忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。84話です

 ※作中に出て来る〝羊豚(ヨウトン)〟は、作者のオリジナル動物です。
  豚系の食べれる動物は〝転スラ原作〟には今のところ出て来てないので作りました。






84話 ソイツら森に返してこい!!

 

 

 リムルは新王側の援軍の存在について話しを切り替え、皆を見渡していた。

 

 そして――

 

「それでディアブロ、作戦はどう進めるつもりなんだ?」

「はい。流石に新王側の戦力の総数が三万を超えるのは想定外でした。当初の計画での想定は、新王側の戦力は一万程度だろうと見積もっておりましたので――」

 

 そう言うと、ディアブロの説明が始まった。

 

 まず、新王側が軍を動かそうとした段階で、即エドマリスに理由を問う書簡を送らせる事にする。

 新王としては、賠償金の支払いをエドマリスに押し付けようと画策するから、それを未然に防ぐ形に持っていく。

 

 そうなれば新王は、エドマリスが結んだ賠償金契約を履行する義務はないと、主張する。

 それも、評議会に加盟していたならば通らない理屈だが、魔物の国の魔国連邦(テンペスト)ならばギリギリのラインで通用するのだ。

 

 なれば、新王側はエドマリスを処刑して、約束の無効を主張してくるだろう。

 そこで、魔国連邦(テンペスト)が怒って軍事行動を起こせば、西側諸国で団結して対抗する腹なのだろうと。

 

 そこでヨウム一派が、窮地に陥るエドマリスを救出する。

 

 現在エドマリスは、ヨウム一派に守られて二ドル領に(かくま)われていて、ここまでは予定通りに事が運んでいると、ディアブロが説明する。

 

 ヨウムが陣取る二ドル領には、ヨウムが集めた戦力が五千。

 そこにリムルが転送魔法で、四千四百名を一気に送り込む。

 

 ほぼ互角の数だが、背後に主力が出現する恐怖――その心理効果を使い、一気に新王側を叩く作戦だったのだが……。

 

 しかし、新王側に更なる戦力が集まり始めた今、この作戦は使えなくなった。

 

「――新王エドワルドは、エドマリスの所領に陣を張って援軍を待っている状況です。新王側の態勢が整うのを待つのではなく、事を起こすなら早い方が良いかも知れません」

 

 そこで、ディアブロの説明は終わった。

 

(ふーむ……このまま待っていても、状況は悪くなる一方か。しかし打って出てしまうと、本気の戦争になり、お互いの殲滅しか手がなくなる。泥沼の戦争などになったら、ファルムス王国に決定的なダメージが入る可能性が著しく高くなってしまう。さて、どうしたものか……)

 

 リムルは様々な案を思い浮かべては直ぐに破棄して、次の打開策を模索していく。

 

 

「――最悪さ、今回は諦めるってのもある。俺が残りの債権を放棄すれば、戦争は回避できるだろう? 要は、新王側の大義名分を奪えば、これ以上戦う意味がなくなるからな」

 

 リムルが事無げにそれを言うと。

 

「駄目です! それをやれば、リムル様が軽く見られてしまいます!」

「リムル、それはアカン! 個人同士ならそれもありやけど、国家間同士のそれでやったら最後、他国から永久に足元を見られる事になるで」

 

 シオンが即座に声を上げ、コハクがリムルの意見の危険性を突いた。 

 

 それにリムルは――

 

「うーん、軽く見られるのも足元を見られるのも問題だけど。賠償金の一部はゲットして、実利はとりあえず取ったしなぁ。ヒナタの件を片付けてから、もう一度取り組む方が簡単なんじゃないか?」

「はあ、全くあんさんは……。魔王はな、恐れられてなんぼなんやで。まあ、うちらは契約主の意見は尊重しますさかい、リムルがそうしたいならそれでかましまへん。でも、忠告はしましたで?」

「ああ、気遣いありがとな、コハク」

 

 コハクが半ば呆れ顔で言い、リムルはそれに笑みで返した。

 

 しかしそこに、ディアブロの声が飛び込んで来た。

 

「クフフフ。リムル様、ファルムス王国攻略を諦めるなんてとんでもない。この作戦、私にお任せ下さるのでしょう?」

「それは無論だ。でもな、これ以上無関係な犠牲は出したくないんだが……」

「問題は御座いません、リムル様。それが我が王の望みとあらば、その意に従うのが臣下の務めで御座います。リムル様の申した通り、簡単な話ですとも」

 

 リムルは一旦諦めるつもりだったが、ディアブロは微塵も諦めるつもりなどなかったのだ。

 

「具体的に、どうするつもりだ?」

「簡単な事です、リムル様。犯人を見つけます。この私を罠に()めようとした、犯人をね」

 

 ディアブロが、静かな口調で淡々と言う。

 これを聞いたリムルは、ディアブロが相当怒っているなと感じた。

 

「〝悪魔を滅ぼす〟? つまり、この私を滅ぼすというのなら、相手をして差し上げるまで。やって来る三万の中には、犯人に繋がる人物がいるかも知れません。丁重に優しく(・・・・・・)、問い(ただ)すとしましょう」

 

 冷え斬るような笑みを浮かべ、言葉を並べるディアブロ。

 そして、ディアブロの後ろに控えるイチコもホワホワと微笑んでいた。

 

(コレ駄目なヤツ! 間違いなく優しさなんて一欠片もないぞ! それにイチコさん……何かその微笑が恐いんですけど。あれ、絶対怒ってらっしゃいますよね? ね? ……もしかして、うちの女性陣は怒らしたら、一番ヤバイのでは?)

《是》

智慧之王(ラファエル)先生、是って……。アレか? アレなのか? 想像するだけで頭を抱えたくなるような事が起きるんじゃあ?)

《……》

 

 ヴェルドラとツキハの〝やり過ぎコンビ〟の爆誕を阻止したリムルだが、ここにヴェルドラ達とは別の〝やり過ぎコンビ〟が爆誕しそうな気配に、心の内で頭を抱えるリムルであった。

 

(あー これ、イチコと二人で神殿騎士団三万を相手にするみたい?)

 

 無理するなと言うべきかと迷うリムルを置いて――

 

「なるほど、お前とイチコ殿が出るならば心配はいらんな。ただし、無関係な者まで殺したりはするなよ?」

「ええ、言われるまでもない。リムル様の意に(そむ)く真似はしませんよ」

「はい。私は、ディアブロ殿の命に従うまでです」

 

 ベニマルとディアブロの間で話しが纏まってしまい、イチコもそれに答える。

 

 そこへ更に。

 

「ならばいい。それでハクロウ、お前は新王の兵を相手に、一人の戦死者も出さずに制圧は可能か?」

「問題ないでしょうな。ロモコ殿達が戦場に散らばり潜伏する故、かなり融通が利くじゃろうて。不意打ちで一気に決める方が簡単ですが、それでは兵の訓練にはなりませんからのう」

「そうだな。ガビル、回復薬は大量に用意しておけよ」

「承知! お任せ下され」

 

(ええ? あれ、あれれ?)

 

 リムルを置き去りに、話しはどんどんと進んでいく。

 

「リムル様、ファルムス王国攻略作戦に関しては、問題ありませんね!」

「え? あ、ああ、そうだね。みんな、頑張ってねぇ……」

 

 シオンに笑顔で言われ、思わず同意するように頷くリムルであった。

 

「「「「「ハハッ!」」」」」

 

 そんなリムルに、気合の入った幹部達の声が届く。

 

「ほおー、優秀だねぇベニマルは。うちの参謀に欲しいくらいだわ。くくっ」

「せやねぇ。うちの傭兵部隊を任せても、問題なく運用出来ますやろな。ふふっ」

 

 呆気に取られたリムルを見ながら、ツキハとコハクは笑みを(こぼ)し言う。

 すると二人の声が聞こえたのか、ベニマルがツキハとコハクの方をチラリと見て、少し照れてた様な顔を浮かべた。

 

 こうしてこの件が片付いた時に、いきなりリムルの下に街の入り口を警護するホブゴブリンから緊急の連絡が入り、入り口の門番が会議室に飛び込んでくる。

 

「会議中に申し訳ありません、リムル様」

「ん? どうした?」

「それがですね。ちょっと問題がというかですね、そのですね――」

 

 門番が口籠(くちごも)っているとそこに。

 

「ああ、ごめんリムル。これ、サンコだわ」

「サンコ?」

「うん。どうもサンコが帰ってきたらしいんだけど。何かめっちゃ危険なものを引き連れて来てるみたい」

「危険だと?」

「あ、でも大丈夫。サンコの言う事は聞くみたいだから。会議中にゴメンだけど、ちょっと行って来るわ」

「わかった、俺も行く」

 

 ツキハが同じく割り込んで来て、ツキハが今からサンコの所へ行くと言い、それにリムルも行くと言った。

 

 

 話しが一段落した対策会議を一旦休憩にして、リムルはツキハと一緒にドワルゴン方面街道にある街への入口へと急ぐ。

 

 街への入り口に付いたリムルとツキハ。

 

 そこで見たものは――

 

 サンコに付き従う十匹の魔猿、グレイヒヒ達であった。

 

 グレイヒヒが街の入り口に十匹も現れたものだから、街道行き交う人々がパニックになり。

 旅人達が逃げ惑う惨事が起こり、サンコが必死に「大丈夫ニャ! この子達は暴れないニャ!」と叫んで周り、実際グレイヒヒ達はサンコの言い付け通り、サンコの周りに集まり背を丸め縮こまっていたのだ。

 

 そんなグレイヒヒ達を見て、一通りの騒ぎも収まり今に到るのであった。

 

「サンコ、あんた何してんの?」

 

 グレイヒヒに囲まれているサンコに、ツキハが呆れた声で尋ねる。

 

「に、ニャッ!? これには、ものすごく深い訳があるのニャ、よ?」

「そこで首を(かし)げない。何でグレイヒヒの子供を、十匹も引き連れて帰って来てるのかと、聞いてんの」

「ニャッ、あ、あ、あれニャ! コイツらは子分ニャ、よ?」

「ああ?」

「ひニャッ!」

 

 明らかにツキハの声に怒気が混ざり始めるのを察知して、サンコは尻尾の毛を逆立てて、(うつむ)き加減で両猫耳は力なく伏せていた。 

 

 そんなサンコを見てリムルが助け船を出す。

 

「まあまあ、ツキハ。とりあえずちゃんと訳を聞いた方が、良くないか?」

「うん、そうだね。サンコ、怒らないから、何でソイツらを連れて来たのか、訳を聞かせな」

「は、はいニャ。実はニャ――」

 

 そこからサンコは、ツキハと魔タタビを取りに行った晩に、ツキハが先に帰った後もグレイヒヒと戦っていて、百匹前部を叩き伏せて支配下においたと話す。

 

「でニャ、群れのボスがその中にいたのニャ。アチシが皆ぶっ飛ばしたもんだから、貴女様の強さに感服したとか言って、グレイヒヒの巣に招待されたニャ、よ?」

「だから、何でそこで首を傾げるのよ、アンタは」

「ニャ? あニャー、何で?」

「あたしが聞いてんの!」

「ふニャッ!」

「はいはい、ツキハもそこで怒らない。ってかさ、お前もサンコと同じような仕草をよくするよな?」

「え? あたしが?」

「そう。あ、コハクもお前ほどじゃないがするよな?」

「……知らん」

(あ、逃げた)

 

 サンコの仕草をツキハもよくやるよなと、リムルが指摘したら、ツキハはスーッと目線をリムルから外し、そっぽを向く。

 

(子は親に似る、と良く言ったもんだけど、まさにそれだな。クククッ)

 

 そう、サンコはツキハの影響をもろに受けていたのだ。

 よくツキハと〝遊ぶ(悪だくみ)〟サンコ。

 眷属の中でも一番ツキハと一緒にいる事が多い、サンコである。

 

「それで、サンコ。それからどうしたんだ?」

 

 リムルが優しくサンコに、それからの経緯を尋ねた。

 

「それからは、いろんな森の果物や、仕留めた野生の牛鹿(ウジカ)羊豚(ヨウトン)を御馳走になったニャ!」 

「ほうほう、それは良かったな(羊豚(ヨウトン)かぁ、あれ羊みたいに毛がモコモコしていて頭などは羊だけど、足と尻尾だけが豚種に酷似していて羊毛が取れて、肉質は豚とほほぼ変わりなく、試しに骨で豚骨ラーメン作ったら、まんま豚骨ラーメンだったんだよな。牛鹿(ウジカ)羊豚(ヨウトン)、この世界も生態系は違えど、俺の世界と同じような味の肉があったのには、ほんと驚いたよ。まあ、そのお陰で食生活が充実して来てるんだけどな。肉、野菜、魚、異世界でも俺の元いた世界の料理が再現できるとわかったからな! フッフッフッ)」

「はいニャ。お腹いっぱい食べて来たニャ!」

 

 リムルから聞かれて元気よく答えるサンコ。

 そのサンコをしょうがない子だといった顔で、笑みを浮かべるツキハ。

 

「それでサンコ。そのグレイヒヒの子供は、何で連れて来たんだ? (グレイヒヒ、少し日本猿に似ているか? 長毛な日本猿に似た、魔猿といったところだろうか)」

 

 まだ体長三十センチ位の子猿のグレイヒヒ十匹を見て、リムルはサンコに聞く。

 

「この子達は、アチシがもう帰ると言った時ニャ。群れのボスが、有望な子供達をアチシに預けるから、大人になるまで鍛えて欲しいと、おし、じゃにゃいニャ。託されたのニャ!」

「おい、サンコ。今、押し付けられたとか、言おうとしなかった?」

「ニャニャッ! い、言わないニャよ? 気のせいニャよ、ツキハ様?」

「ねえ、サンコ。ソイツら、子供でも危険度は高いし、間違いなくC+ランクはあるんだけど。ここには、一般住民や旅人に商人、戦えない人間や魔物もいるんだから、ソイツらを連れ込んだら騒ぎになるのは、わかってるよね?」

「大丈夫ニャ! アチシがちゃんと面倒見るニャ! 餌も訓練もちゃんとやるニャ! だから、ここで飼ってもいいかニャ?」

 

 ジュラの大森林の盟主である魔王リムルに、番外魔王ツキハを目の当たりにして、グレイヒヒの子供達は恐怖でサンコにしがみ付き、サンコがそれを宥《なだ》めながら懇願する。

 

 

 サンコの言葉にツキハは、右手でスッと森の奥を指差すと――

 

「ソイツら森に返して来い!!」

 

 サンコをキッと見るや一喝した。

 

「いやニャー! この子らはアチシが面倒みるニャー! 絶対に絶対に、人を襲ったりしない様に(しつ)けるニャよー!」

(え? グレイヒヒって凶暴なの?)

《解。個体名グレイヒヒは縄張り意識が強く。戦いに関しては個ではなく、集団で襲う事が多く。危険度は間違いなくAランクと断定できます》

(なるほどね)

 

 リムルは智慧之王(ラファエル)の説明に、そりゃ危険だわと思い、サンコを見る。

 

 サンコが必死に言い(つくろ)いながらツキハに懇願する姿は、まるで子供が捨て猫を拾って来て、親に元いた場所に返して来なさい! と、怒られてるようにも見え、それを見ていたリムルは何故かプッと吹きだしていた。

 

「ん?」

「うニャ?」

「おっと、スマンスマン。ちょっと昔を思い出してな。なあ、サンコ。ソイツらはやっぱり、危険すぎて街に住むのは無理だ。それはわかるよな、サンコ?」

「……はいニャ。この子らは子供でも、下手な冒険者より強いニャ」

「それにさ、野生の血を持つこの子達が直ぐにこの国の生活に馴染むのは、難しいんじゃないかな?」

「野生の血……。そうニャ、いきなり野生の血を抑えるのは難しいニャ……」

 

 リムルに優しく(さと)されサンコは、自分がツキハの眷属になったばかりの頃を思い出す。

 最初は野生の本能が勝り、人間や魔物とのトラブルが絶えなかった事。

 それが高じて、ちょっとした小競り合いで人間を殺した事が幾度もあった事を。

 

 そんな事を思い出したサンコが、力なく静かに口を開く。

 

「野生の血を抑えるのは、凄く難しいニャ。アチシも野生の血を抑えるのに、凄く、凄く時間が掛かったニャ。この子達もきっと、野生の血が爆発して抑えられなくなる時があるニャね……」

 

 そこまで言ってしゃがみ込むと、(すが)るグレイヒヒの子供達をそっと抱き寄せるサンコ。

 

《告。主様(マスター)、ルヴナンの敷地ならば結界も張られており、いくらグレイヒヒといえどその敷地から出る事は不可能です。訓練をする時だけルヴナンの敷地を通えば良いかと》

『お!? そうか、『転移陣』でも作ってルヴナンの敷地に通わせれば、無用なトラブルも避けられるか』

《告。ルードネスで募集した人員の訓練にグレイヒヒを使う事も可能かと》

『ふむふむ。サンコが付いていれば、そうそう事故も起こらないだろうし。何よりも、実戦に近い訓練も出来るかもな。良し!』

 

 智慧之王の助言にリムルは、しょげるサンコに声を掛けた。

 

「サンコ。俺の国に住まわせるのは無理だけど、その子らを鍛えたいならルヴナンの敷地でやればいいんじゃないか?」

「ニャ!? そこでなら鍛えてもいいのニャ?」

「ああ。ツキハとコハクが許してくれたならな」

 

 バッと顔を上げたサンコはリムルとツキハを交互に見る。

 

「そうだね。あそこならコハクの結界が張られているから、敷地外に出るのは不可能だしね。アンタがちゃんと面倒見るなら、敷地内に来るのは構わないよ。その代わり、ちゃんと(しつけ)はやるんだぞ。いいね?」

 

 ツキハがやれやれといった顔で笑みを浮かべ言うと、サンコの顔がパアッと明るくなった。

 

「とりあえず、その子達を一旦巣に帰そう。群れのボスには俺が話してやるよ」

「ふニャッーー! ありがとうございますニャー、リムル様! ツキハ様!」

 

 話が纏まった所でリムルとツキハは、サンコとグレイヒヒの子供達を連れて、『空間転移』していった。

 

 いきなり、魔王リムルと番外魔王ツキハが巣に現れた事で巣全体がパニックになったが、サンコとグレイヒヒの子供達を見て、ボスが皆を静めた。

 

 ツキハは、魔タタビ採取の時は権能『猫騙し』で能力(スキル)や強さを隠していたが、今は何も隠してはいなかったのだ。

 

 ボスを先頭に、三百匹近くのグレイヒヒが、リムルとツキハの前にひれ伏する。

 

 

 グレイヒヒのボスにリムルは、『思念伝達』を使って事の経緯を説明し、この巣に『転移陣』を作って子供達の訓練を行う事を告げるリムル。

 

 ジュラの大森林の盟主であり魔王リムルの言葉に逆らうものは、一匹たりともいない。

 森の奥深くに来て巣に近付いた危険な人間や魔物は撃退してもいいが、不必要に襲う事は固く禁じると告げるリムル。

 更に、大森林に害を及ぼす者なら、出来れば殺さずに捕獲しろとも伝える。

 

 しかし、仲間や自分の身に危険が及べば、それは厳守せずとも良いとも付け加えた。

 

 そして、この森の住人である限り魔王の庇護下に入るので、この(めい)は厳守せよと。

 もし、巣の危険や種族が脅かされる事があれば、直ぐに知らせる事とと、群れのボスに言うリムル

 

 こうして魔猿グレイヒヒ達はリムルの庇護下に入り、大森林奥の資源を守る守魔猿(もりまえん)となったのだ。

 

 それからリムルは話を戻し、十匹の子供達の事を聞くと、群れの中でも特に跳ね返っり達で皆との喧嘩が絶えず、かと言ってその力は有望で、将来的には群れを背負って立つ大人になるであろうから、扱いに困っていたとボスが説明する。

 

 そこに自分と群れの戦士達を倒したサンコに目を付け、巣に招待し。

 サンコとその十匹を戦わせて上には上がいる事を教えるつもりが、サンコにボコられた十匹が何故かサンコに懐いてしまったので、押し付けるような形でサンコに託したようだった。

 

 リムルが『転移陣』を巣に設置して、リムルが登録した者しか起動できないので、サンコが迎えに来た時しか訓練場には来られないと説明した。

 

 言葉は話さないが知能は極めて高く、『転移陣』の事もある程度は理解出来たグレイヒヒ達。

 物珍し気に魔法陣に触るグレイヒヒ達で『転移陣』の周りは一杯になる。

 

 キキィキィッ(これでどこへでも行けるのですか?)

 ニャア ニャニャッ ニャー(そうニャよー でもアチシのお家がある所だけニャ)

 ウキキ! キィッ キッ(なんと! 魔王様の御力は素晴らしい!)

 ニャニャァ~(凄いだろうー♪)

 ウキィキッ キキッ(ところでサンコ様は、本当にあの最弱の魔猫だったのですか?)

 ニ゛ャア゛ッ? ニャァニャニャ! ニャニャッニャニャッ!!(あ゛あ゛? 最弱言うなニャッ! またぶっ飛ばすニャよ!!)

 キキキキィッ!(((((申し訳ありませんー!)))))

 

 リムルは、そんなグレイヒヒ達と何か話しているサンコを暫く眺め。

 

(あ? サンコに土下座してるヒヒ共は何言ったんだサンコに? ハハハッ。猫は自由、本当に自由なんだな、サンコ達は。俺の目指す皆と楽しく暮らしたいと、どこか似てるのかな? あ、でもベニマル達は俺に暴言など吐かないからなぁ。で、対照的にサンコ達って何気に逆らうからなツキハとコハクに、ククッ。それを許して、あまつさえ自由にしてるとか、他の魔王達からすれば異端に見えるだろうな。しかし、アイツらを見ていてわかったんだけど、本当にツキハとコハクの事が好きなんだよな、何しろ皆いつも楽しそうだし。ああいう変わった主従関係も少し、羨ましいところもあるんだよねぇ。俺とは別の、自由に楽しく、か。そう言えばツキハとコハクが言っていたな――自由に生きたいから、強くなるんだって。ほんとそれ、同感だわ……) 

 

 と、グレイヒヒと(たわむ)れるサンコを見ながら、そんな事を思い。

 

 おもむろにリムルは――

 

「それじゃあ、そろそろ帰るか。ツキハ、サンコ」

「だね、帰ろうか。いくよ、サンコ」

「はいニャ! ツキハ様、リムル様」

 

 そう二人に言うと。

 

 帰り際、群れのボスにサンコが迎えに来たら子供達を訓練に出すようにと告げ、ツキハとサンコと共に魔国連邦(テンペスト)に向けて『空間転移』で帰路に着くのであった。

 

 

 

 




 この作品を読んで頂きありがとうございます!

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