トランスフォーマー:Alternation of Cybertron   作:pova

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オートボット-地球編⑧:Total Devastation,Part2

くぐもったような乾いた発砲音が小さく響いた数瞬後、半狂乱になって暴れていたクランプルゾーンの胸部は正確に撃ち抜かれ、その破片が弾けるようにあちこちへと飛んでいった。

「…意外だったよ」

対象の無力化を確認したサンストリーカーはスコープ越しに獲物と睨み合うのをやめ、立ち上がってそうつぶやいた。

「あんたの銃の腕がここまでとはな」

持ち上げた銃を折り畳み、腰にしまいながら、サンストリーカーは足元に広がるプロールのもたらした結果を視界に入れた。

「いつも前線にいててくれてりゃ死ななくて済んだ兵士も大勢いたろうに」

棘のある声色でそう吐き捨て、サンストリーカーは忌々しげな顔をした。

 

そんな彼の様子をちらと見たプロールは、臆する風もなく毒づいた。

「率直に言って、お前を含めた大半のサイバトロニアンの感覚は非論理的で野蛮に過ぎる。指揮官には指揮官の役割があるんだ…単に戦えればいい兵士と違って私に代わりはいないのだよ」

そう言うと、彼は手にしていた銃からアンカーフックを引き抜く。

足元に転がるいくつかの物体へと繋がっており、それらを引き寄せてきたワイヤーが無造作に投げ落とされた。

 

「へぇ」

「そうなると…誰よりも偉いのにバンバン前線に出てきてたうちのトップがまるでバカみたいじゃないか」

サンストリーカーは途中で失笑混じりになりつつ言い返した。

 

「あれが…バカでなくてなんだ?全軍の総指揮を執る役目にありながら戦場のど真ん中で、それもメガトロンと違って雑兵を庇いながら戦うような奴を他になんて呼べばいい?」

頭全体をわずか傾げて虚空を睨むような顔で、プロールは問うた。

 

「分かった分かったそこまでだ。お喋りが過ぎるぞ参謀殿」 

付き合いきれないといった様子でサンストリーカーはプロールのツノを指で弾き、話を打ち切った。

 

「…止めても聞かない相手を説得するいつものような苦労を思い出させてしまったなら、それは悪いことをしたな。この通り心から謝罪しようじゃないか」

プロールはある種の感覚器官である部位を触られた不快感を滲ませ、サンストリーカーを見下しながら不満げに言った。

 

「へ、仲間割れかよ。お前_」

プロールの足元に転がっていたドレンチが言葉を発した。

意識を取り戻すまでの間に体中の銃創からエネルゴン漏れを起こし、彼らのいる場所には紫色の水たまりが出来ていた。

 

「おっとそこまでだドレンチ、余計なお喋りをすれば分かってるよな」

いずれも異なる特殊弾頭で傷つけられたドレンチの体のうち、唯一損傷していない左脚をサンストリーカーは蹴り飛ばした。

 

「ここで何をしていた?」

プロールは怯えた様子のドレンチの顔をしゃがんで覗き込むようにして近づき、ゆっくりと訊いた。

 

「だ、誰が…言うかよ。撃ちたきゃ撃ってみろってんだ」

 

「なるほどいい案だな…」

サンストリーカーはそのドレンチの挑発に反射的に銃を取り出して彼の片眼に近づけ、その銃口を押し付けて眼を潰そうとした。

 

「あぁ分かった分かったってば!!」

「…は、話すがよ…」

 

「まだ若干の心理的抵抗があるらしいが…なるほど、お前は情報を漏らせば確実にサウンドウェーブの制裁を受ける」

ビークルのフロントガラスごとひび割れたドレンチの胸にはアンカーが突き刺さっており、裂け目からはエンジンの煙とエネルゴンが漏れ出していた。

「それを恐れているのだろうが、我々はどのみちお前を彼らのもとへ返す気はない」

そのアンカーを掴み上げて彼を引っ張りながら、プロールが淡々とそう通告した。

 

「まさか保護してくれる…って訳でもねぇよな」

そう言ってドレンチは小さく笑った。

 

「誰も手を出せないような遠い遠いところに送ってやってもいいぞ」

サンストリーカーが素早くそう返した。

 

「それならそれで向こうには俺を待ち構えてる連中が大勢いるだ_」

ドレンチがそう言い終える前に、持ち上げられていたワイヤーから手を離されて彼は倒れ込んだ。

「…なぁオートボット、こんな場所で何をしていたのかって訊かれてもな、それについちゃ俺は大して知りゃしないんだ」

 

「殺すか」

サンストリーカーがそっけなくそう言いながら素早くドレンチの頭を踏みつけ、彼のマスクにひびが入った。

 

「早まるなよ。まだ少しだけ早い…ドレンチお前、サウンドウェーブには何も聞いていないのか?」

プロールはサンストリーカーを軽く諌め、淡々と尋ねた。

 

「も、もらった任務はこうだ」

ひび割れた顔をひきつらせ、上ずった声でドレンチは喋りだした。

「クランプルゾーンを引き連れて工場にある装置を取り付けろと…装置の目的は知らないが…あ、あの形じゃどうせ爆弾かなんかだろう」

 

「どうする?念のため場所を移すか?」

サンストリーカーが少し屈み、声をひそめた。

 

「そうだな…物によっては対処する必要があるかもしれない。ここが爆発したら…まずいぞ」

プロールは神妙な面持ちで考え込みながら、ゆっくりとそう告げた。

 

「なんでだ?」

目線だけを動かし、サンストリーカーは不思議そうにゆっくりと訊いた。

 

「ここでガス爆発でも起きようものなら、下の市街地は全滅だ」

プロールは短く返答し、苦い顔をした。

 

「…あぁ、なるほどね」

 

A

 

オプティマスは肩の砲塔や両手の銃に脚のミサイルを放ちながら、それらにかき消されることのない声量でそばにいた仲間に向かって指示を叫んだ。

「ハウンド!もっと正確に狙いを付けるんだ!」

 

ハウンドは抱えおろしたガトリング砲を正確に撃ち鳴らしながら、負けない声量で怒鳴り返した。

「言われた通りにやってはいるんですがね!この際連中が変形してこっちに襲いかかるよう誘い込みます!」

 

「それでは時間がかかり過ぎる!爆撃機だけでも_」

空中を目まぐるしい速さで飛行する標的を相手にしながら、オプティマスは整然と返答する。

 

「当てました!目標がフラついてます!!」

鈍い大型の全翼式爆撃機は右側の翼のあちこちにズタズタに穴が空けられ、その箇所から黒煙を上げていた。

 

オプティマスがその言葉を聞き、肩部の双砲がビームを放つまでは一瞬だった。姿勢を制御出来なくなりつつあった爆撃機に着弾するまでの時間はさらに短かった。

 

「直撃を確認、目標は高度を落としてますが_」

「…上空から一機が突っ込んで来ます!!」

姿勢を大きく傾けて今にも墜落しそうな爆撃機と入れ替わるように、灰と黒に彩られた戦闘機が急速に二人のもとへ近づいていた。

 

「久々だなァ…プライムさんよ」

その一機は速度を残したまま地面に近づいていき、翼の下から両脚をのぞかせて段階的に人型へ変貌していった。

脚部の爪を地面に突き立てて滑りながら減速し、砂塵と瓦礫を撒き散らして停止した。

 

「ニトロゼウスだ」

オプティマスは辺りを舞う土煙に遮られながら体のパーツを組み替えるようにして変形していくニトロゼウスのシルエットを見据え、その中心にある黄色い一つの眼と睨み合った。

「ハウンドは爆撃機の追撃に専念しろ!ここは私に任せてもらう」

オプティマスは両手の銃を撃ち放ちながら命じた。

 

「了解!」

慌ただしく装甲車に変形して去っていくハウンドをよそに、二人の戦いは始まっていた。

 

「俺の相手は一人で十分って思ってンのか?まァ今度こそ邪魔抜きでやれるならいいか。さっさと始めっぞ…!!」

オプティマスの銃撃を右腕の装甲で防ぎ、ニトロゼウスは叫んだ。

 

オプティマスは左脚のミサイルを一斉に撃ち放つ。

「こっちにもミサイルはあンだよ!!」

それに対してニトロゼウスも背中のエンジンブロック上部に備えたミサイルを全て撃ちだし、それらがぶつかり合い両者の間に爆煙が広がった。

吹き飛ばされかけたニトロゼウスは一度空中で翻り、眼下に広がる煙の中に向けて左腕と一体化したキャノンを五連射した。

 

「その手は食わん」

吹き飛ばされたオプティマスは変形しながら最初の二発を的確に回避し、残りは粒子燃焼砲で焼き払った。

 

地上から煙を貫いたその光条はニトロゼウスの肩先をかすめ、先端を熔解させた。

「ビームも撃てるようになったか?」

ニトロゼウスは飛翔して横一直線に急接近し、トレーラーヘッドから人型へと再変形している途中だったオプティマスの側頭部を殴りつけた。オプティマスが振り下ろしてきた斧に対しては柄を右腕で受け止めながら、左手で頭部を押さえつけその勢いのままに地面に叩きつけた。

「そういやお前はコレを味わったことはまだなかったっけな。邪魔もないし久々にブチかますか?」

力なく倒れ伏したオプティマスを踏みつけながら、意気揚々とニトロゼウスが言い放った。

「雷に、灼かれちまいなァ…!」

ニトロが眼を黄色く光らせてそう叫ぶと、彼の全身から閃光が迸った。

 

A

 

ハウンドは黒煙を上げながらゆっくりと落下する爆撃機を追走していた。

「もうじき墜落するな…いや_」

地面に激突する寸前にそれは形を変え、無限軌道とミサイルを備えた形態へと変化し、そのまま地上を走り出した。

「変形した?…戦車にもなるってのか。さながら、周囲に破壊を撒き散らすだけの装置だ」

そう言うとハウンドは変形を解き、屈んで銃を構えた。

「動きが単調になった分、狙いはつけやすくなったか…」

後部に配置されたままのエンジン部に狙いを定めた瞬間、ハウンドは上空から足元に銃撃を受けた。

 

「オートボットの割にやってくれる…GB (ギガントボム)!さっさと起き上がりなさい!」

空中に浮遊してハウンドを見下ろしながらそう叫ぶと、その戦闘機らしきトランスフォーマーは再び両手に保持した機銃を連射した。

 

「誰だお前!?」

装甲車へと変形しながら攻撃を回避しつつ、ハウンドは動揺を隠せずにそう問うた。

 

「スモークスナイパーって名前、聞いたことない?」

腕を組んで相手をじっと見下し、首を傾げるようにしてスモークスナイパーが訊いた。

「…じゃあ、スモークジャンパーって名は?」

 

「生憎だが、ないな!」

ハウンドはルーフの上に増設したガトリングを走行しながら撃ち返した。

 

スモークスナイパーは左右に翻って銃撃を軽やかに回避した。

「残念…だけど、あなたが最後に聞く名はそれになるわよ」

そして上下逆さに空中で一瞬静止し、背中に格納されていた砲塔を素早く展開させて赤い光条の束を解放した。

 

「そうはならんさ…そちらさんが最後に聞くのが俺の銃声になるだけだ!!」

ハウンドはそう叫んで跳び上がる。

スモークスナイパーの放ったビームが起こした足元の爆風に吹き飛ばされながらも踊るように変形し、彼は上下の二体に対してショットガンと肩部のキャノンを向け、決して外れぬ狙いを定めた。

 

D

 

クリフジャンパーがビークルのまま、廃墟と化した家屋の壁を突き破った。

「ようデモリッシャー!殺しに来たぞ!久々にな!」

 

その声を聞き、デモリッシャーは素早く戦車から変形して振り向いた。

「赤いチビか!生意気な口を!」

彼は反射的に両手の五指に備えられた機銃を連射させ、とっさに弾幕を張った。

 

「そんな動きで俺に当てられんのかー!?」

デモリッシャーの銃撃は辺りを囲む家屋や車に弾痕を刻むばかりで、すばしこく動きながら変形を繰り返しつつ挑発するクリフには当たらなかった。

 

「遊んでやる気はない!さっさと帰れ!!」

しびれを切らしたデモリッシャーは両肩の二連装砲を放ち、周辺の障害物を残らず粉砕する。

「よし…黙らせたな」

 

「ヘリまで飛んで来たか…誰だっけなあいつ」

クリフはその衝撃に紛れ、ディセプティコンの爆撃で出来た地面の凹みにビークルの姿で潜みつつ改めて様子をうかがっていたが、ふとヘリのローター音を聴覚に捉えて上を見上げた。

 

「ブルーバッカス!ニトロはどうした!?」

デモリッシャーは空から降りてきたその闖入者に向かって怒鳴り散らした。

 

「目を離すなとは言われてたが、俺が増援に来たのはオーバーロードの命令だ。契約主はあの人なんでな」

ブルーバッカスと呼ばれた彼は人型に戻って不遜にそう言い放ち、掴みかかってきたデモリッシャーを軽く払いのけた。

「今ニトロは向こうでプライムどもと遊んでるが、あいつもクリフジャンパーがこっちにいると知ったら飛んでくるだろうよ…」 

そう言いのけるとブルーバッカスはその右腕と一体化したテイルローターとブレードを変形させて後方に畳むことで収納されていた砲身を展開させた。

そして左腕の翼に装備されている四門の機銃とともに前方へ銃口を向けつつ、彼は側頭部のアンテナを伸ばして慎重に索敵を開始した。

 

「奴が来るなら…そうなる前に、片付けないとなぁ…!」

そう小さく叫んでからクリフジャンパーは全速力で駆け出した。

 

「随分見くびられてるらしい…赤チビ風情が」

彼が動き出す前に反応したブルーバッカスは全身の武装を駆使して迎撃したが、小柄で機敏なクリフジャンパーにはどれも致命的な有効打になり得なかった。

彼はその赤い装甲にいくら弾痕を刻まれようともいささかも勢いを止めず、跳躍や変形を繰り返した立体的な機動で素早く距離を詰めるのだった。

そしてブルーバッカスは両手に持ったメイスでクリフに胸部を殴り飛ばされてしまう。

 

「誰が赤チビだよ、金次第でどっちにも転ぶクズ野郎が」

クリフはブルーバッカスの胸にあるディセプティコンのインシグニアが削れ、下にあった傭兵のそれがところどころ露出したのを見て、静かにそう言い返した。

 

「そう簡単に片づくかよ…」

胸に向けた衝撃で大きく吹き飛ばされ、ブルーバッカスは地面に落ちた。立ち上がりざまにそうつぶやき、彼は左腕の機銃を掃射した。

 

「飛べばいいだろ。ご自慢の羽はどうした?」

ブルーバッカスの銃撃を受けてもものともせずにクリフは全力で近づき、そう言い放つと同時に胸を蹴りつけ、両腕のメイスで殴り飛ばした。

 

「っ…俺の羽なら_」

のけぞったブルーバッカスは咄嗟に右腕の装備を組み換え、メインローターの転じたブレードを左右から展開させることで瞬時に鋏を形成してみせた。

「今見せてやるさ…!」

そう言うと同時にブルーバッカスの放った一撃はメイスごとクリフの左腕を切り落とした。

 

「片腕ぐらいで仕留めた気になってんじゃねぇぞ!」

クリフはすぐさまブルーバッカスの側頭部を回し蹴りで吹き飛ばして距離を取り、そう吠えて自らを鼓舞した。

 

「いいぞ!そのままズタズタに_」

その様子を後ろで眺めていたデモリッシャーがそう言いかけたが、間の悪いことにブルーバッカスはそれをクリフに向けての言葉と思ったのか、苛立ち紛れに左腕の機銃を向けて彼を沈黙させた。

 

「妙だな…お前_」

クリフは拾った片腕を傷口にあてがって繋ぎ直しながら、何ごとか言いかけていた。

 

「考えごとをする余裕があるか?」

断続的に重く鋭い音をたてながら右腕の鋏を開閉させ、一歩一歩クリフににじり寄るブルーバッカスをよそに、デモリッシャーは戦車に変形して隙を見せたクリフに一斉射撃を浴びせた。

 

「おっと」

「忘れてたぜデモリッシャー!お前もいたんだったな!!」

反射的に飛び起き、クリフは両足で駆け出した。 

割って入った砲撃に驚いて後ろを振り返ったブルーバッカスを真横に蹴り飛ばし、右手に持ったメイスを乱暴に振り回しながら迫りくる弾幕を防いだ。

 

「生意気を!」

そう言い後退しかけたデモリッシャーだったが、クリフジャンパーの投擲したメイスに左肩の砲塔を刺し貫かれてしまった。

 

「チンケなランチャーとバイバイしなぁ…!」

緊急時の手段である肩の砲身そのものを噴進弾として撃ち出すという攻撃の寸前だったことが災いして、デモリッシャーは誘爆とともに焼けただれた肩口から吹き出す火と煙で身動きが取れなくなった。

 

そんな彼を前にクリフは猛然と迫る。

「代わりに俺の腕をくれてやる!!」

クリフは両の手を握り合わせ、くっつきかけていた左腕を引きちぎると、凄まじい勢いで回転しながら右肩の砲塔に向けてしならせた左腕による一撃を叩き込んだ。

 

「この…小癪な赤チビめ…砲塔がイカれた…!」

主砲とその上部にあった五指からなる機銃までも潰されたデモリッシャーは攻撃機能を喪失し、その場に擱座した。

 

「どうよ…俺の全力は…?結構、効いたろ_」

ひしゃげた左腕をどうにか繋ぎ直そうとしながら、クリフも力なく地面に両膝をつき、そして倒れ伏した。

 

「チッ…ブルーバッカス!俺を運べ!撤退だ!!」

大慌てで走り出そうとしながら、デモリッシャーが喚いた。

 

「重いし御免だね、そんな面倒は…」

履帯を損傷したのか、がたがたと震えるばかりで一向に動き出す気配のないデモリッシャーを眺めながらブルーバッカスは呆れ気味にそう返した。

「だいたい俺に何の得がある?」

 

「ディセプティコンとしての義務はどうした!」

デモリッシャーは変形を解いてブルーバッカスに詰め寄ろうとしたが、履帯で構成されている脚部を損傷していたためすぐに転けた。

 

「戦力にならない者にかける慈悲はねぇやな…俺は別に誇りとやらを持って紫のエンブレムをつけてるわけじゃないんだよ」

そう告げつつブルーバッカスは悠々とクリフに近づいた。

「赤いのに縁がなかっただけさ」

意識を失っているクリフジャンパーの首元を左腕で握り潰さんばかりに力を込めて掴み上げ、右腕の鋏で胴を斜めに切り裂いた。

クリフの体は左肩から深く切り込まれ、右脚が落ちた。

そしてブルーバッカスは鋏を勢いよくクリフの胸元に突き立て、ねじりながら鋏を開いて深く抉った。

紫の飛沫が辺りに飛散し、空気とともに呻き声のような音が彼の胸から漏れた。

 

「全く、前のメンバーの方がマシだったかもな…」

デモリッシャーはブルーバッカスを見ながらそう吐き捨て、慎重に起き上がった。

 

「嫌味か?あぁ分かったよいいぜ運んでやる。席に乗りたいなんて贅沢だけは言うなよ」

ブルーバッカスはそう言い返すと手にしていたクリフを放り投げて素早くヘリコプターへと変形した。

「それにこの運賃は高くつくぞ…ボスには敵を仕留め損ねたのはお前のせいだと言うからな」

デモリッシャーは腕である機銃部を損傷しながらもヘリのスキッドにどうにか器用に掴まると、彼はぶら下がりながらブルーバッカスのその言葉を不服そうに聞いていた。

 

D

 

荒野に成り果てた市街地の瓦礫に紛れ、銀の手甲と黒々とした銃砲だったものが転がり落ちていた。

「お前が来るとは思わなかったよアイアンハイド」

名を呼んだ相手をその履帯で踏みつけ、押し潰しながら、戦車はこともなげに言い、発進した。

 

「グ…」

走り出した戦車の下敷きになりながら地面と履帯に挟まれ、アイアンハイドは低く唸った。

 

「悪くなかったが、俺も忙しいのでな…作戦の最終段階に移らせてもらおうか」

嘆息するようにその戦車は言い、わざとゆっくりと時間をかけて停止した。

「メガジェット!」

力強くそう叫び、戦車は砲塔を地面に突き刺し前のめりになるようにその場に直立した。

 

「させ…るものか!!」

アイアンハイドはそう叫んで立ち上がろうとしたが、彼の脚は思うように機能しなかった。

 

「素晴らしい。そのガッツは見上げたものだ」

戦車は座して動かぬままに、愉快そうに言った。

でも無駄よ。私達をただのツーインワンと侮ったが運の尽き

上空から降下してきた大型航空機がそう声を発し、辺りに爆風が吹き下ろした。

「今だ!!」

分かっている

叫んだ戦車に航空機は冷静に反応し、合体が開始された。

その機首は分離し、エンジンブロックを中心として左右に伸びる腕部の肩口へと接続された。

戦車は左右に割れ、両脚と腰部とを構成した。

それら二つの塊は腰を境目として接続され、接合部から火花が散り、光の筋が全身を伝った。

「「合体…オーバー…ロード!!」」

オーバーロードはタイミングを合わせて叫び、アイアンハイドの首を掴んで持ち上げた。

恐怖と闘志に満ちたなんていい顔…よこしなさい。私に

彼女は嗜虐的な笑みを溢れさせ、喜悦を滲ませた声色でそう言った。

 

「な_」

アイアンハイドが何か言いかけた瞬間、その顔にオーバーロードの手が差し込まれ、顔面の表皮が剥ぎ取られた。

 

ハンサムね…

掌に載せたそれを眺め、アイアンハイドを踏みつけながらオーバーロードは恍惚の表情を浮かべ、彼の顔であった物にその唇を当てた。

 

「まだだ…思い通りには…」

表皮を剥がれ、地面を這い回るアイアンハイドの顔面は蠢くようにしながらどうにかそう言葉を発した。

 

…ナンセンスよ

オーバーロードはより力強くアイアンハイドを踏みつけ、履帯で彼の腰をズタズタに押し潰す。そして彼を両手で掴み上げ、上下に引き裂いた。

 

「これでお前も上下バラバラ…俺達とお揃いだな。まぁざっとこんなものだ…待て、それを持ち帰る気か?」

オーバーロードは足元に転がるアイアンハイドの上半身と下半身を一瞥した。

これでコレクションに新顔が加わった。文字通りね

そう言いながら彼女は右手に持ったアイアンハイドの顔を胸部に収納しようとした。

「来たようだぞ…奴が!!」

オーバーロードが走行音を聞きつけ、彼は雄々しくそう叫んだ。

遅かったじゃない_

彼女はそう言いかけ、艷やかな笑みを浮かべた。

 

A

 

「なぁプライムよ、いよいよアンタも終わ_」

ニトロゼウスは電撃に灼かれたオプティマスを踏みつけながら、鷹揚に言いかけた。

 

「よく見ろ。自分の体をな」

オプティマスはゆっくりとそう言い放ち、左手に持った斧の全エネルギーを解放させて突きを繰り出し、その一撃でニトロゼウスの胸を貫いた。

 

流し込まれたエネルギーが閃光を放って弾けた後、辺りに一瞬静寂が広がり、風が凪いだ。

ニトロゼウスは胸に大穴の開いた状態で、片膝をついた。

「なァプライムよ、種明かしは…なしか…?」

 

体のあちこちをひしゃげさせ、内部から黒煙を立ち昇らせながら、オプティマスはすっと立ち上がる。

「お前の雷とやらのエネルギーの大半はこのマトリクスに吸収させてもらった。それを突き返してやったまでだ」

オプティマスはそう言いながら関節部の可動を確かめるように斧を片手で振り回した。

 

「マトリクス…チンケなアクセサリーだと、ばかり…思ってたよ。俺のと、違ってな…」

ニトロゼウスは首元にぶら下げたいくつもの砕けたオートボットのエンブレムを誇示するように見せてそう言った。

「そんな機能が、な…道理であのメガトロンが、手こずる訳だ_」

ニトロゼウスは悟ったようにそう言い、力が抜けたようにその場に倒れ伏した。

 

「次だ」

機能停止した彼を意に介さず、オプティマスは変形して走り出した。

ふと辺りの潰れた家屋や噴き上がる煙の先にオーバーロードの巨躯が立ち上がるのを発見し、彼はスピードを上げた。

 

「来たようだぞ…奴が!!」

遅かったじゃない_

「「…プライム!!」」

ビークルモードのまま猛然と迫るオプティマスを見るとオーバーロードはにわかに色めき立ってそう叫んだ。

 

「確かに…どうやら遅かったようだ。あとは任せてくれ」

オプティマスは変形を解いたその勢いのままにオーバーロードに飛び蹴りをかますと、足元にあったアイアンハイドの体を見下ろして言った。

 

「肩に砲台を付けたぐらいで勝てる気でいるようだな」

見え透いている…

事もなげに立ち上がったオーバーロードは嘲るようにそう叫び、腹部の六連砲を斉射した。

 

オプティマスは咄嗟に飛び退き、両手に持った銃で迫る弾幕を一発づつ確実に撃ち落としていった。

「やはり速射性は多少落ちたか…改良の余地はある」

 

行け!メガチャイルド!!

オプティマスの着地の瞬間を狙い、オーバーロードは左肩に装備した機首ユニットを分離させた。

 

「騒々しい!」

機銃を連射しながら急接近した子機の突撃を腹部に受け、上空へと吹き飛ばされながらオプティマスは呻いた。

 

「隙だらけだな!」

オーバーロードは落下するオプティマスめがけ、腹部の一対の砲塔からロケット弾を放った。

 

「まだだ」

とっさに胸部の増加装甲を切り離して囮にし、オプティマスは姿勢を崩さずに着地した。

パージされた装甲はロケット弾の直撃を受けた部分からじわじわと溶け落ちていき、やがて消滅した。

 

オーバーロードはすかさず低空を飛行して急接近し、その勢いのままオプティマスに左肩からタックルをしかけた。

突っ転ばされたオプティマスだったが着地すると同時に銃を捨てて掴みかかる。

オーバーロードは素早く反応し、オプティマスの突進の動きを見切って胸部を蹴り飛ばした。

私達、こうして拳を突き合わせたのは初めてかもしれないわね?プライム

オーバーロードはそう言いながらオプティマスへと迫り、両者は互いの両手を握り合わせて押しあった。

「俺達がずっと望んでいた瞬間だ。お前一人の選択のために星は死に絶え、戦う力のない者さえ命を奪い去られた」

オーバーロードは顔をぐいと近づけて一言一言を絞り出すように発し、またその度に一歩づつオプティマスを押し返した。

そのせいで今ではこんな姿に…メガトロンについたのもこの瞬間のためよ。引き裂いて簡単に殺すのでは飽き足らない

そう告げて、オーバーロードは至近距離のオプティマスめがけて腹部の全砲門を一斉に展開した。

 

「結構なことだな。執念に免じて左腕くらいはくれてやる…」

オプティマスはフレームごと左腕を切り離して素早く飛び退いた。

 

「外れた…いや外したのか!」

オーバーロードの放った砲撃が両者の間に爆風を起こし、両者は吹き飛ばされた。

 

「報いを受けるのはお前達の方だ」

爆音に遮られるようにして、オプティマスのその声はくぐもって小さく響いた。

そして辺りを包み込んだ煙が晴れる前に、それらを突っ切って高く飛翔する影があった。

 

「跳び上がったな!いい的だ_」

いや違う…あれは!?

オーバーロードが気取られ、見上げたそれの正体はオプティマスではなく、 彼が脚を蹴り上げると同時に切り離した右のミサイルコンテナであった。

 

「私ならこっちだ…!」

煙に紛れて距離を取り、銃を回収していたオプティマスが力強くそう叫び、続いて二発の銃声が響いた。

 

「…謀られたか!」

オーバーロードは最初の一発で腹部を砲塔ごと撃ち抜かれ、脚部から素早く引き抜いて構えた銃も遅れてやってきた二発目に破壊された。

 

「この斧もくれてやる」

銃を地面に置いてそう言うとオプティマスは展開させていない小振りな状態のエナジーアックスを起動し、素早く投擲した。

 

ぐ…この程度

首元に投げ斧の直撃を受けてもオーバーロードは怯まずそれを引き抜こうとし、切り口からは肉塊を踏みつけたような粘着質な音が響いた。

しかしその瞬間に乾いた音が上から連続して響き、落下音が近づくのを察知した彼は反射的に空を見上げた。

「あれは!上のミサイルが!?」

オプティマスが切り離したミサイルコンテナから散弾が撃ち放たれ、雨霰のようにオーバーロードに降り注いだ。

 

「これで肩の子機は潰れたな」

オプティマスが言い放った通り、メガチャイルドと呼称されたそれは推進器やキャノピーに機銃を損傷し、オーバーロードの表皮もろともズタズタに引き裂かれていた。

 

「もはや生かして帰さんぞプライム。俺達の星を滅ぼしただけにとどまらずまだ罪を_」

武装と表面の装甲以外には損傷もなく平然と歩き出すオーバーロードの口調には、より強い怒りが滲んでいた。

彼らは遅れて落下してきたミサイルコンテナを無造作に何度も踏みつけ、潰した。

 

「お喋りが過ぎるな」

にべもなくそう言い放ち、オプティマスは拾い直した銃でオーバーロードの首と眼を撃った。

 

私のすぐ眼の前に来て_

オーバーロードの顔面の半分ごと左の眼が砕け散り、彼女はその真新しい傷を手でそっとなぞった。

「ここに立ってそう言ってみろよ」

 

「そんな義理はない」

そう言うとオプティマスは弾切れとなった銃を投げつけた。

 

「そうかな?」

そう問いかけ、オーバーロードは戦車と航空機とに素早く変形し、投げつけられた銃を避けながら突進した。

 

「分離か…」

上下から迫りくる敵機を見据え、オプティマスは思案した。

 

挟み撃ちよ

「潰れろ!」

彼らは同時にそう叫び、オプティマスへと迫った。

 

「爆撃する気か」

上空を覆うように飛行するジェット機を見てそう言い、オプティマスは近づいてくる戦車に立ち向かった。

「少し…役に立ってもらおう」

轢かれる寸前に飛び移り、オプティマスは戦車の上にしがみついた。

 

「降りろ!!」

左右に揺れながら戦車はオプティマスを振り落とそうとする。

 

「メガジェットとかいったか、お前の脚となる戦車ごと撃つがいい」

オプティマスがそう叫んだ瞬間、戦車は崩れた屋根を利用して飛び上がり、オプティマスを振り落としてジェット機に接近しようとした。

 

「ドッキングだ!」

了解

そう叫んでから間もなくジェット機は戦車を下部に吊り下げた形態となり、同時にありったけの爆弾を一帯に投下した。

その数秒後、地上は局所的に爆炎と黒煙に包まれ、瓦礫もろとも辺りの建物は完全に消滅した。

 

「右脚が消し飛んだか」

嵐のような爆風が一帯を覆い、音が止み煙が晴れた後になってようやくオプティマスは自身の状況を把握した。

「…それでも戦車の重さの分、向こうの動きは鈍くなっているはずだ」

その場に転がり、ゆっくりとそう判断したオプティマスは右肩の粒子燃焼砲を起動させた。

「残るはこれか…直撃させる!!」

背を向け、撤退しようとしている様子のオーバーロードを狙い、オプティマスは右肩からエネルギーの奔流を解き放った。

それはオーバーロードの左の翼を撃ち抜き、辺りに轟音をとどろかせた。

 

「この星での初任務でこの体たらくか…感覚が鈍っているな」

最後に出来ることはまだあるでしょう?

「…では行くか」

ゆっくりと旋回し、黒煙を上げながらオーバーロードはオプティマスの方へと一直線に突っ込んできた。

 

「粒子砲はエネルギー切れか…来るがいい!」

装甲ごと右肩部の粒子砲を切り離し、オプティマスはその場で左脚だけでどうにか立ち上がり、右手を広げてそう告げた。

 

「我らの恨みを思い知れ!」

全ての武装を失ったオーバーロードが猛然とそう叫び、体当たりの特攻をしかけてくるのを前にして、オプティマスは何も言わずにただ立ち尽くしていた。

 

「否…お前なぞに狩られてやる気はない」

オプティマスはオーバーロードが直撃する瞬間にもう一本のエナジーアックスを引き抜き、脚のバランスを崩して倒れるタイミングですれ違いざまに全力の一撃を浴びせた。

「これは私の斧ではない。ホットスポットのものだ」

そう言ったオプティマスは辺りを覆う爆炎の中に倒れながら、意識を手放しつつあった。

「しかし、無事に…返せるだろうか」

遠くには引き裂かれたオーバーロードのオルトモードがバラバラの状態で佇んでいたが、間もなくトランスワープで転送されて消えた。

生存してほしいキャラ

  • オプティマスプライム
  • アイアンハイド
  • プロール
  • ブロードキャスト
  • ホイルジャック
  • パーセプター
  • ラチェット
  • ギアーズ
  • ホイスト
  • サイドスワイプ
  • サンストリーカー
  • レッドアラート
  • ウィンドチャージャー
  • クリフジャンパー
  • グリムロック
  • ホットスポット
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