トランスフォーマー:Alternation of Cybertron   作:pova

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オートボット-地球編⑨:Total Devastation,part3

「そっちの状況はどうなってる!?」

プロールの怒声が通信越しにクリフの頭へと響いていた。

 

「とりあえず敵さんにはお引き取りいただいたよ…ただ、アイアンハイドとオプティマスが死にかけてるし、ハウンドももう戦える状態じゃないみたいだな。どうやらトランスフォームコグをもぎ取られたとか言ってた…らしい」

地面に寝転がりながら、クリフはノイズ混じりの声で小さくそう答えた。

 

「ところでお前はどうなんだ?」

サンストリーカーが訝しげな口調で通信に割って入った。

 

「あぁ俺か?俺はなんとか手足を繋ぎ直したところだ。なんたって不死身だからな、ただちょっと気になる奴がいた…まぁその話は後だ。でそっちの状況はどうなんだプロールよ」

 

「じき援軍が来る」

プロールの口調は事務的なものだったが、その中に微かな高揚がうかがえた。

 

「援軍だって?へぇ、そんな人手が俺らにあったか?」

クリフは寝返りを打つようにして転がり、夕焼けに染まりつつある空とあちこちから上がる黒煙を眺めながら言った。

 

「聞けクリフ、先日レヴィアサンが捕捉された際、その艦を追う機影が確認されていた。そしてついさっき…軌道上にそれと同一らしき飛行物体が観測された」

「今しがたブロードキャストから送られた画像を見て確信したよ」

プロールはそう通達し、クリフジャンパーに画像を転送した。

「あれは…スカイファイアだ」

 

「なるほどね。なら勝ちはもらったな」

彼はその言葉に静かに微笑み、起き上がってそう言った。

 

「あと数分でお前のいる地点に向かうはずだ」

 

「ヘキサティコンどもの暴れた跡を嗅ぎつけてか?」

クリフジャンパーはふらつきながらそう問い返した。

「で、その後はどうするよ」

 

「落ち着いて聞いてほしいのだが、ドレンチを締め上げた結果この化学工場にディセプティコンが細工をしたせいで下の市街地を巻き込んだ大規模事故が発生する可能性が高いことが分かった」

 

「そんなん俺らにどうしろって?ロクでもねぇ場所に工場なんて建てやがって」

がっくりと肩を落とし、クリフは呆れるようにそう言った。

 

「スカイファイアのD.0.Cと私の頭脳を使う」

 

「待ってくれプロール、今通信が繋がったぞ!…スカイファイア!ブロードキャストだ」

プロールとクリフの通信にブロードキャストが割り込み、その興奮気味な叫び声が全員の聴覚レセプタに響いた。

 

「あぁ、こっちでもずいぶんと懐かしくて白くてデカい飛行機の姿が見えてきた」

クリフジャンパーはその時、夕日を背にゆっくりと接近する機影を見つけた。

 

「こちらも聞こえている。再会を喜んでいる時間はないようだ、状況を教えてほしい」

凛とした口調でそう告げた声は地球の言語ではなかった。しかしその言葉を受け取った三人が三人とも瞬時に意味を理解できた。

 

「サイバトロン語なんて久々に聞いたな…まぁヘキサティコンの攻撃で都市が半壊、そこに俺らが出張ってドンパチが始まった。もう動けるのは俺だけってな具合だ」

古い仲間から馴染み深い母星語を聞き、クリフは同じ言語で素早くそう応えた。

 

「とりあえず今はクリフだけ拾って私のいる地点に合流してほしい。ブロードキャストのナビゲートに従ってくれ」

プロールも遅れて適応し、サイバトロン語で指示を飛ばした。

 

「長らく宇宙を漂っていた君の体はまだ久々の重力に適応しきれていないだろう。地球の重力はサイバトロンほどではないが…」

 

「問題ない…今こちらもクリフジャンパーを発見した、回収する」

ブロードキャストの言葉を聞き終える前にスカイファイアはそう返し、眼下の赤い小さな目標に向けて高度を落とし、減速した。

 

「そっちに飛び移るぞ!」

クリフジャンパーは思いきりよく跳び上がり、ゆっくりと目の前を通過していくスカイファイアの底面から展開したグリップを掴んだ。

「よう!アークが出航した日以来だな!!」

クリフはぶら下がりながら機首の方に向けてそう叫んだ。

 

「およそ0.4キロサイクルぶりだ。今のサイバトロンの戦況について話したいことも多いが…」

スカイファイアはそう応えたが、ふと景色を見下ろして言葉を失った。

「これをヘキサティコンがやったというのか…これではじきこの星もサイバトロンやネビュロンと同じようになってしまうだろう…惨いことだ」

スカイファイアは速度を落として静かにそう言った。

 

「残念ながら感傷は後にしてもらうほかないね。スカイファイア、君に今地図データを転送した。サイバトロン仕様ではないがそれは勘弁してくれ」

ブロードキャストがそう応じると、スカイファイアの航空管制インターフェースにマップがインストールされた。

次にそれがノイズ混じりの立体映像としてキャノピーの内部にぼんやりと浮かび上がる。

 

「目的地を確認した。急行する…クリフ、振り落とされるなよ」

スカイファイアはそう告げ終わる前に急加速をかけ、白い矢のように夕焼け色の空を貫いた。

 

「さすがにこの速度だと約束は出来ねぇな…!相変わらず加減を知らない奴だ」

クリフは体中の関節が軋む音を風を切って聞きながら、どこか嬉々としてそう言った。

 

「あの小さいのか?見えてきたな」

一方、工場のサンストリーカーは空の彼方を見据えてそう呟いた。

 

「…待て、ドレンチはどうした?」

プロールがふと思い出したように彼に訊き、ふと足元の重い感触に気がつきゆっくりと視線を下ろした。

 

「おっと」

サンストリーカーは足元を見、物言わぬドレンチが転がっているのを見つけた。

「……奴は自分自身の最後のスイッチを押したみたいだな。この通り、もう使い物にならない」

サンストリーカーはドレンチの眼を覗き込み、胸板をこじ開けて彼のスパークがボディごと輝きと色彩を失っていくのを見てからそう告げた。

 

「何だと!?まずいな…余計にまずい」

プロールは顎部に片手を当てて考え込む仕草をしながら深くうつむき、もう片方の手で神経質にツノを掻いた。

 

「つい油断してたよ…理由は間違いなくあれだろうな」

上空を見渡していたサンストリーカーの頭がある一点で止まった。

彼の視線の先では鳴き声を発しながら鳥のような影が、旋回するように空を飛び回っていた。

「サウンドウェーブの愉快なペット達だな。裏切り者の口を封じに来たか?」

 

「レーザービークか…」

「単に作業の進行を確認するための偵察だったんだろうとは思うが…ドレンチにしてみれば裏切りの瞬間を見られた訳だからな。奴なら情報を漏らした者の末路はよく知っていただろう」

プロールはスパークを露わにされたまま倒れるドレンチとそこから彼のエネルゴンを軽く味見しているサンストリーカーを見下ろした。

そしてそのどちらかを、あるいは両方を哀れむようにそう言った。

 

「誰よりもな…まぁそれはさておき、来たぞ」

サンストリーカーがそう言った時、轟音とともに強風が彼らに吹き下ろした。鳥のような影を蹴散らして直進し、スカイファイアはゆっくり高度を下げながら二人に迫ってきていた。

 

「よっと」

低空を浮遊するように空を漂うスカイファイアからクリフが飛び降りた。

 

するとスカイファイアはゆったりと降下し、その巨体を地球の大地に触れさせた。

そして彼の体は様々な音をあちこちから立てて航空機から人型へと形を変えていった。

「到着した。プロール、ここでは何が起きている?」

スカイファイアは膝部を地につけるようにしてプロールと目線を合わせ、厳粛に声を発した。

 

「これからここで起きることを防ぎたい。D.0.Cを使えるか?」

プロールはスカイファイアを見上げて口早にそう答えた。

 

「…いいだろう。君の様子からしてもただならぬ状況のようだ」

彼の整いながらも無機質な顔つきでしばらく思案した後、スカイファイアは了承した。

彼の背部にあるバックパックの側面装甲が開き、内部から小さな楕円状のものが発射された。

 

「なんだこのチビどもは」

それらはおびただしい数が放たれ、地面を転がったかと思うと前後に引き伸ばされた球体のような形から上下に伸延し手と頭らしき部位を露わにした。

半透明のドーム状の頭部を感情表現でもするかのように点々と発光させ、彼ら"D.0.C"はその翅のような両手を羽ばたかせるようにして浮遊した。

 

「奇跡の使いさ」

辺りに浮いて漂うドロイドの群れを見て、プロールは笑みながらそう言った。

「…ディセプティコンがこの化学工場のガス貯蔵施設に何らかの細工をした。爆発の破片やそれによって漏れ出るガスが下の市街地を襲う前に対処したい」

 

「了解した、D.0.Cを作戦モードに移行。爆発物の探知を開始」

配下らにそう告げると、スカイファイアはバイザーとアンテナを備えたヘルメットを展開させた。

指示を受けたD.0.Cは両手を格納し、下部の推進機を吹かして列になって規則正しい軌道を描きながら辺り一帯へと散らばっていった。

 

「よくこれだけの量を運搬出来たもんだ」

整然とタンクに取りついて蠢くように表面を精査するD.0.Cの群れを見ながらクリフが言った。

 

「私のペイロードはそこらの輸送艦にも劣らないよ。よし…爆発物の反応を感知した。全部で六三箇所だ」

 

「やはり爆弾か?装置の詳細と残された時間が知りたい」

プロールはスカイファイアの顔を振り返って見上げながら、そう尋ねた。

 

「今彼らが分析中だ…」

そう言ったすぐ後、スカイファイアはヘルメットの額部に手を当てて深く俯いた。

「やってくれる…凝った仕掛けだ、しかも相当に悪辣な」

 

「んで、チビどもはなんて?」

苦々しい口振りでそう告げたスカイファイアを見てクリフが訊いた。

 

「彼らの分析によれば、これは爆弾でもあるがそれ以上に別の何かだ…この装置は分かりやすく言うなら、ガスの貯蔵タンクに噛みつき、その牙から内部に充填された化学剤を噴射してガスを変質させるものだ」

ディセプティコン(私の古巣)でこの手口のものを作る化学者となると限られるな…悪趣味さで言えばミックスマスターやオイルスリックというよりスピッターかコンタギオンが近いか…」

 

「で、そのガスが漏れるとどうなる?」

サンストリーカーが考え込むスカイファイアに鋭くそう言い、先を促した。

 

「変化した気体は有機生命体に対して強い毒性を持つものだ。私は獣の生体構造には明るくないことをあらかじめ断っておくが、恐らくは呼吸器官や循環系などの機能不全を誘発するものだろう。だが我々のような機械には大した影響はない、せいぜい吸気系のフィルターの劣化が多少早まる程度だろう」

スカイファイアはゆっくりとそう言って肩口にあるインテークを軽く指で叩いた。

 

「…これは明確に人間のみを対象にした毒ガス攻撃という訳か」

プロールは渋面を浮かべたまま、頭を傾けてそう言った。

 

「この装置はガスの作業が終わり次第、吸着部からタンクを爆破させる。中から弾け飛んだ気体は素早く拡散し、恐らくはその比重のために下へ下へと移動するはずだ」

スカイファイアはそう言って街を見下ろした。

 

「で、爆発までの時間は?こんな議論してる暇はあるのか?」

サンストリーカーはやや慌て気味にそう問うた。

 

「ガスが変化し終わるまでは…あと0.2ヴルームだ」

 

「ぇえーっと…今度からはまず最初に言ってくれよな、それ」

静寂の中、クリフが小さな顔に引きつった笑いを浮かべてそう言った。

 

A

 

そこはほんの数十分前まで激闘が繰り広げられていた場所だった。二体の巨大なロボットが本気で殺しあった末の結果として、見渡す限りの家々や道、車に至るまでその巨体にすり潰され、あるいは流れ弾を受けて燃えていた。

戦いの果てに両者の一方は去り、もう片方は煙や生々しい肉の焼けるような臭いの中屍同然の状態で取り残されていた。

「プライム!動けるか!!」

倒れていたオプティマスの側頭部に少佐がバギーで駆け寄り、全力でそう叫んだ。

 

「私よりハウンドとアイアンハイドを頼む…それとこの斧だ。これだけでも…」

右手に掴んだままだった斧を手放し、プライムは暗くなりゆく空を見上げた。

 

「二人なら既に部下達が回収に向かっている最中だ」

少佐はオプティマスの側頭部に備わる円状のグリル部に近づき、それが彼の耳と思ったのかそこへ向けて告げた。

「それより聞けプライム、第二地点の状況が分かってきた。ディセプティコンがガス貯蔵タンクに細工したせいで、このままだと下の市街地を巻き込んだ毒ガステロが起きかねない。目的は不明だが、向こうが本命だったのかもしれん」

 

「何…!?」

オプティマスは少佐の言葉を聞いてその方を振り向き、急いで立ち上がろうとした。

 

「無理に動くな。さっきスカイファイアとかいう奴が来てプロール達と事態の解決に当たっている。お仲間なんだろ?お前達の」

体を無理やり動かして起き上がろうとするオプティマスと顔を見合わせ、少佐はゆっくりとそう言い含めた。

 

「彼がこの星にいるのか?」

「なら出来るだけ早く話がしたいものだが…」

右腕と左脚でどうにか座り込むような姿勢へ体を持っていき、オプティマスは遠くを見るようにそう言った。

 

「あぁ、俺だ…今プライムを見つけた。連れて戻る」

思い出したかのように少佐は胸元の通信機にそう言い、次にオプティマスを見上げて訊いた。

「輸送機を待機させてある。基地まで戻るぞ…変形は出来るか?」

 

「右前輪と左後輪以外は失った。走ることは難しいな…私をそのバギーで牽引してくれないだろうか」

「…待て、それより街の被害はどうなっている!?」

オプティマスは緩慢な動作で体を変形させ、左腕と右脚の欠けた体は不自然にパーツを喪失したボロボロのトレーラーヘッドへと姿を変える。

 

「まだ調査中だが…よくて半壊ってところだろうな。あちこち焼け野原だよ」

バギーの後部からウィンチを取り出し、バンパーに取り付けながら少佐は応えた。

「…プライム、お前達の星はどこもこんな景色だったのか…?」

彼はふと手を止めて夕焼けに浮かぶ黒煙やそのたもとにある崩れた商業施設や押し潰された学校、折れ曲がったビルを見た。

 

「どうだっただろうか…もう、思い出せもしない」

そう返したオプティマスの声はバンパーのすぐ上から低く響いた。

 

「そいつはいい。こんな凄惨な光景は忘れるに限るな」

オプティマスに、あるいはそれ以上に自分に言い聞かせるようにして少佐は輸送機の待つ地点に向けてバギーを乱暴に発進させた。

 

A

 

「1ヴルームってさ…」

クリフが恐る恐る口を開いた。

 

「地球で言うとおよそ8.3分だな。そもそもヴォスなどの一部の地方でしか使われてなかった単位のはずだ。随分と久々に聞いた」

プロールが投げやりに短く答えた。

 

「あぁ待ってくれ、正確に説明するとガスが変化し終えるまでの猶予は0.2ヴルームだが、D.0.Cが爆弾を分析すると同時にそれぞれ制御に介入して今は一時的にガスの変化を遅らせている」

「タンクは七つ。一つにつき九個の爆弾が付いていてそれらが同時にガスを変化させていた。おそらく完了まではあと数%だろう」

 

「焦らせるな…それで?次はどうする」

暗さを増す空を見上げながらサンストリーカーがそう訊いた。

 

「このまま逃げ帰ることは出来ん」

プロールはそう言うと、変形してタンクの方へ走った。

 

「爆弾をハッキングして止めてるなら安全だと思うんだが…」

「爆破されたらガスが下に溜まるってんなら地下に沈めりゃいいんじゃないか?それこそうちの基地にでも」

クリフはプロールを追いかけざまにそう言った。

 

「だが基地までは空輸になるだろう。もし間違いがあったら下にある街に危険が及ぶことになる、プロールもそれは嫌だろうさ…そんな犠牲は計算外だからな。あの偉そうな爺にどやされるのがオチだ」

サンストリーカーが嫌味ったらしくそう応じた。

 

「しかしとにかく今の私達には、議論の時間も満足にありはしないんだ。ヘキサティコンがこの星でもたらした破壊を超える惨劇さえ起きかねないだろう」

スカイファイアが足で三人の後ろを走りながらそう諭した。

 

「我々が下手を打てば眼下に広がる街が丸ごと死の景色に早変わりする可能性もある、という訳だ…この際、将軍らの指示を待つ気はない。ブロードキャストが状況を伝えているとは思うが、こうした事案に彼らが適切な判断を下せるとも思えん」

「スカイファイア、九体のフォースフィールドを展開させたD.0.Cを使えばガスを封じ込めたままこのタンクを移動出来ないか?」

プロールはガス貯蔵タンクの列の前まで迫り、変形して停止した。

 

「可能だろうとは思うが…彼らの寿命と引き換えだな」

球状の巨大なタンクとその表面に蠢くD.0.C達を見下ろし、スカイファイアはそう告げてフォースフィールドを起動させた。

 

「ならそれをスカイファイアに宇宙まで持ってってもらえばいいんじゃないか?」

クリフはそう言い、タンクを覆うフィールドに触れようとした。

 

「まず上に持っていくアイデアから離れろ…輸送中に落下したら何が起こる?」

サンストリーカーが呆れた面持ちでそう言い、クリフのツノを引っ張り上げて制止した。

 

「いっそ爆発させてしまうか…?」

プロールがふとそう言った。

 

「となれば下だね。土壌のことを考えれば後々に問題になる可能性も考えられるが…」

スカイファイアはそう応え、屈んで地面に手を触れた。

 

「下か…穴でも掘るかね、昔みたいに」

クリフはそう応じ、小さく笑った。

 

「穴か…ブロードキャスト、この周辺に適した地下空間はないか?廃坑でも何でもいい!」

ブロードキャストに向けて、プロールは冷静さを欠いた様子で早口に問うた。

 

「分かった、調べてみよう」

「…どうやら、工事したものの結局運用されずに終わった区間の地下鉄道がそのまま放置されているらしい、他の路線との接続も物理的に封鎖されているだろうとは思うがその大元の路線はそこからそう遠くない地域でまだ現在も運行している…」

ブロードキャストはすぐにそう返答した。

 

「スカイファイア、今すぐ粒子砲でこの真下をぶち抜け…!」

 

「待ってくれプロール、今、君に当時の駅の配置マップを転送した。正確な位置を把握してから作業に当たってくれ」

慌てて制止し、ブロードキャストはそう言い含めた。

 

「…確認した。タンクを運ぶ距離と時間を考えれば…この辺りでいいだろう。線路跡はおよそ何フィート下だ?」

タンクの列から少し離れた何もない空間までマップを頼りに移動し、プロールはそう訊いた。

 

「今スチールジョーが持ってきた資料によれば90だ」

そう言ったブロードキャストの声にスチールジョーの吠える声が混ざった。

 

「スカイファイア、その粒子砲でここを90フィート下まで撃ち抜けるか?」

プロールは地面に印を付けてから少し考え込んだのち、そう尋ねた。

 

「フィート?」

 

「まぁそういう反応になるよな、分かるぜスカイファイア。俺もそうだった」

クリフジャンパーはスカイファイアを見上げ、鷹揚にそう返した。

「…サイバトロン流に言やぁ、地面をだいたいスワーブスの地下二階の深さまでぶち抜いてほしいんだと…酒蔵ごとな」

そう冗談めかして言い、クリフはスカイファイアの脚を軽く叩いた。

 

「了解だクリフ。最適な出力に調整さえすれば問題ないよ…では、危ないから少し離れていてくれ」

スカイファイアはクリフの方を見下ろしながらにこやかにそう応じた。

そして三人が大急ぎで距離を取ったことを確認すると、彼は背部から一対の粒子砲を取り外した。地面に重い金属音を立てて落ちた砲塔の下部を展開させて持ち手を引き出し、両手に把持しながら高く飛び上がった。

次に粒子砲を左右に連結させて一点に狙いを定め、そっと引き金を引いた。すると暗くなりゆく空から赤い光の奔流が降り注ぎ、途端に辺り一帯は昼以上の明るさに包まれた。

その一撃は衝撃で土砂を飛び散らせ、全てを赤一色に染めながら地面に大穴を開けた。

 

「いつ見ても大した破壊力だな」

赤く熔融した穴の側面を見ながら、クリフが感嘆した。

 

「底が見えたが…D.0.Cのフォースフィールドでタンクを包んだまま七つともこの下に運ぶ。…には浅いし狭いな」

プロールはヘッドライトで底を照らしながら見下ろし、スカイファイアが戻ってくるのを待ってから彼にそう伝えた。

 

「もしかして今結構無茶なことしようとしてるのか俺ら?」

クリフは思いついたようにそう言い、遥か下にぼんやりと見える赤く焼け焦げた穴の底を見下ろした。

 

「"不死身のクリフ"らしからぬことを言うんだな?…他に選択肢がない場合に限ってはいかなる無茶も無茶とは呼ばれない」

サンストリーカーはクリフを笑うようにそう返した。

 

「…クリフ、お前が下に行って様子を見てくれ。ちなみに今気がついたがスワーブスは他と違って酒蔵を含めても地下90フィートには少し足りん」

プロールがヘッドライトをつけたまま立ち上がり、クリフに向き直ってそう命じた。

 

「あぁはいはい降りりゃいいんだろ?けど別に着地する時も全く痛くないって訳じゃな_」

プロールにいきなり光を浴びせられたせいかクリフは言い終える前に穴の縁で足を滑らせ、そのまま赤く煮えたぎる穴の底へと叩きつけられた。

「熱っ、あれ?…崩れた!?」

今度はその底が落下の衝撃で崩れ、更に底へと沈んでいくさなか彼は反射的に叫ぶ。底が抜けた先にあったのはただただ広大な細長い横穴だった。

その朽ちかけの空間に駅らしき面影を残すものは少なく、線路だったであろうものの上に崩れた壁や柱が散乱するのみであった。

 

「やはり崩れたか…」

プロールは穴の底から崩落音とともに響いたクリフの叫び声を聞き、そう呟いた。

 

「"やはり"って言ったよな今。通信で聞こえてんぞコラ」

「まぁ…こっちは見る限り、あのデカいタンクが入るだけの高さと奥行きはありそうだ。人間どころか野生動物の気配もなし、それに風も吹いてないしどことも繋がってはいなさそうだ」

 

「了解した…スカイファイア、近いものから移動を開始させてくれ!」

プロールはクリフの報告をじっと聞き終えるとそうスカイファイアに告げた。

 

「待った、レーザービークがまた近づいて来たらしい。鳴き声がしやがる」

側頭部を手で押さえ、サンストリーカーが忌々しげに言った。

 

「サンストリーカー、排除はお前に任せる。お前は夜目が利くだろうし、私とスカイファイアは手が離せないんでな」

オレンジのフォースフィールドに包まれて鈍く光るタンクを見つめ、その方へ歩き出しながらプロールが告げた。

 

「…よく見ればラットバットとバズソーもいるな。俺の見間違いだと思いたいんだが、俺のオプティックサイトに限ってはそんなことはあり得ない。また損な役回りだ…プロール、お前の銃借りっぞ」

一つに思えた敵影が三つに分かれるのを見たサンストリーカーは言い終えるより早く、プロールの腰から銃をもぎ取った。

 

「そういえばついさっきそこに落ちてた銃を拾ったのだが、これは君のかい?これも使うといいサンストリーカー」

立ち上がったスカイファイアはサンストリーカーを見下ろして、手から持っていた何かを放り落とした。

 

「これはドレンチのだが…まぁ使えないことはねぇやな。そういやあんた手癖が悪いんだったか」

スカイファイアの落とした銃を拾い、サンストリーカーは戸惑いがちに言った。

 

「何でも拾ってしまう性分でね。収集癖があるらしい」

スカイファイアはD.0.Cに指示を飛ばしながら、短くそう言った。

 

「まぁいいさ、狩りの時間だ」

夜空に浮かんだ三つの影が自分めがけて一気に降下するのを見て、サンストリーカーはそう言うと一気に変形して飛び出していった。

 

「降ろすぞ!」

プロールが通信でクリフに呼びかけ、フォースフィールドに包まれたタンクが取り付いているD.0.Cごとゆっくりと降下を始めた。

 

「了解だ!」

クリフは穴の底から少し離れたところでタンクが穴のあちこちを掠りながら降下していくのを見上げていた。

「問題発生だ!バリアの中でガスが漏れ始めてる。穴のサイズが少し小さかったからか?」

体に備わったライトでタンクの表面を照らしながら、クリフはオレンジ色のフォースフィールド内に気体が吹き出しつつあるのに気がついた。

「…この際一気に降ろせ!一応言っておくが俺を潰さない程度にだぞ!!」

そう言い、クリフはゆっくりと重い音を響かせて目の前に軟着陸したタンクを広大な横穴の奥の方へと向かわせるべくD.0.Cらを誘導した。

 

「最初の投下が終了した。残りも順次投下するぞ」

プロールがそう告げると、スカイファイアは次のタンクの操作を開始した。

高度に統率されたD.0.Cにより次々とタンクは暗い穴へと運ばれ、フォースフィールドが消えると同時に彼らも動かなくなった。

「チビどもが止まったか、見かけの割に大した根性だったな。…スカイファイア!こっちもだいぶ煙たくなってきたし帰りたいから俺を引き上げてくれ!!」

クリフジャンパーは穴の底で両手を振ってそう伝えた。

 

「了解だ。今行くよ」

スカイファイアはそう言って穴の中へと飛び降り、クリフが伸ばした手を取ると勢いよくそのまま上へと放り投げた。

 

「そういうことじゃねぇっての…」

クリフは穴から投げ出され、山なりの軌道を描きながら地面に激突すると、土くれにまみれて大の字になりながらそう言ってふてくされた。

「それよかサンストリーカーよ!そっちの様子はどうなんだ?」

 

「大したことはない。バズソーに片指を食われたぐらいだ」

思い出したようにそう訊いたクリフらの前にサンストリーカーが戻って来てそう告げた。

「それに…ラットバットを捕まえたぞ」

右腕に逆さ吊りにしたコウモリのようなものを掴んで、彼は自慢げに続けた。

 

「久しぶりだね」

穴から飛び出したスカイファイアは着地すると同時に膝をついてラットバットと向き合った。

「そういえばパーセプターが君のことを解剖してみたいと言っていたよ。叶えてあげられそうだねラットバット」

 

「ジョークのセンスは"ディセプティコンのジェットファイア"だった頃から進歩がないな!所詮お前もこちら側の存在という訳だ!」

バタバタと羽をはためかせて、ラットバットは逆さにされながらまくし立てる。

「プロール!お前には直ちに私を解放する義務がある!議員への暴行は明確な倫理規定違反のは_」

 

「暴行?ペットに躾けを与えたまでだ…喚くなよコウモリ野郎」

サンストリーカーは心底苛立った様子でそう告げると、ラットバットの翼と足を片方づつ折った。

 

「よく言うよなこいつも。よその星への侵攻がどれだけ重い罪かは分かってるのか?」

クリフが嘲るようにそう言い、怯えたように押し黙ったラットバットの顔を上機嫌に見下ろした。

 

「私の初任務は無事に終了したようだね」

二人と一匹の様子を見下ろしながら、スカイファイアはプロールに向き直ってそう言った。

 

「改めて…よく来てくれたなスカイファイア。早速苦労をかけてしまったが、D.0.Cについては後日回収してもらうことにしよう」

プロールは右手を差し出し、そう伝えた。

 

「もし回収出来ても、もう彼らは動かないよ。今回のことを含めずとも長旅で無理をさせ過ぎたからね」

スカイファイアはその大きな右手の指を二本伸ばして握手に応じた。

「よその星であのレベルの機器を使うのは星間協定に抵触する恐れがあったのだが…そのあたり厳格な君が止めなかったのは意外だ。元は植民惑星の原住生物を殺戮するための兵器として私が設計したものなのは知っていただろう」

左手を顎部に当ててうつむきがちに考え込む仕草をしながらスカイファイアはそう訊いた。

 

「事情が事情だ。ディセプティコン製でも使えるものは利用するさ」

プロールは彼に背を向けて短くそう言った。

 

「だがそれに、現地の知覚生命体との接触はオートボットコードにも明確な規定が_」

スカイファイアは胸部のオートボットエンブレムから該当部の文面を立体映像で浮かび上がらせた。

その時、彼の背部からガタガタとくぐもった音が響いた。

 

「…スカイファイア、バックパックから異音がしている」

プロールがツノを立て、怪訝そうに振り返って言った。

 

「え…?あぁ、そうらしいが中身に心当たりがありすぎて分からないな。一旦外してみようか」

そう言ってスカイファイアはバックパックを外した。

バックパックは地面を凹ませて着地し、倒れると同時に内側が開いた。

 

「収集癖か…中がこうまで散乱しているとはな」

プロールが二人か三人は入りそうなスペースの中にはミサイルや工具類に予備の翼とタイヤ、謎めいた牙や死骸、それに燃料タンクやエネルゴンキューブなどが取りとめなく乱雑に散らばっていた。

その片隅からガタガタと震える音が響いた。

 

「あぁ、これか!フリィトの卵が孵ろうとしているらしい。D.0.Cに一機だけお守りをさせていたんだが…」

片手を損傷しているD.0.Cの一機が慌てふためくように無事な方の手をはためかせて卵を見ていた。

 

「サイバトロン星から原生生物を持ち出したのか!?」

プロールは何気なく言ったスカイファイアにそう怒鳴った。

 

「いやいや、これはよその星で譲り受けた変種だよ。感染症の媒介や生態系に与える影響のことを考えればある意味余計にまずいがね…」

旧友譲りのしたり顔めいた笑みを浮かべながら、スカイファイアがにこやかに言った。

「おっと。か、殻が割れ始めた!」

 

「…なんとも無愛想な顔つきだ」

殻を割って飛び出した竜のような小動物と顔を見合わせ、プロールは心底つまらなそうに言った。

 

「元気に咆えている…君を親だと認識してしまったようだね」

「この子がこの世で最初に見たものが君の顔だとは、愉快な話じゃないか」

スカイファイアはとても愉快そうにそう言って笑った。

彼の大きな手に乗ったその幼体は瞼を重そうに目を細めて、体を震わせながらプロールに小さく火を吐いた。

 

「こんなに釈然としない気分は久々だ…さっさと基地に戻るぞ」

竜の子は飛び上がってプロールの頭にくっつき、爪を突き立てて掴まるとそこであくびをするように口を開けてプロールのツノを挟んだ。

「ツノを噛むな!!」

 

「そういえば、グリフは元気にしているかな?ビーチコンバーにも会いたいところだ」

 

「時間をかけて話させてもらうつもりだ…仲間のことも、この星のこともな」

能天気に言ったスカイファイアと対照的に、プロールは重い口調で消え入るように、しかし決然とそう告げる。

夜闇の中、四人と連れられた二匹はゆっくりと基地に向けて歩き出した。

生存してほしいキャラ

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  • アイアンハイド
  • プロール
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  • ラチェット
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