「…少々脱線してしまったが、話を戻そう…ま、君たちも何となく想像が付いてると思うが…この時の慎二が頼もうとしたのは一つ、自陣営で有る間桐家の襲撃だ。」
そこでルヴィアが手を挙げた。
「…ルヴィア、何か質問かね?」
「貴方たちは、その話を信じたのですか?……いえ、もちろん今なら本当の話だと分かるのですが…」
「…確かにあの時点では疑って掛かるべきだったのだろうな…ただ、当時私と凛はそれぞれの理由が有ってアイツの提案に乗った……まぁ、慎二は元より凛にまで私は要らないと言われたがね…」
「まぁ、恐らく他の魔術師からはどう見ても素人レベルにしか見えなかったんでしょうし…当時の衛宮さんはそう言われても仕方無いかも知れませんね…」
……正直、少しグサッと来た……ま、元々私たちは彼のその、親しい相手には言葉を取り繕わない所が気に入っているのも確かなんだがな…
「とは言え、仮に言われたのが今で有れば私も素直に受け入れただろうな。適材適所、と言う言葉もこの世界には有る訳だからな…恐らくあの時の凛もそのつもりで言ったのだろうが。」
「霊体化出来無いと言う、致命的とも言える弱点は有れど衛宮さんのサーヴァントで有るアルトリアさんはサーヴァント最優のクラスと言われるセイバー…間桐さんのサーヴァントの実力は元より、アルトリアさんの実力もまだ未知数ですが…それでも敢えてギリギリまで伏せておけば仮に間桐さんが裏切るつもりだったとしても上手く使えば鬼札には成り得ますね…」
「…うむ。恐らく、当時の凛もそう考えていたのだろう…今になって思う事だが、加えて言えば…敢えて強く同行拒否を促す事で私の魔術師としての実力は元より、私のサーヴァントの実力も大した事が無いと慎二に思わせる狙いが有ったのかも知れないな……尤も、非常に残念な事に当時の私にそこまで考える頭は無く…しかも最悪な事に凛の言葉に対して感情で反論してしまい、そのまま私たちは言い争いになってしまったのだがな…結局、見兼ねた慎二の方が折れてそんなに来たかったら好きにすれば良い、その代わりお前がヘマして死に掛けても僕は助けないからな…と言う譲歩の提案が出たんだがな…」
「…多分その、恐らくですが…当時のリンの言い方も悪かったのでは…?」
「…それは…そうかも知れないな、慎二に悟られない為だろうが…かなり高圧的に邪魔と言われた記憶が有る…だいぶ朧気だが、そこに私は何の為の同盟だ!とか…桜を見捨てられる訳無いだろ!…などと返した記憶も有るな…とは言え、あの時はチラチラとアイコンタクトや、最小限のボディーランゲージなど…要所要所で合図を送って来ていた様な覚えも…」
「と言っても、当時の遠坂さんとは本当に単なる同級生で、クラスも違う上…当然プライベートで親密な付き合いとかが有る訳でも無かったんですよね?それで慎二さんが側に居るからって悟られない様に極小の合図をいきなり送って来て気付け!と言う方が無茶なのでは?」
「う~ん…多分、いつものリンのうっかりだね…そもそも同盟を組んだって他陣営に悟られるのも問題なんだから、普通口を介さずにやり取り出来る様にお互いにだけ分かる様なサインとかを事前にシロウと決めておくとかぐらいはしないと…更に言えば、少なくとも戦うの自体初めてのシロウに対して喚いてないでもっと勘を働かせろ、とか察しろって言うのは…私もさすがに色々無理が有ると思うなぁ…」
ボロクソに言われてるが、実際今の私もそう思う…ただ、当時の私はあまりにも自覚も覚悟も足りてなかったのは事実では有った…
「…少なくとも、あの時慎二には私たちの思惑が見事にズレてるのは内情は知らなくてもある程度察せられていただろうな…正直、今の私が当時の慎二の立場なら自分で提案したとは言え、同盟相手の二陣営が目の前でずっと墓穴を掘りまくりながらの言い争いをし続けているんだ…どう考えても後々地雷になる事を考えたら同盟の話自体白紙に戻したいと考えるだろうな…何より後々引っ掛けるつもりならそう言う間抜けを選ぶのも良いかも知れないが、あのレベルではそれも問題だ…何せ、いつ同盟を組んでる事をうっかり漏らすか分からない程に当時の私たちは酷かったからな…ま、それでもあの時猫の手も借りたい程に…文字通り切羽詰まっていた慎二に同盟破棄の選択肢は無かった訳だが…」
「そんなに酷かったんですか…?」
「うむ…我ながら、あまりの酷さに頭痛がしてくる程だ…」
「…人柄的にはどうなのかと思っていましたが、それは寧ろ間桐さんに同情しますね…」
「…そもそも、あれだけ騒いでて私たちのやり取りを当時一般人は元より、他の参加者にも気付かれなかったのは…今思えば奇跡と言う他無いな…」
「衛宮さんは基本的な魔術しか使えず、間桐さんはそもそも魔術の才能は全く無い……え?遠坂さん、何もしなかったんですか?」
「あの状況では凛だけを責められないが、それは間違い無いな…」
「…少なくとも一般人には見られていたのでは?学校の屋上で、しかもまだ人の居る時間に殴り合いしたり…大声で言い争いなんてしてたら誰かが様子を見に来ても可笑しく有りませんし…」
「多分、一般人は話を聞いても良く意味が分からなかったのと…他の参加者は一般人の多く居る学校に使い魔下手に飛ばして、一般人に気付かれるのを避けたかったんじゃないかな…実際、私もその理由でやめたし…と言うか、ここまでの話聞く限り当時のシロウたちって何かちょっと…あまりにも緊張感が無いと言うか、仮にも戦争をしてるって言う自覚が足りないと思うなぁ…」
「返す言葉も無いな…今となっては、私もそう思う。」
本当に…当時私たちは確かに色々と足りてはいなかった…聞けば慎二は元より、恐らく凛も認めるだろう…本来、あの時私たちは、あの戦いで誰か一人…いや、下手すれば全員死んでも何ら可笑しくは無かった…本当にいくつもの奇跡が重なったお陰で、何とか私たちは生き延びる事が出来たのだとな…