トランスフォーマー:Alternation of Cybertron 作:pova
闘技場はじめ複数の場所で同時多発的に起きたディセプティコンのクーデターはやがてその争いを惑星全土に広げながらも尚規模を拡大させ続け、その過程で多くの無関係な星々が戦渦に呑み込まれていった。
650サイクルほど前、軌道上の要塞ダークマウントでの一大攻略戦が終結した。
それからほどなくして、内戦を起こされた側であるオートボットは重要拠点ムーンベースⅡを失う大損失を被り、もはや彼らの敗北は必至となっていた。
…しかしその圧倒的優勢のさなか、内戦を起こした側であるディセプティコンで内乱が発生。
反逆者ブラジオンの一派により軍は二つに割れ、最終的には組織そのものが半壊した。
その後しばらくは、互いに甚大な被害を受けた両軍の事情もあり…戦線は長い膠着状態にあった。
そのせいかサイバトロン星を脱出するためのオートボット避難船、アーク号の建造は物資とエネルギーの不足に悩まされながらも順調に進み、とうとう出航当日を迎えた…
惑星サイバトロン_アイアコン近郊_アーク打ち上げ場_400サイクル前_
アイアコンからそう遠くない一帯にアーク号の発射場は築かれていた。
その地表に座り込み、最後の艦を見上げていたオライオン・パックス_もといオプティマス・プライムに後ろから声がかけられる。
「…出来ることなら、ついて行きたいんですがね」
「ジャズか」
苦もなく自身の背後をとった特殊作戦指揮官の変わらぬ技量に感心したかのように、オプティマスは眼を丸くした。
「私もお前なしでは心細い…」
「だがお前はサイバトロンに残り、マグナスを支えてやってくれ。彼は責任感の強さからか気張りすぎるところがある…それに、戦線の大収縮で多くの同胞がこの星に戻ってくるはずだ。彼らを安全に迎え入れてほしい」
オプティマスは目線をアークに向けたまま、努めて平静に伝達事項を告げる。
「別れは惜しいが…サイバトロンを頼んだ」
そこまで言うと彼は立ち上がり、マスクを取ってジャズに向き直り顔を見合わせた。
「えぇ…ご立派になられた。私が武器の扱い方を教えていた頃とは似ても似つきませんね」
オプティマスの傷だらけの頭部やマスクの下に、かつてと変わらない素顔があることにジャズは気づき、朗らかに右手を差し出した。
「変わらないさ。少し虚勢を張るのが上手くなった以外は何も」
ジャズの手を取り短くも力強い握手を交わすとオプティマスはマスクを付け直し、半壊したアイアコンの街並みを見やった。
「ご武運を」
感傷に浸りつつ名残惜しそうな眼差しを向けるオプティマスを送り出すようにそう言葉をかけ、ジャズは敬礼した。
さっと敬礼を返し、オプティマスは何も言わずにトランスフォームした。
そのままアークに向かって行く後ろ姿を見送りつつ、ジャズも変形して打ち上げ施設の方へと向かった。
スロープを駆け上り、建物に外付けされたリフトを昇り、ビークルモードのまま扉を勢いよく開けて屋内に入る。
そして更に長い廊下を走り切った先が、目的地のアークの管制塔だった。
そこでようやく変形を解き、車体をアクロバティックに回転させながら人型に転じた。
複雑な機構で何重にもスライドした重厚な耐爆扉が開き切ると、部屋の空間の大半を占有する青い巨躯がまず彼の目に入る。
「あぁジャズか…司令官はなんと?」
部屋前面の中央に陣取っていたウルトラマグナスはやや大仰に体ごと振り向くと心配そうな面持ちで言った。
「サイバトロンを頼むってさ、それと今の司令官はあなただマグナス」
ジャズは常通りの軽い調子でそう答え、彼の隣に並んだ。
マグナスは生命維持用の強化アーマーを全身に着込んだ*1自身の腰あたりまでの背丈しかないジャズを見下ろしつつ、右の掌を額に当て、顔を覆った。
「そんな風に呼ばれると落ち着かんな…これからもただのマグナスでいい」
並んだ二人から見て右側、計器と睨み合っていたカップが一人ごちる。
「しかし…これからどうなることやら」
緑の老兵は険しい表情のまま腕を組む。
「ディセプティコンどもがこんな機会を逃すはずはない」
「そうは思わんかスカイファイア」
ちょうど部屋の反対側で同じように機器の操作を行っていたスカイファイアは少し辟易とした調子で、手を止めずに早口で言う。
「元ディセプティコンとしての意見を求められているのだろうが、今我々にできるのは万全の準備を持って送り出すこと以外にない。打ち上げまでの残り時間はわずかだ…余計なことに気を回してはいられないよ」
「…ただ、彼らも戦艦を建造しているという話は確かなようだ」
そこまで言うと彼は椅子に収まりきらないほどの白い巨体を窮屈そうに揺らした。
「アーク、そちらの様子はどうか」
「こちらアーク号、万事順調です」
「もう間もなくカウントダウンを開始する」
「了解」
「おやおや少し…遅かったかしら」
淡々とした事務的な会話に突如艷やかな声が混じる。
全員が声を追って入り口を見やるとそこには鮮烈な青をまとった風のような男がいた。
「ブラー…」
「思ったより早かったじゃないか」
「アタシを周辺のパトロールに駆り出しておいて随分な言い草だこと」
覇気のない様子でそう言ったマグナスに対してブラーは鋭く切り返す。
「それで、敵は_」
「いたら報告も何もせず戻って来ないって言うの」
ブラーはどかどかと部屋を進みながら得意の早口でマグナスの言葉を遮った。
「あとグリフ!タップアウトに伝言頼める?」
「そ、それはどのような?」
少し気圧され、カウントダウンに注意を向ける余裕もなくグリフは訊き返した。
「あのぶきっちょにステイシスポッドは丁重に扱うように言っといて」
「あれは仲間の命そのものなんだから」
そう言い終えてすぐ、ブラーはもう用はないとばかりに踵を返す。
「はい、分かりました。伝えておきます」
神妙な面持ちで言うグリフの後ろから声がかかった。
「グリフ、すまないが代わってくれないか」
「あぁはい、もちろんですプロール」
グリフは声の主を見やると滑らかかつ品のある動作で席を譲った。
「マグナス、そちらの準備は」
カウントダウンの音声を聴覚の端に追いやりながらプロールは訊いた。
「例の準備か。無論、とっくに済んでいるさ」
不安そうに眉間を寄せてかすかに前かがみになったプロールを見て、マグナスは優しく言い含めるようにゆっくりと告げた。
「…心配性だな、私も」
そのマグナスの仕草でプロールは自分がいかに愚かな質問をしたか気づいたように小さく苦笑した。
「次会う時までには直しておいてくれよ」
マグナスは大きくなるカウントダウンの音声に負けないぐらいの声量で告げたが、プロールの返事は打ち上げ時のエンジンの爆音と激震のせいでマグナスの聴覚に捉えられることはなかった。
サイバトロンの地表からは預かり知らぬことだったが、星を発ったアーク号はしばらくして軌道上で待ち構えていたディセプティコンの新造戦艦"ネメシス"と遭遇。
激しい戦闘の末に両者ともに制御を失い、宇宙を漂ううち、偶然にワームホールへと突入してしまう。
そして無事にそれを通り抜けた矢先、二隻の船はそれぞれ原始的な未開の惑星に落着した…
謎の惑星_アーク墜落地点_現在_
「オプティマス!」
少しくすみ灰色がかった体色になったオプティマスをホットスポットが抱え上げる。
続いてその顔を覗き込むようにしてレッドアラートが叫んだ。
「プライム!」
レッドアラートの胸部のライトに照らされたオプティマスは艦の内装のオレンジを凝縮したような赤だったが、よく見ればアークの内部には他にもそこかしこに似たような、明確に艦のそれとは異なる色の物体が転がっていた。
かつてはグリフと呼ばれていたくすんだ緑色の残骸のように、それらの多くは既に生命体と呼べる状態になかった。
しかし現在のオプティマスもそれらと同様力なくくすんだ体色をしており、その様は見る者にその生存の絶望的であることを強く印象づける。
そのオプティマスに駆け寄ったラチェットは彼の胸がほんのわずか、かすかに光り輝いているのを見定めると側頭部に口を近づけて大声で叫ぶ。
「プライム!起きてくれ!!」
その叫びはオプティマスの頭の中をつんざき、ブレインモジュールを揺り起こし…あるいは叩き起こすようにして彼を呼び覚ましてみせた。
「ラチェットか…?一体どこだ、ここは」
オプティマスは突然の衝撃に頭を抱えながら力なく立ち上がり、そして周囲を呆然と見回して言った。
「アークです、司令官。上部ブリッジの中央」
レッドアラートが胸のライトを消し忘れたまま言い含めるように答えた。
「あれから…出発からはどれほどの時間が…?」
オプティマスは二階層分の高さのあるブリッジの左側面の階段まで歩き、そこに散らばったグリフを見下ろしながら言った。
「ざっと400サイクルほど」
ラチェットは手元の工具箱から修理器具を取り出しつつ答えた。
「どこに辿り着いたんだ…我々は」
階段を降りきり、足元にあったディセプティコンの残骸を足でのけ、視界の端に追いやりながらオプティマスはブリッジ中央の真っ黒なモニターと周囲の窓を眺めた。
「小さな惑星です。有機的生命体の住む星で文明のレベルは……まぁ擬態できるだけの機械は存在するようですね」
その巨大なモニターの下でハウンドと共にその修理に当たっていたブロードキャストはオプティマスの方へ向き直り、現在までの調査で判明したことを簡潔に告げた。
「そうか…」
「仲間達はどこだ?全員無事なのか?」
転がるグリフの残骸から目をそらしつつも、オプティマスは縋るように誰にともなく尋ねた。
「残念ながらロードホーラー、ストリートワイズ、トレイルブレイカー、タップアウト、トキシン、スタンピード、ビーチコンバー、アラゴン、バンパー、パイプス、グラスノスト、ジョイライド、ドロップショット、フリント、ボアビット、ヤードアーム、ホイールアーチ」
「そしてそこのグリフは全員死亡が確認されました」
「数百と積み込んだステイシスポッドも健在なのは数基のみです」
ブリッジ下部の席の一つに腰かけていたプロールが淡々とそう告げる。
「そうか…後でリストを」
青く光る画面に照り返されたプロールの生気のない渋面を見つつオプティマスは力なく言った。
「承知しています」
プロールは短くそう言い終えると辛うじて健在な操作盤とデータパッドへと向き直り、足を組み直すと慌ただしく作業を開始した。
「まずはこの星の情報が欲しい。原住民と接触を行う必要がある。あくまで慎重かつ秘密裏にだが」
先ほどまで真っ暗だったブリッジの照明とそのモニターが弱々しくではあるが点灯し、オプティマスは目を細めるようにしながら言った。
「スカイスパイならもう飛ばしてありますが」
ブロードキャストはプロールの席へ近づき、ラムホーンとスチールジョーを射出し、情報機器にトランスフォームしつつそう短く応じた。
「オルトモードのデータの収集と同時に周辺地形や気象条件、自転・公転周期の解析は行っているか?」
「えぇ、それはもちろん。じき使用されている言語や星の生態系も含め貴重な情報を持って帰ってくることでしょう」
プロールは作業の手を止めることなくそう答えたがふと何かを聴覚に捉えると、ブリッジ下部中央の出入口の方を見た。
「オプティマス!目覚めましたか!!」
どかどかとやってきたアイアンハイドはその足音以上の音量で歓喜の声をあげた。
「あまり気分は良くないがなアイアンハイド」
ラチェットに引き続いて聴覚レセプターに不調を引き起こされかけたオプティマスは耳元を覆うような仕草をしながら静かに言い含めた。
「アイアンハイド、船内の捜索は…」
椅子ごと向き直るとプロールは手を止め、じゃれるスチールジョーに構いつつ訊いた。
「終わった」
「ただなプロール、妙な事に遺体の数が合わん」
アイアンハイドは怪訝そうに両の手を顎部や肘部に当て両目の間隔を狭めた。
「なんだって?」
「戦闘で外に出たのは?」
ブロードキャストが素頓狂な声を上げ、突発的に人型へとトランスフォームしてから尋ねた。
アイアンハイドに続いてブリッジ下部の出入口からやって来たサイドスワイプが両手をパイルドライバーから戻しながら答えた。
「いないはずだぞ。一人だけ煙のように消えたってことにはなるが」
モニターの修理を切り上げたハウンドはラムホーンに工具を預けると該当者の心当たりを探しつつ尋ねた。
「でも誰が?」
「
生存してほしいキャラ
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オプティマスプライム
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アイアンハイド
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プロール
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ブロードキャスト
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ホイルジャック
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パーセプター
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ラチェット
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ギアーズ
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ホイスト
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サイドスワイプ
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サンストリーカー
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レッドアラート
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ウィンドチャージャー
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クリフジャンパー
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グリムロック
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ホットスポット