トランスフォーマー:Alternation of Cybertron   作:pova

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ビー覚を見に行きたいけれど諸々の都合が合わないpovaです。
久々の更新ですが、この章のラストスパートももう間近となりました。
それではどうぞ。


オートボット-地球編⑯:Far from over

地球_ベース217_2027年_12月18日_

 

 

レッドアラートは自身に近づいてくる足音に気がつくと、ゆっくりと起き上がった。

「ホイスト?」

悄然とした顔で彼は周囲を見渡し、そこに映った者の名を呼んだ。

 

「…なんだい」

ホイストはアラートに背を向けて探しものをしながらそう言い、ちらと振り返って彼の方を見た。

 

「起きた途端にベソかいたサンダーブラストに泣きつかれたんだが」

アラートは手をついてベッドから慎重に立ち上がると、辟易したような口調でホイストの背中に言った。

 

「クイックシャドウが今彼女のコグを奪って使ってるから」

あぁ、と小さく声を発してからホイストは短く説明を返した。

「スカイファイアによれば、弟達を弄んだとかゼータ時代の法がどうとか言ってたらしいが…要はグリムロックを色香で誑かして脱走させたのがよほど許せなかったのかもな。例の脱走ついでに一度喰われた身としては、ようやくあの女にも罰が下ったかと思わんでもない…少し軽い罰な気もするがコグの摘出刑と思えばまぁ、悪くはない」

ホイストは伝聞を思い出そうとして眼を閉じ、そして最後に少し本音をこぼした。

 

「サンダーブラストの扱いを中途半端なものにしてしまった責任は俺にもある…悪かったなホイスト」

 

「別に恨んじゃいない。お前のことも、誰のこともだ…それにあの時喰われたのはお前もだろう」

 

「そうだったな…あぁ、あと俺に会いに来たサイドスワイプがなぜか銀色になってたが…」

ふと不思議そうな表情をして、アラートはまたつぶやいた。

 

「彼の全開走行の熱と摩擦に塗料がついていけなかった結果だ。もちろん塗り直しも提案したが、あのままでいいと」

ホイストはそう言うとふと、黒くなったアイアンハイドが収められているポッドを見やった。

 

「サンストリーカーが会いにも来ないのは……別に珍しいことじゃないか。ホイルジャックはなぜ寝かされていたんだ」

まだ彼の機熱と剥げ落ちた塗装の欠片が残っていた隣のベッドに触れながら、思い出すようにアラートは問うた。

 

「精神的なものだろうと思うけど、ここにはクロームドームもフィクシットもいない」

歯切れ悪くそう答え、ホイストはため息をつくようにマスクの隙間から排気しつつ少し肩を落とした。

 

「そしてこれは一番の疑問なんだが…」

レッドアラートは近くにあった小さな鏡を見た後、困惑した声色で切り出した。

 

「うん」

 

「なぜ俺の下半身がプロールのものになってるんだ。ジャンプスタートのつもりか?」

 

「凄いだろ。色を変えると案外分からない」

普段の調子を崩さず、しかしどこか上機嫌になっていると分かる口調でホイストは返した。

 

「やったのはお前か?」

 

「やっぱり分かるもんか」

そう言うとホイストは手を止めてレッドアラートの方に近づいた。

 

「その口振りからして…それにラチェットなら患者の同意抜きにこんな処置はしない。彼はドクターだからな。かといって武器も珍妙なギミックも仕込まれていないから、ホイルジャックでもスカイファイアでもギアーズでもない。一通り見たところ、内部機器の配置といいリベットの留め具合といいパーセプターの几帳面で偏執的な精密さもない」

レッドアラートは一歩づつどうにか足を動かしてゆっくりと歩き回りながら、彼の推理を語った。

 

「塗装も雑だしな。そ、俺がやった。あの時ギアーズはともかく他の四人の手が空いていればよかったんだが…どうだ、下半身の感覚は?」

腕を組んで興味深そうに推理を聞くと、ホイストは感心したようにそう言った。

 

「いや…だがまた動かせるようにはなった。礼を言うよ」

ぎこちなさの残る緩やかな所作ではあったが、レッドアラートの脚部は問題なく歩を進められていた。

 

「礼なんていい。ブレインの容態が悪化してるって話をラチェットから聞いてはいたんだが…いきなり寝込んだと思ったら、神経回路の指令伝達が上半身までしか行き渡らなくなっていたとはな。ここまで深刻な例は見たことない」

屈んで彼の足取りを観察しながら、ホイストはそう言った。

 

「俺は山程見た。そう珍しい症例でもないし、それにまだこれで終わった訳じゃない」

試しに飛び跳ねたり片足立ちをしながら、レッドアラートは語気を強めてそう言い返した。

 

「その意気だ。あぁ一応、施した改造の説明をしておこう。プロールの下半身は適切な処置が迅速に行われたおかげで、復元作用*1の兆候を示していた。あと_」

ホイストはどこか自慢げになりながら流暢に語りだした。

 

「ホイストがそんな用語を知っていたことが驚きだ…なるほどそれで俺の体と結びつけられた訳か。変形は出来るのか?」

そう言い終える前にレッドアラートは変形の動作に入っていた。

 

「可能にはなってるはずだがその前に…まずは歩き回って今の体に馴染んでからだな。でないとコグが焼き切れる可能性があるし、もちろん変形対象の再スキャンも必要」

前と後ろで別々の車両へと変形しかけのアラートを見下ろしながら、ホイストは慌ててそう告げた。

 

「先に言え。大事な患者を脅かすなよ」

すぐに変形を止め、ゆっくり人型へと戻りながらアラートはそう諌めた。

 

「患者?あぁ、確かにそういうことになるのか…いつもの通りに機械を直しただけってつもりだった」

意外そうな声で訊き返し、ホイストはふと我に返ったように言葉を続けた。

 

「事前の同意も説明もなし、患者を蔑ろにしておまけに不必要な改造まで加えるようじゃ医療行為とは呼べないからな。そこんとこ、自覚があるようで安心だ」

渋面を崩さずにそう続け、アラートは人型への再変形を完了させた。

 

「これでも、コンズの連中よりかは分別があるつもりだ」

そう言いながらホイストはアラートの様子に異変がないか眼を走らせていた。

 

「かといってこんな調子だとサイバトロンじゃ開業から廃業までにナノクリックもかからないだろうな。それと…膝の駆動部にシリンダーが増設されてるのはなんでだ?動かしにくいんだが」

手足の動作確認でふと気がつき、アラートは膝部関節の違和感に顔を歪めた。

 

「そうそうそれだ、各関節には駆動機構を新しく仕込んだ。今はいいがアラートのブレインも先のことを考えると、エネルゴンを刺激して駆動部を動作させる指令信号自体が弱まっていくこともあり得るんだ。お前の上半身はプロールの下半身が復元作用によってスパークとコグに結びつき、それによって一種の共生関係にある訳だが…ブレインモジュールの劣化が進めばリンクしている二つも弱まっていく。だからこの伝達経路がいつまで保つかは、誰にも分からない」

危機感を滲ませる口振りで、ホイストは慎重に言葉を選びながらそう告げた。

 

「ブレインから末端への信号伝達を、ブレインと連動しているスパークからの伝達に変えた訳か。なるほど…理に適っちゃいるが、都合よくちぎれた下肢が適切に保存されてなきゃ到底出来ない芸当だな」

ホイストの懸念を笑い飛ばすように、アラートはややオーバーなリアクションを返した。

 

「もしあってもまともなドクターならやらない。今回はお前のブレインもその損傷も特殊なものだったから偶然上手く行ったんだろう…そして俺はもしもの時のために盗み見したC-X用の関節パーツの図面を思い出して、持てる技術の限りを尽くしてそれを小型化した。強度も多少は落ちたが」

ホイストも小さく笑い返すと、アラートの膝に外付けされた駆動パーツを指さした。

 

「感触は最悪だな。で伝達経路がどう動かす?」

 

「ここにコントローラーがある。例えばこのボタンを押せば…」

ホイストはアラートの後ろに回って彼の腰から何かを取り外し、今度は正面に立って掌に収めたそれを見せながら言った。

 

「…勝手に人の脚を動かすな」

アラートは急に両脚が動き出したことに驚愕し、悲鳴のように短く呻いた後で不愉快そうにあるいは恥ずかしげに言ってホイストを小突いた。

 

「施術中や戦闘中に腕で足を操作するというのもナンセンスだが、あくまでこれは仮の形だ。電源に関してはお前が擬態している車に搭載されているものに近いバッテリーが手元にあったからそれに軽く細工を施したものを背中に内蔵してある」

彼の照れ隠しめいた攻撃を気にもせず、ホイストは淡々と説明しながらアラートの背中にあるバッテリーの外装を叩いた。

 

「普段は重りだよな」

思わず転びそうになりながらアラートはそう返した。

 

「走行時の補助動力にも出来る。これでお前も流行りのハイブリッドカーだ…ビークル時のその機能も関節の増加パーツに積んである。それでもトータルで約七十ポンドは重くなってるが、プロールの脚の軽さで帳消し」

 

「何がハイブリッドだ、そんなものが必要になる前に俺か戦争のどっちかは終わりを迎える」

流暢な解説に毒づくように、アラートはそう切って捨てた。

 

「このリモコンは渡しておく。いざという時のためにも動作の感覚には慣れておいた方がいい」

ホイストはそう言って掌に収まるサイズの黒い直方体のコントローラーを投げ渡した。

 

アラートは投げられたそれを受け取ろうとして脚を動かし、また転倒しかけた。

「程遠いな…完治には」

 

「まずは慣れることだ、その体にも…周りの変化にも」

忌々しげな顔をして言った彼を見て、ホイストは重々しくつぶやいた。

 

A

 

「チップの解析があらかた完了しました。内容物はやはりネメシスのセキュリティコードと航路データです。テレトランも同様の結論を出しています」

ベース217の中央作戦室に、沈着としたホイルジャックの声が響いた。

 

精査したところ内部データにウイルスの存在は確認できなかった

彼の後ろに控えていたパーセプターが補足するように続けて発言し、テレトラン1.5を操る手を早めた。

 

「そしてネメシスの辿ったルートはここ八ヶ月のディセプティコンの目撃情報や戦闘記録とも符合することから、信憑性は高いと言っていいでしょう」

スカイファイアがテレトランの影から身を乗り出し、その巨大コンピュータの天面に両肘をつき気楽そうな面持ちで告げた。

 

「よし。それについてはディーノを信じて賭けてみるとしよう…C-Xのアップデートは?」

オプティマスはスカイファイアを見上げてそう返答し、次に目線を下ろしてホイルジャックに尋ねた。

 

「変形機構や武装ともども現在最終調整中とのことです。博士はニ日以内に三機は有人操縦での実戦投入が可能になるとか」

ホイルジャックはパーセプターに合図し、中央にC-X計画の概要データや完成予想図、進捗状況を表示させた。

 

「なるべく、急がせるように言ってくれ…それとラチェット」

オプティマスは物言わぬ自身の似姿らと剣呑な研究員達の様子とを交互に思い浮かべながら、口早にそう応えた。

 

「はい、次に現状戦闘不能な者たちの詳細ですが…アイアンハイドは変わらずステイシスポッドで療養中です。意識が戻る見込みは薄いでしょう…ウィンドチャージャーはマグネットパワーの暴発がひどくなり、最近は処置の時間以外は一日のほとんどを地上の森で過ごしています」

ラチェットは手元のパッドを見ながら一人づつそれぞれの容態を述べていく。

「プロールの上半分は現在も見つかっていませんし、サンストリーカーは銃を持たせること自体が彼と周囲の危険につながるでしょう。ブロードキャストやレッドアラートはブレインや通信機能に問題があり、サンダーブラストとハウンドはコグがなく…それぞれ戦力としては計算しにくい状態です」

淡々としながらもどこか悄然とした様子でラチェットはそう言い、最後には絞り出すように言葉を発していた。

 

「…グリムロックは?」

言いにくそうに、オプティマスは質問を重ねた。

 

「相変わらず房の中で固まったまま、動きもしませんが…彼はすでに知性と賢さを取り戻しつつあると、クイックシャドウは言っていました」

ラチェットはどこか憂いを帯びたまなざしを向けながら、オプティマスの問いにゆっくりと答えた。

 

「分かった、後で彼と話をしてみよう」

 

「彼を含めると戦闘可能な者は八名と三機程度、といったところでしょうか」

スカイファイアが場の全員を見下ろしてそう言った。

 

「君と私と、クリフジャンパー、グリムロック、ホットスポット、サイドスワイプ、クイックシャドウ…後の一名には誰を_」

怪訝そうにオプティマスはそう返そうとしたが、言い終える前に答えがそれを遮った。

 

このパーセプターが狙撃兵として後方支援を担当する

表情を伺わせない無感情な鉄面皮のまま、パーセプターは自身の導き出した結論を整然とただ述べた。

 

A

 

当てもなく基地内をふらついていたホットスポットは、いつの間にやら最下層の空間のほど近くまで迷い込むとそこから漂ってくる煙と異臭を感知した。

「異常反応を検知したか、これは"焦げ臭さ"のパターンだったか?…まさかグランドブリッジの故障!?まずいな、もしディセプティコンにハッキングでもされてたら…」

彼は半ば反射的に変形して走り出しながらそう言った。

 

暗がりの地下空間に突如として水色の消防車が飛び出してきたのを見て、ホイルジャックは手を止め驚きの表情を浮かべた。

「どうしたねホットスポット、そう慌てて」

そばを浮遊していたD.0.Cも工具を持ったまま忙しなく動き回り、ホットスポットとぶつかって墜落した。

 

ホットスポットは急停止すると、嘆息するように一度大きく排気してから乱暴に変形してホイルジャックに詰め寄った。

「近くまで来たら煙が見えたから俺はてっきり発火事故かと思って…こいつは修理中か?」

そして足元に倒れたD.0.Cと工具を拾い上げると、ふと思い出したように口を開いた。

「あとホイルジャック、あんた寝てなくていいのか」

 

「良い訳もない。しかしやれるうちにやれることをやっておくと決めた。今はグランドブリッジをお前さんでも使えるサイズにする改修がそうだ」

ホイルジャックは暗がりに側頭部を青く明滅させながら、投げ渡された工具を受け取ってそう言った。

 

「殊勝な心がけだな…そもそもなんでグランドブリッジを最初から俺が入れるサイズにしてなかったんだ?」

近くの岩の上に座り込み、溶接の光や切断時に散る火花を眺めながらホットスポットは尋ねた。

 

「コイツの図面を引いてた頃はホットスポットが戦線復帰するなんて予定はなかった。転送可能なサイズはオプティマスの体格までという仕様にしていたんだ」

ホイルジャックが解体した筒状の転送部を見下ろすと、中にこびりついた紫の液体が光を反射した。

 

「それだとスカイファイアも入れないよな」

両手に抱えたD.0.Cを揺り起こしながら、ホットスポットは何気なくそう返した。

 

「彼は飛べるだろう。そもそも素材に余裕がない」

ホットスポットの言葉ににべもなくそう返答し、連装式のルーペ越しに眼を凝らした。

 

「でも俺が入れるサイズのものは作れたんだ」

 

「…微妙に内部の容積が足りなかった。つまり頭を引っ込めた状態で中に入ってもらうことになるか」

 

「酷いなそりゃ」

驚いたようにそう言うと、ホットスポットは胸のランプを点灯させて筒状のパーツの大きさを確かめた。

「…最初に入ったのはプロールなんだって?上半身がどこに消えたのか見当はついてるのか?」

 

「原因も不明な事故だ、分かるはずもない。次元の狭間か、宇宙の果てか…あるいはサイバトロンか」

ホイルジャックは諦めと後悔の混じった口調でそう言い、部品の継ぎ目を見つめた。

 

「この星のどこかじゃないのか、だってグランドブリッジなんだろ?」

 

「スペースブリッジというのは空間構造そのものを歪める装置だ。制御を誤れば常識の通用しない世界に飛ばされることも考えられる。それに用意できるものだけで作り上げたこの不安定な装置は動力源にアークのスパークを、制御にはブレインを用いている…そのことから巨神の体内器官と言えなくもない存在になったことも無関係ではないだろう」

規則正しく整列された位置にリベットを留め直しながら、ホイルジャックはどこか愉しげにそう語った。

 

「"巨神は故郷を忘れない"だっけか…そんな言葉があったな。なるほどそれでサイバトロンか、上半分だけで飛ばされて生き残れる場所でもないが」

 

「それはこの宇宙のどこにでも言えることだ、最高レベルの医療惑星以外の全てに」

 

「それもそうか。行き先は巨神のみぞ知ると…スパークをクイックシャドウに触れさせるのはどうだ」

今彼の手の中に収まっているものの白さと丸さから連想してか、ホットスポットはかつての上官の名を挙げた。

 

「それは我々も考えはしたことだ。アークそのものか、あるいはそのスパークに同化したスクランブラーの意志か。二つの人格が複雑に絡んでいるような意識と接触するのは彼女にとっても危険を伴う。この件についてはスカイファイアやパーセプターとも何度か話をしたが、プロールはもはや地球にはおらず、そしてクイックシャドウをみだりに用いるべきではないということ以外は三者とも全てにおいて異なる結論に至っていた」

 

「まぁ俺が口を挟む話でもないか、それは専門家に任せるよ。生き死にだけでも分かれば区切りもつくんだが」

煮えきらない様子でそう言い、ホットスポットはグランドブリッジにこびりついた紫色の汚れから眼を逸らした。

「そういえば…なんだがなホイルジャック、この前の出撃で気がついたことがあって…」

彼はランプを消灯すると思い出したかのように切り出した。

 

「持たせた盾のことか?」

ホイルジャックは予期していたかのようにそう尋ね、しかし意外そうな顔をした。

 

「そう…盾だ。この前の作戦に持っていったがありゃレプリカかなんかか?耐火性能も防御力もまるで前のと比べ物にならないクズ鉄じゃないか」

ホットスポットは思い出したかのようにまくし立て、やや大仰なリアクションを返した。

 

「あの盾を戦場で失くしたのが誰だったか…お前さん忘れたとは言うまいな。あれはC-X用の量産品で、だから性能を抑えて数を揃える必要があった」

 

「今度から二つ重ねて装備するかな。それと未だに斧をオプティマスに返してもらってないんだが…」

ホットスポットはすねた様子で独り言のように言った。

 

「二つともまだ修理中だった。だから代わりに刀を持たせたろう」

ホイルジャックは軽く諭すように言い、また一瞬相手の幼稚さを懐かしむような顔をした。

 

「サイドスワイプのと同じやつな…あんなの誰が使うんだよ、俺達の中に剣士なんていないし。建物への侵入経路を作ったり瓦礫をかき分けるぐらいの役にしか立たなかった」

 

「私が自分用に作ったものを貸してやっただけだ。あまり文句を言うようなら今度は斧も劣化コピーを渡してやる」

茶化すようにそう言って笑い、ホイルジャックは広げた工具の片付けを始めた。

 

「そりゃないだろ。俺にとってあの斧がどれだけ重要か知らないのか…」

過去の苦労を思い出しながらホットスポットはそう言いかけたが、ふとホイルジャックの妙な発言に気がつき表情を強張らせた。

「待て、あんた今自分用って言ったか?」

 

「私も戦うことぐらいは出来る」

 

「それって、ホイルジャックのやれることに含まれるのか?あんたやりたくもないし得意なことでもないだろう」

瞬間的な激情とは裏腹にひどく冷静な顔をして、ホットスポットは問い詰めた。

「厭だな、なんかそういうのは…非戦闘員にまで矢面に立つ戦況になると、その度に自分の力不足を実感させられる。殴られるのも撃たれるのも俺だけで十分だろ」

 

「ならお前さんの後ろに隠れて戦わせてもらうのが良さそうだな」

 

「もしその気なら、今度の盾はもうちょっとマシなの用意するんだな」

ホイルジャックの冗談めいた反応にホットスポットは小さく笑い、幾分気が紛れたような顔でそう返した。

 

D

 

サンストリーカーはリペアルームに転がり込み、ラチェットの手術台の上に置かれている紫の小さな物体を見下ろした。

「ラットバットの修理は済んだのか?」

 

「ほんの数日前まで君が痛めつけていたとは誰も思わない程度には綺麗に、巧妙に仕上げられたな。ひとまずこれで一安心だ」

ラチェットは自身の成果を誇っているようにもラットバットの悪運に感嘆しているようにも見える様子でそう返した。

 

「意識はあるのか?」

もの言わぬラットバットの虚ろな顔を注視し、サンストリーカーは何の気なしに訊いた。

 

「一応は…ただ今は休眠状態だ。そうでなければ怯えて逃げ出しているところだろうさ」

ラチェットはそう応え、ラットバットを覗き込むサンストリーカーを遠ざけた。

 

「そうか。ギアーズの新作を借りてきてな、ちょうど試したいと思ってたところだったんだが…」

手持ち無沙汰といった様子で、サンストリーカーは落ち着きなく辺りをうろついた。

 

「今度は黒だそうだな。そもそもなぜ彼は爆発する蜘蛛型ロボなんかを作っているんだ」

呆れた様子でそう言い、ラチェットはギアーズの行為に眉をひそめるような表情を作った。

 

「最近見たなんかしらに影響されたんだろうよ。今アークのあいつの部屋は山積みになった紙の束が工具や作業台を覆い尽くしてる。人間の描いた妙なヒーローの絵が描いてあるやつだ」

 

「インスピレーションの爆発だな。屈折した英雄願望のようなものが燻ってでもいるのか…そう長い仲でもないが、彼のあれは毎度あまりいい終わり方をしない」

 

「今度はワイヤーフックを両腕に仕込もうとしてる。スキッズの真似事か知らんが_」

 

「…サンストリーカー、レッドアラートのことなんだが」

軽口を叩く彼に対し、ラチェットは思い切ったようにゆっくりと言葉を発した。

 

「なぁドクター。一体あいつの脚は何なんだ」

猜疑や困惑を顔に表出させて、サンストリーカーは思いつめた様子で尋ねた。

 

「ホイストが図に乗りすぎたらしい」

 

「そのせいか知らんがな、サンダーブラストもいつもに増してやかましいんだ。昔、あんたが捕虜の発声回路を切除する方法を何かのついでで教えてやるって言った時に素直に聞いときゃよかった」

 

「いつのことだ…?医者としての職業倫理に悖る行為だな」

ラチェットはその言葉を聞いて頭を抱え、自嘲するように小さく笑った。

「話を戻すが、アラートに関してはもはや残りの時間をいかに有意義に過ごさせてやれるか…もうそういう段階だ」

 

「医療の力が及ぶ範囲はとうに通り過ぎたと?…全く、俺もあいつもプライマスに嫌われるようなことをした覚えはないんだがな」

 

「私も残念でならない。彼にはこの老いぼれの後を継いでもらおうとさえ思っていた」

 

「あんたも変わったな。昔ならこんな無様は晒さなかったろう」

ふと棘のある声音でサンストリーカーは突き刺すようにつぶやいた。

 

「…今何と?」

ラチェットは一瞬、自身の聴覚機能の劣化を疑い、次にサンストリーカーの性格を疑いかけた。

 

「気を悪くしたか?その…なんだ、要するに俺が言いたいのはだな。醜く老いさらばえる前のあんたは凄かったってことだよ」

 

「褒められながら貶されるとは珍しい体験だな…今も昔もただの医者だよ、私は」

サンストリーカーが一つ言葉を発するごとにラチェットはうつむきがちになり、そして短く吐露した。

 

「あんたが来ればどこの戦線も一日当たりの死者数は半分以下になった。ザロンバレーの戦いじゃ、次々に送られてくる負傷者を八人まとめて同時にリペアしたらしいな…他にもケイオンの大脱走じゃメガトロンのエネルゴンシグネチャーを偽装して囚人を解放したとか。ディセプティコンが戦場であんたを見つけても誰も殺そうとしなかったって聞いたぜ。死なせちゃ種族全体の損失だってな」

ラチェットが彼自身を力のない老人に貶めようとしている様を冷ややかに見据えると、サンストリーカーは堰を切ったように言い放った。

「これでもまだ自分のことをただの医者なんて言えるか?」

 

「皆揃って、私を買いかぶる。君の言う通り実際は老いた救急車に過ぎんよ。サイバトロン星どころか、君一人のことさえ救えなかった」

背中を丸めきった状態で顔だけを上げ、ラチェットは疲れきった眼でサンストリーカーを見た。

 

「…虫食いになった頭を直せる奴がいるか?あんたに出来なきゃ賢人アルファトリンとて無理だろうよ」

 

「マトリクスが私にも使えればあるいは…」

悔恨と羨望の入り混じった口調で、ラチェットはそんなことを口走った。

 

「眼は蒼いようだが、あんたには無理だ」

 

「確かに無理だ、その通りだな。ただ…眼の色がどうだとか、胸板が厚いだとか、弛まぬ意志を持っているオートボットだとか…実のところ、いわゆる"マトリクスを扱える者の条件"には何の裏付けもない。もっともらしくアルファトリン、ゼータ…そしてオプティマスの共通項をどこかのバカが言いふらしただけだ」

 

「あの珠っころを扱える者って括りならスカイリンクスとサンダークラッシュにロディマス、そしてスカイファイアも考慮に入るな。こうなると最後の条件も間違いだってのは分かるが」

 

「メガトロンやショックウェーブ、スタースクリームらには扱えなかったというのは確かだな。そして君も私も扱えない…万が一私がマトリクスに適合して創造の力や啓示を得られたとして、代わりに出力を制限されても困るが」

 

「啓示?」

 

「スカイファイアが言うには…あれを付けている間だけスパークの出力が吸い取られる代わりに、様々な知識や思考がアルファトリンの言葉となって頭に流れ込んでくるらしい」

 

「情報の押し付けと思考の誘導…そこらの洗脳装置と似た仕組みか。道理で"あの"スカイファイアと相性がいいわけだ」

 

「オプティマスの言葉の意味も今なら理解できる。下手な冗談だとばかり思っていたが、彼がマトリクスを付けることが苦痛だった理由も…」

手術台の上に散らばる工具を一つ一つ所定の位置に収めながら、数百万年分の記憶を辿るように言葉を続けた。

「昔の彼は"私らしくないことを言ってしまった"とよく言っていたな…オライオンは既に亡く、今はプライムでしかないのだろうか?」

 

「この前マトリクス外して元気に大暴れして騒ぎになった話を聞くに、余計な心配だと思うがねドクター。結局、スカイファイアのその啓示とやらに従ってあんたはラットバットに細工したわけだ」

サンストリーカーはラチェットの感傷には大した興味を示さず、そして一つの確信を言葉に変えた。

 

ラチェットは衝撃で手にした工具を落とし、強張る指を作動させてそれを拾い上げた。

「やはり君は隠し事に敏感だ。相変わらず」

観念したようにそう言い、彼は微かに顔を背けた。

 

「コンスどもがよく言う"欺瞞を許すな"ってやつだな…俺の信条でもある」

「"仕上げられた"って物言いとその時の態度が少し引っかかった。ただこいつを直したってだけなら今までの数万回のオペ同様、平気な顔をしてただろうよ。中身は追跡装置とかウイルスとか、あるいは爆弾か。プロールならすぐに思いついた策だろうってとこが一番大きいな」

 

「私が摘出したパーツをスカイファイアがマトリクスを用いて追跡装置を作り上げ、それを私が元の場所へと戻した…分かりやすく表現するとそうなるかな」

 

「発信機ごときにマトリクスの力をわざわざ使う必要が?」

 

「正確には、スカイファイアはマトリクスを用いてラットバットのブレインモジュールそのものを一定の条件下でのみ追跡装置用の発信機として働くように作り変えたんだ。パーセプターが以前、志願者に行った処置と似てはいるが…これはサウンドウェーブがいくらマインドスキャンをしても絶対に露見することのない仕組みだ」

 

「要はこいつの頭をいじくり回したのか。形が変わるまで殴った俺が言えることでもないが、惨い所業だな」

 

「君が言うと説得力が違うな。ただ所業の是非については…私も同意見だ」

 

「そいつは"職業倫理に悖る行為"のうちには入らないのか?」

 

「在りし日のサイバトロンにおいて史上最も愚かで自己保身に凝り固まった議員だった者に対してさえ、いかな事情においても許される施術ではないのだろうが…それでも今の戦いを有利に進めるためには必要なことだ」

不規則に震える右手を抑えながら、ラチェットは憔悴した様子でそう言い聞かせた。

 

「は…まさかその頭の中のブレインにプロールが宿ったりしてないよな?驚いたよ…」

 

「それについては返す言葉もない」

 

「小さな犠牲で大勢を生かすってやつか、老いればあんたほどの医者でもそういう考えになるんだな」

 

「突然運び込まれてきた百五十名の重傷者の中から救えるものを選別する行為と、今している行為との違いがもはや私には分からなくなりつつある」

「それに、近頃はどうにも妙な予感が止まなくてな、プロールの疑り深さと神経質さが移ったか私が老いて衰えたかの証というのであればそれも結構だが…何か大きく暗く、そして重い存在の到来を感じるんだ。深くスパークの奥底から」

そう言い終えるとラチェットは近くのコンテナに座り込み、力なく腕を下ろした。

 

「あんた…引退するには遅過ぎたのかもな」

サンストリーカーは立ち上がって眼の前の相手を見下ろすと、振り返りざまにそう言った。

 

A

 

普段とは異なり電磁柵を解除した部屋は薄暗く、開け放たれた遠くの扉から漏れた光だけがほのかに空間を照らしていた。

「グリムロック。クイックシャドウから聞いて来た」

オプティマスは光を背負いながら名を呼んだ相手を見据え、静かに歩み寄った。

 

「用件なら…分かっている」

遠慮がちな、あるいは鬱陶しげな口調でグリムロックは短く答えた。

 

彼のその言葉を聞いてマスクを外すと、身を屈めてオプティマスはゆっくりと話を切り出した。

「我々と共に戦ってほしい」

 

「断る」

「今の私は半ば…休眠状態にある。解き放たれれば今度は誰を噛み殺して呑み込んでやろうかと楽しみだ」

粗暴な言葉とは裏腹に、グリムロックはひどく冷めた口調で疲れきったようにそうこぼした。

 

「今更そんなことを恐れるものか。そうなれば必ず私が止める」

赤いバイザー状の眼を覗き込むようにしながら、オプティマスは決然と言った。

 

「いや……そうなることを恐れているのは私自身だ。今は体が思うように動かないからこそ、どうにか内側の渇きや怒りを抑え込めている。憤怒の情炎が牙の隙間から漏れ出そうになることも幾度かあったが」

グリムロックがそう言いかけてわずかに体を動かそうとするとマスクや膝部などあちこちからパーツが剥がれ落ち、音を立てて物影に消えていった。

 

「お前も仲間を失う痛みを知っているなら、償いのために戦うことが出来るはずだ。私の知るグリムロックならそうした、迷いもせずに」

座り込む彼の存在が半ば床と同化しつつあるような錯覚を憶えながら、オプティマスはそれを振り切るように言葉をかけた。

 

「お前一人で十分だろう?」

オプティマスに、あるいは自身に呆れるような表情を見せてからグリムロックは訊いた。

 

「オートボットと軍はじきネメシスに総攻撃をかける。その際ヘキサティコンを引きずり出して足止めをする役がどうしても必要だ」

オプティマスは口元を覆う癖を見せながら、慎重に言葉を発した。

 

「なるほど…今度はそういう建前か。理屈抜きに"俺について来て死ぬまで戦え"と宣う気はないようだ」

事務的な説明にどこか冷めたような眼をして、グリムロックはつまらなさそうに返した。

 

「そうした方がお前の好みだったな。今の私は昔と違ってそれほど無遠慮にはなれない」

言われてから思い出したといった様子でどこか懐かしげにそう言うと、オプティマスは扉の方をちらと見た。

「…ここは開けておこう。気が向いたらリペアルームに行け。ラチェットかホイルジャックに修理させ_」

 

「私が行くと思うのかオライオン?」

マスクをつけ直し、立ち去りかけたオプティマスの後ろ姿を一瞥するとグリムロックはそう尋ねた。

 

「必ず。でなければ我々には全滅の道しか残されていない。我々が_」

「いや、お前と私の二人で勝利のため大義のためと今まで看過してきた四百万年分の部下達の犠牲が…」

「たった数日のうちに全て、残らず無駄になるんだ」

オプティマスは向き直るとグリムロックを見下ろし、マスクで表情を覆い隠しながら厳然とそう告げた。

 

 

地球_ディープフォレスト_2027年_12月21日_

 

 

グランドブリッジなしでの移動は到底現実的ではないほどにベース217と距離のある暗い森の中には、少し開けた場があった。

その空間に躍り出るように、赤いホットハッチが爆走しながら先客の前に飛び出す。

「よぉオンスロート!約束のモンは持って来たんだろうな?」

車の形を一瞬にして手足のついた人型へと変え、クリフジャンパーは地面を滑りながら勢いよく着地した。

 

「それはこちらの台詞だクリフジャンパー。ラットバットを出せ」

オンスロートはクリフジャンパーを見下ろし、憮然とした様子でそう宣告した。

 

「ほらよ。サウンドウェーブが見たら泣いて喜ぶぜ…」

彼の後ろに控える複数の銃口を睨み返しながら、クリフは鳥カゴを取り出した。

 

「お前達、私はここだ!早く回収しろ!!」

ラットバットは檻にしがみ付くように前のめりになりながら、偏執的に叫んだ。

 

「感動の再会って気分がほんの一クリックで消え失せたな。まぁいい…サウンドウェーブの電装パーツだ、好きなだけ持っていけ」

ラットバットの傲慢に呆れた様子でオンスロートは手にした数枚のプレートを見せ、クリフが鳥カゴを放り投げると同時に投げ渡した。

 

人質と物質が空中を交錯し、クリフは跳び上がってパーツを掴み取った。

「なぁ戦略家さんよ、まさかジャンクで俺らを誤魔化そうってんじゃねぇよな?」

 

「貴様らこそラットバットに妙な細工なぞしていないだろうな」

持ち上げた鳥カゴを持ち上げ軽く振りながら、オンスロートはクリフに冷徹な視線を向けた。

 

「(ホイスト、どうだ?)」

クリフはホイストに視覚情報を送り、そう尋ねた。

 

「(意外だ。少なくとも俺の見立てじゃどれも本物のパーツだ…サウンドウェーブはよほど部下が大事らしいな)」

ホイストは中央作戦室のテレトランを通じてクリフと同じ景色を眼にし、驚いた様子でそう返した。

 

「問題はなさそうだ…交渉成立だぜ。じゃあな_」

クリフは意気揚々とそう言い渡して変形して帰ろうとしたが、その瞬間辺りの木々の間から爆音とともにスカイワープとアストロトレインが飛び出した。

 

「少し遊んでいったらどうだ?ホスト総出で歓迎するぞ」

オンスロートは銃を取り出すと愉快そうに言い、不敵に笑った。

 

「馬鹿正直な騙し討ちも嫌いじゃないぜ…!」

言葉とは裏腹に辟易したような渋面を浮かべて、クリフジャンパーは両の拳を握りしめた。

 

「(予測通りだな。さっさと片付けて戻ってきてくれ)」

ホイストはテレトランの前で頬杖をつくような姿勢になり、淡々とそう指示した。

 

「簡単に言いやがる…長い一日になりそうだ」

飛びかかってきたフレンジーを掴んで振り回しながら、クリフジャンパーはヤケ気味に哄笑した。

 

 

三日前

 

 

中央作戦室の上段のデスクの一つに座り込みながら、クリフは心の底から不服そうに大声で言った。

「俺が捕虜交換の交渉担当ってか?ジョーダンだろ」

 

「これまでの捕虜の返還事例を見るに、戦闘になる可能性は極めて高い。しかしこのセクションにあまり人数を割くことはできない…まぁパーツを無事に持ち帰るのが最優先であり、相手に勝つ必要はないから気楽に構えてくれ」

スカイファイアはクリフジャンパーを見下ろし、柔らかながら反論の余地を与えない語気でそう言い渡した。

 

クリフジャンパーの往生際の悪さとしぶとさがあればなんの心配もないやろ!

能天気にテレトラン1.5の人格プログラムのうち片方がそう言い、場は静まり返った。

 

「つまり寄ってたかってボコられても死なない俺が適任だと?俺はパーツの真贋を見極めるほど目利きじゃないんだが」

心底厭そうな態度を隠さず、クリフはそう言い返した。

 

「それは君の眼を通してホイストに見てもらうことにしよう。パーツを確保し次第、なるべく早くベースに帰還してブロードキャストの全機能を復元してほしい。迅速に作戦を次の段階へ進める必要がある」

 

「なぜそこまで急ぐ?日をおいても良さそうなものだが」

場を仕切って流暢に説明を続けるスカイファイアに、クイックシャドウはふと浮かんだ疑問を投げかけた。

 

「連中もクリフジャンパーに返り討ちにされたすぐ後に殴り込まれでもしたら、士気が鈍るというものさ。これは私個人の経験も多分に含まれた打算だが…どのみちあまり時間をかけてしまうとこちらが不利だ。ブロードキャストのための電装部品を要求した意図を悟られる恐れもあるし、ともすればラットバットがこの基地のことを喋るかもしれない」

 

「奴はここの正確な所在までは分からない、それで間違いはないんだろうな」

ハウンドはそう言い、スカイファイアの打算的な案に少しの不安を覚えた。

 

「そうだね、もしサンストリーカーが破壊し尽くした彼の体内に発信機などがあったとして、ラチェットがそれを見逃すとも思えないし…ラットバットも地下施設であることぐらいは察しがついていたようだが、それ以上のことを思い出そうとしても…サンストリーカーの渋面と砕けた自身の翼が浮かび上がるだけだろう」

 

「気の毒な話だ」

ホイストが無機質に短くそう返し、言外に続きを促した。

 

「次にネメシス攻略には、私がオプティマスと合体した状態でクイックシャドウとサイドスワイプを載せて突入する算段で行う」

 

「ところでオプティマス、マトリクスはどうするのだ?置いていくのか?」

クイックシャドウは隣にいたオプティマスを見上げ、そう尋ねた。

 

「ディセプティコンの手に渡る可能性を考えればそうしたいところだが…あれの力があれば最低限の消耗で敵陣を突破できる。作戦指揮のためにも手放してはおけない」

オプティマスは彼女の肩に手を置き、はっきりとそう答えた。

 

「オプティマスが前のように暴れ出さないためにもマトリクスは必要だ。最悪の場合は私かサイドスワイプが預かることも想定してはいるが…いや、彼にはまだ伝えられていなかったか」

スカイファイアはそう補足し、サイドスワイプが不在にしていることを思い出した。

「ネメシスのステルス機能とトランスワープは、ディーノからもたらされたコードを使用して私とブロードキャストが艦の制御に介入することで突破する。要は不正アクセスというやつだ」

 

「その後、我々四人で内部に突入するのか?」

オプティマスは先を急ぐようにそう尋ねた。

 

「そうしたいところですが、ヘキサティコンを引きずり出す必要があります。それに私が動き回るにはネメシスの艦内は狭すぎる…まず二人を突入させた後、私はあなたと合体して空からネメシスを攻撃します。オーバーロードはあなたへの復讐に燃えているでしょうから、必ず部下を引き連れて追ってくるはずです。そして私は悟られぬようにあなたを分離させて艦内に向かわせつつ、ヘキサティコンをC-X数機とその護衛のホットスポットに後方支援のパーセプターらがいる待機地点まで連れて行きます」

 

「なるほどな。結局、俺の活躍に全てがかかってる訳だ」

クリフは話の半分も理解していなさそうな様子で自信満々にそう言い出し、腕を組んでスカイファイアの方を見た。

 

「その通り、まずブロードキャストの機能が回復しない限りネメシスの制御を乗っ取る難易度が上がる。君を速やかに回収するためにラチェットとホイルジャックにはリアルタイムでグランドブリッジの制御を担当してもらう。ホイストやハウンドにもピットクルーのように臨戦態勢でいてもらう必要があるね」

クリフジャンパーが遮った話の流れを、スカイファイアは彼に同調しながら修正した。

 

「つまりさ、要するに俺はヘキサティコンとの戦いには混ぜてもらえないのか?」

 

「私もさすがにそこまで君を酷使したくはない。と思っているのだが…どうしてもというならその時は君の判断に任す。それとホットスポット」

食い下がるクリフに短くそう返答し、スカイファイアは話を変えた。

 

「あぁ、俺の役回りはC-Xの護衛だったか。パイロットの連中とも知らない仲じゃないが…あの様子じゃどうだろうな」

ホットスポットは窮屈そうに屈んで座り込みながら、どことなく不安そうに返した。

 

「三機のC-Xはそれぞれ粒子燃焼砲装備型、大型ミサイル装備型、多連装砲装備型だ。彼らは後方支援を担う火力と射程に特化した移動砲台として調整させてある。君が敵の反撃から彼らを守りきるんだ」

 

「決行はいつに?そもそもどうやって向こうと連絡をとるんだよ」

黙って様子を見ていたサンストリーカーが口を挟んだ。

 

「それについては将軍に考えがあるようだ」

スカイファイアがそう言うと、テレトランの中央スクリーンの表示が切り替わった。

 

「聞けばスカイファイアは元ディセプティコンだそうじゃないか。適任だと思ったのでな……知っての通り、最近の連中の動きは少し様変わりした。ヘキサティコンが中心となって世界中に破壊と殺戮を撒き散らしてはいるが、かつてのような連携が取れているとは言い難い」

ノイズ混じりの音声を通し、将軍の柔和な声が空間に響いた。

「まぁ指揮系統の混乱した軍などどこもそんなものだ。スタースクリーム派とオーバーロード派で割れてでもいるような具合だな」

「そうなるとスパイは動きやすい。例のディーノとかいう以前の戦闘で新たに発見された赤いディセプティコンはこれまでと打って変わって最近目撃情報が群を抜いて多いが、ヘキサティコンと元のディセプティコン部隊どちらの出撃にも隊員として同行していることが確認された」

 

ディーノが意志薄弱か優柔不断か日和見主義者である可能性も考慮できるがパーセプターはディーノが単に双方の動きを探っているに過ぎないという印象を持った

 

「同感だなパーセプター、そうした訳で彼は今最も接触しやすいディセプティコンだ。察するに出撃を増やしたのは故意であり…スパイとして君達からの連絡を待っていると私は見ている」

 

「でどうやって接触すんのか教えてくれよ。あー、俺に分かるようにな」

 

「よかろうクリフジャンパー。ヘキサティコンが来て以降、彼らの行動にはもう一つ大きな特徴があるが_」

 

「だから回りくどいっての…なんだよそこら辺の資源の略奪に遠慮がなくなってきたこととかか?」

 

「その通り、正解だ。頭数が増えれば補給の問題も無視できん…最近は随分と見境のない野盗に成り果てたものだよ。そこで我々は囮のタンカー船を用意した」

 

「海の上にディーノは来れないだろ」

サンストリーカーが小馬鹿にするような調子でそう返した。

 

「重油を満載したタンカーが機器トラブルと" 蜃気楼"のために港から出航できないという情報を流す。船も港も数日間は人払いをしておく。そして当然積荷は空…今やガスも原油も輪をかけて高価で貴重な資源だ」

 

「あいつらニュース見るのかな?」

ホイストが気の抜けたようにそうつぶやいた。

 

「それどころか軍の情報網にまで一部侵入した形跡があった。ここだけの話だが、ラットバットがまだ生きていることぐらいは知られていると見るべきかもしれんな」

 

「ディーノ以外が来たらどうする?」

ディーノのホログラムを投射しながら、ハウンドは疑問を口にした。

 

「こちらの要求はあくまでサウンドウェーブの電装パーツを得たいという一点だ。それが伝わる相手ならば誰であれ最低限問題はないだろう。例えそうでないとしても危害を加えてしまっては話がこじれる以上、穏便に追い返すのが一番だろうな。場合によってはハウンドのその偽装機能が必要になる可能性もあるかもしれん」

「…対価がラットバットの解放である点に彼らが納得するのかは、私としては疑問だが」

 

「サウンドウェーブはカセッティコンの欠員を望みません。それにラットバットに関しては…昔の彼はあのコウモリを手元に置いてこき使うことを愉しみ、それに執着しているような様子でした」

 

「根暗クンの積年の恨みってのは怖ぇな…ま、相手があの元議員サマとなりゃ分からなくもないか。にしてもアンタ、意外と考えてんだな。棺桶に入りかけの爺さんの割には頭が回るらしい」

 

「クリフジャンパー、そうせざるを得ないという事情がこちらにはある。プロールは私の言うことをよく聞き優れた代理人として働いてくれたが、忠実な部下が消えた後はいつも上司の仕事が増えるものでな。感傷に浸る暇もありはしない」

通信越しにも悲嘆を伺わせる口調で将軍はそう答えた。

 

「その心情は理解できないものではありませんが、あなたが自ら指示を出すほどのことであるとは思えません」

 

「白状するがね…したくもない隠し事が多いせいで、それだけ部下も動かしにくくて困ってしまう。最近は輪をかけてそうした傾向にある」

 

「信用できる相手を見つけるのは難しいからな。俺達もこの星に来てから痛感してるよ」

 

「お互い様だと返しておこうかな、サンストリーカー…さて今回の作戦、成功すればディセプティコンの侵略も終わらせることが出来るだろう。我々に寄せられている期待は大きい、世間では謎のヒーローのように噂されている諸君らだが…今回の作戦が成功すれば表立って我々の同盟相手として公表できる。そして新たな拠点も与えられる段取りになっているようだ」

 

「ほう…その新拠点とやらにもこのC.D.E.F.Gというバカみたいな名前の部隊章を掲げるのか?謎のヒーローがこんなものを付けていてはお笑いだ。デザイン性も最悪だしな」

クイックシャドウは自身の肩に配されているエンブレムを指し、そう非難した。

 

「あまりに酷い言われようで驚いているよ。部隊名は、"デルタ"という前例に倣ったまでのことだ…デザインの発案は私だが、部下達の受けはそう悪くなかった」

将軍は落胆し、少し機嫌を損ねたような調子で続けた。

「あぁ、まだ言っておくことがあった…もちろん今回の作戦は非常に重要なものだ。故にこちらから君達に渡せる情報が少しばかり増えることになった」

 

「それは良い知らせです。この星に居候してる他の宇宙人の顔写真等なら願い下げですが」

人間達の秘密主義に辟易してか、オプティマスはそう毒づいた。

 

「今こそ君達に明かそう。NBE-01と、02についての真実を」

*1
致命的な損傷を受けたサイバトロニアンの体の一部が機能を保存された場合においては褪色とそれに伴う劣化は進行せず、部分的な自己再生及び他のサイバトロニアンを取り込んでの再生をしようとする

生存してほしいキャラ

  • オプティマスプライム
  • アイアンハイド
  • プロール
  • ブロードキャスト
  • ホイルジャック
  • パーセプター
  • ラチェット
  • ギアーズ
  • ホイスト
  • サイドスワイプ
  • サンストリーカー
  • レッドアラート
  • ウィンドチャージャー
  • クリフジャンパー
  • グリムロック
  • ホットスポット
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