忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 大変お待たせしました。90話です

 今回のサブタイトル聖魔激突は、前編後編とは分けず、ナンバリング方式にしました。
 ラスト近くにはサブタイトルが変わりますが、恐らく前中後編で分けると話が収まりきらず、かなりの文字数になるのを避ける為に、この方式を選択しました。

 この方式を今回使う事を御了承頂ければ幸いです。


 ツキハ

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 コハク

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90話 聖と魔 ①

 

 

 ヒナタ達は、この街道の宿屋に泊まりながら、人間の店員と魔物の店員が一緒に働く光景を見て来た。

 

 宿屋を取り仕切る従業員は、ブルムンド王国で募集された人間達だった。

 魔物の店員達は人間の店番に、金銭のやり取りや接客を指導されながら働くその姿は、ヒナタをして、ルミナス教の教義を見直さざる得ないと思わせるには、十分であった。

 

 

 魔物が笑顔で人間に接客し、礼を言う。

 それだけでも、ルミナス教の信徒は目を疑い、混乱するであろうこの光景。

 

 ここには、人と魔物の理想的な関係があったのだ。

 

 

 だが、その魔物が働く姿を疎ましくみる男がいた。

 

(魔物と人が慣れ合う……。誠に鼻につく光景だな。この、俗物どもを斬り伏せたい衝動を抑えるには、苦労する。拙者(せっしゃ)の刃が、血を寄越せと騒いでおるわ)

 

 宿の食堂で朝食を取るヤスケは、内なる殺意を隠しつつ、無機質な目で魔物の店員を眺めていた。

 そして、宿を出ると、馬の手綱を引きながら歩きだす。

 

 朝早くで人もまばらな街道を少し歩き、人の往来が途切れたところで街道を外れ、今も残る旧街道へと入っていく。

 

 そこで、グランベルの密偵に馬を託すと、ヤスケは気配を消して走り出し、ヒナタの後を追っていった。

 魔力感知でヒナタの気配は捕らえてあるので、気付かれないよう森から行く事にしたヤスケ。

 

 目的は、番外魔王ツキハを斬る事、そのついでにヒナタを斬ればよいと考えていたのだ。

 

 グランベルからは、これから始まる策の事は聞かされていたので、どこでそれを利用するか?

 番外魔王ツキハはどこで出て来るのか? それらを思案しながら森をひた走るヤスケ。

 

 

 ヤスケとは少し遅れて、ヒナタ達も泊まっていた宿屋を後にしていた。

 

 ヒナタの首都リムル到着は、夕方になるであろう。

 ルベリオスを旅立ってからは、(おおよ)そ二週間の道程(みちのり)

 

 その一行をイチオが常に付かず離れずで追跡し、ブルムンド王国からはソウエイ達も一緒にヒナタ達を監視していたのだ。

 

 

 そして、首都リムルで刻々と入るソウエイと、眷属達の情報を纏めるリムル。

 

 一日ごとに宿に泊まって、急ぐでもない旅を続けるヒナタ。

 この、余りにも堂々としている姿に。

 

「リムル様。もしかして、陽動ではないですか?」

 

 ベニマルが言う。

 

 その発言にリムルも、敢えて目立つように行動して、自分を囮にして別動隊が奇襲を仕掛けて来るのではと、考えていた。

 

「ベニマル、別動隊の動きはどうなっている?」

「はい。やはり旧街道を使い、隠密行動で移動中です」

「そうか。こちらは全力で軍事行動をしているようだな」

「確かに。ですが、既にシオンが部隊を展開しています。もしも相手が動くなら、一気に状況が動くと思われます」

「ふむ。ヒナタの実力なら囮だったとしても不思議ではないだろうな。まだベニマル達では厳しいだろうし、相手出来るのはヴェルドラかツキハ、コハクくらいだから、俺が相手するしかない。恐らくだが、俺達全員を相手にしても勝てると考えてそうだがな」

「フッ、大した自信ですね。リムル様を知って尚、そんな馬鹿げた事を考えるとは、愚かな考えと言う他ありません。今や、ヴェルドラ様にコハク様ツキハ様がこの国に居るというのに」

 

 ソウエイが、剣呑な気配を漂わせ言う。

 

「まあ、ね。進化する前の俺しか知らないだろうし、ヒナタにはそれだけの実力があるのは間違いないよ。それに、あの時のヒナタが全然本気を出していなかったのは、良くわかるしな」

 

 そう言うとリムルは、出来ればヒナタが戦いではなく、対話を選択しくれればと願わざるを得なかった。

 

(既に状況は動きつつある、か。ヒナタ、お前はどうでるんだ……)

 

 リムルは、ヒナタが敵対しない方を期待するのだが、最悪の場合が起きた時の手筈(てはず)を今一度思い返す。

 

 そこへ、ベニマルがある懸念を口にする。

 

「……あれだな、別動隊が散開するのはまずいな。〝聖浄化結界(ホーリーフィールド)〟を張られたら、一気に戦況が不利になってしまう。ロモコ殿達の存在も、露呈しかねないな」

「そうだな、その場合は迎撃に出向いているシオンに連絡し――」

 

 ベニマルの言葉に頷いたソウエイが、途中で言葉を飲み込んだ――

 

「リムル様、どうやら動きがあったようです。この街の四方に散開しようとしたらしく、忍魔猫ゴモミコ(五百三)殿から一報が入り、シオンの部隊が急行、それを阻止しました。現在、交戦中だと」

 

 リムルが一番聞きたくなかった報告が、無情にも()されてしまった。

 

(そうか……ヒナタは戦いを選んだのか。仕方ない、俺の敵になるというなら、こちらも相応の対策を取らせてもらう。計画通りにな)

 

 ここに、聖と魔の戦端(せんたん)が開かれた。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 その、戦端が開かれる少し前に戻る。

 

 

 ヒナタとその部下達は宿を出て、一路首都リムルを目指して馬を走らせていた。

 

 このペースだと、夕方には首都リムルに到着するだろうと、全員の表情も緊張したものになっていた。

 

 ヒナタは、黙々と馬を走らせる中。

 少し馬の走るペースを落とし、早歩きくらいの速度に落とすと、先頭を走るヒナタの下にアルノー達が集まって来た。

 

 そして、ヒナタが口を開く。

 

「ようやくね。夕方には着きそうだけど、今日会えるかはわからない。皆も覚悟はしておいてね。もし、戦いになっても、手出しは無用。わかったわね」

「ヒナタ様、ですが……」

「これは命令よ。これ以上、魔王リムルと敵対する意味はないわ。万が一番外魔王が出て来ても同じ。特に、番外魔王ツキハには、絶対に刃を向けない事。向けた瞬間には、首が落ちてるわよ」

「「「「なっ!?……」」」」

 

 刃を向けたら、一瞬で首を落とされると聞いたアルノー達は、その言葉に絶句する。

 何故なら、戦いに関してヒナタは冗談などは決して言わないし、決して誇張もしない。

 そう、ヒナタは一度、番外魔王の二人と相対している事実は、アルノー達も知っていたからだ。

 

「いい、私がケジメを付けたら、後は友好的に話を進めて――」

 

 アルノー達に念を押そうとしたヒナタに突然、魔法通信による緊急連絡が飛び込んで来たのだ。

 ヒナタは直ぐに馬の足を止め、すぐさまその呼びかけに耳を肩抜けた。

 

『――ヒナタ、様――やっと、繋――がった……聞――こえ、ますか? 〝三武仙〟――が……参戦……――た』

 

 途切れ途切れながらも、必死さを感じさせる魔法伝達。

 その声の主は、ヒナタの腹心ニコラウス枢機卿からのものだった。

 

 かなり切迫した口調で伝えられるのだが、途切れ途切れでそれは要領を得なかった。

 空間ノイズみたいな音が時折混ざり、明らかに魔法通信を妨害されてるようだったのだ。

 

『どうかしたの? 何が起こったの?』

 

 ヒナタからの魔法通話は、どうやらニコラウス枢機卿に届く前に霧散している感じであった。

 

『ヒナタ様……〝七曜〟に気を付けて――』

 

 一歩的にそれだけを伝えると、ニコラウス枢機卿の反応は消え去った。

 

 予期せぬトラブル、それは間違いなく起こっているとヒナタは悟る。

 

(あれは、何度も私に何かを伝えようとして、ようやく繋がったと、いう事かしら? だとすれば、その前に事が起こったいう事になるわね。〝三武仙〟が参戦……? まさか、ファルムス王国の内乱に参戦したというの!?)

 

 この推測にヒナタの顔が、一気に顔が青()めていく。

 

 即座にヒナタは、〝魔法通話〟で法皇ルイを呼び出した。

 

『何かね? 法術の制御が乱れているようだが、何か焦っているのか?』

 

 法皇ルイの、いつものように平坦な口調で応答があった事に安堵したヒナタは、急ぎ自分の考えを伝える。

 

『ええ、余裕がないわね。単直に聞くけども、貴方、部下の〝三武仙〟を動かしたかしら?』

『何だと? 私はそんな命令は出した覚えはない。ヒナタ、本当に〝三武仙〟は動いているのかね?』

『ええ、動いているわ。それに、貴方は人間社会になど興味はなかったわね。そもそも、ルミナス様の命令にもあったし、大人しくさせておいたのだけど。勝手に動く彼等ではないし、何かあったのは間違いないわね』

 

 ルイの興味は、ルミナスと夜想宮廷(ナイトガーデン)にのみしか、向けられていない。

 だからこそ、ヒナタが全権を掌握しているのだ。

 

 反発されど、ヒナタの命令は絶対なのだ。

 

 それ故、〝三武仙〟が勝手な行動を取るとは思えなかった。

 なれば、それは何かが起きたという事に他ならない。

 

 そう、〝三武仙〟に何かを吹き込んだ者が、いるという事。

 

(チッ、〝七曜〟か!)

 

 嫌な予感が確信に変わり、ヒナタは急ぎルベリオスに帰還する決意をした。

 

 だがしかし、その決意は時すでに遅しであった。

 

『わかった。それでは私も――』

 

 いきなりズキッとした痛みが脳に走り、ヒナタはルイとの魔法通話が遮断された事に気付く。

 

 何らかの力場が周囲を覆い、魔法の発動を阻害し、魔力が拡散されたのだ。

 

 と同時に、大気を震わすような、大規模戦闘の気配を察知するヒナタ。

 

「なっ!? これは、この気配は――レナードなのか?」

 

 ヒナタの様子を見守っていたアルノーが、驚き声を上げる。

 

 その声を聞いたヒナタは、聖騎士団長として即座に思考を切り替えた。

 

 何かがあったのは言うまでもなく、ヒナタは皆に指示を出す。

 

「行くぞ!」

 

 これで、リムルとの交渉を前に、事態の悪化は決定的なものとなった。

 

 焦燥に狩られるもヒナタは、全速力で戦場へと馬を走らせて行った。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 別動隊が動いたとの一報は、ルブナン支店にも即知らされ、コハクとツキハはリムルの下へと急いだ。

 

 そして、ルブナン支店にいる眷属達と、首都リムルに住む眷属達に、首都リムル周辺に厳戒態勢をしくようコハクから命令が飛ぶ。

 

 そんな眷属の一人が、暗号化された魔法通信を傍受しコハクに伝えると、コハクはすぐさまそれをリムルに伝えた。

 

 それを聞いたリムルは、直ぐに魔法通信妨害をヒナタがいる周辺に施す。

 

 だがヒナタは、いきなり全速力で戦場へと向かって行った。

 

 ヒナタの策を、事前に潰したと感じたリムル。

 

 すれ違いの思惑が今、放たれた瞬間でもあった。

 

 

「やはり、ヒナタの策だったようだな」

「どうやらそのようですね。策を見破られるなり方針を変える柔軟な思考、流石としか言えませんね」

 

 リムルの言葉に同意するようにベニマルが頷き答える。

 

「よし、予定通りに今から始める。俺とヒナタで決着を付けるとしよう。ツキハ、コハク、俺とヒナタとの戦いに邪魔が入らぬよう頼む」

「あいよ」

「へぇ、まかしなはれ」

 

 リムルの言葉に、ツキハとコハクがいつものような口調で答えた。

 そこに緊張などは全くなく、ただただ忍びとしての顔を覗かせ始めていき、その余波を受けたベニマル達の方に緊張が襲う。

 

「いいか、勝つのは俺達だ。皆、足止めは任せる。行くぞ!」

「「「「「ハハッ!」」」」」

 

 ベニマル達がリムルの言葉に声を上げる。

 このリムルの言葉で、ベニマル達の緊張が(ほぐ)れていった。

 

 そして、ベニマル達を安心させるように、スライム状態から人化するリムル。

 

 リムル、ツキハ、コハク、ベニマル、ソウエイ、アルビス、スフィア。

 

「御武運を!」

 

 シュナの凛とした通る声に見送られ、リムル達はそれぞれの行動に移っていく。

 

 リムルは、ツキハとコハクの『空間転移』に連れられ、ヒナタに先回りしてシオンのいる場所に飛んだ。

 

 

 そこでリムルの見た光景は……。

 

 シオンの紫克衆(ヨミガエリ)では、聖騎士団相手では厳しいだろう――

 

(――そう思っていた、自分がいました……)

 

 リムルは半ば唖然として、それを見ていた。

 

(何だそれは? 訳がわからない。頭がおかしくなりそう? 一体なぜ、どうしてこうなった!?)

 

 眼前で繰り広げられるいく光景に、とうとうリムルは完全に言葉を失ってしまう。

 

 その傍らで、ツキハは腹を抱えて笑いを必死に(こら)えていて、コハクに至ってはどこか楽し気な笑みを浮かべていた。

 

 

 そこで何が起こっていたというと―― 

 

 シオンが腕を組み、紫克衆(ヨミガエリ)に指示を出していたのだ。

 

 この事は良かった、そう作戦通りだから。

 

 そう、その戦いぶりが常軌を逸していたのだ。

 

「何だこれは!? こいつら斬っても斬っても立ち上がって来るぞ!」

「信じられない! 首を落としたんだぞ! 何故再生するんだ!?」

不死者(アンデッド)じゃないのに、一体何者なんだ!?」

 

 戦場に響き渡る、聖騎士達の驚愕の叫び。

 

 その叫びに呼応するかのように、手に持つダガーナイフを一閃。

 紫克衆(ヨミガエリ)によって次々と傷を負わされていく聖騎士達。

 

 そう、紫克衆(ヨミガエリ)達は、自分達の身体を囮に、格上の聖騎士達に一撃を入れていたのだった。 

 

 あるものは腕を斬り落とされても、その腕を即座に蹴り上げ、キャッチして切り口に押し付ける。

 その再生速度は凄まじく速く、魔法で足を吹き飛ばされても、その場でローリング回避をしている間に吹き飛ばされた脚が再生されていく。

 

 この不死性を生かした戦いは、番外魔王眷属達から指導を受けていたのだ。

 無駄に身体を囮にするのではなく、如何に相手に斬られ致命傷を受けたかを認識させ、その隙に一撃を入れていく。

 その技法を、眷属達が暇をみては紫克衆(ヨミガエリ)達に教えていたのであった。

 

 如何(いか)にも致命傷を受けたかのように見せ相手の油断を誘う。

 これは、眷属達がまだそう強くなかった頃に、よく使っていた手。

 

 それを、着実に習得していった紫克衆(ヨミガエリ)達。

 

 だがしかし、眷属達から二つだけきつく言われていた事があった。

 

 一つ目、それは絶対に己の不死性を過信しない事。

 

 何故なら、この世界では不死性を持つ魔物に対して対抗手段があるから。

 特に覚醒魔王級などの相手には、その不死性も有効なアドバンテージにならないからである。

 

 そして、聖騎士の中でもヒナタは、その不死性に対抗出来る手段を持ち合わせているかも知れないからだ。

 

 それらを叩き込まれた紫克衆(ヨミガエリ)達は、油断を誘うように聖騎士達と戦いを繰り広げていく。

 

 リムルはこの戦いを見ていて、ある事を思っていた。

 最初こそは虚を突き有利に立った紫克衆(ヨミガエリ)達が、気を引き締め態勢を立て直した聖騎士達に翻弄(ほんろう)されるであろうと。

 

(そろそろだな。ここからは、戦いが激烈になっていってぇ……え?)

 

 斬り付けられた聖騎士達が徐々に動きが鈍くなり、崩れ落ち始めていたのだ。

 

(えーと……。何が起こっているんだ?)

 

 リムルは、紫克衆(ヨミガエリ)達の不死性だけでは地力に大きな差がある為、いいところ足止めが精一杯だろうと見ていた。

 

 だが結果は、重傷を負った者は直ぐに後方に下がり、傷を完全に回復した者が即座に前衛に出る。

 深追いと慢心はしない、これが眷属達に言われた、二つ目の絶対に守るべき事。

 

 これにより、常に前線には完全回復した者が戦場を暴れ回る。

 

 尽きることの無い焦燥感。

 今まさに、聖騎士達がこの状態に追い込まれつつあったのだ。

 

 そして、倒れて動けなくなった聖騎士は、紅炎衆(クレナイ)によって、一人また一人と動きを封じられていった。

 

 

 そこへ――

 

 一人の女の子の首が、一人の聖騎士の一撃により斬り飛ばされた。

 

 鮮やかな鮮血が切り口から吹き上がる。

 

 だがしかし、その女の子の身体は倒れる事もなく、斬り落とされた自分の首を左手で掴むと同時に後方へと飛び下がった。

 

 聖騎士と、女の子の間に一定の距離が空く。

 

 首を斬り落とし、これなら確実に()っただろうと確信した聖騎士の目に、信じられないものが飛び込んで来た。

 

 なんと、首を斬り落とされた女の子が聖騎士に向かって、ポーンと自分の首を山なりに投げたのだ。

 放物線を描きながらクルクルとまわるその首の目は、しっかりと聖騎士を捉えていた。

 

 それを、呆気に取られてポカーン見つめる聖騎士。

 

 その一瞬の隙を突き、首の無い身体は聖騎士に向かって走り出し、聖騎士の前でスライディング状態で股の間を潜り抜けていった。

 

 両手に持ったダガーナイフを真上に振りかざし、股間を斬り裂きながら。

 

「あぎゃおあああああああ! 俺の、俺の股間があああああああ!」

 

 股間を斬り裂かれた聖騎士は、股間を両手で押さえ(うずくま)り、悲鳴を上げる。

 

 潜り抜けた身体は落ちて来る首をキャッチして、素早く立ち上がった。

 

 そして、手に持った首を切り口に軽く押し当てると、即座に傷の回復と再生が始まっていく。

 

「えへへ~。聖騎士さん、死んだと思ったでしょ? でね、このダガーナイフにはね、強力な睡眠薬がた~っぷりと塗られているんだよ? だから、一撃入れた時点で私達の勝ちなの! ウフフ」

 

(おいおい、それを説明したら駄目だと思うんだけど、まあ、まだ子供だし仕方ないか)

《告。個体名:ゴブエは、個体名:ゴブタより年上です》

(え? マジかよ!? あーなんだ、魔物の生態はよくわからないな。ゴブタも進化したはずなのに、見た目はそう変わらなかったし。今後、ビックリするような進化をするんだろうか? しかし、小さな女の子に説明を受ける聖騎士とか、中々にシュールなんだが……。ククッ)

 

 少しクスッと、苦笑い気味に笑みを漏らすリムル。

 

 

 この、苦戦するどころか善戦している紫克衆(ヨミガエリ)達。

 

 リムルの予想を大きく覆すものだった。

 

 そんなリムルを、満足気な表情で見るシオン。

 

 

 次なる動きが戦場に起ころうとしていた。

 

 

 

 




 この作品を読んで頂きありがとうございます!

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