「…相変わらずパワフルな人だったわね…」
「…そうか、最近は店にも来なかったし、君はずっと海外にいたから藤ねぇに会うのも久しぶりか…」
私たちは先程藤村邸を辞した所だ…ホテルを出て自宅へ…とは思ったものの…最近姿を見せない藤ねぇの事を気にした私を見かねた凛が行こうと提案してくれたのだ…
「…にしても信じられないわね…あの藤村先生がもう長くないなんて…」
「…雷画さんが亡くなって随分になる…私がこっちに戻って来た時は既にこの世にいなかったが…あの時もすっかり糸が切れたかのように静かになっていたからな…しばらくして吹っ切れたのか昔のように元気になり店にもやって来るようになったが…」
「…その当時は私はずっとあっちにいたから見てないけど…それもとても信じられないわね…」
「…まさか癌になって更に元気を取り戻すとは、な…寧ろ私は昔以上に感じたよ…」
「…それでももう布団から出られないのね…」
「…末期だからな…後はそれこそ話に聞く例の封印指定の魔術師に頼むしかないが…」
「そんなの藤村先生は望まないでしょ。…大体、今の私たちじゃ代価も払えないし。…出来ればそうしたいけどね…桜の事も本当は頼みたいし。」
「…桜も望まないだろう…どれだけ人の身体にそっくりでも所詮は作り物の身体。自分の手で子供を抱ける事を心底から喜んでる彼女には…」
「でもこのままじゃ…桜も…!」
「…二人が話し合って決めた事だ…子供には悲しみを強いる事になるが…何、心配は要らんよ…桜は強い女性だ…それは君が一番良く分かっている筈だ…ましてや今の桜は母親だぞ?」
「…分かってるわよ…分かり過ぎる位に、ね…」
「…そろそろ湿っぽい話は止めるとしよう、もうすぐ柳洞寺だ…」
これもまた遠坂の提案だ…確かに私もずっと顔を出してなかったからな…
「…そうね…あんたもしばらく来てないんだっけ?」
「うむ。忙しくてついな…」
「…私はそれでも定期的に行ってたけどね…あんたもあいつの事言えないんじゃない?」
「…逃げてただけの奴と一緒にしないで欲しいのだが…」
「…どっちもどっちだと思うけど…あんたも桜から逃げようとしてたクチでしょ?」
「…そう、だな…そうかもしれん…」
「…着いたわね…それじゃあ私はお父様とお母様の方行くからごゆっくり「一緒に来ないか?」…私は遠坂家の当主よ。外様のそれも外道の魔術師殺しと交わす言葉は無いわ…最もあんたと正式に婚姻を結んだらそれも良いかもね…私にとっても義理の父親になるんだし。…あ、その時はあんたもこっちに来てもらうわよ?」
「…ああ、分かっている…ではな…」
……墓石の並ぶ中を進む…ここに来るのはもう冬木を出る直前のあの日以来だ…随分時間がかかったものだ…しかし、まだ道は覚えている…そして私はある墓の前で足を止め向き直る。
「…来たよ…久しぶり切嗣…遅くなってごめん…」
私は義父の眠る墓石に声をかけた…