上」

 

 ツキハが淡々告げ終えると、それにヴェルドラが続く。

 

「勝負の条件は、ツキハが言った通りで間違いない、が。地上での戦いは体術でもよいが、空中戦は通常魔弾のみ使用も可というのは、どうだ? 体術だけでは、面白くなかろう?」

「そうだね、いいよそれで」

 

 ヴェルドラの追加提案に即答するツキハ。

 

 ツキハが、角帯から〝妖刀時雨〟を抜きコハクに渡し、受け取ったコハクが自分の角帯に差し、下緒(さげお)を帯に軽く巻いてパンと軽く下緒を叩き、下緒に設定された空間に収納する。

 

 そこへリムルが最終確認ともいえる発言をする。

 

「なあ、お前達、クレイマンは死んだんだ。例え依頼を達成したとしても、その依頼主はもういないんだぞ。だから――」

「魔王リムルはん。それは、あきまへん。例え依頼主が死んだかて、契約は成立してるし、依頼料ももろとるんや。なら、うちらがやることは一つや」

「そうか、わかった。もう何も言わない、後はヴェルドラに任せるよ」

 

 何とか戦いを避けようとしたリムルだが、それはコハクからキッパリ拒否された。

 二人が交わした傭兵契約は、悪魔族(デーモン)の契約と同等に厳粛なもので曲げられないもの。

 しかし、契約の抜け目を探す事が出来るのも事実であり、これをして来た事もある。

 だが、今回は一切の抜け目を探さず、特にコハクの一存でこの契約の破棄は行わなかったのだ。

 

「あ? そうだ、ここには二人だけで来たのか?――」

主様(マスター)。既に眷属達がいます》

『ええっ!?』

 

 何気ないリムルの問いに『智慧之王(ラファエル)』が即答する。

 そして、ツキハがニヤリと口元に笑みを浮かべ、軽く右手を上げ前に振ると。

 

 ツキハとコハクの後ろの空間が広い範囲でいきなり(ひずみ)、次々と亜人が姿を現していった。

 

 その数、千体の亜人化した忍魔猫が、ここに集結した。

 

 一人サンコだけはベニマルの隣に現れ、「お前なぁ、それ心臓に悪いから、やめろ」と文句を言われ、「気にするニャ、ただの悪戯(イタズラ)ニャ。ニャハハハ」と腰に両手を当て笑い飛ばしていた。

 

 今初めて、〝番外魔王〟の眷属達千体が、リムル達の前に姿を現したのだ。

 この五千年近く、その実態を掴ませなかった眷属達が姿を現した、その意味をディアブロは即座に察し、リムルに進言する。

 

「リムル様、あの二人は本気です。最大限の警戒を」

「ああ、そうだな。でも、多分大丈夫だと思うぞ?」

「リムル様!?」

 

 〝番外魔王〟の狡猾さと強さを知っているディアブロが、リムルの言葉に驚いたように聞き返す。

 

「何よりヴェルドラが警戒してないしな。いきなり現れた事には俺もびっくりしたけど、多分あの眷属達も主の戦いを見に来たんだろうよ。でも、警戒は怠らない。進言ありがとうな、ディアブロ」

「いえ、もったいない御言葉。それでは、私も警戒は解かないでおきましょう」

「うん、頼むよディアブロ」

 

 とりあえずの警戒はするという事で、リムルはディアブロの進言を受け入れ。

 リムルから礼の言葉をもらったディアブロは嬉し気にリムルの後ろに下がると、シオンが「何抜け駆けしてるのですか!」と、ディアブロに食って掛かり、それをベニマルが仲裁に入り、サンコが「そんなに言うなら、腕で勝負を付ければいいのニャ」と、火薬庫に火を投げ入れる言葉を言う。

 

「ちょ!? サンコ、それは言って――」

「やりますか?」

「いいでしょう」

 

 ディアブロとシオンが目が笑っていない笑みで言いあい、一触触発の状態にサンコがワクワクしていると、そこへ――

 

「シオン。リムル様の迷惑になりますよ? 何をしているのですか?」

 

 にこやかにシュナがシオンに告げる。

 そのにこやかなれど、凄まじい迫力の笑顔にシオンは慌てて「いえ、これは、はい、何でもありません」と、即座に引き、ディアブロも「仕方ありませんね」と引いていった。

 

「貴女は〝番外魔王〟様の眷属の方ですね? あまり二人を焚き付けないでくださいね? ふふ」

「ニャ!? ニャぁぁぁぁ。はい、ごめんニャ。さ、さらばなのニャーーーー!」

 

 サンコはその笑顔の迫力に、ある()を重ね、尻尾の毛をボワッと盛大に逆立てると、脱兎の如く皆の所へ駆け逃げていった。

 

(あれはやばいニャ! (かあ)様と同じ匂いがするニャ。ふれたらダメな妖鬼(オニ)なのニャー!)

 

 母以外にサンコを恐れさせることが出来るシュナ、サンコの天敵がここに誕生する。

 

 そんな中、最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 ヴェルドラとツキハが大広場の真ん中に歩いていき、それにミリムも付いて行く。

 

 リムルは幹部達全員を引き連れて臨時会議室へと『空間転移』していき、住民達も安全確保の為街へと戻って行った。

 リムル達は臨時会議室に用意された椅子に座り、シュナやハルナ以下ゴブリナ達が飲み物などを用意する。

 

 そこへ、リムルが映像中継水晶球を長方形の会議机の真ん中に転がし止めると、大広場の立体映像が映し出された。

 

 そして、リグルドに案内されたコハクが臨時会議室にやって来て、上座に座るリムルの右側に座った。

 

「魔王リムルはん。あんさん、敵であるうちをこないなところに来させて、大丈夫なんどすか?」

 

 ぽやぽやと微笑みながら言うコハクにリムルは。

 

「ああ、俺はお前達を敵とは認識してないよ。警戒はさせてもらってるがね」

「ふふ。そうどすかぁ。まあ、うちは手出しはしまへんから、そこは安心しときや。眷属も邪魔にならんように大広場周辺で遊ばしてるさかい、安心やで? ふふっ」

「遊ばすねぇ、ククッ。ほんと、おもしろいヤツだな、〝番外魔王〟コハクさ、ん。様? えーと――」

「どっちでもよろし。好きに呼びなはれ。せやなぁ、敬称はいらんで? とりあえずうちらは敵おすから」

「そうか。なら、コハクでいいか? 俺の事もリムルと呼んでくれて構わないよ」

「へぇ、よろしおすえ。リムルはん」

 

 シュナとハルナ達が全員に紅茶を配り終えると、ヴェルドラとツキハが向かい合っており、ミリムが二人に何かを言っていた。

 

「よいな? 四日目の朝を迎えたらツキハの勝ちなのだ。四日目の朝を迎えられなかったらツキハの負けなのだ。なあ、やっぱりワタシもま――」

「「――ダメ」」

「ううー、わかったのだ。そうそう、ワタシが『結界』を張っているから、少々無茶はしても良いのだぞ? では、準備はよいか?」

「いつでも」

「うむ。始めるがよい」

「それでは、始めなのだ!!」

 

 ミリムが掛け声と共に、上げた右手を勢いよく振り下ろし、二人から距離を取る。

 右肩の上にはソフトボール大の映像中継水晶球が浮かんでいて、大広場の映像を中継していた。

 

 街中や、飲食店、宿屋にも中継映像水晶球が設置してあり、住民や魔国連邦(テンペスト)に来訪している冒険者、商人などが、各設置場所に群がっていた。

 

 

 静かに向き合うヴェルドラとツキハ。

 

「さて、ここ数百年の成果をみせようかね」

「ほう。それは、ぜひ見てみたいものだな」

「ねえ。ヴェルドラも魔王リムルの中にいて、ただ遊んでたとは違うんでしょ? そうだ! 始める合図として、せーのでさ、お互い一発同時に殴るとか、どう?」

「ク、クワハハハハ! 相変わらず面白い事を言うな、お前は。いいぞ、やろう!」

「決まりだね。ふふっ」

 

 そう言うと二人は、お互いのパンチが届く距離まで近づくと、ツキハが右拳を握りグッと後ろに引き、ヴェルドラも同じように右拳を握り後ろに引く。

 

 そして、フッと二人が笑みを交わした瞬間――

 

 ドッパァンーーーーッ!!

 

 轟音が大気を裂き鳴り響いた。

 

 ツキハの縦拳がヴェルドラの腹部に放たれ、またヴェルドラの右ストレートがツキハの顔面に放たれた。

 その凄まじいまでの拳の衝撃波は二人の身体を突き抜け、大地を幅百メートルの半すり鉢状に抉りながら走り、千メートル以上の抉れた線が二人の後方に描かれる。

 

 砂塵が渦巻き、もうもうと立ち込める土煙の中、二人は拳を突き出したまま立っていた。

 

「やっぱりヴェルドラは凄いねぇ。絶コロ拳打だったんだけど、効いてないとか? うくくっ」

「いやいや、お前も、また腕を上げたな。今のパンチは普通ならば、体ごと弾け飛んでるはずなのだぞ? クワハハハハ」

 

 リムルは初っ端から全力攻撃に近いパンチを放つ二人を見て、半ば苦笑い気味に言う。

 

「あれ、ミリムとヴェルドラが戦ってた時より凄くね?」

 

 その言葉にコハクが返す。

 

「リムルはん。あれは、ミリムが遊んでましたんや。それにヴェルドラはんが付き合ってただけで、ガチじゃあらしまへんかったからなぁ。ミリムとヴェルドラはんがガチでやりあったら、それこそ未曽有(みぞう)の大惨事になりますえ」

「え? そうなの?」

「せやで。でも今は、ミリムが『結界』を張ってますから、あの二人がガチでやりおうても、大丈夫どすえ。まあ、地形が多少変わるぐらいどすな」

「へ、へえー。ミリムの『結界』かぁ。凄いなミリム」

 

 リムルはコハクからミリムが『結界』を張ったと聞き、ギィみたいな『結界』だと思い、感心した。

 

 しかし、このミリムが張った『結界』の真の意味を、リムルは後に知る事となる。

 

 ――そう、いずれ来る大戦の中で、それも最悪な形で知る事と、なるのだ――

 

 

「ヴェルドラ、いくよ!」

「うむ。かかってこい、ツキハ!」

 

 

 ここに、魔国連邦(テンペスト)の命運を賭けた戦いの、火ぶたが切られる。

 

 

 

 

 

 




 66話を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!




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