お気に入りも徐々に増えて来て感謝の極みでございます。
この狩人君のステータスは、ゲームでいうカンストまで上げており
現実における筋力99はそれはもう凄いことになっています
それではどうぞ
「狩夜~!起きなさ~い!!」
一階から母の声が響きわたる。
昨日夕食を食べた後久しぶりの風呂に入って体を洗い流した後、明日のテストに備えてひたすら教科書に目を通していたのだが、気づいたらすでに午前7時になってた。
「食欲は湧いても睡眠欲はあまり湧かないものだな」
一睡もせずにテスト範囲の内容を網羅したのにもかかわらず一切の疲れがないことから、改めて自分が一般人とはかけ離れた存在であることを思い知らされた。
「お兄ちゃん、先下に行ってるね!」
ドアの向こうから妹がそう言って階段を下りる。手早く学生服に着替え終えた俺は朝食を食べに階段を下りるのだった。
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「もうっ! 急にどうしたの!? 学校まで付いていってほしいって言い出して!」
文句を言いながらも麻衣が俺の隣を歩いてる。
「ちょっとした気まぐれで」
流石に記憶を失いましたと言った所で余計な心配をさせるだけ。だから誤魔化すことにしたのである。
「気まぐれって…まぁ、いいわ」
麻衣が呆れた様子を見せる。
というのも昨日の時点で自分の携帯で麻衣に『明日一緒に学校に行ってくれないか?』と連絡していたのだ。携帯の操作方法を忘れてしまっていたので妹に聞きながら取り組んでいたら妹に信じられないようなものを見るような眼で見られたのは記憶に新しい。
そして肝心の麻衣から『えっ何よ急に……別に良いけども』と返答が帰ってきて、今に至る訳だ。徐々に戻りつつあるかつての自分の記憶の中では、出来ないことを周囲に助けを求めるのではなく自分で解決するというスタンスだったのが、出来ないことは何をやっても出来ないので周囲に助けを求めるし、自分も助けるというスタンスに変わったのもヤーナムの影響だろう。あそこでは常に誰かが助けを求める救援要請の鐘を鳴らしていたからな。
「ほら、着いたわよ」
どうやら学校に到着したようだ。登校時間も相まって既に沢山の生徒たちがいた。
懐かしさに周囲を見渡していると背後から何やら悪意を持った人間の気配がしたので振り返るとそこにはニタニタと気味悪い笑みを浮かべた同年代くらいの男がいた。
「よぉ~朝からいいご身分だな俺にも分けてくれよ」
誰だこいつは。
日本人特有の黒髪を金色に染め上げ、耳にピアスを付けているいかにも頭が軽そうな人物がなれなれしく俺の肩を組んでくる。脊髄反射的にモツを抜こうとしなかっただけ褒めて欲しいものだ。
「裕大! あんたまた狩夜をいじめにきたの!?」
「そんなことないぜ? なぁ狩夜ァ?」
ゆうだい……というのか。十秒だけ覚えておこう。
そして俺がこんな奴にイジメられていたという事実には思わず全身で拒絶反応が起きる位には信じられないことだった。見栄っ張りなだけの雑魚に怯えていた理由が今になって分からなくなる。俺は声を低めて他人行儀で接することにした。
「……あぁ、失礼。所で貴公は誰だ?」
なるべく丁寧にそして威圧をかけるように声をかけたつもりだった。だが何が面白いのか、この男は爆笑していた。
「ぷっ!ぎゃはははははははは!!なんだよ”貴公”って!!」
周囲の目を気にせずに笑い続けていられる辺りは大物だろう。こちらが下手になっていると思い込んでいい気になっている連中はこれだから厄介なのだ。
暫く不愉快な笑いを上げていた奴だが、唐突に静かになると俺の耳元に『あとで校舎裏にこい』と告げて教室へ向かって行った。
……校舎裏って、どこだ?
「何よ! あいつ!」
麻衣が激昂している。確かに不愉快ではあったが、俺ではない麻衣が怒ることなのだろうか。
「狩夜大丈夫?!あいつになんかされなかった?」
麻衣が心配するが、ほんとにあいつに関する記憶が無いため特に思うところはない。ただただ煩わしい奴だった、という感想が浮かんでくるだけだった。
「でも!いつもいつもしつこく迫ってきて!」
ふと脳裏にヤーナムでの思い出が過った。
~回想~
『だああああああ!もう、しつけえぇんだよ!』
あれは俺が聖杯に潜っていた時のこと。
『ふざけんな糞蜘蛛が!』
そうこの時俺は鐘女が無限に召喚してくる赤蜘蛛の対処に追われていた。
『どらああああああああ!』
手に持つ回転ノコギリを力任せに振るいながら蜘蛛を蹴散らしていきながら鐘女を探しているが一向に見つからずじわじわ追い詰められていった。小さく的が絞りづらい上に硬くて強い、しかも無限に表れるというしつこさと鬱陶しさに全振りしたような奴だった。
一旦息を整えようと距離を取るがカサカサと素早く距離を詰めてくるため回復もままならず、回復したその瞬間には蜘蛛に傷を負わされるという負の連鎖に陥っていた。
ギュイィイイイイン!
回転ノコギリから発せられる特有の電動音が肉を切り裂く音と共にあたりに響き渡る。
『どこだ』
鐘女を探すために音のなる方に足を進めること数分。
『おらぁあああああああああ! そこかぁああああああ!!』
しかしそこにいたのは鐘女と赤蜘蛛だけではなかった。
ボウッ!!
『あ?』
何かに焼かれる感覚がした。
『あー』
そこにいたのは遺跡の祭祀者と呼ばれる老婆のような敵だった。こいつが入り口の死角となる場所にいて、部屋に侵入した俺に火をぶちかましたのである。
『あー』
言葉はこれしか出てこなかった。
なぜなら今俺は回転ノコギリを振り終えてスタミナがもうない状態で飛び掛かってくる蜘蛛を回避する術がなく、さらにもう輸血液を切らしてしまっていたため回復ができておらず死ぬことは確実だったため言語を失ったのである。
そして当然のごとく死んだ。
また赤蜘蛛の群れを掻い潜らなければならない事実とまさかのところで死んだという事実が俺を襲った。
『またやり直しかよ! 糞が! ファッ●!!』
無限に湧いてきてこちらを殺そうと数の暴力で襲い掛かってくる蜘蛛と比べてもまだかわいい方かと割と見当違いなことをこの男は考えていたのである。
かつてのトラウマを思い返してしまい少し身震いしてしまったが、漸く自分がいたであろうクラスにたどり着いたのである。
「じゃあ!あとでね!!」
麻衣は別のクラスのためここで別れることになった。
俺は感謝の印として『狩人の一礼』をした。
しかし礼儀正しいと思われる一礼をして顔を上げると何やら困惑と羞恥が混じったような表情をこちらに向ける麻衣の姿がそこにはあった。
「ちょっと、大げさよ……」
またしてもヤーナムにいたころの癖が出てしまった。
「おう!おはよう!!」
教室に入ってきて俺に声を掛けてくる奴がいた。
そいつの名前は慎吾 かつての親友だった存在……らしい。これも記憶がない故に断定できない。
「珍しいな、お前が遅くに来るなんて」
眩しい笑顔を浮かべながら俺に話してくるが名前だけしか思い出せない現状俺にできる事は話を合わせる事だった。
「すこし寝坊しただけだから気にするな」
「そうかー、今日のテストのことで眠れなかったのか?」
「まぁ、そんなところ」
「俺もなんだよ、昨日急いで頭に詰め込んでさ~、お前はテスト範囲が発表されてからすぐ勉強してたもんなぁ」
「そうだったか?」
普段の自分を演じる為にも、こうした小さな情報を聞いておくのも大切だろう。そう思った俺は食い入るように話を聞いた。
「何言ってんだよぉ! いつも学校の図書室で狩埼さんと勉強してただろ?」
少し思い出してきた。
転生する前の俺は、テストの範囲が分かるとすぐに勉強して何とか赤点を逃れようとしていたのだった。その割に結果は学年ランキングの中でも中の上くらいという何とも言えない位置にいたことも思い出した。
「いいなぁ~俺もお前みたいにちゃんと勉強すればよかったぜ!」
「……」
「おい?どうした?」
「何でもない」
「そうか、じゃ『キーンコーンカーンコーン』おっともう席に着かなきゃ! じゃっ、また後で検討を祈るぜ!」
「あぁ、またあとで」
そうして俺はテストに臨んだ。
そして国語では――――
『やっべ、漢字が分からん』
『古典ってこんなに難しかったっか?』
『……選択肢で解く形式だから最悪運にまかせるか』
数学では
『証明……? ってなんだ?』
『……選択肢があるな』
英語では
『なんか出来るわ』
『ヤーナムの人たちって基本英語で会話してたみたいだが……輸血液を体に入れてから何か英語が出来るようになったから多分輸血液の副作用か何かだろう』
『…そう考えるともしかして輸血液を使用したものは血を浴びるたびに殺した相手の血の遺志だけじゃなくてそうした知識も吸収しているのかも』
実際俺が殺してきた連中の中には学者……メンシスや聖歌隊の奴らやそうした知識人もいたため彼らの知識が頭に入っているのではないかと考えても特に不思議ではないのだろう。
『あ、やべリスニング聞き逃した……2回目があるのか』
~終了~
「うわぁあああ終わったああああああ!!」
「あそこどうだったよ!おまえ!?」
「この後カラオケ行こうぜ~!」
テストが終わりあとは帰るだけになった瞬間学生たちはお互いにテストの問題について話したり、今後の予定に思いを巡らしているものもいた。そして慎吾が俺に近づいてきた。
「狩夜!どうだったテストは!?」
正直自分の力で解いたところもあったがほとんど他人の記憶まかせだったため何て言えばいいか迷った。
「まぁ……それなりには」
「えぇええ!?お前でそれなりとか俺おわったじゃん!!?」
「まだそうかわからないだろう」
「でもよ~お前中学の時も俺より点数が高かったじゃないか!」
「そうだったか?」
「そうだよ!」
こういった場面において記憶が抜け落ちているというのは不便だな。そして不意に朝の事を思い出した。
『あとで校舎裏にこい』
そう言われた気がしたが、校舎裏がどこかは見当がついていない。すっぽかすか。
「では俺はこれで帰る」
「おう!そうかじゃあ俺は他に用事があるからまた明日な!!」
「失礼する」
こうして俺は教室を出て麻衣の下へ向かった。
「待たせてしまった」
「んー?別にそんなに待ってないわよ?」
「じゃあ帰るか」
「……昨日から思ってたけど、なんか変なもの食べた?」
「あぁ、実は……へその……いや何でもない」
「?」
危うくへその緒とか言いそうになった。そうこうしている内にしばらく歩いていると麻衣の家の近くまで来た。
「じゃあこれで、あんたも体調には気を配りなさいよ」
「ああ、ではまた明日」
「じゃあね」
こうして麻衣と別れを告げた。
何か忘れている気がするが最早気のせいだろう。忘れるということは別にどうだっていいことだとどっかで聞いた気がする。
ちなみにこの狩人くんは試験中に鉛筆を数本折ってしまい、
あと1本折ったら終了といったところまで行ってました