トランスフォーマー:Alternation of Cybertron 作:pova
地球_アーク号落着地_2027年_
アークのブリッジの下部出入口から見て右側には巨大な複合コンピューター"テレトランⅡ"が備え付けてあった。
「こいつがいつまで保つか分からない」
「スキャンは早いうちに済ませよう」
ブロードキャストは記憶装置に変形しつつテレトランⅡの操作盤の上に陣取った。
「最初は誰だ?」
「俺は後でいいや、気が乗らね」
サイドスワイプは億劫そうにモニターの方を見て、床に座り込んだ。
「何か厭な思い出でもあるのか?」
ブロードキャストが喋ると同時に彼の体の画面やボタンが点灯した。
未だ薄暗い艦内にあって彼のそのジェスチャーは激しい明滅に見え、周りはかすかに目を細めた。
「まぁ、色々とね」
そばにいたラムホーンを抱きかかえつつ、サイドスワイプは苦い顔をした。
「なら私がやる」
そう言うとプロールは作業を中断して席を立ち、ブリッジの中央位置についた。
「さぁじっとしてくれたまえスキャンを開始するよ」
ブロードキャストの隣についたパーセプターは神経質に機材を見つめ慌ただしく手を動かす。
「あぁ、やってくれ」
そう短く言ったプロールに青い光が当たり、内部構造が露わになる。
その光はブリッジの暗がりを吹き飛ばすかのような輝きを放ち、プロールの体内に備わった無数の歯車や梃子、ボルトやシリンダーが浮かび上がり、光に当てられて並び方とその形を変えていく。
人型を構成する内部と表面とのパーツが原型から位置を変え、それらの形状は緩やかにこの星の自動車のそれへと転じていく。
そのプロセスが終わりきり、ゆっくりと光の照射が止まった。
パトロールカーに転じたプロールは小さく言う。
「いつやってもあまり良い気分ではない。が…このオルトモードは懐かしささえ覚えるな」
プロールは上機嫌に車のライトを点滅させ、ギアを鳴らしながら淡々と言った。
「よく馴染むって?」
彼の新しい装いを見たブロードキャストは多少意地悪くからかうように言った。
「そうだな」
プロールは機械的にそう応じ、変形を解いた。
「少しいいかパーセプター」
その時、ブリッジに声が響いた。
声をかけられたパーセプターはブリッジにやって来たオプティマスとサンストリーカーの姿を見やり、しばらくしてからオプティマスのその言葉と視線が自分に向けられていることに気がついた。
「司令官」
オプティマスは心労を顔つきに滲ませたような面持ちで静かに切り出した。
「パーセプター、ステイシスポッドの件なんだが_」
「無事だった数個のうち誰を最初に復活させるべきかというお話でしょうがその資源と環境が今の我々にあるのかという前提についても説明する必要がありそうですね」
パーセプターは手元のデータパッドを慌ただしく操作しながら言う。
「問題…ないよな?」
サンストリーカーが不安げに口を挟む。
「あぁサンストリーカーもちろん簡単だともそれはもうターボフォックスがブロードサイドと戦って勝つぐらいには簡単さ」
パーセプターは彼の精一杯のユーモアを交えて応じ、おどけるように手を振った。
「時期尚早ってやつだ」
横で様子を見ていたハウンドはサンストリーカーの方に歩み寄って肩に手を置き、そうゆっくりと言い含めた。
「この星に原生している知的生命体を従わせられればまた機会もある」
「船の損傷具合からして、この星の住民の協力抜きではほとんど何も出来ません」
「スキャンが終わり次第、メンバーを決めて船外に出ます」
プロールは装いも新たにオプティマスに向けて生き生きとそう言った。
「分かった…警戒と準備を怠らないようにしてくれ」
オプティマスはそう言い、胸部の辺りを押さえながら俯きがちにのそのそとリペアルームに向かって行った。
「で、俺以外には誰が行くんだ?」
ブリッジ中央に歩み出し、スキャンの用意をしつつハウンドが少し億劫そうに訊いた。
「まず私と…あとホットスポットも来い」
プロールはハウンドを見据え、次に上部ブリッジを向いてそう言った。
「どちらまで?参謀殿」
ホットスポットの声が遠くから聞こえ、続いて徐々に足音が近づく。やがて彼は上部ブリッジから身を乗り出し、ぶら下がりながらホットスポットは逆さまに顔を出した。
「スカイスパイからのデータで近辺の地形や都市の分布は概ね把握できた」
ブロードキャストが変形を解き、説明を開始した。
彼に促されたハウンドがアーク号と周囲の地形のホログラムを空中に投影する。
「ここは複雑に入り組んだ地形のちょうど谷となっている部分だ。アークは…ここだ。火山もいくつか近くにある。この船はそんな中にちょうど収まるように落着している。周辺には建造物等がある様子もないな」
「へぇ…そんなんだから400サイクルの間、上手く隠れてて誰にも見つからなかったんだな」
今の講釈の間に勢いよく真っ逆さまに床へと落ちたホットスポットが手で頭を抑えつつ言った。
「あぁきっと恐らくはね」
パーセプターは少し引き気味に短くそう応え、彼から目を背けた。
「夜になったら二人とも出発だ。それまでにスキャンを済ませておけ」
そう言い終えるとプロールは踵を返してブリッジを後にした。
「夜闇に紛れてってか?」
そう言うとホットスポットは不安げにハウンドの方を見た。
「得意だろ」
プロールは出口の縁を掴み振り返りざまに微笑を浮かべ、通路の向こうに消えていった。
おおまかに言えば半円状のアーク号の船体の、その左舷艦尾に位置するリアクタールームそばの通路の一つ。
そこは敵味方の死骸の仮置き場と化している。
爆走する自動車の駆動音と、それに少し遅れてより良く通る大声が響いた。
「サイドスワイプ!」
背後から飛んだ怒号に動じる風もなくサイドスワイプは普段のトランスフォームの要領で上半身だけをぐると回転させ、平然と応じる。
「どうしたホイスト」
「死体の整理が全然済んでないじゃないか」
周囲の荒れ模様を見ながら、ホイストは先程手に入れたばかりのレッカー車の姿に変形しつつ言う。
「脇には寄せてあるだろ、一応」
「それに今はそんな気分じゃないんだ。あまり触りたいもんでもないしな」
出力の安定しない照明のせいで通路に出来た暗がりと、半ば同化するようにサイドスワイプは生気のない顔で佇んでいた。
そこらに散らばった敵味方の残骸のうち、敵兵の遺した重火器を適当に束ねたものをサイドスワイプは椅子代わりにして前傾姿勢で座り込んでいた。
彼はホイストを横目に見ると両の掌を合わせ、顎部と額部に当てるような仕草をとった。
「量が量だ、必要なパーツだけでもリペアルームに運び込む。修理の素材ぐらいにはなるからな」
ホイストはレッカーアームを振り回し、ビークルモードのヘッドライトを明滅させながらそう喋った。
「分かったからホイスト、変形を解けよ」
「…よっぽどその姿がお気に入りみたいだな」
サイドスワイプは消え入るような調子でそうぼやいた。
「この星のビークルとは相性がいいらしい。今日手に入れたばかりの姿と思えないほどの馴染みようだ、お前も怖がってないでこれが終わったらスキャンしてもらえ」
ホイストは上機嫌にそう言い、軽やかに変形を解いた。
続いて荷台に載せていた大仰なケースを床に起き、それを開けて中に収まっていたノズルガンを投げ渡した。
「これは?」
サイドスワイプは本体とホースで繋がれたその装置を手に取り、ノズルの中を覗き込むようにしながら訊いた。
「給油機みたいなものだ」
「持ち手の横に付いてる青のボタンを押せ。それでリバースモードに切り替わる」
ホイストは自身の右腕にホースを接続し、通常なら右手があるはずの位置に備え付けられた砲口を操作しながら言った。
「…死体からエネルゴンを吸い出せって?」
「400サイク…400年か。そんな長い間熟成されてちゃ使い物になんかならないんじゃ…」
「その心配は要らない」
「仕分けや濾過は内部装置が自動でやるから冷却液でも潤滑油でも取れるものは何でも吸い込め」
「…これじゃまるで電磁ヒルだよな、スパークケースもびっくりだぜ」
サイドスワイプは軽い冗談を飛ばし、周囲の死骸を転がしていた。
彼はノズルを差し込む位置を探りながらふと口を開く。
「………なぁホイスト、なんでスキャンが怖いのかって話なんだけどよ」
「昔俺レーサーだったろ」
「あぁ」
ホイストは興味なさげに生返事をした。
「最後のアイアコン5000でクラッシュした時にさ、ボディのリスキャンをしたんだ」
死骸からこぼれた部品や剥ぎ取った部品を照明にかざしつつ、サイドスワイプは思い出に浸るような口振りで続けた。
「へぇ…」
ホイストの声に少し好奇の色が混じった。
「救助ヘリに変形出来る奴にコースから運び出されて_」
サイドスワイプには眼前の死体と当時のボロボロになった自分とが重なって見えるような錯覚に襲われ一瞬、言葉に詰まった。
そこまで聞くとホイストはなにごとか得心の行ったような顔をして、堰を切ったように喋りだした。
「…思い出した。あの時ジャンプ・ジョイントの一番いいカウンター席でレースの中継映像を見てたよ、まだ頭が爆発する前のアイアンフィストと一緒に」
「あれも大層な事故だったな」
そう言うとサイドスワイプは幾分うつむき、聴覚に捉えた単語に関連した過去の一端を反芻し終えて苦い顔になった。
「…その後俺はサーキットのリペアルームまで愛想の悪いトレーラーの奴に載せられて連れてかれる途中、チームメイトに何て言われたか今でも覚えてるよ」
彼の中で、嘲りの視線と蔑みの声色とが虚ろに反響した。
「"サイドスワイプは終わった"だの"所詮素人"だの"無謀なシェルフォーマー"だの"ガワだけのルーキー"だのまぁ散々」
「それで、ボディはちゃんと新調出来たのか?」
どう言葉を返したものかしばし逡巡したのち、ホイストは最も無難な選択肢を取った。
「今の体がそうだ。結局レーサーは追放同然に引退させられたんだけどな」
「心的外傷がどうこうとか言われたが…そういう細かいことは分かんね、俺のブレインじゃ処理しきる前に抜け落ちる。もちろんフィクシットの診断も受けたがあの時ちゃんと聞いとくべきだったかもな」
そこまで言うとサイドスワイプは彼を真似て両手からドリルを展開してみせた。
「どうせブラーに勝てないことは分かってたんだ。踏ん切りがついたって側面もある」
言葉とは裏腹に煮え切らない表情でそう言った後、サイドスワイプは黙り込んだ。
「分かるさ、そういう気持ちは」
半ば反射的かつ場当たり的な発言に、ホイストは安直な己の欺瞞を恥じた。
「…すまない。無神経だったか」
暗いサイドスワイプの横顔を見やり、ホイストは絞り出すようにそう言った。
「レッカーズの副隊長が随分と丸くなったもんだな」
サイドスワイプはそんなホイストを一瞥し、軽く嘆息した。
「副隊長だったのはあの組織がまだ土建屋やら大工やらの自警団もどきだった時だけだ。そんな時代はレッカーフック達が死んだ時に終わったんだよ」そう言い捨て、ホイストは言外に話を打ち切った。
「新しいボディ、か…気が進まないなぁ。この上なく」
そう吐き捨て、サイドスワイプは足元に散らばり転がる敵味方の残骸を漁り始めた。
ホイストは膝を付き名状しがたいモンスターに変形していたディセプティコンの死骸を分解し、胸をこじ開けた。
「この死体、妙だな」
漏れ出す液体は、くすんでいるものの煌々とした赤い輝きを残していた。
「赤い…レッドエネルゴンか?」
彼の背部にあるライトの明かりを反射し、地脈のように光るそれは間違いなく冒涜的な技術の結晶でありその歪な成果物だった。
隣で同様に残骸を物色していたサイドスワイプはホイストの調べていたその死骸に近寄り、取れかけていたロボットモードの頭部を引き抜いた。
「テクトニックスだろこいつ…噂通りだな。やっぱりトレモルコンどもはハイなジャンキー集団だったか」
得心したかのようにそう言うと興味をなくし、サイドスワイプは手にしたそれを放り投げて自分の獲物に向き直った。
「…おっと、こっちのコンズに流れるエネルゴンは……黄緑?」
「黄緑だと…まずいぞ、触るな!」
サイドスワイプのこぼした一言を明瞭に聞きつけたホイストは、すぐさま血相を変えてそう叫んだ。
「分かってるっての…不治の病が伝染しちまうもんな」
死骸を遠くに投げ捨て、事もなげにそう返したサイドスワイプに少し呆れながらホイストは左手で指さして言う。
「それとスパークケース内のエネルゴンの回収も忘れるなよ」
彼は左手のみで器用にスパークを覆う外殻を、時に非常に丁寧にあるいは酷く乱暴に解体しながらそう言い含めた。
「一番希少で上質な部分だ」
「んならトランスフォームコグとかスパークは?」
「万が一動く状態なら回収しろ」
ケースの内部装置に繋げた右腕部の砲口から周囲のエネルゴン等をあらかた吸収しつつホイストは短く応えた。
「なぁなぁ」
「ドロップショットのトランスフォームコグを埋め込んだら俺もトリプルチェンジャーになれるのかな?」
彼のものによく似たちぎれかけの胴体を見つめながらなんの気なしにサイドスワイプは訊いた。
「無理だな」
「トリプルチェンジャーはいわば突然変異だ。誕生する仕組みさえ解明出来ていないんだよ」
そう講釈しつつホイストは通路を歩いて更に奥へと前進しようとした。
その時、不注意からか裂けた天井から垂れる構造材にホイストはしたたかに頭をぶつけ、彼の片眼にヒビが入った。
「…なぁ、これってトレイルブレイカーか?」
サイドスワイプもホイストの後に続いて奥に進み、そこに散乱していた手付かずのガラクタの内、特に損傷が酷いものをふと見つけてそれを抱え上げた。
「どうかな、手と脚はどうした?」
ホイストは懸命に周囲に目を凝らすが、彼の視界は明瞭ではなかった。
「…ない」
「頭もない」
「背中もごっそり抉り取られ_」
「…待ってくれ」
半ば慄然としながらそう言ったサイドスワイプを遮り、ホイストは暗く定まらない視界でもなおはっきりとわかる程苦悶の表情を浮かべたトレイルブレイカーの頭部を見つけた。
ホイストは屈んでゆっくりと歩み寄って、左右に引き裂かれかけたそれを手に取りしばらく見つめた後、サイドスワイプの方に力なく見せた。
「彼だ」
消え入るようにそう言ったホイストの両眼から何かがこぼれ落ちた。
が、その事にも、それが彼のひび割れた蒼い瞳の欠片であったことにも、サイドスワイプはおろかホイスト自身でさえついぞ気が付くことはなかった。
「みたいだな」
裂けかけた頭頂部からブレインが覗いている有様から目をそらし、サイドスワイプは短く応えた。
「能力を持った奴ってのは大抵早死にだ。いつも一人で背負い込もうとしやがる」
続けざまにそう言いながら彼はわずかばかり感傷的な面持ちになった。
「それを言うなら我々の種は皆早死にだ」
「老衰による自然死などそうそうさせてはもらえない。寿命が長過ぎるのも考えものだ」
ご先祖はプライマスに嫌われたかな、とホイストは目元を拭いながら小さく言った。
その時また小さな蒼の破片が床に落ち、小さく音をたてて消えた。
「ここら辺の残骸はあんまり使えそうなものもないか」
概ね周囲の探索を終えたサイドスワイプは損傷の激しい残骸を見下ろしつつ小さくそう言った。
「…なぁ、トレイルブレイカーのフォースバリアってこのボディから抜き取ったパーツで使えるようになったりするのか?」
抜き身の状態になったトレイルブレイカーの胴体を内部コードごと掴んで引っ張り上げながらサイドスワイプが訊く。
「同型のボディを持っていればあるいは…」
「無論可能性は低いが」
背中のライトで光源不足の辺りを照らし、トレイルブレイカーの手と脚を探しつつホイストは短く答えた。
「あんたみたいに?」
「…言われるまで気がつかなかったが、確かにそうだな」
ホイストはサイドスワイプのその言葉を聞くと呆気にとられたように彼の方を向いた。
「試してみよう」
「冒涜的な気がしないでもないけどな」
今更だが、と言外に付け加えるような調子で、サイドスワイプはそう自嘲気味にこぼした。
「彼の形見とでも思っておくんだ」
自分に言い聞かせるようにして、ホイストはそう言葉を並べたてた。
「気持ちは分かるが先が見えない状況だ、使えるものは何でも使わざるを得ない」
そう言うとホイストは自身の背中と大腿部から工具を取り出し、ようやく見つけた彼の右手、そして銃座付きの脚と自分のそれとを黙々とすげ替え始めた。
オレンジ一色のアーク艦内にあって、リペアルームは幾分殺風景であり、並べられた充電スラブに患者が横たわるほかこれといった色彩はなかった。
今はオプティマスの他に患者はなく、赤と青の塊が濃灰色の空間に浮いていた。
扉が開き、暗い室内に通路から微かな光が漏れた。
ラチェットが戻って来た気配を察知したオプティマスは胸部を開け放ち、彼自身の魂たるスパークと半ば結合したマトリクスを晒した。
風情のない空間はその光に当てられ、鮮やかな青にじんわりと染まる。
「マトリクスから声が聞こえる」
絞り出したようなか細い声は、今や広いだけの部屋の全体に渡ってかすれるように響いた。
「…たまにあるんだ、そういうことが」
接近を感知した充電スラブは自然に台ごと傾き、寝そべるオプティマスの上体を起こしていく。
「幻聴ですか」
ラチェットはこれまでにあらゆる種類の修理や措置を施し、彼にしてみれば自分のものよりも見慣れた感のある胸部に眼を凝らして観察した。
眩いばかりの光を放つ中央の青い結晶部にもそれを取り囲むオレンジの球体にも変化は見られず、ナノコンや電磁ヒル等の痕跡も認められず。
そしてもちろん内部からアルファトリンの顔が浮かび上がったりもしなかった。
無味乾燥な部屋は結晶体に乱反射されたマトリクスの青い光に照らされ、まるで投影された星図のように色鮮やかになった。
「きっと直に体感したものでなければ、信じ難いことなのだろうな」
その天井にかつて飛び回った星々の姿を見つつ、オプティマスはそう言った。そのボディ各部には先程スキャンしたばかりのこの星のトラックの意匠がちらほらとあり、そうした変化を発見するたびラチェットは見慣れた姿との差異に少し怪訝そうな顔をした。
「目覚める少し前…ダイアトラスとサンダークラッシュの発艦式を戦前、あなたとダイオン、エイリアルと一緒に見た時のことを思い出しましたよ」
ラチェットはほんの数時間前、あるいは400年ほど前に思い浮かべていたものを片手間に話した。
「彼ら英雄達は今頃どうしてるんでしょうかね」
ラチェットも天井を見やり、そこに放たれた無数の光のうち一際大きくサイバトロンに似たものを眺めつつ、そう言った。
「懐かしいな…アルファトリンのあの時のスピーチは殊更に素晴らしいものだった」
連れだって聴衆に紛れた四人のうち今生きているのはこの場にいる二人だけであり、そのことに思いを巡らせたオプティマスは少し苦い顔をした。
「指導者とはどういうものか…リーダーとしての立ち振る舞いや演説の技術を私に教えてくれたのも彼だ」
「あなたの今の喋り方もその頃からでしたな…そういえばまだテトラヘックスが空爆される前、マトリクスを付け続けることに痛みを覚えていたと話してくれましたね、オライオン。まるで自分の力が吸い取られているようだと」
数百万年来の主治医として、あるいは友人としての話のトーンでラチェットは語りかけた。
「…あぁ。そういった意味では今は自由かもしれない…今の私はどことも知れない星で、漂流する集団を率いるただのリーダーだ」
オプティマスはかすかに自嘲気味にそう返した。
「ならそれを胸から外しては?」
マトリクスを指さし、ラチェットは重々しく、かつ慮るように問うた。
「そうすべきではない」
オプティマスはその問いに対して半ば無意識にその行いの是非についてのみ言及し、自身の意志については明かさなかった。
「リーダーとして率いる者たちが僅かでもまだいる限り、私にはこれが必要だ。今はまだ…」
そこまで言うと彼は自身の肩部にあしらわれた傷だらけのオートボットのエンブレムを眺めた。
その時、オプティマスの前腕部に備え付けられた通信装置から緊急の着信を示すアラート音がけたたましく鳴り響いた。
「プロール達が戻って来たようです、オプティマス」
アイアンハイドはブリッジからそう告げたが、通信装置から得られる情報は声とモニターに映るその波形だけであり、話者の顔色は伺えない。
「了解だ。すぐに向かう」
そう言うとオプティマスは飛び起き、マトリクスを収めた。制止するラチェットと消え去った天井の星図をよそに猛然と走り出し、彼はブリッジへと向かう。
「それが…妙なんです」
アイアンハイドの口調は困惑と警戒の色を強めていく。
「妙?」
通路をひた走りながらオプティマスは聞き返した。
「大勢の車輛を引き連れているようで、それも恐らく戦闘用のものを。脅されて連れて来られたのではないかと」
通信装置のモニターに波形のほか、周辺の地図とそこに配された仲間のマーカーが割って入るように表示される。
三つのオートボットの印のほか、八つの詳細不明の移動物体の所在を示す輝点がアーク号に接近している様子が映されていた。
「…ともかく、私がブリッジに向かうまで一切動くな」
「いいな」
オプティマスは決然とそう言い、ブリッジのある階層を目指しリフトを登り始めた。
直後、艦全体に激震が走った。
故ドリームウェーブ社の「War Within」ではエネルギー不足で暗い色彩のサイバトロンと煌々と燃え上がるフォールンで対比がなされているとか言ってた人がいたのでそれを参考にしつつ全体的にダークなお話にしてみたつもりです。
まぁこの回を読み飛ばしても本筋にはさしたる影響はありませんがね…
今回のホイストみたくメカが泣く描写って好きなんですよねー、こういう時ひび割れパターンは少ないかもですが。
生存してほしいキャラ
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オプティマスプライム
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アイアンハイド
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プロール
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ブロードキャスト
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ホイルジャック
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パーセプター
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ラチェット
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ギアーズ
-
ホイスト
-
サイドスワイプ
-
サンストリーカー
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レッドアラート
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ウィンドチャージャー
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クリフジャンパー
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グリムロック
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ホットスポット