『…つまり、自分でもどうしたら良いか分かんなくて…悩んだまま眠りに付いたら何故かここに来てしまったってか…そりゃまた難儀だな…』
「…その男は見た所身体の老化がかなり進んでいてな、顔色も非常に悪く…正直布団から身体を起こすのでやっとの様な雰囲気だったが…それでいて、私の質問にはある程度真面目に対応してくれた…という評価も即座に吹っ飛ぶのだがね…」
『…アンタなら、答えを出せるのか?…一体、俺はどうしたら良いのか『知るかよ』…え?』
『お前の目の前に有る道は結局お前だけのもんだ…俺がどうこう言ってやる事じゃねぇだろ…どうするか選ぶのはお前だ。』
「それでも、悩んでいた私の背中を押してくれたのは確かだ…あの男の言葉は、間違い無く…あの時の私の心の奥に届いていた…」
『……お前は死ぬのが怖くないのか?』
『それ、は…『どうなんだ?』…怖い。物凄く怖い…でも、セイバーの事は裏切りたくない…アイツは俺を助けてくれた…こんな俺でも、セイバーにせめて…何か出来る事が有れば…』
「あの時、まるで自分の道が定まっていなかった私に…あの男は確かな可能性を与えてくれた…まぁ、結局の所…実際にどうするかは私が自分で決めなければならなかったがな…」
『…ハァ…やれやれ…そう時間が有るとも思えねぇが…先ず、お前は自分の力について何処まで把握してる?』
『…何処までって言われても…俺がまともに使える魔術はせいぜい強化ぐらいで…』
「この時、私はあの男から言われたんだ…私が本当に秀でているのは投影魔術だとな…ただ、そう言われても…当然ながらあの場では…モノにする事が出来無かった…そして時間切れが来た時…私はあの男から一枚のカードを渡された…」
『餞別だ、受け取れ。』
『…何だよコレ、カード…?』
私はその場であのカードを投影する…
「それは?」
「コレはクラスカード…使えば英霊の力をその身に宿せる…まぁ、代償は当然有るが…」
「そんなものが存在したんですか?」
「さてね…私もそれなりに世界中を回ったと自負しているが、こんな礼装は他では見た事も無い…と言うか、私からすればそれこそ宝具そのもの様な物だよ…」
私はそれをテーブルの上に置いた…カードには弓に矢を番えた男の姿が描かれている…
「…コレ、私たちも使えたりするの?」
「…いや、コレは見ての通りただのカード…あの男の寄越して来た物と違い、何の力も無い…本物は、既にこの身に完全に同化し取り出すのは不可能だ…」
しかし…一応投影のエキスパートとも言えるアーチャーの力を宿した私ですら投影出来無い物を創り出したあの男は結局何者だったのか…しかも、全て遠き理想郷ですら取り出せたのに、このカードはこうして自らの体内に解析をしても今は身体の何処に有るのかすらも分からない…コレではまるで投影品では無く本物だ…何度使っても無くならないどころか、今では完全に私の力そのものとして身体に宿っている…この事だけ考えても、あの男も私の可能性の一つと考えるのはさすがに無理が有る…最早こうして今も、私が生きているのはあの男のお陰とも言えるのだから…疑うのは不義理も良い所だが、さすがに疑念を抱かずにはいられない…加えて言えば、ある意味アーチャーを超えているとも言えなくも無い投影…憧れてしまったアーチャーとは違い、嫉妬すら覚える…
「…シロウ。」
「何かね?」
「シロウは気付いていたの…?コレを使ったらどうなるのかって…」
「まぁ、な…知ったのは一度使ってからの事では有るが…ちなみに、実はこのカード自体に英霊の力が宿っている訳では無い…このカードは、要は入り口…まぁ、パスポートみたいな物と思えば近いか…人間がコレを使う事で英霊の座に接続…その力を使う事が出来る…もちろん、相性は当然有るし…使えるのも力のほんの一部に過ぎないがな…」
「衛宮さんも、一部しか使えてないんですか?」
「…いや、私は例外だ。このカードで使えるのはあの英霊エミヤの力…元が同一人物だから当然相性は抜群だ…だから、私は奴の最終奥義とも言える固有結界すら使う事が出来る…もちろん、イリヤも言った通り代償が無い訳じゃ無かったが…」
「その、代償とは…?」
「使えば使う程…私のこの身が、生きながらにして英霊エミヤのものに近付き…やがて同一のものとなる…それが、私がこのカードを使った代償だ…」
あの聖杯戦争の最中…このカードを身体から取り出せなくなり、そして戦争が終わってからも…私は何度もエミヤの力を使い続けて来た…今の同化は、一体どの程度だろうか…改めて考えてみれば、戦争の終結直後は身体の一部が少し黒ずむ程度だったのが…今は日焼けレベルでは無く、まるで生まれながらにそうで有ったかの様な褐色肌。髪は当時は数本白くなった程度で抜けば誤魔化せたが、今は昔と逆に時折昔の様な赤毛がチラホラ混じる事も有れど…ほぼ白一色。
……そうだな、私は…
「今のシロウは…見た目はエミヤそのもの、だよね…」
「恐らく中身も少し近いかも知れん…聖杯戦争が始まるまでは正義の味方を名乗り、世界中を回るなど考えもしなかったからな…」
あの頃の私の夢は…一体何だっただろうか…恐らく有ったのだろうが、今となっては思い出せない…だが、それでも…
「それでも、闇雲に正義の味方で有る事を辞めたのは確かに俺の意思だ…そこだけは変わらない。そんな顔をしないでくれ、イリヤ…私は大丈夫だ。」
今現在、眠りについている奴の方に視線を向ける……ありがとう、俺が止まれたのはお前のお陰だ…お前が居てくれたから今、俺は俺で居られる…未来の事は分からないが、きっとこれから先も大丈夫だ…まぁ、今現在はお前の方が暴走しそうな事が多いのはこの際、目をつぶろう…
「確か…エミヤは守護者でしたわね…」
「私と奴は既に別人だ、恐らく大丈夫だとは思う…」
大丈夫とは思ってみたが、確かにその問題は有るか…まぁ、あくまで全ては死んでからの話だ…確かに今はどうなるかは分からない…それでも、何となくどうにかなりそうな気はしている…少なくとも私は、世界と契約はしてないのだからな…