ニシノフラワー実装マダ.....?
実際の所、ウマ娘というのはウマソウル(仮)があってのものである。
ウマソウルがあれば、時速60kmで生身のまま走る恐怖が無いのであろうし、
ウマソウルがあれば、普通に走ることへの執着が強くなるだろう。
病院の先生に、「ここまで走るのに熱心じゃない子は初めてだ。」と言われた時点で、私がウマソウルを内包しているという楽観的思考はカットされたわけである。
まあ、自分にとっては後の祭りである。
あのウマ娘の超人的な身体能力が、前世で言うふくらはぎ全般___第二の心臓とかいうらしい____などの筋肉の血液ポンプ能力に大きく依存しているとは。
前世の知識とか言うアドバンテージに寄りかかって、ただ勉強できれば良いと、前世以上に怠けてだらけて小学校に行くこと以外引きこもった挙げ句、ちょっと動いただけで酸欠と貧血、栄養不足で
まさか『運動よりも勉強第一』の姿勢が命に関わるとは。
思いもよらなかったのであるぅ...。
『致命的な運動不足』
そんなことを目覚めてすぐ聞かされた挙げ句、
家族に泣かれ、先生に呆れられ、
病院兼リハビリテーションセンターでの地獄が始まったわけである。糞が。
地獄というのは比喩ではない。
元々これっぽっちもない運動能力を酷使、成長させて、ウマ娘として生きられるライフボーダーを突破しないといけないのだ。突破できなければ本格化と呼ばれるウマ娘の全盛期、つまり燃費最悪期間に自分は血行不良による多臓器不全で死ぬらしい。おーまいごっと死ね。
懸念すべきはボトルネックである。
肉体を鍛えるのに払うべき体力が幼児以下なのだ。
アプリ版ウマ娘で表現するならば『あなたの体力は10が最大値です。なお練習の失敗率は体力10なので90%です。失敗したら死ぬよ。』と表せばわかりやすいだろうか。破棄すべきクソゲーである。
神経を何本もすり減らしたであろう、影を隠しきれない優しい顔の先生の指導のもと、霞む意識の中、倒れるギリギリを反復横跳を繰り返す日々であった。
「これ、学校の通学はどうしてたの?」と聞かれたとき、
お受験な小中一貫校で、バスが回っていた。と言ったときのナースさんの顔は忘れられない。
何度も、運動してればよかったと思った。
何度も、ハンバーガーを食いてえと思った。
何度も、今は遠き学歴エリート道を想った。
そして数年後、遂に私は走れた。
50mである。一ハロンの半分の半分という距離である。
倒れない程度に体力を余らせて、私はそれっぽっちを走りきった。
ウマ娘らしくない距離を、ウマ娘らしくない速さで。
ああ、この時ばかりは涙が出た。
腐っても魂は中年である。
どれ程の地獄でも自業自得であれば泣くまいと、
なけなしのプライドを奮い立たせここまで来たが、
この時ばかりは泣いてしまった。
先生も泣いていた。
父も泣いていた。
私の堕落のせいで、母が実家に帰ってしまって、
一人悲しみの淵に沈んでいた父である。
その父が、泣いてくれていた。
その事に泣いた。泣いて泣いて、体力が使い尽くしてぶっ倒れそうになって、
夜、センターの個室ベットで泣いた。
まだリハビリは終わらないけれど、
それでも、ここが転換点だとはっきりとわかった。
これが私の人生ならぬウマ娘生なのだ。
手を抜くなど言語道断。
それを強く、思い知らされた日々だった。
そして更に数年後。
私は家でだらけていた。
あれ?と思ったそこの貴方、
安心せい、ちゃんと一日15分ほど走っているぞ。
父が走りやすい場所に引っ越そうとの提案で、たどり着いたのはここ、
東京都府中市、日本ウマ娘トレーニングセンター学園周辺であった。
確かに走りやすかった。
トレセンを囲むよう設置されているウマ娘用道路に空き缶一つ無く、
幅も広く、更に休憩ポイントまでもあるほどである。
流石全国のウマ娘トレーニング施設の中でも最新鋭かつ最大規模の施設の近辺街である。ウマ娘への町ぐるみのサポート体制もバッチリだ。
たった15分、長いときは30分ほど走るのみの民としては勿体ない環境であった。
時々ランニングポイントでばったり出会うウマ娘との会話を楽しみながらのランニングは中々のものだ。可愛い子には目がない私であった。
未だ母帰らずの父に、夜ご飯を作りつつ話すのが毎日の楽しみである。
....私から思いきって母に手紙を送ったところ(電話をかける勇気は無かった)、申し訳なさで合わせる顔がないとのことだった。
更に厳格な祖父は私を許していないようで、家に帰ることはまだできなそうとのことだった。
私には母に文句を言える権利などこれっぽっちも無いのに、「一緒に居てあげられなくてごめんなさい。」と謝られてしまった。
本気で自分の首を絞めて死にたいと一瞬思ったが、それこそ両親への侮辱となる、とその気持ちを蹴り飛ばしてやった。悲しき勝利である。
時々、母の手紙が届く。
私を許してくれた祖母を頼りに、口座に少ない金額が振り込まれていたこともあった。
未だ離れ離れであるが、素晴らしき両親を私は持った。
聞く限り父はエリートであり、
母もまた有名な家の出らしい。
トレセン学園の近辺に引っ越せたのもその伝があったからであり、
今の父はトレセンにて高位の管理職を担っているとのことだ。
機密性が高い部署なのか、あまり仕事について話さない父であるが、
毎晩遅くに帰ってくるのを待つ身としては、申し訳なさと同時に誇りに思うばかりである。
朝早くに家を出る父や、実家にて祖父の怒りを解くのに尽力している母に代わり、
家事洗濯買い物等々を私は担っている。
エリート街道であったお受験な小中一貫校を退学し、ここ府中市の一般中学に途中入学した私であるが、腐っても転生者である。
勉強は学年一桁の後半ラインをキープしつつ、家事を極める毎日である。
母方の祖母による遠隔花嫁修業は苛烈であったが、これも何時かの一家団欒の為、
特に料理を指がかぺかぺになるまで練習したものだ。
勉強と家事と静養に努めながら、少しずつ走る距離を伸ばして行くのが、
私の日課である。
目指せ、10kmフルランニング。
ここのところ、レースを見に行くことが多くなった。
原因として、ランニングで仲良くなったウマ娘の応援である。野良レースを直に観戦しに行くこと殆どで、流石にトレセン内でのレースは動画観戦であったが、それでも後々の話の種にしたりと楽しめた。知り合った何人かがトレセンの生徒だったとその時知って、たまげたものだ。
その知り合いの一人が、
「明日の選抜レース、胃が痛ぃ....」
突然家に来たと思えば私のベッドでゴロゴロし始めた彼女である。ゴロゴロやめい雨の湿気が布団に移る。
「いや、完全部外者な私に言われても...ていうか何故私の家にいるんです? 授業はサボりですか?」
「ちゃーんと、レース前の調整期間として公欠扱いでありますよー。調整も終わって今は疲労回復中でありますん。ていうかカンちゃんも家にいるやん。学校は?」
「私は受験生ですし、もう学校終わってますよ。」
「.....マジ? 知らんかった。おぬし中三であったか。」
「いやまあ知らなくて普通というか....トレセンと普通校じゃスケジュールも内容も大きく違うと思いますし。」
「明日のアドバイス頂戴。」
「また突然な...教官から貰っているでしょうに。」
「"適性を活かして走れ"てさ。そんなことわかりきってんダヨー!」
マクラ投げんのやめーい。あぶない。
このまま暴れられても困るので一先ず考えてみる。
明日のレースは芝/2000m(中距離)/右内。
幾つかの模擬レースを見た限り、彼女の脚質適性は、模擬レースで使っている『先行』策というより『差し』、『追込』に優れているのだろう。ランクで言うならC、B、Bだろうか。...ブラフで『先行』なんかね。スタミナ足らなくて『むーりー』しちゃってるけど。
今日は雨。明日のバ場状態は『重』だろう。下手すれば『不良』だ。
スピードはE、スタミナはF、パワーはD。ぐらいだろうか。私にできるのは統計と比較程度なので前世のウマ娘の情報をフル活用してもここらへんが解析の限界である。
正確性など微塵も感じられない感性重視の情報でなんとか戦略を探し出す。
なおここまででざっと2時間が経っている。彼女は私のベットで寝た。おいこら待てと言いたい。
「....短距離やマイルなら『差し』だけど、中距離となるとやはり『追込』かな。」
「へえ、理由は?」
「ひゃっ!」
独り言に思わぬ返事が差し込まれて、毛が逆立った。
ベッドを見ればうつ伏せの彼女の目が開いている!
コワイ!
「あ、明日のバ場状態からしてスタミナとパワーの消費量、必要量も増えると思うし、ブルーちゃんは模擬レースで使っている『先行』策よりスタミナ消費の小さい『追込』の方がいいかなーって...ブルーちゃんのパワーは見た限り大丈夫そうだから、兎に角スタミナを温存して後半に全力で差しきるのが手じゃないかな。」
めっちゃ早口で喋り終えた。
彼女の調整が終わっているというのは本当である。
意識して抑えようとしているようだが、ここに来て気が緩んだのか、レース上のウマ娘が放つ気迫が漏れている。一般ピーポーソウル搭載の私からするとそれは恐ろしい重圧だ。現にチビりそうである。
「うん、うん。そうだね。やっぱり、カンちゃん頭良いでしょ。ほぼ同じ作戦立ててくれた。」
「お、同じ?」
「いや、まあ.....結構前から『追込』狙いでブラフ張りとかパワー特訓とかしてきたけどさ、どうしても、よりによって今日に限って、不安になっちゃって。運良く雨なんか降ってくれたし、ここを逃したら、多分、ヤバイなってさ。」
絶好のチャンス。
選抜レースというウマ娘としての格付けの節目に訪れた幸運を、自分自身の実力のみでもぎ取らなくてはならないという緊張。
今できることをやりきったからこその自信、その裏側。
ひょっこりと顔を出す、脆い部分。
ならば、
「なーに言ってんですか、ブルーちゃん。
私が友達に贈れるのはそのぐらいだ。
「卑怯だね、私。」
「私に作戦を立たせておいて何言ってるんですか。
無意識的か意識的かは知らないけれど、
賢い彼女は、私に責任を押し付けた。
一時の不安と、絶望する事への恐怖と共に。
彼女も同じ作戦を元々立てていたって?
違う、違うのだ。
そう言い張ることが。なりよりも大切で。
ウマ娘だと思えぬほどノロノロと走っていた私を、
心配して、応援して、付き添ってくれた、
優しい彼女に贈る、一つの孝行である。
家を出れば、雨は止んでいた。
「明日、父さんに無理言って見に行こうかな。」
「えー、超ハズイから来なくていいよ。後でまた録画渡すし。」
「そっか....泥跳ねとかスリップに気をつけてね。目に当たると下手すりゃ失明だし、ウマ娘のスピードだと危ないからね。」
「わかってるわかってる。先生にも教官にも不良芝のことなんて耳にタコができるほど教えられたもんよ。」
「ならよし、ファイト、ブルーちゃん。」
「一着獲ってくるよ、カンちゃん。」
彼女は、その鮮やかな鹿毛を雨露に煌めかせ、走り去って行く。
その青空の瞳は、未だ見ぬゴールを捉えていた。
「カンちゃーん...」
ん? ブルーちゃんが遠くでなにか....
「その戦略眼、トレセンの同期並だよー。これでも猛勉強して作り上げた戦略なのに、そう簡単に追い付かれちゃ形無しさー!前から思ってたけどもっと誇って、ヴァーカンシー!」
.....前世のアドバンテージ、もうないなこりゃあ。
・ウマ娘名 ヴァーカンシー/Vacancy
「"名は体を表す"にしては、少々悪趣味じゃないか。」
誕生日 8月9日
身長 142cm
体重 増加中
スリーサイズ B69 W45 H72
芦毛のウマ娘。瞳の色は琥珀と翡翠の混合色。
空席という意味。
その名の通りウマソウルが収まる部分が空席となっている。
ヒトソウルは他のウマ娘と同じように収まっているため、一見普通のウマ娘である。
器はネームドレベルに到れるほどの逸材であるが、
悲しきかな、その未来は閉じられた。
・初期(現在)ステータス
体力 60/62
制限中/身体的制約。幼年期の運動不足の代償。それでも少しずつ増加している。
スピード 25(100)/1200 F(G)
制限中/スピード恐怖症 ある一定以上のスピードを出せない。
スタミナ 25/800 G
制限中/身体的制約。幼年期の運動不足の代償。
パワー 25/1000 G
制限中/身体的制約。幼年期の運動不足の代償。スタミナ程ではない。
根性 100/1200 F
中年ヒトソウルにしては中々。
賢さ 75/1200 G+
レースにおける賢さは普通圏内。競争経験すら無いので妥当。
バ場適性: 芝B ダートD
距離適性: 短距離B マイルC 中距離F 長距離D
脚質適性: 逃げC 先行G 差しE 追込B
レースで走る未来があるとすれば、芝の短距離追込という曲者。
・ウマ娘名 ブルーコンコルド
鹿毛のウマ娘。
ヴァーカンシーの友達。
・初期ステータス
体力 90/100
スピード 250/1200 E+
スタミナ 100/1200 F
パワー 350/1200 D+
根性 100/1200 F
賢さ 150/1200 F+
バ場適性: 芝B ダートB
距離適性: 短距離B マイルA 中距離C 長距離G
脚質適性: 逃げG 先行D 差しB 追込A
芝もダートも行けるマイル追込ウマ娘。器用貧乏系かも。強め。
ヴァーカンシーって、バーヴァンシーと似てるよね。