トランスフォーマー:Alternation of Cybertron 作:pova
スカイファイアはブロードキャストにネメシス艦尾のハッチを開けさせ、内部に進入すると慎重に体を着陸させた。
「準備が完了しました」
その巨躯を壁や天井にぶつけないようゆっくりと変形し、彼は背中から乗員を降ろした。
「よし。手はず通りにクイックシャドウは情報の収集、サイドスワイプはメインジェネレーターと脱出艇の破壊を頼む」
オプティマスは転げ落ちそうになりながらも上手く着地し、辺りを警戒しつつそう指示した。
「了解している」
クイックシャドウは前腕部を銃に変形させ、オプティマスに淡々と返答した。
「分かってますって、じゃさっさと始めますか」
サイドスワイプは脚部を展開しタイヤを接地させ、上機嫌にエンジンを吹かした。
「艦内の構造は複雑だろうが…二人の視覚がブロードキャストを介してテレトランへと伝わり、それを元に即席でマップを作成してくれるはずだ。あとサイドスワイプはせっかくの専属ナビゲーターの言うことにしっかり従いたまえ」
スカイファイアはサイドスワイプに向けてそう言い含めたが、その前に彼はタイヤ痕だけを残し通路の向こうへと消えていた。
「まさかあの方向音痴に付き合う物好きがいるとは、それも人間のパートナー…大事に扱ってやるべきだろうに」
クイックシャドウもどこか呆れ気味にそう言い、反射的に片手を戻して軽く頭を抱えた。
「んなこた分かってるっての」
二人に対して通信越しにサイドスワイプはひどく億劫そうな返答をしたが、それはすぐ甲高いエキゾーストノートとタイヤのスキール音にかき消された。
「私も移動を開始する…スカイファイア、あと少しばかりオプティマスを頼んだ」
クイックシャドウは表情と態度を一変させるとスカイファイアに対して真剣な眼差しを向けた。
「承知した。責任を持って彼のスパークを預かろう…スカイファイア、コンバイン!」
スカイファイアは一息にそう言い、自身の体を複数のブロックに分割させた。
「いい掛け声だな、かっこいいんじゃないか?」
呆気に取られたようにしばらく沈黙した後、クイックシャドウは優しく笑いかけるとアクロバティックに変形し走り去っていった。
「集中が必要なんだ!…からかわないでもらいたいな」
スカイファイアは腕や脚をバラけさせたまま、聞く者のない文句を空間に響かせた。
中途半端に変形させたような状態となった彼の翼や装甲などが周囲に散乱し、やがてそれはゆっくりとオプティマスの全身に引き寄せられるように自ずと集まりだしていった。
赤いボディの表面に白いパーツが触れ、少しづつ形を変えながら纏わりついていく。
腕部には彼の腕だったものが、脚部には脚だったものが覆い被さりオプティマスのシルエットをアンバランスに肥大化させていく。
最後に彼の背中にスカイファイアの推進機や火砲、翼と胴や頭に至るまでを一体化させた歪な塊が接続されると一連のプロセスは終了した。
「なるほど、これは慣れない感覚だな」
分割されたスカイファイアのパーツを身に纏ったオプティマスは、意識の混濁と数倍にもなった自重に戸惑いながらそう言った。
「訓練をする時間も作れませんでしたが、似たようなことは前にも何度かありましたね」
オプティマスの後頭部の方から、機首内に収納されたスカイファイアの頭がそう告げた。
「頭の後ろから声がするのも含めて妙な感覚だが…本番で乗りこなしてみせる他ない。そうだな…"スカイオプティマス"、これより攻撃を開始する」
オプティマスは即興で名をつけながら関節の出力を再調整し、強引な手法で重くなった自重に体の感覚を慣らそうとした。
「いい名前ですね。基本的な操縦はお任せします」
スカイファイアはそう言い、自身の制御と出力をオプティマスと同調させた。
「戦いの是非に悩むのは後でも出来ます。今は任務に集中しましょう…司令官」
「了解した…飛翔するぞ!」
オプティマスはたどたどしい動きでネメシスから飛び出し、雨に打たれながら上昇して船体を上から俯瞰した。
「念の為まずは推進器を潰しておきたい、粒子砲を使うか…」
背部に備え付けられた粒子砲を両脇から前方へと向けつつ、スカイオプティマスはネメシス艦尾の真下に回り込みトリガーを引く。
「目標確認、照準補正よし。発射する…!」
砲口からは轟音とともにエネルギーの奔流が迸り、ネメシスの推進器を一瞬でマグマのように溶融させた粒子の束はそのまま周囲の雲を引き裂き一帯の雨を蒸発させた。
「これは…過剰な火力だったかもしれません」
事前の出力調整を失念していたスカイファイアは苦笑混じりにそう言った。
「目立つにはちょうどいい。次は頭を潰す…外からブリッジを荒らしに行くぞ!」
オプティマスは意識を切り替え、そう言うと一体となった二人は風を切ってネメシスの艦橋に急接近した。
「いい案です。突撃しましょう」
「ブロードキャスト!ネメシスのブリッジ機能そのものを完全に停止させてくれ、ミサイルと機銃で窓から殴り込む。それとスカイファイア、腕部ブレードの起動は可能か?」
オプティマスはブリッジの天井にゆっくりと着地し、莫大な推力に振り回される負担に前後不覚になりかけて膝をついた。
「ご意思のままに動かせるはずです。試してみてはどうでしょう」
人間の乗り物酔いにも似た症状からか不安げなオプティマスに対し、スカイファイアはそう応じて試しに両腕からブレード状に収束させたエネルギー刃を展開してみせた。
その頃ブロードキャストの操作により暗転したネメシスのブリッジでは全員が混乱の渦中にあった。
スカイワープは反応を返さない操作コンソールを殴りつけるのに飽きると、苛立ちながら叫んだ。
「なんなんだ!?さっきから暗いし操作出来ねぇしロクに動かねぇぞ!」
「推進器がイカれたようだが各員、チェックはどうした?」
サンダークラッカーはその渋面に呆れと諦観を滲ませ、気怠げに通信を飛ばしたが反応はない。
ようやく勝ち得た指揮官の席でスタースクリームは自身と同じボディを持つ二人の部下を見下ろし、悠然と彼らの対照的な反応を眺めていた。
「サウンドウェーブ…艦の制御はどうなっている?」
次いでスタースクリームは情報部門の専門家の名を呼び、訝しげに尋ねた。
「オートボットに介入された。そう見て間違いない」
サウンドウェーブはコンソール上の手を止めずに抑揚のない応答を返し、冷静に機器の操作を試みていた。
「復旧作業に移行する…」
そう言いかけると彼はカセッティコンを胸部から放り出して走り出した。
「恐らく奴に嵌められた、ジェットファイアの策に」
去り際にそう言ったきり、彼らはブリッジの様子もスタースクリームも気に留めず去っていった。
「操縦を受け付けない上に推進器も死んでる…このままじゃ墜落す_」
サンダークラッカーがそう言いかけた時、艦橋の天窓を砕き割りながら、巨大な塊が艦内に落下してきた。
その塊には翼と銃と四肢があり、割れた天井から光が降り注ぐにつれてその奇形めいた姿が露わになっていく。
「腰抜けのオーバーロードはどこだ!無様に逃げ帰ることなど出来ぬようにこちらから出向いてやったぞ…さっさと奴を出せ!!」
窓の破片を吹き飛ばすほどの声量でオプティマスは啖呵を切り、ブリッジの空気を震わせた。
「侵入者か?…まさか、プライムだと!?」
火砲と装甲に包まれた異形と化したシルエットに惑わされたもののサンダークラッカーは程なくその正体に勘づき、二人が融合したかのような悍ましい姿に驚嘆した。
「気味の悪い姿だなまったく…オーバーロードをお望みか?なら今出撃させてやる。これ以上お前達に邪魔されてたまるか」
スタースクリームは心底厭そうに椅子からゆっくりと身を乗り出し、呆れ返りながら汚いものを見るような目線でそう応えた。
「ヘキサティコンども!ジェットファイアとプライムがブリッジに侵入してきた…変形して直ちに迎撃しろ!!」
彼は癇癪を起こしたかのようにそう怒鳴りつけ、相手が応答を返す前に通信を切った。
「素直だね、いい心がけだスタースクリーム」
睨み合いながらも忙しなく足を踏み鳴らし、不機嫌そうに唸り声を上げる旧友の様子を見てかスカイファイアは愉快そうに告げた。
「ジェットファイア…何もかも全部お前の計画だな!?俺を騙すとはいい度胸だ。せいぜい奴に泣かされるといいさ!」
スタースクリームはスカイオプティマスの気味の悪い姿に怯えながらも胸部のミサイルと肩部の機銃を一斉に放ち、相手の虚をついた隙に踵を返してブリッジから逃げ出した。
「おいスタースクリーム!どこに…」
スカイワープは無様にも逃げ出した指揮官の後ろ姿を見て、戸惑いと呆れ混じりにそう尋ねた。
「侵入者が二人だけな訳あるか!残りを探しに行くんだよ!」
長い通路からスタースクリームが怒鳴るようにそう返答したかと思うと、彼は変形して爆音とともに飛び去っていった。
スカイワープがふと振り向くとそこには無傷のスカイオプティマスがブレードを展開させてゆっくりと迫っていた。
「あー、サンダークラッカー、俺ぁメガトロン様の様子を見てこないと…後は任せたぞ!」
スカイワープは慌ててサンダークラッカーにそう言うと、光の跡を残してどこかへとワープした。
「待てスカイワープ!」
呆気にとられたサンダークラッカーはそう叫び変形して後を追おうとしたがその行動は仲間を制止するには遅く、敵の攻撃から逃れるにしても遅かった。
オプティマスは左手でサンダークラッカーの主翼を掴み取り、ゆっくりと引き寄せた。
「まずは一体、お前からだ…覚悟はいいな?」
怯えと恐怖を見せた敵に対して彼は淡々とそう宣告し、右腕の追加装甲からブレードを振り下ろした。
ホットスポットはネメシスを見上げ、敵と味方の数が一つづつ足りないことに気づいた。
「…話と違うな。スカイファイアがブリッジに突入していった所までは見たが…ブロードキャスト!どうなってるか分かるか!?」
「構いやしねぇ!撃ちまくれ!!」
三機のC-Xは寄せ集めの割に高度な連携を見せ、パイロット達は適切にこの兵器を使いこなせるようになりつつあった。
「オーバーロードは一人でネメシスのブリッジに向かったんだ。賢明な判断だと言える」
ブロードキャストはそう言い、ネメシス艦橋内で両者が格闘している様を見せた。
「となれば向こうが五、こっちが六か。久々に数で勝ってるならいけるはずだ…!」
ホットスポットは自軍のインシグニアを模した新しい盾を構え、自らを奮い立てるようにそう言った。
ホイルジャックが持てる技術を詰め込んだそのシールドは表面に青く光るフォースフィールドを展開し実際の強度以上の防御力を以て、降り注ぐミサイルや砲弾から味方を守っていた。
「俺はニトロゼウスと遊んでくっから、残りは頼む!」
クリフはハウンドから預かった山盛りの銃器を贅沢に撃ち放しながら、雲を切り裂いて迫る灰色の戦闘機に鋭く狙いを定めていた。
「よォ赤チビ!…久しぶりだなァ!!!」
六発のミサイルをクリフめがけて一直線に発射し、すぐさまニトロゼウスは羽の下から脚を露わにすると軽快に変形した。
「会いたかったぜ一つ眼のイカレ野郎、大昔に殺し損ねたのがずっと気がかりだったんだ」
迫りくるミサイル群に抱えていた銃をぶん投げ、クリフはその勢いのままメイスを構えて走り出した。
「さっぱりさせてやンよその未練、お前の命ごとなァ…!!」
他の全てを置き去りにして急接近する二人の間をミサイルの爆風が遮ったが、ニトロゼウスは臆せず叫び雷を纏って加速する。
「さぁ、始めるぞ!」
クリフは愉快そうに言い渡し、二人は他の誰にも追いつけない勢いでメイスと電撃の迸る拳とを激突させた。
早々に二人を眼で追うのを諦めたホットスポットは、クリフの残した銃を構えて空に視線を戻した。
「デモリッシャーだ!ヘリに吊られたあの戦車をまず狙え!!」
叫ぶようなホットスポットの命令をブルーバッカスの聴覚が拾い上げると、彼はその変わらぬ暑苦しさに嘆息した。
「またこういう役回りか。さっさと降ろすぞ、巻き込まれちゃ大損だ」
「ブルーバッカス、おい待って_」
デモリッシャーが慌ててそう言い終える前に、彼は落下を始めていた。
「贅沢言うな」
集中砲火に晒され逃げ惑う彼を見下ろし、ブルーバッカスはそっけなく呟いた。
そのブルーバッカスの真上を旋回して飛び回っていたスモークスナイパーは指揮官のホットスポットに固執していたが、ふと粒子砲が自身の翼をかすめたところでようやくC-Xの存在に注意を向けた。
「紫のプライムが三体?悪い冗談ね…GB、まとめて吹き飛ばしなさい」
彼は落下したデモリッシャーと降下するギガントボムとを援護するため、主翼に懸架した愛用の"スクリームワインダー"を発射した。
「ラジャ…」
彼の相棒の気取った名前のミサイルが敵の眼を引く間、ギカントボムはゆっくりと敵に近づき、持てる火力の全てを行使する用意を始めた。
「全翼機が上から来るぞ!散開しろ!」
ダグがC-X三号機の連装砲を懸命に空へと撃ち鳴らしながらそう叫んだ。
「特殊弾頭を直撃させる」
対空砲火の雨に晒されギガントボムの姿勢が鈍った一瞬を、パーセプターが見逃すはずもなかった。
彼は淡々とトリガーを二回引き、対象のエネルゴンを固形化する循環阻害剤を封入した二つの弾丸をギガントボムのコックピット付近へと直撃させた。
かつてグリムロックに用いたバージョンからスカイファイアによって改良を重ねられたそれは表面装甲からでも的確に浸透し、対象の生体機能を蝕んでゆく。
「あら、向こうにもスナイパーがいる…?狙いはいいみたいだけど。GBを止めるには火力が足りなかったようね」
スモークスナイパーは反射的に人型に変形し、右手をマスクのそばに当てて驚いた。
「あれは……パーセプターか?俺も偉そうなことは言えないが、変わるものだな」
ブルーバッカスは砲撃やローターの回転音に紛れて、誰にも聞こえない声でそう言った。
スモークスナイパーは迫りくる対空砲火の雨をひらりと躱し、上下逆さまになった状態で一機に狙いを定めた。
「二人がかりでまずビームの奴を潰す…ブルーバッカス、手ぇ貸しなさい」
そのまま肩口から二門の粒子砲を展開すると、スモークスナイパーはお返しとばかりにC-X一号機にビームの束を浴びせた。
「お前の相棒はいいのか?」
粒子砲が脚部に直撃し行動不能になったC-X1と、墜落していくギガントボムを見ながらブルーバッカスはそう返した。
「そんなにヤワじゃないわよ、私のGBは」
表情と声色に喜悦を滲ませ、スモークスナイパーは変形して急上昇した。
ギガントボムは墜落するその瞬間に変形して翼の下から履帯を覗かせ、大きく跳ねると勢いよく走り出しながら周囲にミサイルをバラまいた。
「爆撃機が戦車になったぞ!?」
粒子砲の充填に手間取るC-Xのコックピットの中で、ヘンリーはそう絶叫した。
脚部をビームで消し飛ばされ身動きがとれない彼の一号機に向かって、ギガントボムは猛然と迫っていた。
「俺が止める!」
二号機は空になったミサイルポッドをパージすると走り出し、一号機を飛び越えてギガントボムに掴みかかっていった。
スモークスナイパーは軽やかに身を翻して人型へと変形し、誰よりも高い位置から戦場を見下ろした。
「そんなのムリムリ、GBをナメ過ぎよ…焼き払いなさい!」
そう命じると同時に愛銃"ラジアルポッド"を狙撃形態に変化させ、彼は一帯に広がる爆風をスコープ越しに眺めていた。
「これならどうだ!!」
背負った巨大ミサイルを点火し、その推進力を得た二号機はギガントボムの突進をわずかづつ押し返していく。
「ラ…ラジャ?」
エネルゴンの循環が滞り出力を得られなくなったギガントボムは戸惑い混じりに憤ったが、その隙にも動きを止められた彼の体と武器は少しづつ破壊されていった。
「嘘…あの紫の奴、GBとパワーで互角!?」
集中砲火を受けているギガントボムの援護さえ忘れ、スモークスナイパーは眼下の光景にしばし呆然としていた。
「紫の奴もパワフルだが、それ以上に奴の調子が悪いらしい…弾を撃ち切って軽くなったにしては妙な様子だな。さっさとトランスワープさせた方が賢明だろ、後で修理費が嵩むだけだ」
「そうね…ネメシス!こちらヘキサティコン二番機、副隊長スモークスナイパー。GBを、ギガントボムをトランスワープで帰還させて!!」
スモークスナイパーは砲撃を回避しながら、必死にそう呼びかけた。
「…応答がない?通信を妨害されているのか、あるいはここで捨て駒にする気か」
ブルーバッカスは訝しんでそうこぼし、密かに動揺した。
「ここでも俺は見捨てられた…?オーバーロード!聞こえるか!?こちら六番機ブルーバ_」
そして彼は必死にオーバーロードに連絡を取ろうとしたその隙に、胸部を狙い撃たれて逆さまに墜ちていく。
オーバーロードは墜ちゆくネメシスの艦橋へ悠々と躍り出た。
「久しいな、ジェットファイア。見ないうちに随分と変わったものだ」
オプティマスと一体化しまるで寄生するように纏わりついているスカイファイアを嘲るように、オーバーロードは仰々しく彼をかつての名で呼んだ。
「一人で来たのか?残りの連中はどうした」
斜めに切り裂いたサンダークラッカーの胴から淡々と首を引きちぎり、オプティマスは意外そうに言った。
「デモリッシャーやブルーバッカスに相手をさせても、大事な部下を無駄に損耗させるだけ…私にもそのくらい分かっているの」
オーバーロードは二人を見下ろし、うんざりするようにそう言って右手に銃を抜いた。
「意外に冷静だったか」
オプティマスはそう言い、斧を引き抜いた。
「何より、俺が面白くない」
オプティマスが素早く振り下ろした斧を左手で受け止め、オーバーロードはつまらなそうに言い放った。
「俺が部下を引き連れてお前に勝ったとして…無論そうなるに決まっているが…それは誇れるような勝利ではない。屈辱を晴らすには不足だ」
彼はそのまま胸部の砲塔をゆっくりと展開させ、オプティマスへと向けた。
「読みはそう外れてはいなかったようです」
スカイファイアは苦笑混じりにそう応じ、オプティマスが撃たれる前に自らの意思で飛び上がって無数のミサイルを撃ち放った。
「始めるか…オーバーロード!」
互いの撃った弾が二人の間に割って入り、ネメシスの艦橋中に爆風が広がった。
「えぇ、始めましょう…あなた達の終わりを!!」
ネメシスの艦橋を穴だらけに吹き飛ばした爆風と陽炎が包み込む先には、歪んだ笑みを浮かべたオーバーロードがいた。
クイックシャドウはゆっくりと墜落しつつあるネメシスに潜り込み、腕を銃に変形させ慎重に通路を歩いていた。
「まだ発見できたのは二体…単独でうろついているディセプティコンが少ないな。フォースフィールドを上手く使えれば集団相手でもやりようはあるのだろうが…しかしホログラムはともかく、マグネットパワーはどこで使うというのだ?」
クイックシャドウは見渡す限り誰もいない通路を眺め、そうぼやいた。
「…ブロードキャスト、聞こえているか?」
記憶を読み終えた敵兵の頭を適当に放り捨て、彼女は思い出したかのように通信を開いた。
「聞こえているとも。マグネットパワーの使い道についてなら、ウィンドチャージャーにいくつか聞いてきた。応用を利かせれば壁に張り付いたり、扉をこじ開けたり、敵の頭を破裂させたり、敵の実弾を止めて跳ね返したり、鉄板に乗って飛んだりできるらしい」
ブロードキャストはテレトランのマップを観察しながら、どこか愉快そうに答えた。
「聞きたいことはそれではない。脱出の方法についてだ」
「スカイファイアに乗るか…彼が動けなければサイドスワイプとともに飛び降りてくれ。一応グランドブリッジも使用可能だ、これまでと違って今その艦はただゆっくりと沈んでいるだけで大して動いていないからね」
「動くものには使えないのか。オリジナルと違って、運用上の制約も多いのだな…」
「ところで、マップは正常に機能しているかな?」
「あぁ、助かっているが私がまだ行っていない場所まで見ることができるのはなぜだ?」
マップをバイザーに映しながら、クイックシャドウはそう尋ねた。
「理由その一として、サイドスワイプがナビゲーターを無視して艦内を端から端まで走り回ってるからだね。彼の移動したルートが反映されているんだ」
「なんと…嘆かわしいことだが、奴の軽率さもたまには役に立つのだな。敵に発見されていないのが不思議だ」
既にどこか慣れた様子でクイックシャドウはそう嘆息した。
「艦内の監視システムは我々が握っている…それが二つめの理由だね、こちらでも少しづつ敵のいる位置を特定している」
「奴らの母艦だというのに妙にディセプティコンの数が少ないな。といって戦いに駆り出されているのもヘキサティコンばかりとなると、残りは治療中か…?」
変形して艦内の通路を走りながらクイックシャドウは不思議そうに言い、マップに従ってリペアルームを目指した。
「間違いないだろう。オンスロートやブリッツウィング達は全員クリフジャンパーが一人で叩きのめしたから、当然出てもこれない…スカイファイアの読みが当たった」
「今後あいつとだけは喧嘩しない方がよさそうだな、私よりも小さいボディでよくもやるものだ」
クイックシャドウは呆れ混じりにそう言い、真っ直ぐな通路を走り出した。
その少し前、スタースクリームはネメシス内のある部屋に向けて一直線に飛んでいた。
「サウンドウェーブ、システムはまだ復旧しないのか」
部下を通信越しにそう詰り、現状に呆れ返った彼は荒れていた。
「対応を継続している。しかし艦そのものが長く持たない」
サウンドウェーブは淡々とそう応じた。
「流し込まれた謎のウイルスがネメシスを蝕んでいる」
「ジェットファイアが昔言ってた自信作だろうな…分かった、この沈みゆく戦艦を放棄する。ヘキサティコンどもが戦ってる隙にこっちは人数を集めて脱出艇の用意だ、それとクリフジャンパーの奴にやられたアストロトレインの修理…この二つを最優先で進めろ、俺の名前で何人使っても構わん」
スタースクリームは窓に映る地表が徐々に近づきつつあるのをちらと見、整然とそう命じた。
「了解した」
「あー…あとプライムと戦ってる最中のオーバーロードにもレヴィアサンの用意をするよう伝えておけ、お前の方からな」
「…言われずとも分かっている」
サウンドウェーブは久しくなかった的確な指示に対し、平静を装って返答した。
「メガトロンについてはどうする気なのか」
本来の指導者についての指示がないまま会話が打ち切られようとしていることを察し、彼は責め立てるような口調で問うた。
「回復は順調に進行しているが」
「そんなことに気を回してる場合か?目覚めれば俺が責任を持って連れ出すさ、だが眠ったままならそれまでだ。戦力にならない者にかける情なんざディセプティコンには存在しない」
この問答を予期していたのか、スタースクリームは答えをはぐらかす言葉を常以上の流暢さで並べたてた。
「…そうだな」
サウンドウェーブは短くそう言い、静かに憤った。
「恨むんならラットバットごときを盾にされてなんの策もなしにぽんとパーツを渡しちまった自分を恨むんだな」
スタースクリームはゆっくりとそう語りかけ、押し黙ったサウンドウェーブを諫めた。
「無策ではない。こちらにも考えはある…」
激情的な怒りを無機質な顔の奥に潜ませ、サウンドウェーブはそう返答した。
「……切りやがったな。納得しちゃいないだろうが、まぁいい」
静かにほくそ笑み、スタースクリームは変形を解いて歩き出した。
どたどたと騒がしい足音を彼が聞きつけたのとほぼ同時に通路の向こうから暴れ牛が迫り、スタースクリームの眼の前で人型に戻った。
「スタースクリーム!一体何がどうなっている!?」
「おいおい今度はタントラムか?…聞いてくれ、この栄えある不沈艦は残念なことにもうじき堕ちる。サウンドウェーブの命令に従って脱出の準備をしろ、今すぐにだ!」
面倒そうな顔を隠しもせず、しかしすぐさまよく回るその口を開きスタースクリームは部下を扇動した。
「なんだと…分かった!すぐに向かう!!」
タントラムはまた牛へと戻り、直情的に駆け出して行った。
「これでアホどもが全員…下層デッキかリペアルームに向かったはずだ、となればこの区画はがら空きだな」
スタースクリームは周囲に誰の姿もないことを確認すると、他と同じように制御システムに封鎖された扉を破壊して中へと入っていった。
「スタースクリーム、メガトロン様の様子が妙なんだ」
薄暗い部屋にはスクラップのように力なく横たわるメガトロンが繋がれた装置があり、そのすぐそばにスカイワープが控えていた。
「スカイワープ…?お前ここで何してる!」
直接ワープして来たのであろう部下に対し、スタースクリームは憤慨しながらそう叱責した。
「何って、俺はメガトロン様がオートボットどもに狙われるんじゃないかと…」
スカイワープは自身の行為に何の疑問も抱いていない顔でそう言い、八ヶ月以上が経過してなお眼を開けないメガトロンを見下ろした。
「こんなガラクタでボッツが釣れるかよ、連中はロクに動きもしないこの老いぼれがどこにいるかも知らないのに」
スタースクリームは心底つまらなそうにそう言い、動かすだけ無駄な装置の電源を切ろうとコードを辿った。
その瞬間、天井に大穴が空き銀色の物体が部屋へと降ってきた。
「いーや、釣れるかもしれねぇよ?とびきり輝いてて…とびきり動きのいいボットがな!」
意気揚々とそう言い、サイドスワイプは両腕を変形させたドリルを見せびらかした。
「テレトランよりルート案内を再構築中…SW-04、任務に専念してください。次のあなたの目標は脱出艇の破壊です。分かっているはずでしょう?」
淡々としながらもその中に困惑と呆れ、諦観と怒りを秘めた声色でオペレーターは通信越しにサイドスワイプへと語りかけた。
「い、色は違うがありゃサイドスワイプだ!どうする?」
スカイワープは眩い銀一色の敵を見ると、不安そうに指示を仰いだ。
「堅いこと言うなよシンシアちゃん、道に迷ったと思ったら思わぬ発見だ。ナビゲートより直感に頼った甲斐があった!メガトロンに弔辞の一つも述べてやろうか?」
サイドスワイプは剣を抜くとゆっくりと刃先を二人に向けた。
「勤務中はその呼び方禁止」
「…SW-04、メインジェネレーターの次は下層の脱出艇の破壊が作戦目標です。発着場に急行してください」
一瞬素の感情を露わにしたオペレーターだったが、すぐさま元の状態へと戻って指示を飛ばした。
「どうするだと…?スカイワープ、お前はまだ命令されなきゃ何も出来ないのか!?さっさと奴ごと名前のとおりにワープしてどっかに消えろ!!」
スタースクリームは目の前の二人に対して募らせた苛立ちを爆発させるようにありったけの声量で叫んだ。
「…あぁ、その手があったな」
自身の最大の武器の存在を思い出したスカイワープは、そうつぶやくとサイドスワイプへ猛然と迫った。
「俺も今、同じこと言おうとしてたぜ…!」
そう言い終えるより速く、脚のタイヤを逆走させたサイドスワイプは素早く跳ね回りながら一瞬で部屋を飛び出した。
「敵との不用意な接触は避けてください、現在あなた以外にこの任務をこなせる者はいません」
重ねてそう言い、オペレーターはサイドスワイプの思考力と判断力を信じた。
「よし、逃げる!」
彼女の声色から事態の重さを再確認し、サイドスワイプは迷わずそう叫んだ。
その瞬間に彼は両手をドリル状に再変形させ、莫大な輻射熱とタイヤのスキール音を伴って高速で回転しながら床に大穴を開けて下の階層へと逃げた。
「な…なんだ?」
スカイワープは一瞬の出来事に混乱し、思考が追いつかず反射的にそう言った。
「最下層まで追っていけ!いいか、奴に好き勝手させるなよ!!」
スタースクリームの通信越しの怒号がスカイワープを目覚めさせると、彼も変形して床に開いた大穴へと飛び降りていった。
生存してほしいキャラ
-
オプティマスプライム
-
アイアンハイド
-
プロール
-
ブロードキャスト
-
ホイルジャック
-
パーセプター
-
ラチェット
-
ギアーズ
-
ホイスト
-
サイドスワイプ
-
サンストリーカー
-
レッドアラート
-
ウィンドチャージャー
-
クリフジャンパー
-
グリムロック
-
ホットスポット