忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。85話です






85話 万全の態勢をもって

 

 

 ツキハとサンコを伴い、魔国連邦(テンペスト)に帰って来た三人。

 

 

 サンコと別れ、ツキハと一緒に会議室に戻るリムル。

 

 そして、ヒナタ達の相手は誰がするかの話を始めていく。

 

「さっそくだが、やって来る五名に対してだけど――」

 

 そう言ってベニマルを見るリムル。

 

 リムルが満を持して発言しようとするも――

 その時にソウエイが突然立ち上がる。

 

「リムル様、緊急事態です。聖騎士団に動きがあった模様です」

 

 緊張に満ちた顔でソウエイが告げる。

 

 それを聞いて幹部達に動揺が走る。

 そして、リムルにも。

 

 ツキハとコハクはというと、のんびりお茶のおかわりを飲んでいた。

 

「ヒナタ達に何か新しい動きがあったのか?」

「いえ、イングラシア王国を見張っていた、ホクソウと忍魔猫のナナナコ(七百七十七番)殿から、たった今、百騎の人馬が出陣したと報告が……」

「なに!?」

「半日以上の時間差がありますが、このスピードだと先行組に追い付くのは間違いないでしょう。恐らく方角は一致してるようなので、この国を目指しているのは確実でしょう」

 

 ヒナタの移動速度は急ぐでもなく、普通の旅人が取る速度で移動しているとの事だった。

 それを追う四名の聖騎士達も最初こそ全力疾走だったが、ヒナタに追い付いてからは通常の速度に落としていたとコハクが、イチオから『念話』で聞いた状況を皆に聞かせた。 

 

 どうやら合流した騎士達の動向を許し、五名で魔国連邦(テンペスト)を目指してるらしいと。

 その移動スピードはいまだにイングラシア王国からブルムンド王国への途上であり、その移動速度は緩やかなのだと、コハクが言う。

 

 故に、後続の百騎は追いつこうと思えば追いつけるらしいと、ソウエイが付け加える。

 

 しかし、ナナナコの報告からすると、後続の部隊は街道のような目立つルートを避け、馬を捨てて旧道である森ルートへ進む事も予測されるとの事だった。

 

「ふーむ……。これ、ヒナタと合流しようとしてるんじゃなさそうだよな」

「はい。しかし、その意図は不明です。ヒナタの到着は早くても二週間後と予想されますが、後続部隊の到着もまた、同じような時期になりそうなのです」

 

 困惑しつつ答えたソウエイは、追跡も続行するよう指示を出したと報告をした。

 

 幹部達が議論を重ねる中、リムルはそれを聞きながらどうするか考えていた。

 

(ヒナタと配下四名の聖騎士。〝仙人級〟の者が五名か……それに加えて目的が不明な聖騎士百名。あれだ、ファルムス王国軍二万名よりも、今回の百数名の方が圧倒的に危険だな。と、いうか……ヒナタ一人の方がマジもんにヤバイ。この世界の真理、数の暴力は個の強大な力の前には無力だ。モヒカンの雑魚軍団が、いくらヒャッハー! しても、世紀末覇王には勝てないものな。うーん、どうしたものか……)

 

 そう悩むリムルを余所目に、力強い声が上がる。

 

「悩むよりいっそ、全員斬り捨ててはいかがでしょう?」

 

 その声に、一人ツキハが頷いていた。

 

 脳筋加速! 

 

(っぁー。もう、ツキハとサンコのお陰で、シオンの脳筋化が加速していないか!?)

 

 ただでさえ、鳴かぬなら叩き潰せばなんとやらの、シオン。

 

(とにかく、ヒナタの相手は俺がするとしてだ。残りの四名を誰かに抑えてもらわないとだけど……。ツキハは、あれだ、『ゴメン、やりすぎちゃった、てへ』の、起こる確率が大だな。一人で四名の聖騎士を抑えるなんて朝飯前だろうけど。その過程がなぁ、不安なんだよ。コハクは……ツキハとあんまり変わらないな。ある意味、ツキハよりヤバいかも知れん。ぬぁー、考えが纏まらねえ) 

 

 悩むリムル。

 

 するとそこへ。

 

《解。問題ありません。警戒すべきは、個体名:ヒナタ・サカグチだけです》

 

(え? おい……。あのな、それが一番問題なんだよ! 大丈夫か? 『大賢者』の頃よりも頼りなく感じるのは気のせい?) 

 

《……》

 

(まあ、一番悩んでるのは、誰も犠牲は出したくないからなんだけど。うーん……多少の犠牲には目を瞑って、いやいやそれは駄目だ。あぁー、マジにどうするよ?)

 

 更に悩み続けるリムル。

 

「うむ! 閃いたぞ! 我がたまたま、ドラゴンブレスを試していたというのは、どうだ? たまたまそこに人がいた事に気付かなかったから、それは誤射だという事にすれば良かろう!」

「あ! それなら、あたしが大技魔電粒子砲の試射をしていて、そこにたまたま人がいたけど、それは不幸な事故だったという事にすればいいじゃん!」

「ちょっと黙ってて。最終防衛ラインさんの出番は本当の本当に最後の手段だから! それとツキハさん、魔電? もの凄く不穏な技か魔法かわからないものをブッパするのはやめようね! ってかやめろ!」

 

 悪戯(いたずら)っ子のようなヴェルドラとツキハの提案を、一刀両断で斬り捨てるリムル。

 

 そもそも、ルミナス教の教え〝魔物は人類共通の敵〟という教義がなければ、まだ話し合う余地があるのだがと考えるリムル。

 

(確かに、彼等の考え方も理解出来なくもないんだ……。魔物に滅ぼされた村、そして、その村の生き残りや、家族や友人を殺された者もいるだろうからな。それに、今も理性の無い魔物が暴れているという現実を、傭兵商会を営んでいる二人に聞いた。傭兵を雇えないところは聖騎士たちが頼りだ。それを全滅させてしまったら、聖騎士のいない辺境の守護は……。やっぱり聖騎士たちを全滅させたら駄目だ)

 

 リムルは考えながら、あの時ヒナタとの会話が成立していたならば、誤解が解けた可能性もあると思うも、自分が魔物であったからそれは無理だよなとも思った。

 

(ほんとヒナタは頭が固いよな。俺のメッセージを見ても尚、戦う為に戦力を派遣して来るしなぁ)

 

《疑。その事に関しては、やはり不自然な点が多数見受けられます。ヒナタ・サカグチの意図から外れた何かが動いている可能性が高いと推測します》

 

(なに? となると、話し合いの余地は残っている可能性があるのか。シズさんも、ヒナタの行く末を心配していたしな。俺としては、ヒナタを殺したくはないという、本音があるが……。相手の出方関係なく、もう最悪の事を指定しておくべきだろうな。ヒナタとの交渉が決裂したら、俺がヒナタとの一騎打ちで決着をつける。面倒な事だけど、やるしかあるまい!)

 

 悶々とするリムルだが、ここに来て一つの結論を出す。

 

「よし、決めたぞ! 今後の事も考えてだな、聖騎士達にもなるべく犠牲が出ないようにしよう」

 

 リムルは、あくまでも話し合いが決裂したらと、付け加える。

 

 相手に被害を出さないようにして、自分達には被害が出ては本末転倒なので、それを踏まえて幹部達は議論を講じていく。

 

 

「わかりました! 全員ぶった斬って眠らせればいいんですよね?」

「いや、シオン。それ、アンタの大太刀でぶった斬ったら死ぬから。特に、首は()ねたら駄目だよ?」

「では、手足をぶった斬ればよいのですね?」

「うん。それなら、ギリ生きてるから大丈夫」

「お前ら……」

 

 シオンの発言にツキハが割り込み、リムルが半目で二人を見る。

 

「冗談です」

 

 リムルに睨まれシオンはコホンと咳払いをして言い。

 ツキハは何で? というように小首を(かし)げる。

 

 そして、シオンは先程の発言を言い直す。

 

「要は、聖騎士達を殺さずに、こちらも誰一人死なずに戦況を維持ですね。その間に、リムル様が敵の首魁(しゅかい)を倒すと、こういう事ですね?」

「うん、今度はあってる。理解してくれて嬉しいよシオン(脳筋まっしぐらかと思ったけど。そうだった、シオン達は傭兵を生業(なりわい)とする種族だったんだ。忘れてたわ……)」

 

 そう、元々は大鬼族(オーガ)は戦闘種族。

 

 戦いが生活の糧だったシオン達の戦場での常識は、リムルが抱く戦場での常識とは違うところがあったのだ。

 

 だから、ツキハやサンコとは気が合うところがあるのかと、シオン達と初めて出会った頃をしみじみと思い返すリムル。

 

 しかし、それでも脳筋化が進むのは良くないから、これは後でシュナに相談しようと心に決めるリムルであった。

 

「リムル様、私に策があります!」

 

 そんなリムルの心配を余所に、更に力強く声を上げるシオン。

 

(あ、これ不安しかないわ。そこはかとなく不安を感じるわぁ) 

 

「あー、言ってみろ」

「はい! 私の〝紫克衆(ヨミガエリ)〟も丁度百名いますので、相手にとって不足なし! なので、我等が相手をしてやりましょう!」

 

 これでもかのドヤ顔で言い放つシオン。

 

「アホか! 〝紫克衆(ヨミガエリ)〟はCランク程度の戦闘力しかないから、相手にとってはカモにしかならんぞ!」

 

 リムルがシオンの提案にダメ出しをすると。

 

「――いや、確かにシオンの言い分には不安もありますが、その策は意外に有効かも知れませんよ」

「せやねぇ。〝紫克衆(ヨミガエリ)〟は、シオンに聞いた限りでは中々に面白いエクストラスキル持ちやおまへんか。殺そうとしても死ににくいのは、戦場ではかなりえげつないアドバンテージになるおすなぁ。それに、最初から魂を砕く程の攻撃をCランク程度に使うんは、そうそうないで」

 

 コハクが言う通り、〝紫克衆(ヨミガエリ)〟にはエクストラスキル『完全記憶』と『自己再生』がある。

 そのお陰で、普通の攻撃では死ににくいのだ。

 

「リムル様、弱いのが逆に油断を誘います。その隙を突き、時間を稼ぐくらいなら案外有効かも知れませんよ」

 

 驚いた事にベニマルがシオンの提案を擁護し、それにコハクも言葉を付け加えて来た。

 

 リムルはベニマルとコハクの意見に、『思考加速』をかけて思案してみる。

 

(言われてみれば、確かに有効かも知れないな。聖騎士達が魂への直接攻撃手段を持ってなければ、それこそ〝紫克衆(ヨミガエリ)〟が有利になる、か……)

 

 リムルが『思考加速』で思案してる間、ベニマルとコハクの援護を得たシオンが〝紫克衆(ヨミガエリ)〟について力説していた。

 

 どうやら、独特な訓練の過程で『痛覚無効』は勿論、『耐毒』や『耐麻痺』に『耐睡眠』といった耐性を全員が獲得していると言う。

 

 思案を中断したリムルが、そんな耐性をどうやって得たんだと尋ねたら。 

 

 クロベエに頼んで、状態異常効果を付与する武器を作ってもらったらしく、その武器で訓練を重ねている内に自然と耐性が付いたと、自信満々に言うシオン。

 

 〝紫克衆(ヨミガエリ)〟は行動不能になりにくいので、不死性が高いのを生かして寸止めなどせずに、最後まで立っていた方が勝ちとする模擬訓練を繰り返していたのだと。

 

「リムル様、〝紫克衆(ヨミガエリ)〟が危険と判断したら、ロモコ殿達と俺の〝紅炎衆(クレナイ)〟が助けに入ります。コハク様、よろしいですか? ゴブア、いけるな?」

 

 ベニマルがコハクを見ると、コハクはこくりと(うなづ)いた。

 

 そして、会議室の扉を守護していた長身の大鬼族(オーガ)の美女が、ベニマルに呼ばれやって来る。

 リムルとベニマルの前まで来ると、(ひざまず)(こうべ)を垂れた。

 

 ゴブア、〝紫克衆(ヨミガエリ)〟の隊長であり、リムルが名付けた子鬼族(ゴブリン)から進化した魔物だった。

 

 ベニマルに(うなが)され、顔を上げリムルを見るゴブア。

 

「よし、それじゃあシオン率いる〝紫克衆(ヨミガエリ)〟に任せよう。ゴブアだったな、フォローは任せたぞ!」

「はい!! お任せくださいリムル様!!」

 

 凛々しい顔付で返事をするゴブア。

 

 実力はAランク超えのゴブア、ベニマルの部下にも実力者が育って来ているのをリムルは実感する。

 

 こうして聖騎士団百名の相手は、シオンの〝紫克衆(ヨミガエリ)〟に任せる事が決まった。

 ベニマルの〝紫克衆(ヨミガエリ)〟は、万が一に備えて待機。

 ロモコ班からは、もしもの時にはロモコとロロロオが〝紫克衆(ヨミガエリ)〟の支援に当たる事になった。

 

(よし、これで聖騎士達の相手は決まったけど、後はヒナタと行動を共にする聖騎士四名を誰に任せるかだけど……。今現在、仙人級に対抗出来るだけの力を持つ者は――) 

 

 一度中断した思案を再開するリムル。

 

(まず、俺とヴェルドラ。ツキハとコハクに二人の眷属の壱から十番まで。そして、ベニマル、ランガ、シオン、ソウエイ、ゲルド、ガビルにディアブロ。ハクロウは……魔素量(エネルギー)では劣るが、剣技だけならいけるだろう。ともかく仙人級である十大聖人は〝魔王種〟に匹敵するらしいしな。となると、残るシュナは魔法戦ならいけるが、近接戦を得意とする騎士が相手では厳しいか? うーん……)

 

 仙人級の聖騎士を抑えながら、人的被害を最小限にする。

 その手立てと人選に苦慮するリムル。

 

(俺はヒナタを相手にする、これは確定。ヴェルドラは論外だな。やり過ぎるのは目に見えているから、やっぱり街の守りを任せよう。俺達に気付かれぬよう動く別動隊がいる以上、街の防衛は強固にしないといけないな。ゲルドは、与えた任務に専念してもらいたいから、保留。ディアブロ、ハクロウ、ランガ、ガビルはファルムス王国に集中してもらいたいしな。となれば、残るは――)

 

「今、俺の配下で自由に動けるのは、ベニマル、シオン、ソウエイの五名だけか。後ツキハとコハクなんだが」

 

 つい気付かずに口にするリムル。

 

 それを聞いたベニマルが。

 

「当然、俺は出ますよ。リムル様」

 

 と、静かに答えた。

 

 指揮権はハクロウに譲っているので、これをリムルは許可する。

 

「うむ、頼む」

 

「俺も残ります、リムル様。情報収集は『分身体』でも行えますし、何よりルヴナンが我等の味方にいます」

 

 最近は情報収集の分担を行っている模様で、より深い闇の裏組織の情報などはルヴナンが担当しているとの事だった。

 

 なので、これもリムルは許可を出す。

 

「わかった、頼むぞ」

 

「なあ、リムル。あたしとコハクは、小娘(ヒナタ)とその聖騎士四名がいる所でプラプラしてるわ。手出しはしないけど、何かあったら動くよ。それでいい?」

「そうだな、不測の事態に陥った時には、即動いてくれて構わない。だけど――」

「――わかってるよ。死者は出さない、でも動きを奪う位ならいいでしょ?」

「ああ、それでいい。二人とも頼む」

 

 ツキハの提案にリムルは一瞬躊躇するも、こと戦いに関してはディアブロを除いて、ここにいる誰よりも経験を重ねて来てるツキハとコハク。

 

 この二人もヴェルドラと同じく、最終防衛ラインの要と考えるリムル。

 

 しかし、その力はベニマル達より遥かに強大であり、一歩間違えれば本当に死者が出かねない。

 リムルはツキハの申し出に一抹の不安を覚えるも、姿を消し潜み、更に気配を隠し偽りその存在を認知させない能力(スキル)を脅威に感じていたので、味方ならばこれを活用しない手はないと思い許可を出したのだ。

 

 ツキハの声を皮切りに、シオンが「私も! リムル様の秘書として、、常にお(そば)に!――」と言い出し。

 

 そこから、リグルドが「お待ちくださいリムル様! この不肖リグルドの出番かと」と立ち上がり。

 更に「それならば、私もおります」と、笑顔のシュナが申し出て、リグルまでもが「俺もいますよ、リムル様。ゴブタにだけ良い恰好はさせませんよ!」と申し出て来た。

 

 そんなリグルド達の声を嬉しく思いつつも、流石に〝魔王種〟と相対するには危険だと止める。

 

 それでもリグルド達は引かなかったが、最終的にはリムルに説得され名残惜しそうに席に着く。

 

 こうして段々とヒートアップして来た対策議論だが、何やら会議室の扉の向こうが騒がしくなっていた。

 

 

「ですから、今は大事な会議が行われている最中ですので――」

「いいから、オレ達もその会議に参加したいんだって!」

「やめなさいスフィア、何でいつもそう喧嘩腰で話すの。ねえ貴女、私達はただ、リムル様に恩返しをする為に協力をさせて欲しいと申し出ているだけですのよ?」

 

 扉の外から聞こえる話し声は、先程のゴブアと、三獣士のスフィアとアルビスだった。

 

 そして扉が開くと、スフィアとアルビスが入って来る。

 

「よお、邪魔するぜ。なんかさっき骨野郎が走ってるのを見たんだけど、何か起きたんだろ? オレ達にも協力させてくれないか、リムル様」

「リムル様、この度は突然の訪問をお許し下さい。スフィアは口は悪いですが、協力したいという気持ちは本当なのです。ですので何卒(なにとぞ)、私共にも恩返しの機会をお与え下さいませ。お願い致します、リムル様」

 

 そう言いながらスフィアとアルビスは、リムルの手前で(ひざまず)いた。

 

 その二人に対してベニマルがリムルの前に立ち、いつの間にかディアブロがリムルの横に付いていた。

 ベニマルはスフィアとアルビスを信用しているものの、不用意に接近するのを良しとしなかったのだ。

 リムルの横に立つディアブロも同じである。

 

 しかしリムルは、そんなベニマルとディアブロを「二人とも控えろ」と制止する。

 すぐさまベニマルとディアブロは席に戻り、同時にリムルはスフィアとアルビスの席も用意させた。

 下座に座るツキハの横にスフィア、コハクの横にはアルビスが座る。

 

 場が落ち着いたのを見て、リムルが二人に声を掛ける。

 

「協力してくれるという話だが」

「はい、リムル様。やって来るのは〝十大聖人〟なのでしょう? ならばその足止め要因が必要なご様子。コハク様とツキハ様がおられますが、やり過ぎない程度の役割ならば、私共がその役を(たまわ)りたく存じますわ」

「そうだ! オレが役に立つのは戦う事だけだからな。ツキハ様達はあまりにも力が大き過ぎる。それに、こんな時じゃねーと、恩義に報いる事も出来やしねー。是非ともオレ達を使ってくれよ!」

 

 スフィアとアルビスの提案を聞き、検討するリムル。

 

 カリオンに断りもなく使う事は出来ないと告げると、二人は、そういうところは寛容なのでカリオン様は大丈夫だと言い、逆に何もしないと自分達が怒られてしまうと訴えた。

 

 リムルは、スフィアとアルビスとの問答を繰り返していると。

 

「俺は賛成です。この者達なら信用できますし。何よりリムル様のご意向に沿う形なら、俺とソウエイ。そして、この二人が適任かと思いますよ」

 

 ベニマルの言葉に反対の声は上がらない。

 

「そうだな。頼めるか?」

「はい、お任せを!」

「そのお言葉に感謝を!」

 

 こうして、スフィアとアルビスという頼もしい味方を得たリムル達。

 

 ツキハが横に座るスフィアの頭を優しく撫でながら、「おーおー、暫く見ない内に言うようになっちゃって、あたしは嬉しいぞ」と微笑みながら言うツキハ。

 

 それを抵抗もせずに受け入れ、少し顔を赤らめ「いや、オレも成長してますって」とはにかみながら返すスフィア。

 

 アルビスもコハクから「しっかりきばりなはれ」と声を掛けられ、「はい」と嬉しそうに答えていた。

 

 

 これで、ヒナタ達に対する行動方針が決まった。

 

 最後に、今回の方針に穴がないかを皆が検討し、リムルは静かに目を(つむ)ったまま、最後の考えを纏めていた。

 

(ヒナタが話し合いに応じれば良し。しかし、そうでなければ一騎打ちで勝負を付ける。この策に穴があるとしたら、それは俺の敗北だ。智慧之王(ラファエル)先生は、俺の勝利を疑ってはいない。何故なら、その保険ともいえるルヴナンが、〝番外魔王〟達がいるからだ。それでも不測の事態は起きるものなんだけど、今回は二重三重に対策を打った。だから今は、皆を信じてやるしかない。もう、あの時とは、違うのだから)

 

 リムルは、スッと目を開けると。

 

「最後にもう一度だけ言っておく。やむをえず戦いになって、戦況が厳しいようなら、即座に相手の殲滅に移ること。優先すべきは仲間の命だ。そして、自分が殺されたら意味がないと(きも)(めい)じろ! 全員が今回も無事に帰還する事を期待する。以上だ!!」

「「「「「ハハッ!!」」」」」

「あんじょうきばりますかぁ」

「あいよ」

 

 リムルの言葉に皆の声が会議室に響き渡る。

 

 前回とは違い、万全の態勢でヒナタ達に挑む幹部達。

 その胸には、もうあの時のような惨劇は二度と起こさせないと、ベニマル以下皆が心に誓うのだった。

 

 そしてディアブロは、自分を(おとしい)れた者に対してどのような物をプレゼントするか、一人ほくそ笑む。

 

 

 

 

 

 

 そんなリムル達とは別に、数日前の事――

 

 小国シルトロッゾから、一人の男が出立していた。

 

 

 フード付きの黒色の外套(がいとう)を着た男、ヤスケ・テラウチ。

 

 黒い毛色の馬に(またが)ると、フードを目深に被り直し。

 ヒナタを追い、魔国連邦(テンペスト)に向けて馬を走らせる。

 

 

 フフフッ、待っておれ番外魔王ツキハ。

 

 拙者がその首、頂きに(まい)ろうぞ。

 

 

 

 

 




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