運動不足で死にかける系ウマ娘   作:色龍一刻

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続くつもりは無かったよ。

メジロマックイーンの美しさと愛らしさは、
誰も語り尽くせないと思うんだ。





別に、長距離を走りきってしまっても構わんのだろう?

 

 

 

 

――ええ、遠慮はいらないわ。

みんなをあっと驚かせてやって、ヴァーカンシー。

 

そうか。ならば、期待に応えるとしよう。

 

 

そんな茶番を、はしゃぐ内心でした、

20分後。

 

 

私は13km地点で屍となっていた。

先週再調整された薬が効いたのか、久しぶりに体の調子が良かったため、

可能範囲の限界に挑んだ結果、突如平衡感覚と足の踏ん張る力を喪失。

いつの間にかヒト並みの速度で走っていた私はそこで倒れたようだ。

 

外付けのバイタルチェッカーがアラートを吐き、

強制的に登録された通信機器に電話を繋げる。

 

 

「ごめん....へ、ヘルプミー...」

 

『ちょっと待ってヴァーカンシーが死んでる!』

 

父の通信端末に繋がる筈のスピーカーは、何故か可愛らしい声を私に届けた。

遂にウマ耳までイカれたのだろうか、いや、そういえば、

父の職場はトレセン学園......

 

そこで私は事切れた。安心せい、意識が事切れただけである。

重い気絶とも言うそれは、所謂重症と呼ばれるものだった。

なんでや。そんなつらいことやってないやろ我が肉体よ。へなちょこめ_____

 

 

 

 

 

目を覚ませば、そこは良い匂いでした。

多分、ウマ娘に背負われているのだろうか。

未だに霞む視界を横に振れば、景色はゆったりと流れている。

....移動している? それにしては振動が皆無だ。

この状態で走っているのであれば、凄まじい安定性である。ただ者ではない。

 

「あ"...」

 

「喋らなくていいですわ、多分まだ、危ない状況だと思いますので。それにしても本当に良かったですわ。トレセンから電話がかかってきて、サブトレーナーさんに「ここに向かえ。」と言われた挙げ句、訳もわからず数百メートル走ってみれば、貴女が倒れているのですもの。お陰で期間&数量限定のメロンパフェを逃してしまいましたわ。貴女、理由次第ではただでは置きませんわよ。まったく....それにしても本当に良かったですわ。」

 

 

聴き間違えだろうか。

私は、前世で聴きまくったその声を知っている。

 

見間違えなのだろう。

私は、目の前をそよぐ芦毛を、仄かな紫の髪を知っている。

 

ああ、なんというか、ここで出会うのか_____

 

ネームドに。

 

 

「めじろまっきーん?」

 

「マ ッ ク イ ー ン ですわ。口が回っていませんわね。」

 

「しちゃれい、かみまみた。」

 

「更に噛みましたわね。頑張って喋らなくて結構ですわ。」

 

 

更に失礼、我がアプリの古参メンバーであった、

 

『名優』、メジロマックイーンさんである。

 

どうしてわたしをはこんでるの?

 

「なんとなく言いたいことはわかりますわ。なぜ貴女を私が運んでいるか、でしょう? まあ、成り行きですわ。メイクデビュー戦前の休暇を使って、パフェ屋さんの下見に来ていたところでしたの。どうせなので味の方も下見しようと思っていたところで電話がかかってきまして、急遽貴女を背負ってトレセンに帰ることになりましたわ。じいやの車を呼ぼうにも、マップアプリによると運が悪いことにここ一帯に渋滞が発生しているようですし、走った方が速いという判断ですわ。」

 

顔は見えないが、その声音と尻尾は不機嫌を表している。

それはそうだ、突然、折角の休みの楽しみを放棄して、見知らぬ行き倒れウマ娘を距離は知らずとも運べなんて言われたらそれは不機嫌にもなる。

下手すれば怒るだろう。

 

「サブトレーナーさんの声からして緊迫していましたし、現に貴女は大変な状態の様でしたから、気にしてませんわ。メジロ家としての品位を落とすわけにもいきませんので。」

 

推しに気を使われる私......あ、また死にたくなってきた。

いかんいかん、鬱は一度で十分である。

今は、彼女にどう報いるかを考えよう。フレフレ私。生きろ私。

 

「目が死にかけてますわ、大丈夫ですか貴女っ、ああ、名前を聞いてませんでしたわ! 大丈夫ですわ、もうすぐトレセン学園ですわよ!」

 

あ、スピード上げないで、わたしはだいじょぶ、だから、はやい、こわい、やぁ_______________

 

 

 

 

 

 

 

 

「カンちゃん、大丈夫?」

 

「落ち着いたよブルーちゃん。」

 

わたしは、しょうきである。

 

「まさかスピード恐怖症がおんぶ走行で発生するとは思わなかったよ。後で謝ろう?カンちゃん。」

 

「.......死にたい。」

 

思い出すだけであああぁぁああああぁぁぁあああああ

 

「大丈夫、大丈夫だから、マックイーンさんは凄い優しいから。泣かないで、ね? 大丈夫だから、落ち着いてー.....」

 

そこにあらわれるおふろあがりのじゃーじ『めいゆう』___________

 

「ブルーさん、そちらの方の服も洗濯に出してきましたわ。『スピード恐怖症』と言うものを知らなかったとはいえ、失禁してしまうほど恐ろしかったとは。

ヴァーカンシーさんに怖い思いをさせてしまいましたわ。改めて謝罪を______ヴァーカンシーさんの顔色が青を通り越して白になってますわよ!? 本当に病院行かなくて大丈夫なのですか? あ、鼻血まで出始めましたわよ!?」

 

「え"、鼻血?! なぜにどうしたカンちゃん!? しっかりしてカンちゃん!あ、駄目だこれメンタルブレイクしてる。鼻血は多分精神状態(テンション)の乱高低による血圧異常が原因だと思う。カンちゃん、ウイニングライブ見ると時々なる方のやつだ。よかったー。」

 

「これで"良かった"ですの!? 今まで私、『行き倒れ』『スピード恐怖症』『失禁』『鼻血』『メンタルブレイク』と見てきましたがヴァーカンシーさんに"良かった"と思える部分がありませんわ!」

 

「命よりは安いね。」

 

「悟りの境地ですわね。....大丈夫ならいいですわ。」

 

「順応がはやい。」

 

「ゴールドシップで慣れましたわ。悪い方に.....」

 

「うん、ドンマイ。」

 

「コホン、ところでサブトレーナーさん....ヴァーカンシーさんのお父様はどこへ?」

 

「幸運にもGPS反応の近くに行く予定のあったマックイーンに救助を頼んだのは良いものの、慌て過ぎて何故か病院に向かわせずトレセンに運ばせてしまったことについての言い訳をたづなさん達と考えているらしいね。まあ、サブトレーナーの娘とはいえ、部外者だし。」

 

「....サブトレーナーさんとは思えない浅孝ですわね。」

 

「パニックってわけじゃないのだろうけどねー。どうしたんだろ。」

 

 

 

意識を呆けさせながらも、私のウマ耳は二人の会話を捉えている。

 

私は病院が苦手だ。

生理的に苦手、トラウマといっても良い。

 

話は変わるが、元々、通常のウマ娘における、

ウマソウルは、器を形成するウマ娘の神秘、本能を統括し、

ヒトソウルは、器を形成するヒトの部位、知性、理性を統括していると私は推測している。

だって、そうじゃないと。

僕が、()()()()()()()()()()()()()()()

 

ウマ娘の"ウマ"たる部位を制御するウマソウルが無かったら?

そうしたら、残っているヒトソウルで制御しなくてはならない。

この、どこまでも超人的な肉体を。どうやって?

 

ヒトソウルには無理だ。"ウマ"部分の器なんて扱い切れない、

そうすると、余剰と不足が生まれる。

 

ウマ娘は走るのが使命だ。走らなければならない。

でも僕はヒトだった。ヒトは、そんな速さで、そんな足の使い方で走れない。

それが、ヒトなのにウマである苦しみ。本能を侵す精神が発する恐怖。つまり余剰。

 

私はウマだ、ウマなはずなのに、

いつものように走れば膝は砕ける、肺は潰れる、死んでしまう。

それが、ウマなのにヒトである苦しみ。本能を侵す肉体が発する警告。つまり不足。

その不足は、ウマソウルがないから、残った影のようなものでしかないけれど。

 

精神と肉体が発する恐怖と警告、それぞれが一斉に僕を圧迫したのだろう。

多分、それが、あの運動不足で倒れた際に発生した。

 

例えば、ヒトが生身で時速60kmを出し続けられるという恐怖。

例えば、ウマがいつものように走ったら、ヒトの足はバラバラになるという警告。

 

鮮やかに想像できる苦しみから、僕は逃れようとして、

前者は無理でも、後者だけは阻止しようとした結果、僕は私になった。

 

まるで、器にあるウマソウルの嵌め込み部分に、ヒトソウルを押し付けて型を取るように。

 

ヒトの僕は、ウマ娘として生きるために私になった。

 

それは、肉体的苦痛の危機をなくす代わりに、

精神的苦痛を永続的に受け続けるということであった。

 

その過程を、私は記憶していない。

()()()()()()()、正気を取り戻した地点から、私の記憶は始まっている。

 

運悪く、病院で始まったその変革は、病院という場所自体にトラウマを残す形で終わった。

 

その影響は見えずとも大きかったようで。

私の永続的、恒常的な不調に目ざとく気がついた医師が、はったもんだの末、病院という場所への心理的外傷を発見した。

 

故に、私の入院場所が、病院ではなく、病院兼リハビリテーションセンターだったのである。

 

 

父が病院を避けるのにはそういう理由があった。

先生たちも可能な限り家や外で自力解決できるレベルの薬や機材を紹介してくれるのでとても助かってもいた。

 

どのくらいそのトラウマとやらは酷いのだろうか?

 

 

.....ていうか、ブルーちゃん、あの感じだとメジロマックイーンと知り合いだったりする? マジで?

マックイーン...そういえばメイクデビュー前とか言ってたような。うそ、私、名優の活躍を生で追える? マジで? 

 

 

やった。

 

 

......あと、お父さん。サブトレーナーだったんだ。

高位の管理職....機密性の高い仕事。

うわぁ、心当たりあり過ぎ。

そりゃあ私には秘密にするかー。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

私はこのまま、二人の会話をBGMに寝ることにした。

流石に体力と精神力の限界であった。

後は父がなんとかしてくれるだろう。

最後まで他人任せになりがちな私自身に嫌気が差しつつ、開き直って意識を落とす。

誰かが、タオルらしきものをかけてくれる感触と物音が、最後の記憶である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後の部分のへなちょこ文章の要約ですわ。
お読みなさってくださいませ。

スペック不足&規格違いの代物を無理矢理動かしているもんだと思ってくれれば。←←←これに尽きる。

ただでさえヒトソウルのみで、ウマソウルが無い状態で器を無理矢理制御している状態だっていうのに、
"ウマの部分の器"はヒトソウルに拒否反応を示すわけで。
それを騙すために、ヒトソウル自身が偽ウマソウルに自己改造するという暴挙。
そりゃあ壊れるってもんよ。
まあ正気でいられている理由は転生者だからってもあるけど。
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