忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。77話です






77話 テンペスト幹部会議+〝番外魔王〟《後編

 

 リムル達の会議は続く。

 

 

 テングの件はベニマルに任す事で決着し、ソウエイの街道沿いに稀に出没するAランク魔物の報告にベスターとカイジンから声が上がった。

 

「そうですね……でしたら、街道に対魔結界を施しては如何(いかが)でしょう?」

 

 と、ベスターから提案が上がる。

 

 その提案に待ってましたとばかりにカイジンが続く。

 

「旦那、完成したぜ。結界を発動させる、全自動魔法発動機の試作機がな!」

 

 にんまりと笑いながらカイジンが言った。

 

 カイジンが言うには、この全自動魔法発動機には魔素集積装置が組み込まれていて、大気中の魔素を低下させる効果があると言った。

 

 そこへ。

 

「ただし、この装置には問題点があるのですよ。ある程度の魔素がないと効率が悪すぎて、この装置は使えないのです」

 

 そうベスターが説明した。

 

「そこでだ、燃料となる魔素を補充できるよう設計しておいた。これで、結界の維持は〝魔晶石〟の交換でいけるはずだぜ、旦那――」

 

 カイジンがベスターの発言に付け加える。

 

 魔国連邦(テンペスト)近隣では魔素が尽きることは無い、しかし西側諸国に近付くにつれて魔素濃度は低下していく。

 

 こうなると、全自動魔法発動機による結界が街道全域に設置が出来ない。

 そこでカイジンが設計した燃料補給機構、〝魔晶石〟による補給である。

 

 〝魔晶石〟とは、大気中にある魔素が結晶化したものであるが、このままでは不安定でエネルギー効率が悪く使えない。

 

 通常なら〝魔石〟に加工して使用するのだが、この技術は自由組合の秘匿技術になっており、リムル達には作れなかった。

 

 しかし、リムル達には『智慧之王』が『大賢者』の頃に最適化した<刻印魔法>があった。

 これは、高価な〝魔石〟をおいそれとは購入できなかった時に、考案されたものである。

 

 カイジンは、この<刻印魔法>が無駄を極限まで減らして魔法を発動せるのに着目し、エネルギー効率の悪い〝魔晶石〟からでも十%の魔素を得られれば動くように設計したのだ。

 

 これの理論はベスターが考え、それを纏めたものをカイジンが設計して、二人が作り上げたもの。

 

 今でこそお互いを認め合い協力もし、日々研究の日々を送る二人。

 以前は、ドワルゴンで大臣をしていた、ベスター。

 かたや、ドワルゴンで鍛冶職人をしていたカイジン。

 

 リムルがまだ一介の魔物だった頃に、ゴブリンの村を牙狼族の襲撃から救った。

 そう、魔国連邦(テンペスト)始まりの村でもある、ゴブリンの村。

 この、ゴブリンの村を襲撃した牙狼族のボスの息子がランガであり、現在のリムルの配下でもある。

 

 そして、村を発展させる為にドワルゴンに資材調達に出かけた際にカイジンと出会った。

 

 その頃にカイジンと反目していたベスターの嫌がらせで捕縛され、裁判にかけられた時にいたのがガゼル王である。

 

 リムルは、ドワルゴンに着いた時にとある騒ぎを起こし留置場に入れられた。

 その時にドワルゴンにある鉱山に魔物が出て鉱山夫が負傷し、スライムのリムルが封印の洞窟でヒポクテ草を食べて体内で作成したポーションを譲った事が発端で、ガゼル王の目に止まっていた。

 

 このポーションこそ、ドワーフが完全再現を夢見て日夜研究していたもの――

 フルポーション(完全回復薬)であったのだ。

 

 裁判ではガゼル王がベスターの嘘を看破し、リムル達は無罪放免となる。

 この時にリムルが、カイジンに鍛冶職人として自分の村に来ないかと誘い、リムルのポーションで一命を取りとめたガルム、ドルド、ミルドの三兄弟もカイジンと一緒に来る事となった。

 

 裁判での虚偽によりベスターはガゼル王から大臣の職を解かれた。

 後に、色々あってリムルが建国をした時にガゼル王が訪れ、リムルの建国の後押しをして盟約を結んだ。

 

 それからしばらくして、再度リムルの国を訪れた時にベスターをリムルの国に放り込むように置いていったのである。

 

 ベスターも大臣職に就く前は腕のいい技術者であり、おいそれと国外に出していい人物ではなかったのだが、そのベスターに「ここで出直してこい」と豪快に笑い言い、ガゼル王は去っていたのだ

 

 盟約には、双方の技術交流と記されてもいたから問題はなかった。

 カイジンは技術職でガゼル王に仕えていた事もあった。その時に同じ技術職のベスターから、カイジンの持つ技術職の腕に嫉妬され、罠に嵌められ国の研究機関から追われた経緯があった。

 

 そんな事もありながらもカイジンは一切過去は口にせず、ベスターを受け入れた。 

 反目しながらもカイジンはベスターの技術者としての腕を認めていた。またベスターも、カイジンの技術者としての腕に嫉妬しながらも、その腕を認めてもいたのだ。

 

 そんな二人も今は和解し、研究に追われる毎日を過ごしている。

 カイジンは鍛冶職人をクロベエに任せて、今は好きな研究に没頭しているのだ。

 

 

 この全自動魔法発動機は、更に研究が進めば、無駄に放出される魔素を吸収して溜めて、また放出、そして吸収と、永久機関みたいな事も出来るのではないかとリムルは考えた。

 

(これは、更なる研究が進むのに期待だな!)

 

「わかった。とりあえず、街道の(およ)そ十キロごとに設置しよう。交番が二十キロごとにあるから、整備もそんなに手間は取らないだろう。それで、その魔法式の刻印は出来てるのか?」 

「ふっふっふっ、もうドルドの奴が完成させている。発動機の量産は、既にクロベエさんに頼んであるよ。後は、旦那の許可待ちさ――」

「――私が教育をしている者も育って来ていますので、私の講義の頻度も少なくなっています。その役目は是非とも私にお任せを!」

 

 カイジンがニヤリと笑いながら言い、ベスターがそれに続く。

 

「よし、明日から頼むベスター!」

「はい、お任せ下さい!」

 

 リムルの言葉にベスターは力強く答える。

 

 これで街道の安全は確保出来た、そうリムルが思っていると。

 

「クワーーッハハハハ! そうか、それが完成すれば、我も好き放題に妖気(オーラ)を解放できるのだな!」

 

 ヴェルドラがとんでもない事をサラリと言い放つ。

 

「できねえし、アホか! それをやったら、この国の大半の者が死んでしまうわ!!」

 

 流石のリムルも、ヴェルドラの爆弾発言に素でツッコミをいれてしまう。

 

 ベスターとカイジンは笑いが引きつり、顔がみるみるうちに青褪めていく。

 

「確かにまずいな。今の俺達なら耐えられるでしょうが、住民達は無理でしょうね。漏れ出る余剰妖気をツキハ様が吸収してくれてますが、常にいるわけでもないですしーー」

「そうですね。場所を変えても、ヴェルドラ様の御力ならば、何処かしら影響が出てしまいます。いくらツキハ様でも、広範囲に広がる濃い妖気の即時吸収は間に合わないと思います」

 

 ベニマルとシュナでさえ言いながら、顔色を変えていた。

 

 皆がツキハの方へ向くと、ツキハはむりむりといったように、眼前で右手を横に振る。

 

 ツキハとコハクは五千年もの間、ヴェルドラの濃い妖気を浴び続けて来ており、そしてツキハは、その妖気や溢れ出る魔素を好んで体内に吸収していた。

 

 ツキハ(いわ)く、〝ヴェルドラの妖気は心地いいんだよ~〟との事だった。

 それで、ヴェルドラがプチ妖気解放の際はツキハが側でそれを吸収していたのだ。

 

 しかし、一気に解放されると吸収が追い付かないと、ツキハの弁だった。

 

(まあ、そうだわな。封印された状態の漏れ出る魔素でさえ、殆どの者が近付く事が出来なかったんだよなぁ。そんなヴェルドラが好き放題に妖気を解放したら、この国は死人で溢れてしまうよな。でも、何とかはしないといけないしな――)

 

 リムルがそんな事を考えているところへ。

 

「だが、いや、しかしな……プチ解放でツキハが吸収してくれていても、我も妖気を抑え込んでいるのにそろそろ疲れてきてな……」

「我慢しなさい」

 

 自分の発言の言い訳をするヴェルドラに、リムルがピシャリと言う。

 

「……そもそもリムルにツキハとコハクよ、お前達は何故平気なのだ?」

「俺か? 『胃袋』に全部押し込んでるからな」

「なんとなく?」

「なんとなく? どすな」

 

 リムルが答えた後、ツキハとコハクは揃って首を傾げ言い、それにヴェルドラが(お前ら……)とジト目で二人を見ていた。

 

 リムルは魔王に進化した時に『胃袋』の容量が大幅に増加した為、妖気を解放したいとかそんな欲求には駆られなかったのだ。

 

 で、ツキハとコハクはというと、その答えはディアブロの言葉にあった。

 

「リムル様、ヴェルドラ様のように完璧に妖気を抑え込むというのは至難の業なのです。ベニマル殿達でさえ、僅かな妖気は漏れ出ているのですから」

 

 そうディアブロが言って来て、ヴェルドラが「我も頑張っているのだと、リムルにもっと言ってやれ!」と嬉しそうに頷き言う。

 

 そんなヴェルドラを見ながらディアブロは、リムルに説明していく。

 

「私達悪魔族(デーモン)は、妖気や魔力の扱いに()けた種族です。なので、妖気などの制御は完璧に行えるのです。そして、そこにいるツキハとコハクも同じく妖気と魔力の扱いに長けた種族なのです。ですので、現在のヴェルドラ様の妖気制御は百点満点に値しますでしょう。しかし、膨大な魔素量(エネルギー)を誇るヴェルドラ様、その制御は大変だろうと思われます」 

 

 そう説明したディアブロにリムルは、「ふむ」と腕を組み思案して。

 

「そうなのか? ヴェルドラ」

「うむ! そろそろどこかで、ドカンと発散させたいのだよ」

「わかったよ。それについては考えておくから、もう少し我慢してくれないか?」

「良かろう。ツキハにプチ解放で吸収してもらってるから余裕はまだあるが、なるべく早く頼むぞ!」 

 

 リムルは、とりあえずツキハが吸収してくれてる間に対策を考えようと決める。

 

 まさか、魔素濃度の問題が何とかなると思った矢先にこんな問題が出るとは思わず、リムルは軽く溜息を吐く。

 

 続くゲルドからの報告は、各方面に散った同族からの要望で新たにリムルに仕えたいという要望があり、それを労働力として自分の配下に入れたいと発言した。

 

 それについてはリムルが、その者達は一度魔国連邦に来てもらってから、教育して新たに配置すると告げる。

 リムルの言葉にゲルドは、自分が各村落を回って直接配下に引き入れた方が早いのではと進言したが、リムルはそれを却下した。

 

 まず今いる捕虜をゲルド自身がキッチリ鍛え上げろと言う。

 ゲルドがそれに困惑したような顔をすると、リムルがお前にはもっと上を目指してもらいたい、それには同族だけではなく、様々な種族を指導する事を学んで欲しいと言った。

 

 リムルの様々な種族の楽園を目指す事にも繋がると説明し、一枚の大きな紙を渡す。

 

「こ、これは……」

「ゲルド。この建設を、お前に任せたい。お前なら出来ると信じている。どうだ、引き受けてくれるか?」

 

 リムルから手渡された設計図。

 それは、ミリムの新たな領地に建てる巨大建造物の設計図だった。

 

 ゲルドはその設計図を持つ手が、喜びで震えているのに気付き――

 

「フッフフッフフフフ。リムル様、有り難う御座います。このゲルド、必ずやリムル様の期待に応えて見せましょう。是非ともオレにお任せください!」

「うむ、頼んだぞ!!」

 

 因みに、捕虜の中からルードネスに志願する者がいたら引き取ると、コハクが発言する。

 その言葉にリムルは、「わかった。候補者を募ってみよう」と、答えた。

 

 それからも様々な報告が続き、最後にディアブロの作戦の進捗(しんちょく)状況を聞くことになった。

 

 すると――

 

「じゃあ、もういいよね? ちょっと出かけて来る」

「駄目ですよ、ツキハ様」

「え? だって、もう――」

「駄目ですよ」

 

 ディアブロの報告になった途端、ツキハが席を立とうとすると、シュナが笑顔でツキハの横に来た。

 

「いや、もういいよね? ディアブロの報告はわかってるし――」

「ツキハ様、まだ会議は終わっては、いませんよ」

「いや、だって、もう飽きたし(なんだ? この笑顔の裏にある、えも知れないものは……過去の記憶にってか、アレだわ)」

「ツキハ様。最後の報告が終わるまでが、会議なのですよ」

「いや、あぁ……はい(うん、なんか、〝おっかあ()〟に言われてるみたいだわ……〝おっかあ〟怖かったなぁ。説教する時、微笑みながら怒るんだもん)」

「もう少しの辛抱ですから、我慢してくださいね。会議が終わったら、試作のロールケーキを御馳走します。フフ」

「わかった! 待つよ」

 

 遠く母の事を思い出しながら、またも食べ物に釣られるツキハ。

 

 それを見たリムルは。

 

(何かシュナ凄くね? あのツキハを会議に参加させるし、今もまた帰ろうとするツキハを難なく言い聞かせるし……。、うーん、そう言えばベニマルもたまに説教? されてるよなぁ。そうなんだよ、シュナって、怒ると恐いんだよな。あの静かな迫力は、〝番外魔王〟すらも圧倒? するか……うーん、俺も怒らせない様に気を付けよう)

 

 そう思い、一度やらかした事をしみじみと思い出す。

 外遊でドワルゴンにシュナ、シオン、ゴブタ達を連れて訪れた時。

 夜にこっそりと抜け出し、ゴブタ達とドワルゴンにある夜の店『夜の蝶』に遊びに行った帰り。

 出かける前にゴブゾウが、どこへ行くのか?とシュナに聞かれ、全てをバラしてしまう。

 そして、外で待っていたシュナとシオンに見つかり、プリプリ怒るシオンと、終始ほわほわと微笑むシュナに、平身低頭謝った事を……シオンより、シュナが一番怖かった、あの夜の事、を。

 

 そう、シュナは怒らせてはいけない子なのだ、と!

 

 ツキハが席に着いて大人しくなったなったところで、リムルが再度ディアブロに報告を促す。

 

「それでは、説明を始めます」

 

 恭しく一礼をすると、話し始めていくディアブロ。

 

 

 エドマリス王は退位して、弟のエドワルドに王位を譲った。

 弟のエドワルドは、ディアブロの目論見通りに反エドマリスにある貴族達を密かに集め始める。

 法外な戦争賠償金を払う意思もなく、戦争の責をエドマリスに押し付けるべく暗躍し始めたと。

 

 そして、そんなエドワルドの動きは――

 貴族、果ては王としての振舞や教育など受けていないヨウムの教育係を担っているとの事。

 更に、ヨウムに付く貴族達の選別も密かに行われていると、ディアブロは言う。

 

 これには、ルヴナンから仕入れた貴族達の裏情報を元に、自分が立案したとディアブロが説明する。

 その選定は、ミュウランが主にしているとも。

 

 ルヴナンから仕入れた裏情報は、家族、または本人しか知り得ない情報が含まれており、ディアブロが苦々しくも、この情報の正確性と裏の裏まで網羅されてる事に、どうやってここまでの情報を得たのかと、ツキハとコハクに問いただすも、ツキハの「教えるかアホ」と、コハクの「なに眠たいこと()うてますのや」と一蹴され、一触触発になり掛けるが、リムルの「お前ら、喧嘩はやめろ」の一言でディアブロが黙り、ツキハとコハクも大人しくなる。

 

 気を取り直してディアブロが説明を続ける中、リムルがある事を思い出す。

 

(そう言えば、ヒナタに送ったメッセージの返事が、まだ来ないよなぁ)

 

 そう思いながら、リムルはディアブロに問う。

 

「なあ、ディアブロ。西方聖教会から呼ばれたと言ってたレイヒムなんだが、俺のメッセージを渡したんだよな? 何かトラブルでもあったのか?」

「いえ、トラブルなどは御座いません。確かにレイヒムに水晶球を持たせて、イングラシア王国の首都までは手の者に護送させました。そこには定点転移用の『転移門』がありますので、神聖法皇国ルベリオスにある西方聖教会の本拠地まで間違いなく到着しているはずなのです……」

 

 ファルムス王国からイングラシア王国までの道程は、海岸沿いの道を通って馬車で約二週間程。

 そこから更に、神聖法皇国ルベリオスを目指すとなると、三週間はかかる。

 

 しかし、この世界には魔法が存在し、イングラシア王国と神聖法皇国ルベリオスの間には、『転移門』という特殊な魔法回廊が設置されていた。

 

 この『転移門』は特殊な次元回廊で作られていて、A地点からB地点、またはB地点からA地点までの行き来を一瞬で終わらせる事が出来るものだった。

 

 これは空間魔法の応用で、AからBまでの空間線を短縮して繋げる事で、門をくぐった瞬間に目的地に着くシステムであった。

 ただ、維持にそれなりの費用と高度な魔法術式に多大な魔素量(エネルギー)を必要とするので、大国じゃないと運用は難しかった。

 

 これをみると、万単位で軍隊を転送できるリムルの転送魔法は、西側諸国からすると驚異でしかなく、この事は魔国連邦(テンペスト)での秘匿(ひとく)すべき魔法術式に指定されていた。

 

 この事から、首都に入ったレイヒムはこの『転移門』を目指しており、極限られた者しか利用出来ない門を利用できる者であったことは間違いないだろう。

 

 それは、ディアブロが召喚した上位悪魔が陰から監視していたから。

 王都には結界が張られていて、上位悪魔が侵入すると察知され騒ぎになるので、レイヒムが王都に入ったのを確認して上位悪魔はディアブロに報告したと言う。

 

「そうか。まだ、王都からは出て来てないんだな?」

「はい。監視は続行させてますので、王都から出て来たら報告が入る手筈になっています」

「もしかして、コハク達が以前言ったように、口封じに暗殺されたとか?」

「いいえ、今のところそのような気配も動きもありません。なにより私のユニークスキル『誘惑者』は、支配した対象が死ねば魂を奪えますので、まだ生きています」

 

 リムルは、レイヒムが暗殺されたかも? の懸念をディアブロに尋ねたが、ディアブロはユニークスキルの説明をしてそれを否定した。

 

「うーん……。なら、西方聖教会がどう動くかはわからないな」

「はい。現状況で、私の作戦に介入して来る可能性などを(かんが)みても、現段階での判断は難しいかと。しかし、最大限の警戒を持って対処する所存です」

「うむ……しかし厄介だよな。情報が少なすぎて、状況が正確に読み取れない……(情報が揃ってれば、智慧之王先生に全てお任せ出来るんだがなぁ)」

 

 リムルの呟きにソウエイが頭を下げながら。

 

「申し訳ありません、リムル様。ルベリオスの潜入は流石に危険が大きくて――」

「いやいや、そこはいいって! 無理してルベリオスに気付かれても大変だし、それにそんな無理は(ろく)な事にならないさ」

 

 ソウエイが悔しそうに言うのをリムルが宥めていると。

 

「!? そう言えば、ルベリオスの外で監視していたサイカが、コハク様たちの眷属のイチオ殿を見かけたとか――」

 

 ソウエイの言葉に、リムル以下幹部達の目が一斉にツキハとコハクに向いた。

 

 ツキハは椅子にもたれ掛かったまま〝爆睡(低位活動状態)〟していて、いつの間にかツキハの横に小さい椅子を用意してもらったサンコも同じように〝爆睡〟していた。

 

(ククッ、ほんといい度胸だなツキハは。それにサンコも、ツキハの妹みたいだな。全く、面白いというか、何だかなぁ。それにコハクは、クククク)

 

 苦笑い気味に三人を見るリムル。

 

 そして、コハクは――

 にこやかに、右手を差し出していた。

 

「コハク様、ここは契約にある通り、情報提供の御協力をお願いで――」

「駄目ですよ、ソウエイ」

 

 コハクがにこやかに料金かかりますでと、無言の要求に、ソウエイがここは無償で協力をと言いかけた時にシュナが待ったをかける。

 

「ソウエイ。傭兵契約、第三条第一項に記されている、過度の情報提供要請にはペナルティが科せられると記されています。コハク様が無言なのは、そのペナルティを狙っているのですよ。フフフ」

 

 シュナが同じようにコハクに向かって微笑み返して言う。

 

「よく把握してますやないか。ほんまにシュナは、油断ならん()やなぁ。どや? 暇な時で良いから、うちの所で臨時秘書やらへんか? 報酬は弾みますえ。ふふふ」

「あら、それでは、その報酬に重要度が高い情報を頂けますのでしょうか? フフッ」

「ほんまに抜け目のない()やで、シュナは。それは、要相談やな、ほな、後で話ししましょかぁ」

「はい、コハク様」

 

 微笑みながら視線を交わすシュナとコハク。

 

(えぇー。あのびっしり書かれた契約内容を、全て覚えてるのかシュナは……。うーん、俺なんか余りにも書かれた項目が多くて智慧之王先生に丸投げしたからな)

《告。個体名:シュナは、全ての契約内容を把握しています。あの契約内容の量は、意図的にこちらのミスリードを狙った内容も含まれており、そのミスリードを回避対応した応答だと》

『え? そうなのか。流石〝番外魔王〟らしくも魔物らしいと言うか、完全に人間の頃の経験も入っているような、コレ』

《解。その解釈で間違いないと断定します》

『過度を、どこまで過度かは、コハクとツキハの(さじ)加減という事か』

《是》

『なるほどなぁ。これはシュナに感謝だな!』

 

 シュナのファインプレイにリムルが感心しているとコハクが口を開く。

 

「仕方ありまへんな。まあ、今回はサービスでよろしおす。レイヒムは、ちゃんと西方聖教会に行ってますえ。しかもや、西方聖教会内部の重要会議に呼び出されてるで」

 

 コハクの発言に皆が驚き、視線がコハクに釘付けになる。

 

「な!? どうやってそこまでの内部情報を……。コハク様、その情報をどうやって――」

「――そこまでや、ソウエイ」

 

 コハクの情報に驚愕したソウエイが思わず、その情報を得た手段を尋ねてしまう。

 それをコハクが遮り、組んだ足の膝上に両手を組み、にこやかに言い放つ。

 

「それ以上ルヴナンの秘密に立ち入ると、マジにペナルティを科しますで?」

「あ、いえ、申し訳ありませんでした。ルヴナンの秘密に立ち入ろうとした事を、お許しください」

「ふふっ。そんなに落ち込まないでええんやで。わかればよろし。ほんまリムルの配下は、ええ子達ばかりどすなぁ。うちのスカタン共と変えて欲しいわ」

 

 そう言いながら、爆睡するツキハとサンコに目を落とし、軽く溜息を付くコハク。

 

「せやな、ええ機会やから、ここで()うときますか。契約内容には、うちらの自由を妨げない事と、過度の協力要請はご法度やと記されとる。あんさんらの危機には、必ずうちらの最強戦力を出しますけどな、それ以外はうちらの(さじ)加減なんやで。まあ、だからといって、法外な報酬を要求したりはしまへん。それも契約内容に記されとる。ええか? 情報収集に関する手段は、うちらに取って極秘中の極秘や。これに触れる者は、例外なく魂を、狩り取りますで」

 

 最後の方をゆっくりと言いながら、コハクの目が鋭利に細められ、微かに殺気を漏らす。

 その殺気とも言えぬ異様な殺気に、リムル、ヴェルドラとディアブロ以外の幹部の背中を薄ら寒い何かがヒヤリと撫で上げていった。

 

「わかった、コハク。情報収集の手段については、こちらも一切触れない。それにお前達と眷属の自由についても、この俺が保証してるし。この国で殺しと棒弱無人な振舞をしない限り、俺は問題ないよ」

「へぇ、おおきに。それでな、あの小娘(ヒナタ)が動くのは――」

 

 ここでコハクが言葉を区切り、皆が次の言葉を緊張しながら待つ。

 

「一ヶ月過ぎた辺りやろな。正確にはわかりまへんが、まる一ヶ月は準備やらなんやらで動けんみたいやで(まあ、あの水晶球の事までは言わんでも、リムルなら予測が付きますやろ。気張りや、魔王リムル。うふふ)」

「!? そうなのか?」

「せやで。まあ、うちらが掴んでるのはここまでやな。まだ情報が入る()うなら、後は料金が発生しますで?」

「いや、ありがとう。有意義な情報だよ! コハク」

「へぇ」

 

 西方聖教会がで一番厄介なヒナタが、一ヶ月以上は動かない事が判りリムルは、引き続きソウエイに交代で神聖法皇国ルベリオスの監視を行う事を命じ、その監視に番外魔王眷属のイチオも協力するとコハクが言い、テンペスト側とルヴナンの合同監視が決定した。

 

 この提案にソウエイが喜んだのは言うまでもない。

 恐らく、イチオを通してルヴナンの情報収集の一端を学ぼうと思っての事だろう。

 

 これがコハクが油断らないと言った理由であり、他の魔物と一線を画すリムルの配下たる所以である。

 

 テンペストとルヴナンの組み合わせは他国にとって脅威以上の物であり、ある意味ヴェルドラ以上の危機感をこの国に向ける国もいた。

 

 これからの西側諸国の出方次第で、各国がこの世界で生き残れるか否かを決めると言っても過言ではないかも知れない。

 

 

 そして、西方聖教会が動いた時の対策を話し合い、その中でシュナが「クレイマンが言っていた黒幕の事が気になります」と言い、〝あの方〟についての議論が始まった。

 

 様々な意見が出される中、リムルが〝あの方〟について何か心当たりがないかとコハクに尋ねるも。

 

 

「うーん……。流石にそこまでは、掴んでませんなぁ」

 

 と、腕を組んだまま静かに答え、リムルはそれを信じ「そうか、何かわかったら教えてくれと」と言い、ディアブロなどと、意見を交わしていった。

 

 コハクの嘘を見破れなかったリムルだが、智慧之王は今までの情報を纏めながら、コハクが嘘を吐いてる確率が四十%の確率であると告げるも、リムルは『俺はアイツらを信じるし。何かあれば教えてくれと言ったんだから、それでいいじゃないか』と、この事はそれ以上追及はしなかった。

 

 

 〝あの方〟

 

 リムルは、ヒナタがそいつらに関与して動くのは間違いないが、何か腑に落ちないというか、違和感というかと、納得できない様に首を傾げる。

 ディアブロもツキハとコハクが示唆した第三の勢力については、独自の調査で予測していて、コハクにその第三勢力に当たる組織とかはないか? またはそれに準ずる者はいなかいかなど聞きながら、ふと、もしかしてルヴナンが裏で動いているのではと、勘繰るディアブロ。

 

 だがしかし、その考えは直ぐに否定された。

 

 コハクとツキハが、人間を巧妙に利用して国を潰すなどはやらないと、知っていたからだ。

 あくまでも、傭兵や情報などを売って大金を稼いでいる。

 

 何よりも、そんな面倒な事を二人が、いやツキハがやらない事は百も承知。

 

(フッ。本当に何千年経とうとも、変わらないのですね貴女達は。必要な情報を小出しにしながら、横から張り倒していく、でしたか。しかし、今回はそんな事は企んではいないみたいですね、むしろ、この状況を楽しんでいる。そんな所ですか。忌々しい事に、リムル様以上に人間の事には熟知している。特に、人間の持つ闇の部分には、殊の外詳しい……というより、その闇の部分が貴女達の本質なのかも知れませんね。クフフフフフ、面白い、実に面白いですよ、番外魔王の二人は。クフフフ)

 

 内心そう呟きながら、微かに口端に笑みを浮かべるディアブロ。

 

 そして、リムルが自分の考えを口にする。

 

「なあ、ヒナタってさ、自分の意思ではなく、誰かに頼まれたとか命じられれて俺を、狙ったのかな?」

 

 何気に皆に問うリムル。

 

「どういう意味です、リムル様?」

「リムル様を狙ったタイミングから考察しても、ヒナタと〝あの方〟が繋がってるの明白ではありませんか?」

 

 皆が困惑し、ベニマルの声にシュナが続いて発言する。

 

(それ、それなんだよなぁ……何か違和感があるんだよな)

 

「あぁ、ぶっちゃけて言うとさ、ヒナタが誰かに命じられて動くなんて思えないんだけど、どう思う? そうだな、仮にさ、〝あの方〟と繋がってるとして、その命令に従うと思うか?」

「「「「「――ッ!?」」」」」

 

 これがリムルの違和感であり、引っ掛かりであった。

 

(俺の言う事も全く聞かなかったあの頑固女が、誰かの頼みを、ましてや命令など聞くとは思えないんだよな)

 

 その考えに付け足すようにカイジンが声を上げる。

 

「全くその通りだな。聖騎士団長のヒナタが、誰かの命令で動くなんてありえんよ。あの麗人が言う事聞く相手は、神ルミナスだけだ。あの女にな、法皇ですら口出し出来ないってのは、誰もが知る有名な話なんだぜ?」

「そうか、そうだよな、やっぱりそうだろ? ヒナタのやつ、全く人の話しを聞かなかったからな。誰かの命令で動くなんて考えられないだろ。と、いう事は、ヒナタさえ説得出来れば、西方聖教会と争わなくてよくなる、か?」

 

 ヒナタの行動に察しが付いていくリムル。

 

「では、言葉巧みに利用したという線も、考えられますね」

 

 ディアブロが悪魔らしい考えでポソリと呟く。

 

 その呟きに、何故か皆がコハクの方へ視線を向けてしまう。

 

「なんえ? いくらうちらでも、あの〝小娘(ヒナタ)〟を(そそのか)すとか出来まへんで。()うとくけどな、うちとツキハは西方聖教会絡みで、三度討伐隊を差し向けられとるんや。しかも、三度目の討伐には、あの小娘(ヒナタ)が来よったんやで。あんま、しょうもない疑いをかけると、シバキますえ!」

 

 討伐隊を差し向けられていた事に皆が驚き、コハクがあからさまに怒気を込めた妖気を漏らしたので、皆視線を逸らしてしまう。

 

 暫しの沈黙の後、リムルが口を開いた。

 

「まあ、ディアブロが言うように、コハクではない誰かに――」

「――あ゛あ゛?」

「おっと、スマン。コホン。その、誰かに唆された可能性は捨て切れない。勿論、〝あの方〟とやらと繋がりがあるのかも知れない。だがな――」

「だとすれば、その者がヒナタに命令できたとは思えない、という事ですね」

「その通りだ、ディアブロ」

 

 ディアブロの言葉に頷くリムル。

 

 未だにジト目で睨むコハクにリムルは何か言おうとすると、シュナがコハクの横に立ち、何か耳打ちをしていた。

 すると、コハクが急にニコニコ顔になり、シュナが笑顔で自分の席に戻っていった。

 

(うーん、シュナが何を言ったかわからないけど、こういう時には、ほんと頼りになるな)

 

 心の内でシュナに感謝するリムルであった。

 

 そして、リムルは軽く『思考加速』をかけながら、思案を始めていく。

 

(あれなんだよなぁ。俺が送ったメッセージでは、敵対しないとハッキリ告げたんだけどなぁ。それを無視してでも、災禍級(ディザスター)たる俺と、天災級(カタストロフ)であるヴェルドラと、コハクとツキハがいる魔国連邦(テンペスト)に敵対する程、馬鹿ではないだろうし……。損得勘定入れても、ヒナタには何もメリットがない。仮に勝利出来たとしても、余りにも失うものが多過ぎる。いくら人の話しを聞かないヒナタでも、それくらいはわかるはずだ、が……)

 

 リムルはどこか不安とも疑問とも付かない考えに、頭を捻っていると。

 

「うむー。神ルミナス……ルミナス、ルミナス、だと? うぬー、我もどこかで聞いた事がある気がするのだが……」

 

 隣でブツブツと呟くヴェルドラにリムルが(うるさ)いなと、注意しようとヴェルドラに顏を向けようとした時に、ヴェルドラを見るコハクの顔が目に入り、一瞬コハクの顔が呆れてるように見えて、(ん?)と思うも、さっきから気になる事が頭の中を占拠し、その事に気を取られてしまう。

 

「ヒナタは、俺達が、この国が邪魔だと言った。それはルミナス教の教義が、魔物との共存を認めてはないからだ。じゃあ何で、俺達が邪魔だと思ったんだ?」

 

 リムルが何気に口に出した言葉に皆が考えこむと、そこへコハクの一言が飛んだ。

 

「なあ、あんさんら。〝あの方〟が一人だと断定してるんや、ないやろな?」

 

「「「「「!?――」」」」」

 

 この一言に――

 

《告。様々な思惑が関与している可能性が高まりました。一連の事象は、全て関連しています。個体名:コハクが言う通り、全てが一つの意思の下に起きてはいないと推測されます》

『えーと、つまり……』

《解。これらに関与している人物、国家、情勢、その他の要因。それらを鑑みれば、幾つかの目的に分類され辿り着きます。その利害は一見すると、一致してるように見えますが、矛盾も(はら)んでいます。個体名:コハクが指示した言葉を考察すれば、全てを一人の黒幕の意思に統一するのは不自然でしょう》

『黒幕は、一人ではないか……。そうだな、言われてみれば基本だったな、コレは。〝あの方〟、この一人称に囚われ過ぎたな』

《告。個体名:コハクは、この黒幕達の一部に触れている可能性があります》

『それは、黒幕達の情報の一部を既に掴んでいると?』

《その通りです》

『うーん、まさか、本当に黒幕達の横から張り倒すとか、するのか?』

《その可能性はありません》

『え? なんで?』

《個体名:コハクは嘘を吐きながらも、一つまみの真実を織り交ぜ、主様(マスター)達を、有利な方向に導いています》

『ええ!? 何でそんな遠回りになるような事を、するんだ?』

《……これは、現状況を楽しんでいると推測します》

『楽しむだって?』

《是。番外魔王の二人は、興味から楽しんでいると》

『クッ、ククク。そうか、楽しんでるのか。少し腹が立つけど、アイツらは元人間でも、本当に魔物なんだな。そうだった、俺と同じ転生者でもあの二人は戦乱の世で生きて来た忍び、か。フフッ、俺以上に魔王じゃないか。ハハハハッ』

主様(マスター)主様(マスター)です。番外魔王とは違います》

『ん? 智慧之王(ラファエル)さん?』

《……》

『えーと、怒ってる?』

《……》

 

 最後の方で智慧之王が、毎度のだんまりを決め込んだことで、この会話は終わりを告げた。

 

 リムルは気を取り直して、とりあえず今までの情報を纏めてみる。

 

(クレイマンは、俺達が邪魔だった。とすると、それを利用して、ヒナタと俺が潰し合うのを歓迎していたはず。クレイマンの思惑と〝あの方〟の思惑は繋がっている。そこに、利害が一致する何者かが絡んでくる……それも、多分一人ではない。複数の思惑が絡み合い、そこにヒナタが巻き込まれた、と。そう、見るべきかな。いや、違うな。ヒナタはヒナタで、恐らく自分の意思で俺を狙ってきた。それは多分、シズさんを俺が殺して食ったと、何者かに聞かされた、から……)

 

 『思考加速』をかけながら、思案を巡らせるリムル。

 

(コハクの言った事は、正解だ。ふーむ、ヒナタは偽情報に踊らされたと見た方が正解かな。だから、次に動く時は、万全の準備をしてくるだろうな。ただ一つ、気がかりなのは、レイヒムが持っていった水晶球に録画した俺のメッセージが、正しく伝わっているか、だが……。最悪な展開も想定しないと、いけないな。黒幕は、一人ではない。厄介を通り越して、マジにヤバイ奴が裏にいるな。しかしだ、その黒幕達も、取り巻く状況が変わって、クレイマンが死んで激減した戦力の立て直しに忙しいはずだよな。今まで裏に隠れていた奴が、今更表には出てこないだろうしな。それに、ルヴナンが動いてるのは向こうもわかってるはずだから、余計に動きはないといっていいかもな)

 

 複雑に絡む糸を解き解くようにリムルは、思案を重ねていく。 

 

(エドマリス王は、こちらの思惑通りに退位して、その野望は潰えた。新王が既に動き出しているようだから、俺達に敵意を向けて来る者も出てくるだろう。新王にとっては俺達が邪魔だ……そうすると、俺達を排除しようと動く可能性も高い。そこに何者かが、必ず絡んでくるはず。レイヒムが、未だに帰ってこないのも、あまりにもキナ臭すぎる。もしかすると、内部はかなり混乱してるかもな。そもそも、ヒナタがどこかで迷っている可能性は、ないのか? それでもヒナタが動くならば、そう動かざる得ない状況に追い込まれたと、いう事になるよな)

《告。忘れてはならないのが、個体名:コハクが言った、背後に複数名いる可能性が、高いという事です》

『そうだな。黒幕が複数名いたら、ヒナタの意思に関係なく事態が動くだろうな』

 

 リムルは『思考加速』を解除すると、今回も楽観視は出来ないと結論付ける。

 

「複数の利害が絡み合うこの状況、ヒナタの意思だけで決定されてはいないと、考えるべきでしょうか?」

 

 リムルが結論を出したと同時に、ディアブロがリムルと同じ結論に辿り着く。

 

「流石だな、ディアブロ。今俺も、そう言おうと思っていたところだ」

 

(まあ、コハクの一言と、智慧之王(ラファエル)先生に助けてもらったんだけどな。ま、いいよな) 

 

「では今回も、西方聖教会の介入を警戒すると致しましょう。クフフフ」

 

 ディアブロは笑いながらリムルに告げた。

 

 リムルは皆に今回の事も踏まえて、忠告を入れる。

 

「俺達は、勘違いをしていたのかもな」と言い始め、今回は様々な思惑が絡み合った結果、このような事態になったんだと言った。

 

 幹部達の視線がリムルに集中する。

 

 そんな緊迫した雰囲気の中――

 

「「うがっ、くふうーー。あがっ、うにゃ、にゃぁ……」」 

 

 爆睡していたツキハとサンコが寝言のように声を出し、いきなり右足を上げて、ババババッと、何かを蹴る仕草をしていた。

 

「はあ? 何してるんだ、あの二人。寝ぼけてる、寝言か? 猫キックか?」

《告。低位活動状態の中、記憶のフラッシュバックで疑似的に夢をみているのかと、推測します》

『はあ!? 疑似的に夢を見ているのか? 何て器用な事するんだ、あの二人は……。あぁ! 確かヴェルドラが言ってたな。意識的に低位活動状態を起こして、ツキハとコハクに眷属達は疑似睡眠状態を作り出すって。無駄に芸が細かいな、オイ!!』

 

 内心ながら、流石に突っ込みを入れざる得ないリムルであった。

 

 そして、同じように爆睡するゴブタを見たリムルは、後でお仕置き決定を下す。

 

 ディアブロの作戦の段取りを確認しつつ、再度作戦を煮詰め直してると、ディアブロがエドマリス王に情報をもたらしたのが商人だったと告げる。

 

(商人か……。古今東西、悪意を張り巡らせ暗躍するのは、人の欲望……。フッ、そうなると、商人も十分警戒対象になるじゃないか。金で武力は――買える!) 

 

 リムルは椅子から立ち上がると、皆をゆっくりと見回していき、一人一人に声をかけていく。

 

「シュナ、クレイマンの城から回収した帳簿を調べて、どのような商人が出入りしていたかを洗い出してくれ」

「承知しました」

「ディアブロ、お前もファルムス王国の文官を締め上げて、取引先の商人全てを聞き出せ」

「心得ました、我が親愛なる王よ」

「ベニマル、ヨウムに送る援軍は一度却下だ、厳選し直せ。如何なる状況にも対応できるようにな」

「はい、お任せを」

「リグルド、お前はこの街を頼むぞ。派手に祭りを開催するから、その準備をしっかりと頼む」

「はっ! リムル様。言われるまでもありませんぞ!」

「ゲルド、お前はこちらの事を心配せずに、全力で自分の仕事に励んでくれ。本当に困ったら、お前を頼るからな、俺を信じて頑張ってくれ!」

「無論です、リムル様。リムル様を疑う者など、この国には誰一人おりません」

「ハクロウ、ベニマルの補佐を頼む。ガビルはリグルドに協力だ。リグルは、各種族の来訪に備えて、警備体制の見直しと、警備人員の再配置を行え!」

「お任せ下され」

「承知しましたぞ、リムル様!!」

「任せて下さい!」

「ソウエイ、イチオと打ち合わせ後、直ぐにルベリオスの監視体制に移れ!」

「御意」

「で、シオンは、っと、あれだ! 俺の護衛だ!」

「はい、リムル様!!!」

 

 各個人への仕事の割り振りも決まり、リムルはランガの頭を撫でつつ、満足気に頷く。

 

「我は?」

「ああ、ヴェルドラは皆の邪魔をしないように。いいね?」

「うむ、任せるが良いぞ!」 

 

 不安だとなと思いながらリムルは、(俺がしっかり見張るとしよう)そう心に決める。

 

「それと、コハク。出来たら西側諸国の動きを探って欲しい。もし、重要な情報が手に入ったら言い値で買う。後、その二人を、ああ何だ、頼む」

「へぇ、出来るだけ注意して探ってみますえ。それと、このスカタン二人はキツイお灸をすえますから、任せなはれ。うふふ」

「ああ、頼むよ。ククッ」

 

 そう答えるとコハクは、ツキハとサンコを叩き起こし。

 

「帰るで、ツキハ、サンコ」

「え? あぁ、終わったのか。うーーん、シュナにロールケーキを御馳走してもらうかぁ」

「ニャ、ニャぁー。終わったのニャ? ご飯を食べに行くのニャ!」

「何言ってんのや。二人共、支店に来なはれ」

「「え? 何で?」」

「ええから、早よしや!」

「「は、はい」」

 

 寝ぼけ(まなこ)の二人は、コハクの迫力に押されてルヴナン支店へと連行されていった。

 暫くして、コハクのお灸という〝OHANASI〟に、ツキハとサンコの謝る声がルヴナン支店に木霊(こだま)したのは、言うまでもない。

 

 

 「さてと、ゴブタ君。お疲れのようだが、君は俺の執務室に来なさい。ツキハとサンコも爆睡した罪で、コハクに〝OHANASI〟を喰らうみたいだからね」

「ぴ、ぴゃ!?」

 

 眠りこけているゴブタを起こし、リムルはにっこりと笑いながらそう言ったのだった。

 

 

 こうして、リムルが魔王になってからの初幹部会が、ここに終了する。 

 

 

 

 




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