トランスフォーマー:Alternation of Cybertron   作:pova

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ポヴァです。
クリスマスなので真っ赤な連中のお話をお届けします。
それではどうぞ。


オートボット-地球編⑦:Total Devastation,Part1

 

D

 

月_観測基地建設地_10月30日_

 

 

地球という惑星には一つだけ、恒久的な自然衛星があった。それは人類が初めて到達した地球以外の天体でもあり、月と呼称されていた。

月面に中立の観測基地兼研究施設を建てるという計画が、月に初めて到達した者が地球に帰還してから何十年もの間密かに進行していた。数年前にようやく実際の作業が開始され、今はまだ月の地表に資材の集積所や整備ドック、通信塔や作業員の居住する施設など粗末なものが点々と存在するのみである。

そんな空間に位置する施設群に仮設されていた観測用カメラがふと妙なものを捉えた。

「ん……な、何だあれは!?」

通信塔の職員は彼らのいるちょうどその場所に向かって接近してくる不審な物体を、息を呑むようにしながら観察していた。

 

その声を聞いたもう一人も画面にかじりつくようにして、その光景に慄いた。

「これはまるで…戦艦とでも言うのか!?」

カメラの朧げな画像の中に浮かぶ、その数百メートルはありそうな刺々しい船体を見た彼はそう形容するほかなかった。

 

「エイリアンのか!?…減速しきれてない、ぶつかる!」

接近するにつれ戦艦の姿は鮮明になり、その光景を俯瞰するカメラの画像から船体の表面にあしらわれた文字のような無数の意匠が見てとれた。

が、彼らがそれを目にしたのは衝突で通信塔が根元から粉々になるまでのほんの一瞬のことであった。

二人の職員はその凄まじい衝撃で天井と床を何往復かし、ほどなくして点々と広がる赤いシミに転じたが、戦艦の乗員達がそれに気づくはずもなく、よしんば気づいたところで彼らはそれを悼むような気性など欠片も持ち合わせてはいなかった。

戦艦の不時着の勢いは止まらず、通信塔を根本から折り、次に職員達の宿舎をすり潰した。

整備ドックに半分ほど乗り上げるようにして戦艦はようやく停止した。

戦艦は船底から赤みがかった土煙を上げながら、静けさの戻った月の地にただたたずんでいた。

 

 

地球_ベース217_12月5日_

 

 

プロールは中央作戦室に呼び出され、モニター越しに将軍と渋面を突き合わせていた。

「二ヶ月ほど前のことだ」

「月面の観測基地からの連絡が途絶した」

 

プロールは視線を空に投げ出し、自身の記憶を思い返すようにしながら言う。

「そういえばそんなニュースを見かけたような気がします。確か調査のために月に無人探査機を送るとか」

 

「先日、その探査機が観測基地の最後の記録を入手し、地球へのデータ送信に成功した。受信した映像・音声を分析した結果、謎の宇宙船の不時着に巻き込まれる形で基地が被害を負ったことが分かった」

大きなモニターに映された将軍の表情には懸念というより疲れが色濃く見られ、その話し方にも覇気がなかった。

 

「ディセプティコンでしょうか」

 

「その点について専門家の、つまり君の意見が欲しいのだよ。船の不時着を捉えた記録映像は朧げなものが数秒あるのみだが、見てもらうとしよう」

ゆっくりとそう言い、将軍は画面を切り替えた。

「無論、口外は厳禁だ。一応は最高機密だからな…エイリアン絡みの事案となると優先的に情報が回される我々でさえ、この映像を渡してもらうにはそれなりに手こずったのだ」

言い含めるような口調で将軍はそう話した。

 

「あの基地は政治的に中立なものと聞いていましたが…」

プロールは聞き流していたニュースの音声の記憶を辿りながら、そう言った。

 

「もちろん我々だけがこの映像の存在を知っている訳ではないよ。あの基地の建設に関わった主な国々の情報機関もこの映像を入手しているだろうが、彼らもこんな凄惨なものを衆目に触れさせたりはせんよ。知っている者は少ない方がいいのだ。こんなことは…」

出来ることならプロールにも知らせたくはなかった、とでもいうような調子で、将軍は苦い顔をして目をそらした。

 

「それによって無用な混乱や信頼の低下を招きかねないということですね」

プロールは記録映像を再生しながら淡々とそう返答し、将軍の様子には触れなかった。

 

「それに、生存者の報告は今のところない。恐らく全滅だろう…観測基地の計画も…私達の夢も、これで終わりだな」

そう続けた将軍は、最後の方は小さく消え入る声になっていた。

 

「あなた方の?」

事務的な連絡に挟まれた場違いな言葉に、プロールはつい動画を止めてそう聞き返した。

 

「友人の影響で少しね…いやすまない、関わりのないことだったな。忘れてくれ」

 

「この映像に他の角度からのものはありませんか?」

プロールは数秒の映像を再生し終えると、少し早口になってそう訊いた。

 

「ないな。無事に記録が残ったまま地球に転送されてきたものはそれだけだ」

 

その返答を聞き、プロールは片手で小さく頭を抱えた。

「なるほど…この形状の戦艦に…心当たりがあります。そうであってほしくないですが…これは_」

「ヘキサティコンの艦です…名は、この星の言語で言えば"レヴィアサン"とでも申しましょうか」

 

「ヘキサティコンとは?」

 

「ディセプティコンの一部隊ですが…我々の手にも余る相手です。彼らが衛星にまで来ていたとは…」

「率直に言って、この星の明日は危ういでしょう」

 

「ありがとう。よく分かった…なるほど、次から次へだな」

 

「どういう意味です?」

 

「これだ」

将軍はある一枚の画像をモニターに表示した。

「そのレヴィアサンとやらを追ってかつい数時間前、地球の外側を監視していた衛星が軌道上に不審な航行物を捉えた」

それは一見、白い流星にも見えたが、その形状は人工的なものであった。画像の中央から端へと宇宙を滑るように噴射炎が尾を引き、その先頭の人工物にはよく見れば巨大な航空機の意匠があり、太い機首と大きく力強い主翼が確認できた。

 

「この姿は…まさか…!?」

プロールはまず自身の眼を疑い、そして初めて必然というものを信じてみようという気になった。

 

A

 

ベース217内の広大な地下空間のうち、航空機を収納している駐機場はその中核部に位置し、その端の方にはメンテナンスハンガーを備えた整備ドックが広がっていた。

ギアーズは解体点検されている輸送機や戦闘機の間を変形して走り抜けながら、考えを巡らせていた。

ふと彼の視界にウィンドチャージャーとアイアンハイドが映り、ギアーズは急旋回して彼らに近づいた。

減速しきれずに前のめりになりながら変形し、つまづくようにしてギアーズはアイアンハイド達の前に躍り出る。

 

そこら中に積み上がっているのと同じ貨物用のコンテナに寝そべりながら、チャージャーはふてぶてしく言った。

「どうしたせっかち」

 

ギアーズはチャージャーの隣に座っていたアイアンハイドに視線を移し、早口に訊いた。

「なぁアイアンハイド、ヘキサティコンってなんだ?」

 

アイアンハイドは虚を突かれたような表情を浮かべ、チャージャーとしばし顔を見合わせた。

「聞いたかチャージャー。ヘキサティコンだと」

 

「久々にな。何千年ぶりか分からん」

ウィンドチャージャーは寝転がりながら遠い天井の壁面を見てそう言った。

 

「プロールがオプティマスと話してたのをたまたま聞いたんだが…」

ギアーズは調子を整え、真剣な声色で二人にそう切り出した。

 

「サイドスワイプかクリフあたりに何か誇張だらけの冗談みたいな伝説でも吹き込まれたのかと笑ってやろうと思ってたのにな。その二人の会話に出てきたってことは多分そのうち本物と会うことになる」

チャージャーは不機嫌そうに言うとアイアンハイドの方に視線を向け、言外に説明を促した。

 

「大昔、六つの形態を持つディセプティコンがいた。それがヘキサティコンの由来だ…まだいくつも形態を隠し持っているなんて噂もあったが、まぁともかくそう呼ばれてた」

アイアンハイドは内緒話でもするように軽くうつむいて顔を近づけるような姿勢になると、芯のある声色で静かに語り始めた。

「次に奴は五人の手練れを引き抜き、今度はその部隊の名前がそれになった」

 

「そいつらが来たのか」

慌ただしくギアーズが口を挟む。

 

「いや最初のメンバーで今も戦ってる奴は一人だけだ」

「他は全員別人だよ」

ギアーズが言い終わるのを待たずにチャージャーが遮った。

 

「リーダーはどんな奴なんだ?」

 

ギアーズの問いにアイアンハイドは少し間を置いて答えた。

「…"破壊の使者"ことオーバーロード、ある日突然ディセプティコンに現れた怪物だ」

 

「強いのか?」

 

「確かに強いが、それだけじゃない。奴らは体の構造からして普通とは違うんだ……」

考え込むように体勢を低くして、アイアンハイドはそうこぼした

 

「ヘッドマスターって聞いたことあるか?」

アイアンハイドの説明に割って入り、チャージャーは問うた。

 

「どこかよその星でフォートレス達がやってたって言うあれだろう。確か最初はエネルギー危機の対策として有機生命体を取り込むことで燃費を改善するとかそういうアイデアだったと思うが」

ギアーズは昔聞いた話を思い出しつつ、そう答えた。

 

「元々は、そうだったんだろうがな。その様子じゃあの星がどうなったかまでは知らないらしいな…もう時間か。じゃ、俺はそろそろ戻る」

チャージャーはそう言い終えると起き上がり、飛び降りざまに素早く変形してどこかへと去っていった。

 

「勝手だな…いつものことだが」

ギアーズはその後ろ姿を眺めながら、ため息混じりにつぶやいた。

 

「あいつ…例のマグネットパワーが不調らしくてな、最近じゃ一日に何回か特殊な処置を受ける必要があるそうだ」

アイアンハイドはチャージャーの姿が消え去ってからしばらくして、重い調子で切り出した。

 

「話はもう終わりなのか?オーバーロードの」

そう軽口を叩いたほかにはチャージャーを気にする素振りも見せず、ギアーズは続きを促した。

 

「実際に戦ったこともあるが…俺がオプティマスと二人でかかっても勝てなかったような相手だ」

「奴とまた戦うことになるとしたら…正直、 考えたくはない話だ」

アイアンハイドは遠い目をしてそう言い、かすかにうつむいた。

 

「あんたにそこまで言わせるとはな。奴がヘッドマスターだからか?」

ギアーズは彼のその様子をぼんやりと眺めて、興味深そうに訊く。

 

「ヘッドマスターね…オーバーロードは異星人を二人も頭にぶち込んで思考や反応速度を向上させ、その結果イカレちまったんだ。本人がそう言ってた…」

「もっともその本人が三つのうちどれだったのかは分からん。あの頭の切り替えの早さが厄介なんだ…奴の行動には致命的な隙というものがまず存在しない」

アイアンハイドはゆっくり思い出すようにして途切れ途切れにそう告げた。

 

その時、ふと彼らが背を向けていた方から重い走行音が迫ってきた。

二人が揃って振り返ると、接近してきた赤と青のトレーラーヘッドは減速しながら車としての形を崩し、散らばるように投げ出されたパーツは一瞬で組み替えられるようにして人型に転じた。

「噂話はそこまでだ。アイアンハイド…奴は強敵だが無敵ではない」

オプティマスは悠然と歩きながら、そう諭した。

 

「…そう思いたいものです」

 

神妙な様子のアイアンハイドを意識の外に置き、ギアーズは不思議そうに尋ねた。

「オプティマスは何しに来たんだ?」

 

オプティマスはギアーズを見下ろしてしばし考え込むような仕草をとり、そしてアイアンハイドの方を見て言った。

「用があって探していた、私と来てほしい」

「…ギアーズ、君に頼みがあるのだがクリフを探してきてくれないだろうか」

オプティマスはギアーズを指してそう付け足した。

 

A

 

薄暗い閉ざされた空間に、牢獄の柵だけが鈍く光っていた。赤や紫、あるいは黄色に変わるその柵はエネルギーの奔流であり、実体はなかった。

かといって囚人が脱出を試みれば瞬時にしてその装甲は溶融し、内部機器は焼き切れる。

柵の弾けるような駆動音の他に音はなく、その部屋はまるで誰もいないかのように静かだった。

扉が騒々しい重低音を響かせ、外側の白い光が隙間から漏れた。

「グリムロック」

声の主は背後から差す光のせいで影としか伺えなかったが、中の囚人にはそれだけで十分だった。

 

「…サンストリーカーか」

「何の用だ」

ゆっくりと、くぐもった声が空間を揺らした。

 

「つれないな」

サンストリーカーは牢に近づき、ゆらゆらと歩きながら少しづつ暗がりに同化していく。

 

うずくまるようにして柵の光に埋もれていたそれはゆっくりと体の向きを変えた。

「報復にでも来たか、私がアラートにしたことで」

グリムロックはかつてのような落ち着きを取り戻し、嘘のように穏やかな口調でそう問うた。

彼の赤くひび割れたゴーグル状の眼が迫るサンストリーカーをじろと睥睨する。

 

「銃も持たずにか?今のあんたがどの程度元に戻ってるか見に来たんだ」

柵の向かいの壁に寄りかかり、サンストリーカーは相手を睨み返した。

 

「お前の知ったことではない」

激情とは程遠く、憤怒の眼差し以外は平静そのものといった様子でグリムロックはゆっくりと告げた。

 

「自分でもそう思うよ」

サンストリーカーは自嘲を含んだ声色でそう返した。

「最近、チャージャーにフルステイシスの相手にされたんじゃないか?」

 

「かなり惜しかったのだがな。最後の手を打ち間違えたが、駒の配置は悪くなかったはずだ」

どこか拗ねるような態度でそう言い、グリムロックは軽く首を傾けた。

 

「あいつ相手にそこまでやれたんなら、思考は回復しつつあるらしい。全く…幸運な奴だ」

ため息にも似た排気音混じりにサンストリーカーは厳しい顔色でつぶやいた。

 

「自分ではそうは思わん。むしろ真逆だ」

そう言いかけた時、グリムロックの口元の割れたパーツが剥がれ落ちた。

床に落ちたそれは小さく音を響かせ、すぐに見えなくなった。

 

「自分が誰か…それを生きてるうちに、思い出せる奴は…幸せ者だ」

目元を覆うようにして途切れ途切れにそう言い、サンストリーカーは押し黙った。

 

「結局は獣になれずじまいで狂えもせずにここにいる。だから苦しむ」

 

「そうでなければ俺達は生きてるとは言えない…それは単にまだ死んでいないというだけだ。ただ苦痛のみが俺やお前のような存在を定義する」

サンストリーカーは忙しなく腕を組み直して、片方の手を震わせながらグリムロックを指差した。

 

「今の私はただ生かされているに過ぎない」

座したまま、静かにそう告げるとグリムロックは背を向けた。

 

「そう言う割に、お前の眼は諦めてもいないし迷ってもいない…そんな色をしてる」

 

「スペクトル主義の信奉者にでもなったつもりか?今日はやけに口数が多いな」

ゆっくりと、グリムロックは吐き捨てるようにそう言った。

 

「お互いにな。そういえば聞いたか?ホットスポットの回復は順調だ、もうじき意識が戻るようになるって話らしい」

 

「それがお前がお喋りになった理由か?」

 

「いいや断じて違う、お前以外のポッドにいた兵士の再生が始まってな。正直難儀してるんだよ、色々」

 

「…私に何か関係があるか?」

 

「多少後遺症があるとはいえ…まともに自我や思考、意識が確立されてるのはグリムロックだけだ。気づいちゃいないだろうがお前は恵まれた存在なんだよ」

 

「そう言われればそうなのかもしれんな。このところ私にはかつてのような望みや欲さえも再び芽生えつつある」

 

「それは知らなかった。お前が本当に正気に戻った証かもな」

サンストリーカーは羨むような蔑むような視線を向け、どこか投げやりにそう返した。

 

「戦い。勝利。そして報復」

拘束具のような意匠のマスクが剥がれ落ちたグリムロックの顔は、牙をむき出しにしているような風貌となり、その隙間から低い唸り声が漏れた。

 

「いいね。俺も全く同じことを考えてたよ…そのせいで、ここしばらく銃を取り上げられてる」

サンストリーカーは揺れる両手で銃の形を作り、撃ち抜くジェスチャーをした。

 

ちょうどその時、サンストリーカーの腕に格納されていた通信端末からブロードキャストの声が響いた。

「サンストリーカー!」

「プロールが呼んでいる!すぐに武器庫に来てくれ!!」

 

いきなり鳴り響いた爆音に反射的に聴覚をカットしかけながらも、サンストリーカーは喜悦を滲ませながら返答した。

「ブロードキャストか。いよいよだな…待ちかねてたぞ」

「…すぐ向かう」

そう言い終えた時、手の震えが収まったのを感じながらサンストリーカーは歩き出していった。

 

「存分に望みを果たして来るがいい」

彼の後ろ姿が見えなくなる刹那、グリムロックはゆっくりとそう告げ、また動かなくなった

 

A

 

クリフとアイアンハイドを連れたオプティマスは作業場に辿り着き、ホイルジャックを見つけて声をかけた。

「新兵器の方はどうなっている?」

 

「問題なく進んでますでな」

老眼鏡にも似た連装式のルーペをかけ直し、側頭部のパーツを明滅させながら名を呼ばれたホイルジャックはにこやかに返答した。

 

「火力と射程そして継戦能力を高めるための武装をとのことでしたので肩口と脚部に追加装甲を兼ねた可変フレームを増設、そこに接続する二連装の長射程粒子燃焼砲と八連ミサイルポッドをご用意しておきました。一応装着したままでも変形は可能です」

「それとこれは私のお節介ですが…胸部とマトリクスをカバーするための手段として、増加アーマーを用意しました。衝撃を受けると自動で起動モードに入る仕組みになっています」

クレーンや工作機械の散乱するなか、ホイルジャックの指した方には、長砲身の双砲が備わった赤色の肩部装甲と長方形のコンテナを上下に二つ備えた青色の脚部装甲が二つづつ、オプティマスと同様の意匠を持ったそれらが壁面に懸架されていた。

その下にはオプティマスの胸部全体に被さる銀色の複雑なカバーパーツのようなアーマーが重々しく鎮座していた。

「それと銃の方のアップグレードも完了しています」

そう言うとホイルジャックは慌ただしく作業台を片付け、黒々と輝く二挺の銃を見せた。

 

「内容を詳しく頼むよ博士」

オプティマスを差し置いてクリフが興味津々に尋ねた。

 

「他の武装との兼ね合いで射程より火力を重視し大型の弾頭に換装した他、複数の弾種を装填したカートリッジを用意しました」

「銃本体は二挺を同時に携行するとのことでしたのでサブグリップを取り除き、他にも先端センサーの撤廃・短銃身化をすることで軽量に仕上げました」

オプティマスに図面を見せながら、ホイルジャックは流暢に語った。

 

「エナジーアックスはどうした?」

オプティマスは説明を聞き終えると、ふと思い出したようにそう訊いた。

 

「補修はくまなく済んでいます。性能の低下を解消することには成功しましたが特段の改修は施していません。ホットスポットのものを使いますか?」

工具箱を兼ねた手押し車を引っ張り出し、ホイルジャックは早口に告げた。

 

「そうしたいが…同時に装備することは可能か?」

 

「やれないことはありませんが…いささか重装過ぎるかと」

「それこそ過剰積載(オーバーロード)です」

そう言い終えた後、似合わないジョークに恥ずかしくなったのか、ホイルジャックは顔を背けた。

 

「愉快だなホイルジャック、俺にも何か新しい武器はないのか?」

アイアンハイドはその様子を呆れ気味に眺めてから、そう問うた。

 

「他にもホイスト達と一緒にアークの武器庫から回収した装備をいくらか復元していたところでね、好きなものを選ぶといい」

ホイルジャックは天井に吊り下げていた武器を下ろしながら、そう言った。

 

「メイスもう一本もらうぞ」

クリフは目ざとく自分の愛用していた武器を見つけ、ぞんざいに取り外した。

 

「確かこのナックルガードはお前さんのだったろうアイアンハイド。それとこの腕部外付け式のキャノンを持っていって構わんよ。もはや説明は不要だろうが…ただし、形こそ似ているがこの前のものと違って試作品なので安全性は保証せんよ」

ホイルジャックはアイアンハイドに鈍い銀色の手甲を手渡し、次に作業台の下から何本ものコードが様々な機器と繋がったままの武骨な一対の重砲を取り出した。

 

「安全性なんか気にしてる場合か、扱いなら分かっているし任せてもらうぞ。こっちも無事に返す保証はないがな」

繋がっていたコードを引きちぎりながら、アイアンハイドは自分の腕に強引に接続し、特有の言いようのない異物感にしばし苦い顔をした。

 

「どうせならパスブラスターとかくれよ」

慌ただしく作業台の下を覗き込みながら、クリフはそう喚いた。

 

「廃棄していなければお前さんに渡したろう。威力も反動も絶大な銃なんて考えれば考えるほど君が適任だ」

ホイルジャックはクリフジャンパーを抱え上げ、オプティマスに投げ渡した。

「…それとオプティマス、この際ヘキサティコンに対してグリムロックを使ってみては?」

 

「却下だ。不安定で危険過ぎる。起動状態さえ安定しているとは言い難い」

受け取ったクリフを床に立たせ、オプティマスは厳然とそう言った。

 

「ならばヘキサティコンの対策部隊には誰を?あれが相手では人間達の活躍は期待出来ないでしょう。ウィンドチャージャーを出すことも今は難しい」

顎に手を当てるようにして考え込む仕草をとりながら、ホイルジャックはそう問うた。

 

「…アイアンハイドとクリフジャンパー、そしてハウンドにサンストリーカー、それに私とプロールでチームを編成する」

連れてきた二人をはじめにちらと見やりながら、オプティマスは言った。

 

「プロール?まさかご冗談でしょう」

ホイルジャックは驚愕しながらそう言い、側頭部を激しく明滅させた。

 

「いや、この人は本気だとも」

アイアンハイドは取り乱すホイルジャックの肩に手をつき、ゆっくりと言った。

 

「…なんで?」

クリフが首を傾げ、間の抜けた声で言った。

 

ブロードキャストの声がオプティマスの頭部に響いた。

「司令官!ディセプティコンが確認されました。急行しろとの指令が出されています」

 

「位置は!?」

反射的に左手で側頭部を押さえ、オプティマスはそう訊き返した。

 

「二箇所です。第一地点はこの地点から数十キロメートル離れた比較的大きな都市部で、ヘリや爆撃機の姿もあったことからヘキサティコンも恐らくはここに展開しつつあるものと思われます」

「もう片方はそこからほど近い高台に位置する化学工場です。今まで通りのエネルギー強奪作戦かと…こちらに関しては空からの機影も確認されておらず車両のみのようです」

 

「…了解した。プロールとサンストリーカーを第二地点へ急行させよう」

「残りのメンバーは私と第一に向かう。クリフとアイアンハイドは少佐に輸送機を準備するよう伝えてくれ」

オプティマスは重々しく告げ、通信を切った。

 

「了解」

名を呼ばれた二人は鋭く返事をし、駆け出して行った。

 

「それとホイルジャック、この装備の装着を手伝ってくれないか?」

オプティマスは所在なげにしているホイルジャックの名を呼び、戸惑いがちにそう頼んだ。

 

 

 

 

化学工場へと続く道路を白と濃紺のパトロールカーと黄色の改造車が縦に並んで疾走していた。

傍目には速度違反の取り締まりにでも見えたかもしれないが、実際には彼らはペアでの作戦行動の最中であった。

「サンストリーカーだ。ディセプティコンの陸上戦力を確認。ドレンチ、それとクランプルゾーンだ」

黄色の改造車は黒煙の立ち昇る工場を見やると静かにそう告げ、速度を上げた。

 

「了解、発見されないように注意しつつ、排除にかかってくれ」

ブロードキャストの音声が車内に響き、その波形と周辺地形がメインモニターに表示された。

 

「どうする?額を撃ち抜けと言われればすぐにでもやるが」

そう言いながらサンストリーカーはルーフ後部を展開させ、銃器を露出させようとした。

 

「こんな状況とはいえ、今のお前に銃を持たせることには反対だったんだがな」

「平常心をなくしている」

後ろについていたプロールが軽く車体を当て、諫めた。

 

「オプティマスだって許可してくれた。それに、俺は正常だ」

ふてくされるように吐き捨て、サンストリーカーは工場の門をフロントバンパーで蹴散らしながら侵入する。

二人はその勢いのまま変形し、足で地面を抉りながらスライドして、やがて停止した。

 

「…二つの目標のうち、口の軽い方を生かしておく必要がある。目的が知りたい」

プロールは注意深く周囲を見回し、ゆっくりと歩き出した。

 

「どうせ普段通りエネルギーやらなんやらを奪いに来ただけだろうに…で?口の軽い方ってのはあのバカ二人のうちのどっちだ」

屋根の上に登ってのそのそと歩きながら咆えているクランプルゾーンと、あちこちを慌ただしく駆け回りながら時折挙動不審に空を見上げるドレンチが二人の視界に入った。

 

「ドレンチはサウンドウェーブの部下だった」

 

「哀れにも奴のペットよりも下の立場だろうがな…あの小心者で決まりか。じゃあクランプルゾーンはどう料理してもいいんだな?」

そう言い終えるとサンストリーカーは銃を構え、ドラミングのような構えをとったクランプルゾーンに狙いを定めた。

 

「その通りだ、ドレンチは私が受け持とう」

プロールは背中に吊るしていた銃を展開させ、力強く右手に握りしめた。

 

「…あんたがか?」

呆気にとられたような顔でサンストリーカーが訊き返した。

 

「この武器も使える状態になった。お前だけに撃たせることにはならん」

手触りを確かめるように軽く弄びながら、プロールは銃のロックを外し、初弾の装填を開始した。

 

「ストリークの真似事かよ」

偏執的な手さばきと無駄に形式ばった機構の銃を見て、サンストリーカーはそう茶化した。

 

「…まぁ、そんなところだ」

プロールは戸惑いの表情を見せた後、図星を突かれて苦い微笑を浮かべた。

 

A

 

専用に開発された大型輸送機の余裕あるスペースでさえも標準的な体格の三人と、小柄な者が一人、計四人の重装したサイバトロニアンが快適に過ごせるスペースとは言いがたかった。

押し込められるようにして収容された四人が一言も発さずに押し黙る中、操縦席は大慌てだった。

操縦士らは下の都市の惨状に目を覆いたくなり、次いでそれも叶わない状況を呪いたくなった。

「こいつは…間に合わなかったようだな」

 

「街中火の海だ!既にそこそこ焼けてるらしい」

眼下の光景に慄きながら、副操縦士が後部の彼らに向けて叫んだ。

 

「すぐ降下する。準備を」

オプティマスはそう返答し、急いで立ち上がろうとして頭をぶつけ、天井をへこませた。

 

「了解だプライム」

 

「おい!!」

「さっさと開けてくれって間に合わねぇよ!」

クリフがいち早く身軽に駆け出し、後部の積み降ろし口の前に立った。

 

「黙ってろ赤チビ!!」

操縦士がいつものようにそう返答し、素早く後部の扉を開放した。

 

「言いやがったな!?てめぇ帰ったら覚えと_ 」

 

「ほら開いたぞ行け」

ハウンドはなにごとか言いかけたクリフを無造作に蹴飛ばした。

 

「俺達も行くぞ」

アイアンハイドも身を乗り出し、ハウンドと顔を見合わせて告げた。

 

「あぁ」

「最近聞いたんだが、この星ではこういうものはスカイダイビングと言うのだそうだ」

ハウンドは凄まじい速さで流れていく下の景色を見つめながら、そんなことを口走った。

 

「パラシュートなしでもか?」

 

「…多分な」

ハウンドはアイアンハイドにそう言って笑い返し、二人は互いの拳を突き合せると勢いよく飛び降りた。

 

「クリフ!着地したか?」

オプティマスは装備を満載してかさばった人型のままでは降下に支障が出ると判断し、素早く武装類を牽引したトレーラーヘッドに変形しながらクリフに通信した。

 

「えぇ、傷一つなく、今は瓦礫に紛れてます」

クリフの鷹揚とした返答はノイズや爆音混じりに周囲に伝わった。

 

「アイアンハイドとハウンドは着地したら散開、身を隠して私の指示を待て!」

 

「「了解」」

オプティマスのもとに低く落ち着いた返事が二人分返ってきたのを聞くと、オプティマスはトレーラーヘッドのまま発進した。

 

「ひどい有様だな…爆撃音と砲撃で何がなんだか分からん」

砲塔やミサイルで武装したとはいえ単なるトラックが輸送機から真っ逆さまに落ちていくさまはサイバトロンの基準でも異様な光景であったが、オプティマスは素早く人型へと再変形した。

四基のパラシュートを展開しながら緩やかに降下し、オプティマスは銃を抜きつつ周囲の状況を注意深く観察した。

 

「…音が近い、真上だ!」

一方、ハウンドは自身が落下時に瓦礫に変えた家屋だったものに紛れながら身を潜めていた。

 

「まったく大した歓迎だよなあ!!」

クリフジャンパーは瓦礫の山から抜け出し、どたどたと走り回りながら逃げ惑っていた。

 

「一時的に聴覚をオフにでもしておけ、爆音でセンサーがイカれかねない」

アイアンハイドはクリフの叫びにいらつきながらそう言った。

 

爆撃の音や風を切る航空機の音、家屋が燃える音に砲撃音、それら全てが一過し、辺りがかすかに落ち着いたその時だった。

「…各自そのまま聞いてくれ」

上空からオプティマスの声が響き、次いでパラシュートを切り離したオプティマスが落下してきた。

「降下中に砲撃を受けた。それも二箇所からだ。そして上空に見えた機影は武装ヘリと爆撃機が一機づつ、他は戦闘機が三機、それぞれ全て別のタイプだった」

煤汚れにまみれたオプティマスはそう告げると、軽く頭を振って汚れを振り落とした。

 

「それだと七体で数が合わないんじゃ…」

クリフが訝しげに首を傾げた。

 

「オーバーロードは戦車と戦闘機が合体して一体を構成するんだ。数は間違っていない」

アイアンハイドが素早く訂正した。

 

「あぁ、そうだった…かも」

クリフは今度は反対側に首を傾げ、ゆっくりとそう言った。

 

「先が思いやられるな」

ハウンドは片手でガトリングを担ぎ、軽く頭を抱えた。

 

「まず爆撃機を潰す。空の敵に対してはハウンドが牽制弾を放ち、次に私のキャノンで仕留める手で行こう」

オプティマスは航空機群とそこから投下される爆弾が染め上げている上空を見やり、ハウンドの肩に手を置いてそう伝えた。

 

「目くらましにありったけの弾をバラまけって訳ですか」

呆れ気味の笑みを浮かべ、ハウンドは愉快そうにそう返した。

 

「全て撃ち尽くす勢いで盛大にやってくれ。将軍達には敵の航空戦力を最低でも半分は排除し終えるまで、増援は送らないよう通達してある」

 

「で、戦車は俺とアイアンハイドで行くのか?」

クリフはアクロバティックに変形しながらそう訊き、エンジンをアイドリングさせた。

 

「そうだ。落下中に受けた砲撃から逆算したおおまかな座標を今二人に転送した。彼らも移動し始めているだろうが…速度ならばこちらが勝る」

「戦車のうち、最初に私に攻撃してきた大型単砲塔のものが恐らくオーバーロードの半身だ。これを第一目標とする。第二は四つの砲塔を持つ対空戦車…こちらはデモリッシャーと見ていいだろう」

「クリフは第二を排除。そしてアイアンハイドは第一を足止めしろ、合体さえさせなければ勝ち目は必ずある」

腕の通信端末を連動させ、オプティマスらは即席のブリーフィングを開始した。

 

「責任重大って訳ですか!やる気が出ますね久々に!」

アイアンハイドは両腕のキャノンを見せつけるようにしてそう言い、今度は自分の両拳を突き合せた。

 

「張り切り過ぎて体壊すなよ!」

クリフが冷やかすようにそう言い、その場を軽くウィリーしながら一回転した。

 

「オートボット、作戦行動に移行せよ…!!」

オプティマスが力強く号令を発すると、四人は迅速に移動を開始した。

生存してほしいキャラ

  • オプティマスプライム
  • アイアンハイド
  • プロール
  • ブロードキャスト
  • ホイルジャック
  • パーセプター
  • ラチェット
  • ギアーズ
  • ホイスト
  • サイドスワイプ
  • サンストリーカー
  • レッドアラート
  • ウィンドチャージャー
  • クリフジャンパー
  • グリムロック
  • ホットスポット
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