トランスフォーマー:Alternation of Cybertron   作:pova

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オートボット-地球編⑲:Lethal Dose,Part3

墜ちゆくネメシスのそのすぐ下で、戦いはまだ続いていた。

戦況はホットスポット達の戦力がヘキサティコンと相対するには不十分であったことを物語っており、もはや大勢は決しつつあった。

「弾が切れかけてる! 」

どのC-Xがそう叫んだのか、ホットスポットにも中にいる当人達にもそんなことを気に留める余裕はなかった。

デモリッシャーに加えてブルーバッカスとギガントボムが墜ちてなお、彼らは脅威だった。

 

ホットスポットが最後の決断を下そうとした瞬間、上空に歪んだ空間の輪が出現し、紫の光跡とともにそれは弾けて消えた。その中からは黒い戦闘機と、振り落とされた銀色の塊が飛び出した。それは勢いのままにみるみる高度を落としていき、その場にいた全員が正体を悟るのに時間はかからなかった。

「サイドスワイプが飛んできた!?ネメシスにいたはずじゃ…」

ホットスポットが驚き空を見上げる。すると叫び声を上げながら落下してくる銀色の車は、人型へと変形してホットスポットの水色を目印に着地する姿勢に入った。

 

足を地表に対して垂直に伸ばし、墜落しつつあるサイドスワイプは脚部のタイヤを使って着地を試みた。勢いよく落下した彼はタイヤの弾力で大きく跳ね返りながら体勢を整え、転びかけつつも地面に剣を突き立てて減速する。

彼は地面を滑りながら素早く戦闘態勢へと復帰した。

「やられたか…スカイワープの野郎」

悔しげにそう言いサイドスワイプは周囲を見渡して敵を探したが、真っ先に味方の惨状が眼に入ると彼の表情は呆れたようなそれへと変わった。

「っておいおい、何だよこのザマは」

 

この戦況についてパーセプターは弁解の言葉を持たない

パーセプターは空に向けて反撃を行いながら、淡々とそう告げた。彼は常通りの平静な様子を崩さず、しかし表情はかすかに苦々しいものに見える。

 

「六体で五体相手にしてこれだ、情けない話だよな」

盾に身を隠したまま悄然と言い、ホットスポットは倒れているC-Xを見やった。

 

「SW-04、もはや作戦目標の達成は困難です。脱出艇の破壊にはOP-01を向かわせます…あなたはその場でディセプティコンとの戦闘に専念してください」

オペレーターは冷静ながらも残念そうな口調で語りかけ、静かに溜息をついた。

 

「了解了解…そういやクリフはどうした?」

サイドスワイプは敵の対地攻撃を脚部のタイヤを使った移動で流麗に回避しながら適当な返事と質問を返した。

 

横切るような轟音が空に響きながら接近し、サイドスワイプの声をかき消した。

「ほうら、くれてやンよ」

先程の方角から再度接近してきたニトロゼウスが灰色の戦闘機として通り過ぎ、すれ違いざまにクリフの遺骸を放り捨てていった。

 

「へぇ。こりゃだいぶ念入りに割ったな…よほど怖かったらしい」

もはや無数の砕かれた破片と形容されるべき状態のクリフジャンパーの体を見ても、サイドスワイプは一抹の動揺さえ見せることなく、淡々と言い放った。

 

サイドスワイプのその言葉など聞こえていないかのように飛び去ったニトロゼウスは、ふと近くにいた黒い戦闘機に向けて急接近すると意図的に激突した。

両者がその強い衝撃で反射的に人型へと変形すると、彼は黒い機体のキャノピーから出てきたスカイワープの首を掴んで力づくに振り回し逆さに地面へと叩き落とした。

「なァ、スカイワープ…俺達だけに働かせるたァどーいう了見なンだ?」

ニトロゼウスは何気ない風を装ってそう問い詰めると、その巨体をスカイワープのもとへ落下させ彼を踏みつけた。

 

「…こっちは人質交換の時に出てったんだ」

スカイワープは怯えもせずに言い返し、自身を踏みにじって見下ろすニトロゼウスの背中にワープして彼の後頭部へと銃口を突きつけた。

「なら次は?お前らの番だろ」

 

スモークスナイパーも二人の諍いへと飛び込むように割って入り、瞬時に変形してスカイワープへと銃を向けた。

「待ちなさい!!…もちろんこちらもそれは理解してる。クリフジャンパー一人にあんたらの大半がやられたってことも…でもネメシスが攻撃されてるって時に、スタースクリームとサウンドウェーブは何をしてるっていうの?」

浮遊してスカイワープを見下ろし、彼は銃口を向けたまま冷ややかに言い放った。

 

殺気立った睨み合いが続く中、ニトロゼウスとスモークスナイパーのもとにひどくノイズ混じりの通信が届いた。

「こちらオーバーロードだ、ネメシスはもはや保たん。レヴィアサンの準備をしろ!」

彼らがネメシスを振り返ると、炎上する戦艦から戦車を懸架した大型の航空機となったオーバーロードが彼らのもとへと飛来していた。

 

「オートボットどもを始末してからじゃダメ?」

空から迫る機影を見上げながら、スモークスナイパーは銃を下ろしてそう問うた。

 

高度を下げつつ通過した航空機から戦車が投下され、三体のすぐそばへと着地した。

「それは俺が引き受けよう」

大柄な戦車は部下達に鷹揚とそう言い、緩やかにその場で変形した。砲塔や履帯が収納され、それは戦車としての形を失うと同時に複雑に組み変わり脚部と腰を形成する。

 

「プライムはどうした」

スカイワープはニトロゼウスに右肩部の銃を向けたまま、オーバーロードの上半分を成す航空機に視線と左肩の銃口を向け短く尋ねた。

 

逃げていったわよ。自分から誘っておいてみっともない男…

名残惜しげにそう返すと同時に、航空機は変形した脚部に接近した。

機首を上に向けてゆっくりと落下しつつ彼女は上半身へと形を変え、跳び上がった脚部と空中でドッキングした。

 

「レヴィアサンがネメシスの連中に壊されたりしてなきゃいいけど…GB、あんたは重いしデカいしおまけに不器用だから残んなさい。ブルーバッカス、デモリッシャーの回収と積込みお願い。スカイワープとニトロゼウスも私と来なさい」

オーバーロードを見上げ、彼らが戦意に満ちているのを確認するとスモークスナイパーは早口にそう言った。

 

「…待て、俺もなのか?」

スカイワープは銃を向けたまま、ふと訝しげにそう返した。

 

「ま、向こうにいるジェットファイアとやり合うのも悪かねェな。名残惜しいがクリフジャンパーも殺れたしいっか」

スカイワープを片手で押しのけ、ニトロゼウスは渋々といった様子でそう返した。

「つーか雇われ、お前飛べンのかよその傷で」

そして倒れていたブルーバッカスがたどたどしく立ち上がったのを見て、彼はそっけなく訊いた。

 

「この程度問題にもならない。それより、また重い荷物だ…高く付くぞ」

言葉とは裏腹に苦しげな様子のブルーバッカスは意地を張り通し、異音やパーツの剥落を伴いながら変形して言った。

 

「ブロードキャスト、応援頼めるか?こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際だ」

意識を取り戻したホットスポットは三機の戦闘機と戦車を吊り下げて撤退するヘリを見上げ、次にオーバーロードがこちらに迫っている様を見た。

 

「ちょうどいいメンバーを今送った…彼らなら役に立つはずだよ。絶対に」

ブロードキャストは断定的にそう言ってみせ、同時に拭えない自らの不安をごまかした。

 

オーバーロードは愉しげに身を躍らせ、残骸の中からC-Xを引きずり出した。

さて。そろそろ死人の一人も出さないと…

偏執的な笑みをたたえ、彼女は凛とした声色でそう嘯いた。

 

A

 

クイックシャドウはネメシスの通路を歩いていた。

「…あの赤いディセプティコンは、確か奴がディーノか」

マグネットパワーを利用して天井を移動していた彼女は、上下逆さの視界の中でディーノが部屋に入って行くのを発見した。

 

「スタースクリーム?…お前、そこで何をしている?」

ディーノはメガトロンの横たわる装置の前でうなだれている現在のリーダーを発見した。

 

「…誰かと思えば…今賭けをしてんだ。ネメシスが墜ちるまでにこの老いぼれのスパークが輝き出すか、色褪せるかでな」

スタースクリームは装置に繋がれて生かされているメガトロンを眺め、悄然とした様子でそう返した。

 

「見え透いたことを言う。どんな細工をした…?」

ディーノは呆れたような顔で彼の後ろ姿を見ると、嘲るように言った。

 

「事故で装置に循環させるエネルゴン用のタンクに廃油と冷却液が間違えてぶちまけられたらしい。その程度でくたばるとも思えないがな」

スタースクリームは虚ろな声色でそう答え、憔悴した表情をディーノへ向けた。

 

「それは好都合だったな。メガトロンが完全にくたばれば話が早い」

 

「そうだろうな。お前はそのためにこの現状を作り出したんだもんな…ジェットファイアと組んで…俺達を陥れた!!」

スタースクリームは衝動的にそう口走り、腑抜けた様子のままディーノを糾弾した。

 

「被害妄想もここまで来ると…いや、言葉もないよ。ジェットファイアからの提案だと聞いてすんなり呑んだのはどこの誰だったか、その錆びついたブレインでは思い出すのも難しいらしいな?」

偏執的に責め立てる相手とは反対に、表情を変えず気怠げな声色でディーノは淡々と反駁した。

 

クイックシャドウは上下逆さの視界の中、ディーノの後を追うように通路の上側の壁を乗り越え天井から無機質な部屋に入っていった。

「ブロードキャスト、メガトロンを発見した。意識はなく機械に繋がれて生かされている状態らしい」

寝かされているメガトロンの前で両者が言い争う奇妙な状況に対し、彼女は隠せぬ困惑と戸惑いの混じった口調で報告した。

 

「さっきサイドスワイプからも同じ連絡があった。ネメシス内の医療機器を止められるか、試してみよう」

ブロードキャストはクイックシャドウの視界と艦内の監視システムの映像とを照らし合わせ、次にテレトランを通して作成した新しい命令を治療装置に実行させた。

 

次の瞬間、メガトロンに繋がれていた装置は駆動音や発光が消え間もなく動作を停止した。

「何だ!?」

スタースクリームは啞然としたままそう叫ぶと装置を再起動しようとスイッチに手をかけたが、しばし逡巡して動きを止めた。

 

「ほう、そういうことか…」

ディーノは何事か悟ったようにそう言い、吐息を漏らすように口腔から排気した。

 

「ブロードキャスト、上手く行っているようだが…何をした?」

クイックシャドウは慄くような声色で、訝るようにそう尋ねた。

 

「装置に停止命令を出しただけだよ。これで向こうの戦力を更に弱めることができた…なるべくならこんな手なんか、使いたくはなかったけれど」

表情を曇らせ、ブロードキャストは浮かない様子でつぶやいた。

 

手を震わせ、頭を抱えて思い悩んだ末にスタースクリームは彼の中の秤が一方に傾くのを感じた。そして彼は生命維持装置を再起動させるが、しかし強制的に停止させられた装置は何度電源を入れてもなんのも反応も示さない。

「…自分だけ先に楽になる気か?負けもしなければ勝てもせず、勝手におっ始めたことを終わらせることさえ出来ず。アンタは老い衰えてこんな辺鄙な星で死ぬことをお望みか?」

口や胸にチューブを繋がれ横たわるメガトロンを見下ろし、スタースクリームは忌々しげにも虚しげにも聞こえる様子でそう言い放った。

 

「感傷は後にしたらどうだ。オートボットにメディカルマシンの制御まで乗っ取られたらしい…通信を開いてみろ。呻き声と悲鳴ばかりだ」

ディーノは聞こえてくる苦悶の声に眼を細め、響くノイズに辟易しながらそう告げた。

 

D

 

ホットスポット達の戦場では、オーバーロードによる一方的な蹂躙が始まっていた。

彼女はまず素手だけで三機のC-Xとパーセプターにサイドスワイプを叩きのめし、そして今ホットスポットの首を掴んでねじ切ろうとしていた。

見かけばかりプライムに似せたところで…揃いも揃ってつまらない男達

 

だがまさにその瞬間、この平原に空間を歪めたような円状の力場が発生した。

その中から緑の影が飛び出し、オーバーロードに三連結されたガトリングの銃口を向けた。

「…遊び相手になってやろうか、多重人格の腐れ外道」

 

「おやおや、思わぬゲストの登場だな?」

オーバーロードは雑然とホットスポットを放り捨てると、彼はどこか愉しげな様子でギガントボムにそう言った。

 

「ラ…ジャ……」

重傷を負いながらもどうにか立っていたギガントボムは、途切れ途切れにそう答えた。

 

ホットスポットは誰が救援に来たのかを悟り、驚愕して眼を見開いた。

「ハウンド、なのか!?お前変形できないんじゃ…」

 

「変形できなくても戦える。それに…」

ハウンドがそう言い終える前に、オーバーロードは手にした銃を撃ち放った。

しかしその銃弾はハウンドに届くことなく空中で失速し始め、やがて完全に停止して落下した。

「…俺一人じゃあ、ないんだ」

ハウンドがそう言うとほぼ同時に彼の背後に先程と同様の空間を歪めた円状のゲートが顔を出し、その中から灰色とくすんだ赤に染まったオートボットが飛び出した。

 

「まぁ、そういうことだ…最後にもう一度だけ、戦場に惹きつけられた」

ウィンドチャージャーは念のためハウンドから距離を取ると、悟ったような顔で苦笑した。

 

「チャージャー!お前、具合は…」

ホットスポットはそう言いかけたが、ウィンドチャージャーの顔がかすかに苦痛に歪んでいる様子に気づき、それ以上の言葉は続かなかった。

 

「俺もいるぞ、今回だけはな」

チャージャーのトランクからギアーズが飛び出し、縮こめていた手足を伸ばして不遜にそう言った。

 

「ギアーズ!?なんでお前が…」

 

「お前らがこうまで不甲斐ないとは思わなかったから、来てやっただけだ。他に理由はない」

ギアーズはどこか照れ臭そうに答え、真剣な眼差しで両手に銃を構えた。

 

「発育不全のチビが増えたところで何が出来るのか…見せてもら_」

オーバーロードが嘲るようにそう言いかけたが、彼の言葉の続きは三連結ガトリングの銃声と爆風が残らず搔き消した。

 

仰向けに倒れ込んだオーバーロードを見下ろして、ハウンドは静かに憤った。

「聞き捨てならない侮辱だ…俺の仲間達への」

しばしの沈黙の中、彼の手にあるガトリングの赤熱した銃口から煙が静かに立ち昇った。

 

反応が遅れたギガントボムは驚きの感情とともに、緩慢な動きで心配そうに指揮官の方を振り返った。

「ラ!?…ジャ_」

次の瞬間、彼の巨体も無数の銃弾に貫かれて声を上げることもなく倒れ伏した。

 

オーバーロードは全身の装甲を穴だらけにされながら、ズタズタにされた顔で愉快にほくそ笑んだ。

「フフ…いい手応えじゃないか」

あちこちが原型を留めていない体で揺らめくように立ち上がり、彼は大口を開け哄笑しながら走り出した。

 

「最後の一人はグランドブリッジには入り切らなかった。少し遅くはなるが、それまで保たせるほかないぞ」

ウィンドチャージャーは決然とそう言い、彼らは猛然と殴りかかるオーバーロードへと向かっていった。

 

A

 

スカイファイアは艦内の破壊に向かったオプティマスと別れ、逡巡の末に墜落しゆくネメシスから離脱した。

「手狭な内部は司令官に任せるしかないとはいえ…歯がゆいな。ブロードキャスト、下の戦況は?」

 

「壊滅的だ!救援が輸送機で向かっているが、到着までもう少しかかる。君の助けが必要だ」

 

「オプティマスをネメシスと心中させないためにもここで待機しておきたかった…が、あの様子ではオーバーロード一人の手で全滅だな…!!」

スカイファイアはそう言い、素早く変形して眼下に広がる戦場へと飛び出した。

 

「またお前か。あらかた終わったところだが」

飛来するスカイファイアを見上げると、オーバーロードは周辺に広がった残骸を適当に蹴飛ばして挑発的にそう言い放った。その彼の足元を顔を剥がれたハウンドの頭部が音を立てて転がっていった。

 

「…ふざけるなよ、薄ら笑いも今日までだ」

スカイファイアは躊躇なくオーバーロードめがけて爆撃を行い、同時に上部のコンテナから大量のミサイルを撃ち放った。

 

迫るミサイル群を前に、既に全武装を喪失していたオーバーロードは両手を広げて立ち尽くし抵抗する素振りも見せなかった。

「いいね。お前もそんな声が出せるのか?」

彼の体は爆風に包まれ、笑みを浮かべたまま燃え盛る炎の中に見えなくなった。

 

スカイファイアは変形して着地し、辺りに散らばる無数の手足に向けてそう呼びかけた。

「誰か、生き残っているものはいるか!?」

 

「スカイファイアか?死ぬかと思った…」

ホットスポットはそう言いながら立ち上がろうとしたが、彼の膝から下はそれぞれ違う方向へとねじ曲げられていた。

どうにか無事な方の腕を動かしてその場に座り込むと、辺りを見回して絶句した。

「俺の他に生きている奴は?」

 

「いるぞ、ここにもな…」

サイドスワイプがかすれたような声で弱々しくそう答えた。

彼はゆっくりと両足のタイヤを使って立ち上がり、燃え盛る炎と瓦礫にように散乱した敵や味方だったものを眺めた。

「あーシンシアちゃん、いやブロードキャストでもいい…誰か聞こえてるか?」

彼は呆然としながら通信を開こうとしたが、返ってきたのはノイズだけだった。

 

「サイドスワイプ、クリフジャンパーもこの戦場にいたのだろう?彼はどうし…」

スカイファイアはそう訊いたが、彼の足元で赤い欠片のような部品が震えながら寄り集まっていることに気がつき驚いて数歩下がった。

「これは…驚きだ」

 

覆い被さっていた複数の破片を磁力で弾き飛ばし、ウィンドチャージャーが跳び起きた。 

「スカイファイアか。遅かったな」

彼の巨体を見上げ、チャージャーは繋がっている方の手でスカイファイアを指さした。

 

「すまない、だが君も無事だったようでなによりだ。ただ、少し距離を取ってもらえないだろうか?そこの彼に君の磁力は好ましくない影響を与えかねない」

スカイファイアは悠然と足元のチャージャーを見下ろしてそう言った。

 

チャージャーがスカイファイアの視線の先を眼で追うと、そこにはクリフジャンパーに戻ろうとうごめく欠片があった。

「そういうことか。まだ死ねないらしいな…俺もこいつも」

彼は乾いた笑い声を小さく響かせた。

「まぁ、その様子じゃ後もう少しはかかるか」

チャージャーは凝集した雑多な部品がクリフの頭や手脚を構成していく姿を見ながらそう言い、自らもちぎれた方の腕を引き寄せて繋ぎ直した。

 

「あとギアーズもいるという話だったが…」

スカイファイアは残骸を見下ろしながら、なにごとか察したように沈痛な面持ちでそう尋ねた。

 

「見事な自爆だったな。あぁまで派手なのは久々に見た」

凝集しつつあるクリフジャンパーの欠片の中にギアーズだったものを見つけると、ウィンドチャージャーは冷めた表情でそれをつまみ上げ虚しげにつぶやいた。

 

その時ふと平原に強い風が吹き下ろし、そこにいた彼らの金属の体表に熱を運んだ。

「体表の温度が普段よりも上がっている。これは"暑さ"ってやつだったか」

サイドスワイプは自身の体に漠然とした異変を感知し、ふとそんなことをつぶやいた。

 

「ネメシスの動力炉が暴走しているのだろう。あんなに黒煙を上げている」

スカイファイアはそう言い、燃え盛る船体を不安げに注視していた。

 

「この星での仕事もほぼ終わりか。長いようで短いようで、やっぱり長かった」

ホットスポットは風の吹いた方を見上げ、空から堕ちゆくネメシスを眺めた。そして彼が大地に視線を下ろすとそこには散らばる残骸のほかに、巨大な火柱がその中心に広がっていた。

「…ところでスカイファイア、あの眼の前で燃えてるのがオーバーロードか?」

 

「そうだね。気が動転していたんだ…こんな平原だというのに焼夷弾を使ってしまった、というか暑いのもあれのせいだね。申し訳ない」

スカイファイアは忙しなく両手を動かしつつ、ばつが悪そうに釈明した。

 

「放火は見過ごせないな、消防車としては…まぁ、あいつには似合いの末路か」

ホットスポットは虚しげにそう言い、大破したC-X達を見下ろした。

紫色の残骸のそこかしこに赤黒い液体が弾けたように染みついていることに気づくと、彼は密かに表情を強張らせて嘆息した。

 

「いや、まーだ死んでないみたいだが」

全身を炎に包まれてほとんど骨格だけになりながらうごめくように立ち上がるオーバーロードの影を眺め、サイドスワイプは気味が悪そうに言った。

 

「あれでも足りなかったか、ならこれで終わりに…」

苦々しい形相でそう言うとスカイファイアは粒子砲を展開させ、発砲準備を開始した。

 

「今ネメシス内部で異常な反応が発生した。何か恐ろしいものが暴れだしている!」

ブロードキャストが突然地上の全員と通信をつなぎ、慌てた様子でそう伝えた。

 

「何かが暴れている?ネメシスの中で、か…」

スカイファイアは手を止めてそうつぶやき、漠然とした不安感を抱いた。

 

「オプティマスかクイックシャドウじゃないのか?ならスカイファイア、こっちはもういいから迎えに行ってやってくれ」

サイドスワイプはホットスポットの脚に最低限の応急処置を施しつつ、そうスカイファイアに促した。

 

「正体は分からない…艦内の監視システムが機能していないらしい、不自然なノイズばかりだ。こっちで解析を進めておく」

ブロードキャストは半狂乱になりながら慌ただしくそう言い渡し、通信を切り上げた。

 

「SW-04、無事でしたか。現在…墜落中のネメシスから複数の飛行物体が発艦したのを確認しました。恐らく脱出艇かと思われます」

サイドスワイプの聴覚に無機質なオペレーターの声が淡々と割って入った。

 

「俺が生きてたんだ、もっと喜んでくれてもよさそうなもんだが…後だな。反応の数は分かるか?」

燃え盛りながら落下し前方の空を通り過ぎていくネメシスを見上げつつ、サイドスワイプは訊いた。

 

「確認できた数は十二です。ディセプティコン以外もOP-01やQS-41が脱出に使っている可能性はありますが…待って、そのうちの一つがそちらに向かっています。この軌道は…落下している?」

オペレーターのその言葉が終わる前に、ホットスポットとサイドスワイプにスカイファイアの目の前に白い物体が落ちてきた。

人型とわかるそれは手足を忙しなくばたつかせながら真っ逆さまに地面へと刺さった。

 

「グ…何だってんだ、一体…俺の計画、を_」

彼はぼやきながらどうにか立ち上がり、白を基調に赤や青を各部に取り入れた色合いのボディから煤汚れを手で払った。

 

「降って来たのは、ありゃスタースクリームか?」

サイドスワイプは突然の出来事に戸惑いながら、墜落してきた対象へと咄嗟に銃を向けてそう言った。

 

スカイファイアも同様に攻撃を開始しようとした瞬間、眼前の光景に驚愕したスタースクリームの眼の前で、紫と黒が奇怪に入り混じった球状の光が現れた。ごく小さくサイズのそれは瞬時に巨大化し、辺り一帯を眩い光で染め上げながら弾け飛んだ。

その衝撃に周りの全員が大きく跳ね飛ばされ、砂煙が吹き上がった。

「この光はなんだ…まさか!?」

咄嗟にバトルマスクを展開して視界を覆い、スカイファイアは転びかけた体勢になりながら予感が的中しないことを願った。

 

発光が止んだ先には鈍い銀色のサイバトロニアンがいた。

オプティマス以上に大柄な体躯を持つ彼は白煙を纏って現れ、同時に周囲の空気を凍らせた。

「話が違うだろ…そんな、ようやく_」

スタースクリームはよろめきながら最後にそうつぶやき、絶望を顔に浮かべたまま意識を手放した。

 

降り立った彼の体には戦車の履帯や航空機の翼の意匠が各部に備わっており、彼がそれら両方に変形する能力を持つことを如実に物語っていた。その体表は白く凍った霜のようなものに覆われ、彼が体を動かす度にそれが音を立てて剥がれ落ちる。

「…サウンドウェーブか。あぁ、体内のスペースブリッジが予期せず動作してしまったらしい。再起動時にはよくあることだ」

彼は側頭部に指を当て、冷酷かつ深みのある声でそう言った。

 

「おいおいおい冗談だろ…?こりゃ」

ホットスポットはその姿を見、スパークの底から戦慄した。

そうつぶやく間にも彼の銃を持つ手は微かに震え、視界は揺らいでいた。

 

「何が見えるか、だと?同じ星にいるのは確かだ。我がネメシスの真下にいる」

手脚に赤や黒が散りばめられた鈍い銀のボディを軽く身震いさせ、彼は首を回して辺りの様子を見下ろした。常通りに憮然とした表情と鋭い眼つきで、彼は無感情に眼前の状況を観察している。

 

瀕死の体で火柱から這い出たオーバーロードは、焼き付く意識の中にただ一点空気が凍りつくような気配を感じ取った。

遅かったわね

辺りを震わせるような低く響き渡る声色に、彼女は小さくそう言った。

「動けるように…なられたか」

靄のかかった視界のその中に、最後に彼は間違えようのない主の姿を見た。

 

彼はサイドスワイプやホットスポットにまるでガラクタを見るような冷たい眼差しを向け、ふと足元のC-Xの破片を手に取ってその肩部に刻印されているエンブレムを眺めた。

「まさか戦時規定を破り異星の獣どもに技術を売り渡したというのか…とんだ喜劇だな」

神経質そうな眼差しで手にしたものを投げ捨てると、彼は周囲の敵味方に意識を戻した。

「…ここは雑兵ばかりか。まだ死に損ないがいるようだが_」

 

「予想できなかった訳じゃないが、これは…」

ウィンドチャージャーは落ち着き払った様子でそうこぼし、静かに闘志を滾らせた。

「最後の相手には不足ない。あのよく転がりそうな頭を蹴り飛ばすか」

 

「…どれも馬草だ、取るに足らん…!!」

彼は、メガトロンは吐き捨てるようにそう言い放つ。

そして彼の右腕に外付けされた砲口がゆっくりと唸りを上げた。

生存してほしいキャラ

  • オプティマスプライム
  • アイアンハイド
  • プロール
  • ブロードキャスト
  • ホイルジャック
  • パーセプター
  • ラチェット
  • ギアーズ
  • ホイスト
  • サイドスワイプ
  • サンストリーカー
  • レッドアラート
  • ウィンドチャージャー
  • クリフジャンパー
  • グリムロック
  • ホットスポット
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