忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。八話です






8話 ラプラスのお使い(ワイの気苦労は誰が癒してくれるんや!

 

 

 ポカポカと暖かい日差しに白い花弁(ハナビラ)が柔らかい風に舞い散る、暖かな日差しが降り注ぐ昼下がり。

 

 花吹雪。

 

 桜に似た樹が生い茂る小高い丘で、二人の猫種亜人の少女が一際大きい木の根元に腰を下ろし酒盛りをしていた。

 

 その酒盛りをしてる亜人は、ツキハとコハクである。

 

 ツキハは胡坐(あぐら)をかいて座り、ひようたんに似た水筒みたいなものを時折口にし、中の液体を飲んでは「ぷはぁ~」っと軽く息を吐き、舞い散る花弁(ハナビラ)を眺めていた。

 

 その傍らに女の子座りで寄り添うように座る、コハクがいた。

 その右手には、ツキハの持つひょうたん型水筒より一回り小さい同じ物が握られており、クピリクピリと飲んでいた。

 

 ひょうたん型水筒。

 

 それは、コハクが〝権能・幻想造〟で作り出した物。

 ツキハの持つひょうたん型水筒は、湯を入れる1ℓポットを、ひょうたんにした位の大きさであった。

 その機能は優れもので、中は空間収納型で、三層構造になっていて。

 収納層を切り替える時は、魔力を少し込めて、一層目ならコンと一つ叩き、二層目なら二つ叩くのである。因みに収納容量は、各層ごとに酒樽千個は軽く入る容量を持っていた。

 

 ひょうたん型水筒――〝酒樽君〟、ツキハはこう呼び、愛用していた。

 で、その中身はと言うと、入手困難な酒が入っており、二人はそれを堪能していたのだ。

 

 二人の前には大きめのバスケットが置かれていて、中には肉串や、サンドイッチ、シュークリームと言うお菓子などが詰められていた。それを花見と称して酒と上手い食べ物を楽しんでいる、ツキハとコハク。

 

 小高い丘の眼下には、遠く魔国連邦、テンペストが見えていた。

 

「しかし……この酒――まじ美味いよねぇ」

「どすなぁ。この高いアルコール度数、仄かに香る林檎の匂いと微かな甘み。絶品どすな」

「これ、あの魔国連邦を治めてるスライムが作ったとは、思えないよねぇ」

「ほんま、なにもんおすかねぇ。イチコ、ニコ、サンコをあそこに潜り込ませてますけど、中々に正体が掴めませんなぁ。なんやら今は、イングラシア王国で、子供達の先生をやってるらしいで」

「へえーそうなんだ。そう言えば、イングラシアはイチオが仕切ってるの?」

「へぇ。イチコが、もう息子に任せたと言ってましたわ」

「なるほどねぇ。しかし、あの魔国連邦――諜報に長けた魔物がいるよね」

 

 そう言ったツキハは、クピリと一口〝酒樽君〟から酒を飲み、一瞬目を鋭く細める。

 

「せやなぁ。イチコが言ってましたわ、影を操る魔物がいてはるみたいですえ」

「ふーん……影使いかぁ。ちと厄介だねぇ」

 

 バスケットから肉串を取り出し、肉の塊を一切れグィッと引き抜き、美味そうに噛み締めて酒を呷るツキハ。

 

「しかし、あの魔国――何か引っ掛かるんだよねぇ。あの洞窟から、ヴェルドラが消えた日。そして、ゴブリンたちを束ね、鬼人、オークも従えたスライムの魔物。最弱の魔物のスライムに、そんな力があるのか?……どうにも眉唾だったんだけど――オークロードを喰っちまいやがったからなぁ。ゲルミュッドのスカタンもしくじったし、ミリムたちの遊びも、別の段階にいったみたいだからな」

「そうどすな~。ヴェルドラはんが消えた時には、あんさんがいつブチ切れるか――ひやひやもんどしたえ」

「うん、まあ、実際切れかけたんだけども、〝竜種〟は不変の存在だもの。絶対に死なないし、多分消えてもいない。洞窟からヴェルドラが消えたと同時に、あのスライムが出現してるからね。スライムの魔物リムル……あいつがどうやって名を得たかはわからないけど、多分相当力を持った魔物から――名を貰ってるはずだよ」

「ニコとサンコが言ってましたえ。あの洞窟は今、あのスライムが管理してはるらしいで。しかも、警備が厳重過ぎるくらい、結界が張られてるらしいおすえ」

「ふーん。まあ、あいつが何かしら、ヴェルドラが消えた件に関わってるのは間違いないから。もし、ヴェルドラに何かしてたら、あいつを殺すよ。配下共々、皆殺しだね」

 

 ふーっとツキハの顔から表情が抜け、殺意に満ちた凍てつくような顔を覗かせた。

 

 ザァーッと音を立て樹々の枝葉が揺れ、花弁(ハナビラ)をまき散らす。

 

 舞い踊る花弁(ハナビラ)が一瞬不規則に乱れ、また舞い踊る。

 

「だれや?」

 

 その一瞬の乱れを見逃さず、コハクが殺気を込めた言葉をゆっくりと、言う。

 

 ツキハの左横から気配を完璧に消して忍び寄った、それは――。

 

「いやあ、かなわんなあ。姐さん方、冗談やがな」

「はぁっ、ラプラスやないですか。あんさん、冗談も程々にしときなはれ。うちが声を掛けなんだら、斬り殺されてますえ?」

 

 ラプラスは淡々と言い放ったコハクの言葉に、ふとツキハの手元を見ると――。

 胡坐をかいたまま左手にはいつの間にか妖刀・時雨を握っており、更に鯉口を切り右手は柄を握っていた。

 

 ラプラスの背中に暖かい陽気なのに、冷やりとした感覚が走る。 

 

(マジかいな……いつの間に剣なんて出したんや? ワイ死ぬとこやったんか? 『詐欺師(アザムクモノ)』までつこうとるのに……間合いが、読めへんやんけ! しかし、姐さんら既に魔国へ来てたとは、抜けめがないでんなぁ。でも、さっきの感じた殺意は、尋常じゃあらへんな。ツキハ姐さん、マジもんに怖い魔物やで)

 

 呑気に酒盛りしてる二人を見て、気配を消して近づいて脅かしたろと、悪戯心で近づいたのだが。

 

(ところで、気配は完璧に消してたはずやのに……なんでわかったんや?)

 

 察知された事を内心疑問に思ってると、そこへ。

 

「あんさん、気配は消すだけじゃあかんで。完璧に消しても、大気やらなんやら動くんや。もっと、精進せなあきまへんな。ふふ」

 

 ラプラスの疑問をさらりと口にしたコハクに、苦笑い気味に返す。

 

「そうでっかぁ。ワイも、まだまだと言うことでっしゃろか?」

「子供やおへんのに。後は、自分で考えなはれ」

「は、はあっー そうでんなぁ(くうっー 相変わらずめっちゃはらたつ姐さんやな!)」

 

 ラプラスは内で毒づきながらも、さっさと用件を終わらして帰ろうと、用件を切り出していく。

 

「早速なんやけど。依頼や」

「へえー 少年? それか女装趣味(・ ・ ・ ・)の、会長か? くく」

「なっ!? (なんでや? 会長の復活はワイらだけしか、知らへんでえ……なんやねん! 姐さんらの情報収集能力は!? どこや?……どこで、バレたんや?……わからへんやんけー!)」

 

 不敵な笑みを微かに浮かべ、言い放ったツキハの言葉。

 

 態度には出さないが、内では焦りまくりで、必死にカザリームが復活した情報が漏れた原因を探り思考を巡らせるが、一向に検討が付かなかった。

 

 それもそのはずである。

 

 ラプラスがある一件で西方聖教会に潜入して帰って来た時に、知った事なのだが。

 カザリームの復活を知った時その部屋には、少年とカザリームとラプラスしかいなかったのである。

 

 ただ、部屋の窓の外で一匹の魔猫が――昼寝をしていたのだ。

 

 結論が出なかったラプラスはとりあえずその疑問は飲み込み。

 気を取り直して、再度二人に告げる。 

 

「いや。依頼の主は、クレイマンや。正規だと、三カ月待たなあかん言うから、ワイが来たんやで」

「待つ? なに眠たいこと言いますのや、ラプラス。この間、ちっこいのと、デブいのを寄越してからに。挙句の果てに、ドワーフ金貨での支払いを、古代金貨で支払おうとした、事。わすれたんか?」

「いや、だからあの時は、こっちの手違いって、言いましたやん! ティアとフットマンが金庫にある金貨が入った箱を間違ったって、言いましたやんか!」

「ほな、その後に――ちっこいのとデブいのが、うちらを挑発したんは、なんどすか? 今度は、マジにぶっ殺しますえ!」

「ちょっ、まってーな。今更、あの事を蒸し返すのは勘弁してんか、姐さん。きちんと謝罪しましたやないか!」

「はぁ~ まあ、よろしおす。それとな、三カ月順番待ちは間違いどすえ。あの時のペナルティで、三カ月出禁にしただけや。間違えんとき!」

「はあ!? (クレイマン……話が違うで! 思い切り出禁にされてますやん!)」

 

 更に内心毒づくラプラス。

 とりあえず、その他諸々を脇に放り捨て、ラプラスは疲れた様に続けた。

 

「話を戻しますけど。今回の依頼は、あの魔国の件なんや」

「ほぉー どうしたいんだ、クレイマンは?」

「詳しい事は、居城にてっちゅうことや」

「なあ、ラプラス。出禁言うたの聞こえませんでしたか? あんま、舐めてると、いわしますえ?」

「だから、ちょーまってーな! ええかコハク姐さん、今回の依頼は二倍増しやで!」

 

 二倍増し、その言葉にコハクの猫耳がピクピクと動く。

 

「ラプラス。それ、ほんまやろな?」

「間違いあらへん、ほんまや!」

「よろしおす。なら、話し聞きましょかぁ」

「ほな、明日の午後、クレイマンの居城に来てもらえまっか?」

「へぇ、伺いますえ。ええか? ツキハ」

「うん、かまわないよ」

「ほな、頼みますわ(はぁ~ ほんま、この姐さんらと交渉するのは、心臓に悪いっちゅうねん。そう言えば会長も言ってはったな。五百年周期で起こる大戦を、魔王では無いのに十回も生き延びてる、厄介な魔物やて。〝番外魔王〟……なんであんなもんが、存在してるんや。はぁー)」

 

 仮面の下でうんざりする顔で聞こえないよう呟き、用件は終わったとばかりに踵を返し帰ろうとすると。

 

「ねえ、ラプラス」

「なんでっか?」

「クレイマンは――(いくさ)する気なの?」

「は? ワイにはわからんで、ツキハ姐さん」

「ふーん。あちこちに粉掛けて回ってるから、てっきり(いくさ)するんかなと、思ったんだけどね」

「せやな、本人に聞いてみれば、言いんやないか?(なに、いきなり言い出すんや。ほんま、かなわんで)」

「あんたさ、クレイマンは、本当に自分の意思で動いてると思う?」

「そんなん、決まってるやないか。間違いなく、本人の意思やで!(……そうや……ワイも、それは最近感じた事あるんや。なんや、わからんもんが……この辺に……)」

「そう、ならいいけど」

「なんで、そんな事言うんでっか?」

「ん? そうだねぇ。どうもあちこちが異様に動き始めてるから、思っただけ。女の勘かな」

「女の勘でっか? おかしなこと言いますな」

「あんたの顔より、ましだよ」

「いや、これ仮面でっせ?」

「しってる」

「そうでっか(かぁーー 腹立つわーー でも、この洞察力に情報収集能力――ほんまに脅威やで)」

「じゃあ、引き留めて悪かったね。あたしらは、引き続きこの花見で癒されるから、もう帰っていいよ」

「そうでっか……ほな、さいなら(ぬわっーーーー 何が癒されるや! ワイの気苦労は誰が癒してくれるんやー!)」

 

 ようやく依頼の件を伝え終えたラプラスは、足早にその場を後にする。

 

 裏で暗躍する中庸道化連の副会長、享楽の道化(ワンダーピエロ)・ラプラス。

 

 アジトに帰って来たラプラスは、ふと――初めて〝番外魔王〟に合った事を思い出していた。

 

(そういや……あの姐さんらと初めて戦った時、ワイのスキルが事如く通用せえへんかったな。未来視(ミエルモノ)ですら、霧がかかったようにみえへんかったんや。後にも先にも、あんな事はあの時だけや。どうしたら、スキル妨害なんて、できるんやろな……ほんまに、なにもんなんや、あの魔物は……)

 

 ふっと軽い溜息を吐き、自室の扉を開け入っていった。

 

 

 

 次の日の午後。

 

 クレイマンの居城にツキハとコハクが来訪する。

 

 執務室の扉の前で配下が、クレイマンに声を掛ける。

 

「クレイマン様。ツキハ様とコハク様が、御到着です」

「通せ」

 

 その声に配下は扉を開け、二人を通す。

 

 執務室に入るや、コハクが切り出した。

 

「クレイマン。あんさん、出禁言うたのに、わからんかったんどすか? あんさんに関わるもんは、三カ月出禁やと。ようは、依頼は三カ月は受けへんと言うことですえ。もういっぺん、いわしましょか?」

「いえいえ、それに関してはご勘弁を。今回は、本当に急ぎの案件なんですよ」

 

 クレイマンはその言葉を受け流しながら、二人を応接室の方へ案内し、入り口から遠い席にあるソファーに座るよう手で促す。

 

 クレイマンは一度、この二人にある事を試した。

 それは、魔王すら支配する、〝支配の宝珠(オーブ・オブ・ドミネイト)

 ある目的のために、試作品をコハクに試したのだ。

 

 しかし、あっさりと抵抗(レジスト)され――それを見たツキハが激怒した。

 

 妖刀・時雨を出し、腰を低く右足を前に出し折り曲げ、左足を膝が付く位後ろに引き。

 

 ドンッ!と言う大気を震わせる轟音が鳴り響き。

 

 閃が走る。

 

 クレイマンが引き連れていた配下三百の間を、何かが一瞬で通り過ぎた――。

 同時に、三百もの肉体が弾け斬り裂かれ、肉塊と化す。

 血の雨がその場に降り注ぎ、その先には姿勢を低くしたまま、時雨を右斜め上に振り抜き止まっていた、ツキハがいた。

 

 〝天牙影千流・抜刀術 刃魔・紅蓮閃〟

 

 魔物になってからツキハが、忍びの頃に得意とした飛び込み抜刀術を、魔物用に転換した技。

 知覚すらおぼつか無いツキハの技に、クレイマンは恐れるどころか、歓喜した。

 

 素晴らしい! 何という豪胆な技なのだ! くっくくくく

 傭兵商会・ルヴナンのツキハとコハク――これは、利用しがいがありますね

 しかし 支配の宝珠を試作品とはいえ、抵抗(レジスト)されるとは……

 まあ いいでしょう これを 改良して 更に 強力な魔法道具(アーティファクト)と しましょう

 

 ツキハの怒りを持ち前の交渉術で、宥め。

 その場を切り抜け、賠償金も支払い、何とか事を得たのだ。

 

 ただ……物静かな目でクレイマンを見つめるコハクに、クレイマンは警戒とも恐怖とも、何とも言えない感じを受けた。

 

 それは――違和感。

 

 この違和感にクレイマンは時折思案するも、未だにその違和感の正体が掴めなかった。

 

「さあ、依頼の件の前に。このワインをどうぞ、お召し上がりを」

 

 ツキハとコハクの前に置かれたワイングラスには、豊潤で心地よい香りをただ寄せる、深紅の液体が注がれていた。

 

 クレイマン秘蔵の、年代物のワインである。

 

「ほぉー 年代物じゃない……うん、うまい! よく熟成されてるね」

「ほんま……口当たりがまろやかで、でもこのちょっぴり酸味の利いた味わいが、絶品どすなぁ」

 

 ツキハとコハクが、上手そうにワインを飲み干すと。

 二人の前に置かれたワインボトルの中身を、クレイマン自ら注いでいく。

 

 更に二人は半分程飲むと、コハクが本題を切り出す。

 

「で、クレイマン。どんな、依頼なんどすか?」

「単刀直入に言いましょう。魔国への潜入調査と――もしもの時に、魔国の殲滅をお願いしたいのですが」

「穏やかじゃないなぁ。あそこさ、ミリムがいるじゃん。ミリム相手にするのは、別料金になるよ? ってかさ、ミリムとはやりたくないんだけど?」

「それに関しては、考えがありますよ。もうしばらくすれば、障害は無くなるかと」

「障害ねぇ~。でもさ、潜入って、あんたのところのミュウランが、既に潜入してるじゃない。あたしらが、潜入する意味あるか?」

 

 右眉をピクンと跳ねさせクレイマンを見るツキハを、何食わぬ顔で返すクレイマン。

 

「ミュウランとは別の、深い処への潜入調査ですよ。もういくつか、情報は手に入れてるんでしょう?」

「ふふふ、高いおすえ。あそこの情報は、どこも欲しがってるみたいですからなぁ。クレイマン、あんさんは――なんぼ出しますんや? 値段次第では、優先的に売りますえ? うふふふ」

「そうですねぇ。まず、確立されつつある貿易の規模、それに連なる商品、同盟国の情報と、正確な戦力ですね」

「あらあら、あんさんは相変わらず、欲張りおすなぁ。こんだけ、もらいましょかぁ」

 

 こんだけと言いながら、コハクは人差し指を三本立てた。

 それにクレイマンは、指二本立てた。

 コハクが指二本を立て、次にもう一度指二本立てて、最後に指五本を立てる。

 更にクレイマンが指二本から指四本を立てた。

 

 そこで値段交渉が終わりを告げる。

 

「わかりましたえ。今言うた情報、一つに付き金貨二百四十枚で売りましょ」

「ありがとうございます。それと、潜入工作の件ですが、通常で金貨五百の所を、金貨千枚でいかがでしょう?」

「殲滅も望むなら、後五百だね。それも、前金でね。ミリムが絡んでるから、そのリスク料も入ってるよ」

「そうですね……それも後程依頼に入るやもしれませんね。ふむ、前金ですか……わかりました。今ドワーフ金貨の持ち合わせがあまりないので、古代金貨を入れてもよろしいですか?」

「古代金貨かぁ。あれ換金やら、なんやらで面倒なんだよねぇ。どのくらい入れるんだ?」

「支払金額、二千四百六十枚の内、千枚ほど古代金貨でどうでしょう?」

「うーん、コハクどうする?」

「仕方ありまへんな。かましまへん、それで手を打ちましょ!」

 

 二人が了承すると、クレイマンは配下に金貨の入った箱を二つ持って来させ、二人の前のテーブルに置いた。

 金貨の重みで、テーブルが、ギシリと軋みを上げる。

 

 ツキハとコハクは懐から、真ん中を紐で巻いて結んでいる長財布を取り出す。

 道中財布であった。

 その財布もコハクが作った物で、中は空間収納になっていた。

 ツキハがドワーフ金貨千四百六十枚を自分の財布に入れ。

 コハクが古代金貨千枚を、同じく自分の財布に入れる。

 

 依頼料を受け取り、さっそく魔国へ向かおうと席を立とうとする所へ、クレイマンが呼び止める。

 

「あ、そうそう。貴方達にもう一つ聞きたいのですが、よろしいですか?」

「なに?」

「なんおすか?」

「ミリムの弱点ですよ。何かありませんか?」

「それを、あたしらに聞くか?」

「ええ。あのミリムと懇意にしている貴方達なら、何か心当たりがあるかもと、思いましてね」

 

 クレイマンの問いに、二人は顔を見合わせやれやれと言った顔で、ツキハが答える。

 

「うーん。弱点なんてあるわけないじゃん。まあ、しいて言えばぁ……〝友達〟と言う言葉に、弱い位かな。こんなの聞いても、どうも出来ないよ? ミリムは」

「ふむ、なるほど。いえいえ、これは有意義な情報です。ありがとうございます。情報料は――」

「サービスでいいよ(くく。何をするやら、見物だね。精々、火傷しないようにな。クレイマン)」

「そうですか、ありがとうございます。では、良い情報をお待ちしてますよ」

 

 クレイマンの執務室を出たツキハとコハクは、魔国へと『空間転移』していった。

 

 

(これは、いい事を聞きましたね。フレイ……あれを利用しましょう。ちょうど、暴風大妖渦の事で頭を悩ませていましたからね。そして、〝番外魔王〟を保険に、全てを手に入れるとしましょう。うくっくくくく ふはっはははははは)

 

 様々な思惑が交差する中、クレイマンの一際高い笑い声が執務室に、響き渡っていた

 

 

 




 八話を読んで頂き、ありがとうございます!

 次回の更新も読んで頂けたら幸いです。



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