忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
ディアブロが気を取り直したところで、シュナが発言をして来た。
「リムル様、
「ん? 珍しいな、シュナが提案なんて。何か意見があるのなら言ってくれ」
シュナが会議で提案するのは珍しい事であった。
そして、シュナが提案を話し始める。
「この前私が倒したアダルマンですが、彼から話しを聞いてみてはいかがでしょう? 数百年前といえ、彼も一応は西方聖教会に所属していたようですし、何かわかるかも知れません」
アダルマンと聞いてリムルは、はて、誰だっけと首を
(アダルマン……?)
《解。クレイマンの居城を防衛していた
(ああ! シュナが仲間にしたというアイツらかぁ。確か力を失ってしまって、今は
一度会った時に感極まって、神がどうのこうのと言い始めて、何か思い込みが激しいタイプと思っていたのだった。
「それはいいな。ちょっと話を聞いてみようか」
そう言いリムルは、すぐにアダルマンを呼び出してもらう事にした。
現在アダルマンはガビルに協力していて、封印の洞窟内で研究や警備を行っていたのだ。
ガビルは『思念伝達』で、直ぐにアダルマンに来るよう伝える。
呼ばれる否や、転移魔法で洞窟内から会議室前まですっ飛んできたアダルマン。
会議室に入るとすぐさま――
「此度は、リムル様に
「長い!」
「なげえ!」
リムルが黙って聞いてるといつまでも終わりそうになく、更にツキハにまで挨拶が及びそうになったのでリムルとツキハが一喝して黙らせる。
リムルを我が神と崇め、一度争ったツキハが見逃してくれたお陰でリムル様という神に出会えたと、ツキハに感謝するアダルマン。
中々に強烈なヤツである。
そんなアダルマンをシオンが「お前は見所がある!」と、にこやかに
そんな二人とは対照的に、他の幹部は若干引き気味で、コハクとツキハは「「しょうもな」」とポソリ呟いていた。
「アダルマン、そのへんでよろしいでしょう。リムル様に会えて嬉しい気持は伝わりました。ですが、今は時間がありません。そろそろ本題に移りなさい」
シュナが呆れたようにアダルマンを止める。
「シュナ様!? これは大変申し訳ありませんでした。それでは――」
ハッと我を取り戻したかのようにアダルマンは、説明を始めていった。
まずアダルマンは、自分が元西方聖教会の枢機卿だと告げる。
そして神聖法皇国ルベリオスという国は、神ルミナスを頂点と定める宗教国家であると。
法皇は神の代弁者であり、その正体は不明と言う。
世代交代しているのかいないのか、そうした話は入ってこなかったと。
国を統治するのは法皇庁という組織であり、この組織が神聖法皇国ルベリオスの最高執政機関であると話す。
そして、西方聖教会はルミナス教を布教する目的で組織されたので、武力などは所有せず、神の教えを広めるだけの組織だったと告げた。
だが、それだけでは布教する者達の身を守れないので、法皇庁が傘下の国々に要請して神殿騎士団を結成したと。
この騎士団は、法皇庁の予算で運営される事で、各国の協力も受けやすく歓迎されたと。
しかし、こうした関係が構築されると、本国と各国の間で摩擦が起きるようになり、ここで登場するのが法皇直属近衛師団だと言う。
師団と言っても実際には数名しかおらず、各々が異常な強さを誇り、神殿騎士団に命令する権限を有していたと説明する。
「この者達は、神と法皇のみに忠誠を誓う集団でして、法皇庁の最高権力者である執政官ですら、彼等にはあくまでも要請する事しか出来ません」
顎の骨をカタカタと鳴らし言うアダルマン。
そんな権力者でも命令できない集団とは、かなりの実力なのだろうとリムルは考える。
「ですが、今の西方聖教会を取り巻く状況は、かなり変わっているようです」
それは、アダルマンの声が心なしか重く感じられる発言であり、アダルマンの説明を聞くと、当時とはかなり様変わりしてるようだった。
最大の違いは教会の力が、大幅に増した事。
それが、聖騎士団という戦力を得て、発言権も大きくなったと。
そして、その聖騎士団の監督をしていたのが七曜であり、〝七曜の老師〟と呼ばれていたと言う。
七曜の監督下では目立たなかった聖騎士団だが、ヒナタが団長になり鍛えた結果、名実共に最強の騎士団へと成長したと。
これにより、神聖法皇国ルベリオスは、法皇直属近衛師団と聖騎士団という両翼を得たとアダルマンは言う。
(七曜の老師ねぇ……かなり胡散臭いヤツらだな。アダルマンを排除しようとして罠に掛けたのも七曜だと言っていたな。要注意だなこの〝七曜の老師〟というヤツラは)
そう考えながらリムルはアダルマンに、一つの疑問を投げかける。
「しかし、詳しいなアダルマン。クレイマンの所にいた割には、えらく事情に詳しいじゃないか」
「はい。魔王クレイマンは西方聖教会を敵視しておりましたので、その戦力を警戒し、情報収集を怠らなかった模様。私は一応幹部でしたので、意見は求められずとも情報は逐次与えられていたのです。そうそう、番外魔王様からも、かなり情報を買っていたみたいでしたね」
このアダルマンの発言にリムル以下幹部全員の目が、コハクとツキハの方に向けられた。
そんなツキハは大欠伸をして、なに? といった顔で小首を傾げて皆を見て、コハクは飲みかけたお茶のカップを置いて、「なんどすの?」と微笑み笑う。
リムルは、何か言いたげにしていたが、何言っても返って来る言葉はわかり切っていたので、出掛かった言葉を飲みかけた時――
「まあ、言いたい事はわかりますえ。この情報はクレイマンに売った情報も含まれていますけどな、全部やないで。クレイマンが独自に掴んだ情報もありますさかい。それに、契約した項目の中に情報の二重売りはせんと、記してありましたやろ。読んでまへんか?」
「はい。確かに記されていました」
コハクの発言に、シュナが即答する。
「それにな、うちはもうとっくにアダルマンから西方聖教会の事情を聞いてると、思うてましたんやけど? これで情報を先売りしていたら、絶対ボッタくりやとあんさんら騒いだんと違いますか? ふふ」
「ああそうだな。どの道コハク達から情報を買わなくても、アダルマンから知りたい事は得られたのだから、確かにコハクの言う通りだ。すまなかった、二人とも」
「かましまへん、リムル」
「いいよ、気にしないで」
苦笑いしながらリムルが謝ると、二人も軽く笑いながら返す。
情報の二重売り、これは一つの情報を複数に売り、大金を得る方法だが、貴重な情報を複数に売ると情報の価値は著しく下がる。
何故なら、偽の情報をばら撒く事は情報戦において有益だが、貴重な情報を複数に売ると、依頼主にはいずれバレる。
そう、バレた時点で次回からは足元をみられ、情報料を大幅に値切られる事になる――
信用の失墜である。
この場合は、シュナがアダルマンを配下にした事で、そう遅くない内に西方聖教会の情報をリムル達は得られるのは確定的であり、だからコハクは敢えて話さなかっただけ。
もっと正確に言うならば、アダルマンがリムルの配下になった時点でこの情報の価値は失われたので、ルヴナンとしては無価値な情報は聞かれれば答えるといった対応になる。
一見ドライな印象を受けるルヴナンだが、これが千年以上もルヴナンを率いて来たコハクとツキハのやり方であり、情報の安売りはしないのだ。
(なるほどな。二人にはアダルマンが俺の配下になった時点で、この情報の価値がなくなったんだと判断したのか。まったく、商売根性が
リムルはコハクの言葉を聞き、内心で含み笑いを漏らす。
「我が神たるリムル様、どうか警戒して下さい。そして、番外魔王様達も。神聖法皇国ルベリオスには現在、〝十大聖人〟呼ばれる〝
そう言うとアダルマンは深々とリムルに頭を垂れる。
(詳細は不明だが、近衛師団の中に、〝三武仙〟という三名が〝仙人〟級の実力者。これに聖騎士団の六名の隊長格とヒナタを加えた十名が、〝十大聖人〟と呼ばれるのか。〝仙人〟……〝魔王種〟に匹敵する力を得た人間だと
そんな事を考えてるリムルの耳に、アダルマンの力強い声が飛び込んでくる。
「恐れながら、我が神よ。ここはこのアダルマンが元枢機卿として、ヒナタとやらを
「ちょっと、まてまて。そいうのはいらないから」
「ねえ、アダルマン。それは無理があるよ。あの
「何と!? それは如何様な手段でありますか、ツキハ様?」
「それはだねぇ、一度徹底的に――」
「ああ、ツキハ君。火薬庫での火遊びはやめようね。アダルマン、もう下がっていいよ」
話がおかしな方向へと流れそうになり、更にツキハがそれに乗っかりだしたので、リムルは慌ててアダルマンを退室させた。
思い込んだら一直線、そんな感じのアダルマンに、ツキハのワルノリを加算されたらたまったもんじゃないと、リムルは思ったのだが……。
「なるほど、素晴らしい手です。ツキハ様、どのように追い詰めるのでしょうか?」
「クフフフ、その手がありましたか! いいでしょう、話しなさいツキハ!」
「ほぉ、聞きたいの? じゃあ、しょうがないなぁ。徹底的に、死ぬ寸前までボコってだねぇ――」
更に、簡単に感化されれている
「――何を馬鹿な事を言っているんだお前らは! そんな説得をしたら、余計に話が
(本当に、なんだこの息ピッタリなシオンとディアブロは! 仲が良いのか悪いのか、わからんわ! それにツキハ、普段は怠そうに話すのに、こんな時は何で生き生きするんだよ! 全く、なんなんだこの〝馬鹿三人衆〟は……)
リムルは馬鹿三人に脱力しつつ、本格的に対策を考える。
(相手の力を見極める捨て駒が欲しいところだけど、ルヴナンに依頼するのが手っ取り早いんだけども……。ん? さっきからヴェルドラがチラチラ見てるんだが、お前は駄目だ。間違いなくやり過ぎる。特にツキハと組ませたら……あれだ、考えたくもない事が起きるな、間違いなく)
「ヴェルドラは――」
「うむ! ようやく我の出番だな。任せよ! 行くぞツキハ!――」
「あいよー」
(ああ、やっぱり……)
リムルの予想を裏切らないヴェルドラである。
「いや。ヴェルドラには、
「何ぃ?」
「なあ、カッコいい響きだろ、最・終・防・衛・ラ・イ・ン! ここを任せられるのは、ヴェルドラ君しかいない! と、思うんだが――」
「無論だとも! 我もそうではないかと思っておったのだ! ツキハすまぬな、行くのは無しだ!」
「うん、気にしないでいいよ~(あーあ。ヴェルドラったら、お気に入りのマンガのセリフ言われて、その気になってんじゃん。くくくっ)」
(良し! これでヴェルドラの暴走は未然に防げたな。ツキハがあっさりなのは気になるところだけど、良しとしよう)
先手を打って、とりあえず〝やり過ぎコンビ〟の爆誕は防げたリムルであった。
ヴェルドラが落ち着いたところで、ベニマルが口を開く。
「それでは、ヨウム殿への援軍を発表する」
ベニマルの良く通る声が、会議室に響き渡る。
ゴブタ隊長率いる、
次に、ベニマルの部下
そして、ガビル率いる〝
最後に、ロモコ殿率いるルヴナン裏部隊百名が伏兵として戦場に潜み、監視に当たると告げた。
「この合計四千四百名が、ヨウム殿への援軍と定める、以上だ。街を防衛する戦力は減少するが、今は
「え? ちょ、自分っすか!?」
「何か問題があるのか?」
「いや、あ、いえ。何でもないっす……」
何か言いかけたゴブタが、ベニマルの眼力により黙らせられる。
「援軍の総指揮はハクロウが執る。もし何かあれば、俺が直ぐに『空間移動』で援護に出向くから、安心しろ。ただし、こちらも、聖騎士団長ヒナタ・サカグチと交戦になる可能性が高い。もしそうなった場合、連絡が途絶える事があり得るが、その時は無理をせずハクロウの指示に従え!」
「お任せ下され」
「了解っすよ……」
「我輩も今度こそ、絶対に活躍するのである!」
リムルはやる気になったハクロウとガビルを見ながら、あまり気乗りしなそうなゴブタに不安を覚えながら、要領だけはいいので今度も何とかなるだろうと思うのだが……。
「うん、やっぱり心配だな。ランガ、起きてるか?」
リムルは、影の中で眠るランガに声を掛ける。
ランガはリムルの護衛を兼ねて、ここ最近はずっとリムルの影に潜んでいたのだ。
「起きています、我が
「ああ、たまには運動もいいだろう? ゴブタについて行って、守ってやれ!」
「ハハッ。何やら身体が軽いです。目覚めの運動が楽しみです!」
(何だろう……この解き放ったらヤバイ感じは? 俺の危険予知がそう訴えてる。何かコイツ、変に
「ランガさんがついてくれるなら安心っすね!」
ランガがつくと聞いた途端ゴブタはやる気に満ちた。
そんなゴブタを見て、現金なヤツめとリムルは笑みを浮かべていた。
「ランガ、くれぐれも無茶はするなよ。相手を殺しては駄目だからね……」
「お任せを! シオン殿とサンコ殿に、手加減の手解きは受けております!」
「え? お、おう……」
(うー、何か余計に心配になって来た。影の中で眠ってばかりと思ってたけど、俺の知らない間にそんな事をしていたのか。シオンとサンコに習ってる時点で不安しかないが……回復薬もあるし大丈夫だろう? うん、大丈夫だよね。うー、最早、相手の無事を祈るのみだな)
ベニマルの目がゴブタを甘やかし過ぎですよと笑うも、リムルも目でいいじゃないかと笑い返す。
ここでリムルは、新王側の援軍の存在について話しを切り替えていくのであった。
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