悪夢から目覚めたら前世まで戻ったのだが?   作:gnovel

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Bloodborneの小説を調べてもクロスオーバーはあってもオリジナルが少なかったので初投稿してみました。


追記

色々修正しました。話は特に変更ありません。2023年12月。


*1 悪夢からの目覚め そして現代へ

「すべて、長い夜の夢だったよ…」

 

 目の前で最初の狩人たるゲールマンが崩れ落ちていく。

 この光景を目の当たりにするのはもうどれくらいになるのか。崩れ落ちるゲールマンを見届けるのも億劫になってきた。

 

 生前寿命を終えて死んだと思ったらいきなり目の前に見たことのある男が自分の体になんかの血を輸血しようとしていて焦ったが、ここがBloodborneの世界であることと、よりにもよって転生したくない世界ランキングで10位以内に入っていそうな世界に転生したことに対して思わず叫んでしまったことを覚えている。

 

 俺は所謂転生者って奴だ。

 前世は特に裕福でも貧乏でもなく、そこそこの稼ぎがありゲームが出来るならそれでいいとさえ考えるような奴だった。

 

 それがどうだ目が覚めたら変な血は入れられるわこの世界に転生した事実に叫んだ結果ドアを突き破ってきた獣に殺されるわ狩人の夢にいる人形ちゃんや使者をみて思わず後ずさりしたこともあった。

 ……もっと言えばゲームとは違い己の肉体で狩りを行わなければならず慣れるまでかなり死んだことも懐かしい、よく前世で話題になっていた異世界転生物の主人公たちはよくこのギャップになれることが出来たなと思うばかりである。

 

 しかしこうして振り返ってみると懐かしい思い出が蘇ってくる。

 前世で言う栗本チャレンジ(頭の可笑しい挑戦)でお馴染みの聖職者の獣(栗本チャレンジの被害者)ガスコイン神父(約50%の心を折った者)ヤーナムの影(糞ー糞糞の影)、悪夢の主、ミコラーシュ……どれも懐かしい思い出だ。ただしローレンス貴様は許さん。敬具を守ってどうぞ。

 

 あとやはりエーブリエタースは可愛かった。

 今思い出してもあの可愛さに魅了されるものだ。今も彼女の姿を思い浮かべると何か表現しがたいものに襲われるようだ!

 

 

 ……おっと危うく発狂する所だった。啓蒙を高めすぎるのも良くないな。鎮静剤を飲まなくては。

 

 思い出と言ったらやはり血晶石だろう。

 聖杯を手に入れた時は思わず歓喜したが、冷静になってどうすればかの『9kv8xiyi』や『naapatbx』などの聖杯ダンジョンにいけるのかと思案したが、試しに頭の中で汎聖杯に向かってこれらの記号を思い浮かべたらそのダンジョンに行けた時はこれでいいのかと困惑したのを覚えている。

 

 狩りの道中ゲームの中でしか関われなかった様々なNPCたちと会話(と呼べるか怪しいのも多々あった)が出来たことは素直にうれしかった。……だからこそ彼らが死んだときは心が折れそうになったことも覚えている。

 

 その他にも自分と同じような狩人とも協力したり敵対したものである。

 流血鴉のコスプレをした奴、メンシツの檻全裸の変態、全裸車輪の変態、ガラシャの拳を使う変態、カリフラワー…etc。変態しかいなかった気がするが自分も時折金のアルデオだけかぶって全裸車輪をしたことも多々あるのでなんとも言えない。

 

 さてなぜこんなに悠長に考えていられるのかというと、既に何度もヤーナムの夜明けや上位者エンドを繰り返しているからに他ならない。数々の困難を乗り越えてようやくゲールマンの介錯を受けられることを知ったときはすぐさま介錯を頼んだものである。

 

 しかし目覚めたと思ったらまたあの診療所にいるのだからその時俺は絶望したものだ。やけになった俺は、ならばいっそやれることをすべてやりつくしてやろうと思い、文字通り全てをやりつくしたものである。

 

 全ての武器の強化、レベルカンストは当たり前。聖杯ダンジョンにごく稀に表れる隠しボスの類も全て遭遇して残らず倒した。とにかく全部やり切った。

 

 しかし考えられる限りのエンディングを幾つも迎えても迎えても夢から覚めないことに気づいた時はたまらずその場で発狂した。それから俺は普段はあまり目にすることが無かった町の風景やNPCたちとの他愛のない会話をして自分を保ち続けてきたのである。

 だからこそ今回もこうして月の魔物を狩ってもまた同じ結果になると考えながら愛用しているノコギリ鉈とわが導きのエヴェリンを握りしめながら次は何をするかと考えるばかりだ。

 

 次は何をしようか。

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 目が覚めた。

 

 いつもとおなじなら診療所で目が覚めるはずだがなにか様子がおかしい。ヤーナム特有の陰鬱とした雰囲気とはどこか違うような感じがした。周囲を見渡すとそこは診療所のような建物ではなく屋外にいることを照り付ける太陽とその暑さがそれを実感させる。

 

 まだ全裸になるには早いと考えながらも周囲を見渡す。

 

 

「に……日本……語」

 

 かつての故郷である日本の建築技術が垣間見える建物になにより日本語で書かれた看板が目に映る。

 

 それを見た時俺は酷い哀愁に駆られた。

 これまで幾度となく心が折れそうになっても自らの体から血が流れ、頭が破裂しても、尋常ではない痛みに襲われたときにもえぐられたり、切られたりしたときも涙を流すことがあまりなかったにも関わらず目から涙がこぼれ落ちそうになった。いや視界が涙でぼやけているから泣きそうではなく、既に泣いているのだろう。

 

 

「……ついに」

 

 

「ついについについに!」

 

 

「帰ってこれたぞ!!!!」

 

思わずそう叫ぶ。

あたりの家から多くの人間が何事かと視線を向けてくるが俺は構わず歓喜に浸った。

 

 

「で、この後どうするか……」

 

 戻ってこれたことに歓喜しつつ今後について一考しながら愛用の眼鏡を布で拭く。

 

 今の自分はヤーナムの悪夢から戻ってこれた存在。しかし今いるこの日本らしき場所は自分の知っている日本なのか。それすら不明だ。どちらにせよ狩人であった時に気にすることはなかった戸籍や雨風をしのぐ拠点などの問題が付きまとうことになるのである。

 

 

「最悪金は硬貨や血晶を売って手に入れるとするか……」

 

 俺のポケットには輝く硬貨や聖杯ダンジョンで手に入れた血晶が文字通り山ほどある。

 なんなら売ったら金になるものが他にもあるが、逆に絶対に表沙汰にしてはいけないものだって数多くある。職質ではすまない。一発でアウト。下手な薬物よりも危険な代物……俺の血液がそれに該当するな。

 

 ……てか俺の視界はこんなんだったか? 狩りを通して自分の身長や能力に合わせてきたからわかることだが、いつもの視界よりも今が低いと感じる。徐にグローブを外して手のひらに対して目を皿にしてみると、そこには歴戦の狩人とは無縁の傷一つない綺麗な手が見えた。

 

「そういえば、この辺りの光景どこかで……どこだったか?」

 

 ふと周りの建物や風景を眺めて気づく。

 永遠にも等しい繰り返しで摩耗していた記憶の奥底に今見ているこの光景が該当する部分があることに考えを巡らせる。

 

 そして気づく。

 

 ここは俺の住んでいた近所だと。

 忘れられる訳がなかった。いつかもう一度味わいたかった青春の一ページ、その景色を。俺の脳は切り捨てていなかったようだ。灰色だった景色が一気に色づき始める。

 

 ならば俺の家があるかもしれない! そう思い行動に移そうとした。

 

「あんた、なにそのカッコ」

 

 声につられて後ろを振り返る。

 ヤーナムではあまり見ない顔つきではあるが、顔つきが非常に整っている女性。

 

 記憶の中を必死に探り……漸くその名前を引っ張り出すことに成功した。この間僅か1秒足らず。

 そこにいたのは……幼馴染の狩埼麻衣だった。

 

「……あぁ、えっと……狩埼さん……?」

「なんで他人行儀なのよ、いつもなら麻衣っていうでしょう?」

 

 狩埼麻衣。

 顔や名前は憶えていてもかつての自分の幼馴染にどのように声を掛けたらいいのかわからなかった。

 

「そんなことより!明日のテストどうするの!?」

「は?」

「は?じゃなくて! 明日でしょ!夏休み前最初のテスト!!」

「ゑ」

 

 おのれ上位者。

 一方的ではあるが感動の再会を果たし、悪夢から戻ってきたを実感したと思ったらすぐにこれか。出てこい上位者ども。まとめて肉片にしてくれる……そう誓う。

 

 そんな俺の様子に疑問を抱いたのか麻衣が困惑していた。

 

「なんかよくわからないけど、あんた怖いこと考えていないかしら? ……待って? なんで泣いているのよ!?」

「あ……れ……?」

 

 どうやら涙腺が自分の意識外で崩壊していたようだ。裾で涙を拭い、自分は大丈夫だという旨を伝えた。

 

「あんたがそんなに言うなら大丈夫なんだけども……」

 

 幼馴染の元気な姿を見れて一頻りの喜びに包まれていた中、ふと家族の顔も見たいという衝動が襲ってくると共にこのまま暫く麻衣と話していたいという感情と正面衝突を起こした。

 明日がいきなりテストであることを除けば最高だったのだが、テストがあるということは学校がある……つまりまた麻衣と会える訳なので今日のところはまずは家に帰らせてもらうことにした。

 

「そう?じゃあまた明日ね! 勉強さぼるんじゃないわよ!?」

 

 範囲も分かっていないのに何を勉強すればいいのか。ただ一つ分かるとすれば、学生にとっての絶望が待ち受けていることなのだろう。生憎そうした学歴社会から離れすぎたせいかいまいち実感が湧かないものだ。一応範囲を確認して教科書を見ておくとしよう。

 

 そしていざ家に帰ろうとした時、ふと俺の足はピタッと止まった。いや止まるしかなかった。

 

 

 

「――家は、どこだ?」

 

 

「……はぁ!?」

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