転生したけど周りがみんな転生者だった。 作:胡椒こしょこしょ
転生なんかしたくなかった。
それが僕がこの世界に来て思ったことだ。
多分ローファンタジー系なんだろうな。
ほら、なんか清め人って言われてる霊を祓うことが出来る才能を持っている人達が集まっていて、そんでもって悪鬼とかの悪霊とか妖怪とかと戦う系のお話なんだろう。
今までの経験踏まえたらそんな気がする。
...何故こんなにあいまいなのかって?
そりゃお前、俺ここがどういう世界なのかとか知らないからね。
なんだこの世界、意味わかんねぇよ。
そんでもって、一番この世界に居ることを嫌にしているのは.....。
「柚子っちを見捨てるなんて出来ないよぉ!!」
あどけない顔の緑髪の少女が声を上げる。
なんか和風物なのに、魔女帽子被ってる眼鏡っ娘。
見た目は可愛らしい美少女だ。
だが.....。
『槙野アリサ
本名:野本拓郎
概要:鹿野高校の2年生だった少年。
肥満体系で根暗な性格であり、女の子同士が絡み合うアニメや漫画、ポルノを見ることを趣味としていた。
学校では見た目とそれが露見したことによって迫害を受けて、家に閉じこもる。
最後は迫りくる受験と親の怒号にやけになって部屋に閉じこもって日がな年中オナニーし続けてテクノブレイクになって死亡。』
目の前に現れる文字列。
これは、俺がもらった誰得な特典のたまものである。
俺は、目の前の人物のパーソナリティが分かる特典を持っている。
当初はこれで何とかして無双したろと思ったが高校に上がって話が一変。
周りに居る美少女を見たら、みんな転生者だった。
しかも、なんだこの経歴...テクノブレイクで死んだ奴ってマジで居るのかよ....。
こんなの見せられてどんな顔で話せば良いのかわからねぇよ。
しかも目の前の女はよく色んな女の子にくっついてじゃれついてる。
まぁ前の世界でも似たようなことしている女の子は稀に見たことがあるけど、それが元々は百合豚テクノブレイカーと知ったらもう話が変わってくる。
もう光景が女の子同士の戯れから、何も知らない無知な女の子を美少女の皮被って痴漢している変態の絵面に変わってくるんだよね。
もう、怖気が走る光景だよ。
単純に気持ち悪い。
「樋上くんもそう思うよね!?」
「お、そうだな。(適当)」
野本君あらためアリサが俺に同意を求めてきたので、答える。
でもなんか言ってたみたいだけど、お前の話頭に入らないんだよ。
「こほん、でも...そうなると危険の渦中に飛び込むということになるわね。現状の装備でそれが可能かしら?このまま飛び込んでも二次被害になるだけだと私には思えてならないのだけれど?」
スリットの入ったチャイナ服を着てる癖に真面目そうな口調で何かを言っている黒髪の女。
Theクール系な美少女であるが、コイツも例にも漏れずに....。
『冴神レイナ
本名:石上蓮太郎
概要:六条大学1年生だった男。
中学高校大学においてスクールカーストのトップ層に媚びる所謂キョロ充である。
しかし本当はオタクに該当する人間であり、性癖はおねロリレイプ物。
彼女も出来ていたが、ある日グループでの悪ふざけでスマホを取り上げられた際に消し忘れていた履歴から発覚。
自暴自棄になって家を飛び出して乗用車に轢かれて死亡』
テメェもかよって感じ。
大体なんだお前らは、やけになったら死ぬ病気にでもかかってるのか?
俺が知らない間に流行してた?
そんでさっきの野本君よりもコイツの方が癖が濃いし。
マジでおねロリレイプってなんだっっっ!!!?
知らない世界出してくるの辞めろ!!!!
「それじゃ、レイナちゃんは柚子っちにそのまま死ねって言うの!?」
「っ!そうは言ってないでしょ!!...ただ、望みがないのに命を賭けるのは蛮勇でしかないわ...。」
「レイナちゃんっっ....!!!」
なんか二人とも言い争ってて草。
やめろやめろ、お前ら元々前世で同類なんだから仲良くしろよ。
つーか、そもそも野本くんは根暗だったのになんでこんな活発なんでしかね?
そんでもって石上さんはバカみたいな性癖と死に方しといてなんでクールキャラぶれるんですかね?
なんなのお前ら?
何を思ってそのキャラなの?
どういう感情???
現世でのフラストレーションからの反動??
すると、なんかふわっとした雰囲気のたれ目の白い髪の少女が前のめりになって二人の間に入る。
そしてふにゃっと笑う。
「も~言い争うのはダメ~!二人の言うことは分かるし~、一旦おちつこ~ほわぁ~。」
なんか欠伸しながらそう二人を諫める少女。
なんかアニメとかでありがちなほんわかでいつも眠そうだけど、なんかやる時はやる強キャラ感を出している少女。
しかしこの子も同じく...。
『雪野ユウナ
本名:大道寺惣次郎
概要;株式会社リグコーポレーションに勤務していた会社員
趣味は趣味の時間が取れない程に会社に拘束されていたが、偶然テレビをつけて流れていた女の子ばかりの日常物を見て癒された経験がある。
度重なる残業によるデスマーチと上司のパワハラが続いており、その果てに過労死。』
いや、前述の二人と同じにするのはよろしくないな。
うん、立派な社会人さんだし。
死に方とか本当、壮絶だし....。
そりゃほんわかでいつも眠そうなキャラで行きたいっすよね、二度目の人生くらい。
本当、それで良いと思います。
マジで言うことないっす....人生の先輩だし.....。
「ねぇ?せんぱい??」
「あ....そうっすね、ユウナさん.....。」
「???なんで敬語ぉ~?変なの~~~!」
いや、ため口なんか聞けないよ。
こんな過去持ってる人にタメ口聞ける奴とかよっぽどでしょ。
敬語でしか話せないよ....。
ほんわか系女の子にこんな滅茶苦茶ヘビーな背景があったとか知りたくなかったよ.....。
「ふわぁ....ねむ....。」
「「こんな時に寝るなぁぁ!!!」」
すると大道寺先輩改めユウナ先輩が目を瞑る。
するとレイナとアリサが声を合わせてなんか声出して起こしてた。
なんかそういうアニメとかでありがちだよね、こういう場面。
でもさ、裏知ってる俺としてはなんかしっかりとした理性を持った男性たちによって行われている茶番のように見えてならないんだよね。
言っちゃ悪いけど、薄ら寒い物を感じる。
俗っぽい言い方するとサブイボだ。
ユウナ先輩はまだ大変だったんだなぁで済ませられるけど、二人の変態に関しては最早筆舌に尽くしがたい。
もうなんか学生生活こと日常生活で目に入るだけでどぎついものがある。
「っていうか!さっきから上の空だけど樋上君はどう思ってるの!?」
「そうね、自分の意見を言わずにやり過ごそうとしているように思えるわ。まさか...そんなわけないわよね?」
百合好き二人が詰め寄ってくる。
うわ...出たよ。
知ってるんだ俺は。
なんか百合に挟まれる男とか居ると攻撃的になるっしょ、アンタらの人種って。
お前も男の癖に似た符号が嫌いってなんかバグった白血球みたいで滑稽だ。
まぁ、別に誰がどんな嗜好を持っていようとどうでも良いんだが。
ただ、どうでも良いと済ませるには俺の置かれてる状況はよろしくない。
俺の周りはこの3人の転生したことで美少女受肉した野郎3人に柚子っちこと女の子ばかり。
つまりは百合スキーな人間にとっては俺が居なくなってくれればパーフェクトってことだ。
よってこうやって隙あらば攻撃してりして排除しようとしたりするよね?
俺だって願い下げだっつーの。
だから、望み通りにしてやるよ。
「えぇ~~~!せんぱいずるっこだぁ~~~!」
あなたは楽しそうですね....。
良いと思います。
重ねるけどなんも言うことはないっす。
ただ、貴方が楽しいと思ってるだろうこの世界。
僕には薄ら寒い茶番劇にしか思えないんですよ。
...だから、俺は一足先に降りますね?
「勿論、アイデアはあるさ。」
俺は声を発する。
今日も何百回と繰り返したチャレンジだ。
「アイデア....?」
「えーすっごーい!流石せんぱいぃ~!!」
「そ、そのアイデアって一体なんですか.....?そのせつめ....」
なんか三人が言ってるけど、無視して一気に駆けだすッ!!!
三人を押しのける。
後ろでなんか言ってるけど気にしない!!
いちいち気にしてまたあの文字列を目にする羽目になると精神が摩耗する!
俺のアイデア、俺のチャレンジ、それは!!!
「俺が、一人で飛び込めば良いんだぁぁぁあああああああ!!!!!!!!」
そう言って一人で敵性結界に飛び込んだ。
武器も術式っていうなんかお札みたいな奴も出さない。
ただ身一つで落ちていく。
下にはまるでヒマワリの花の種のようにびっしりと集まっているナマズのような形をした異形たち。
そしてその花弁の真ん中で十字架で磔にされている少女。
「樋上君!?駄目!来ちゃダメェェェェ!!!!」
磔にされてる少女こと柚子が叫ぶ。
彼女を視界に収めると、文字が浮かんだ。
『井坂柚子
本名:井坂裕也
概要:趣味は読書とハンドボール
この世界における主人公。』
彼女はこの世界の主人公らしい。
しかし、他の連中と同じ様に男としての名前がある。
これはどういうことか?
俺はずっとこれが不可解で考えていた。
そして、ある一つの推測に到達していた。
俺には特典がある。
しかし他の連中の特典は流石に分からなかった。
だとしたら、どんな特典であろうと不思議ではないのだ。
だったら...もし、この世界があの百合豚のどちらかが性的嗜好を満たすためにこの世界自体を書き換えたのだとしたら?
だとしたら...もう、自分の欲望のために世界まで書き換えるとかキモさが限界突破して天元突破だよね。
そんなものに付き合ってられるか。
だから、こうやって無武装で敵に飛び込んで遠回しな自殺を図ってるのだ。
死のうとしてるから死ぬほど痛いだろうけど、それ以上に死ぬほどキモい現状に耐えられなかったのだ。
俺は誰かの掌で踊るなんてまっぴらごめんだ。
あぁ、ナマズが迫って....。
しっかり、俺の命を刈り取ってくれよな....?
そう思って目を閉じると、いつまでもその瞬間は来ない。
??????
眼をゆっくりと開ける。
「樋上くん....ッ!バカじゃないのッ!!!!?」
「....あー。」
「いつもいつも危険を顧みないで、...ホント、頭が痛くなってくるわ。」
なんか百合スキーの二人に支えられてるんですけど。
アリサは泣いてるし、レイナからは睨まれてる。
そして下の方ではユウナ先輩が結界みたいなの貼ってナマズを薙ぎ倒してた。
あぁ....こうなっちゃったか....。
「私っ、言ったよね!?次こんな危ない真似したら絶対許さないって!!!」
「やっぱり、縛ってた方が良かったんじゃないの?」
「せんぱいのしにたがり~!ダメだよっ!!」
どうやら俺のチャレンジは失敗したらしい。
まただ....。
もううんざりだった。
◇
最初はただ単に邪魔だった。
だってこっちは百合アニメの世界って聞いてこの世界に来たので女の子だけの関係を望んでいて、彼の存在はさながら花園に紛れ込む害虫の一匹のように思えた。
少なくとも自分も女の子になれた時にはそう思っていた。
ただ彼はそこまで悪い奴じゃないみたいだ。
嫌いなタイプであるウェーイ系の男でもないし、物静かでこちらをただ見守っている感じ。
私が意地悪しても怒りもしない。
それに前に一回この世界でもアニメを見ていることがバレた時に否定しなかったし。
前の世界でももっと速く出会えていれば友達になれたかもって段々思っていた。
そして、あの日。
私が不注意で怪異の攻撃を受けそうになった時。
彼は私を抱いて代わりに攻撃を受けた。
血を流して倒れていた。
『な....なんで....!』
私が問うても、何にも答えない。
こんなことは私だけじゃなくて他の人でも起きていて、この男は多分誰かのために命を賭けられる人間なんだって思わせられた。
その時からかな...胸の中が熱くなったのが。
一人称が段々僕から私に変わっていった。
あの人を目で追うようになっていった。
度々危険なことをするあの人がいつか手の届かないところに行ってしまうのではないかって思うと怖くなった。
私は変わってしまっている。
昔の自分から変わって、完全に女の子に近づいている気がする。
いつしか昔の自分も私の中から消えてしまうのかもしれない。
それでも....。
昔送った日々よりも、今の方が楽しいんだ。
今の方が充実していて、友達も居て...好きな人は私の趣味を笑わなくて。
だから、...私はこれでも良いやって思ったんだ。
今でも百合は至高だし、百合の間に挟まる男は死んだほうが良いって思うけど。
趣味嗜好の『好き』と、好きな人への『好き』は分けて考えても良いよね。
だって女の子だもん、この程度の我儘...許される..よね?