柳洞寺の一室…隣の部屋から女性二人の笑い声が響くのと対照的にそこは異様な程静かだった…
「…久しぶりだな、衛宮…」
湯呑みを置いた目の前の男、柳洞一成が声をかけてくる。
「…そう、だな…十年は経ったか?」
「…どうかな、俺はもう数えるのを止めてしまったよ…」
……柳洞寺を出る時、一成と美綴から(いや、今は彼女も柳洞だったな…)声をかけられた…来た時は気配を感じなかったのだが…私が切嗣の墓にいる間に戻って来ていたのだろう…そして凛と、美綴は二人で話をしに行き…残った私と一成も部屋に…
「…こっちに戻って来ていたなら連絡位しろ…あの遠坂でさえちゃんと近況報告に来ていたというのに…まあ奴の場合、家族の墓参りのついでに綾子に会いに来ていたんだろうがな…」
「…すまんな…」
私は…いや、俺は一成に会いたくなかった…。あの日言われた言葉をまだ俺は覚えている…
「…道は見つかった様だな…」
「…!……分かるか…?」
「…まあな…こんな仕事してると色んな奴を見る…」
…昔から洞察に優れたタイプだったが…更に拍車がかかったようだ…
「…あの日俺がした問を覚えているな?」
「…ああ…。」
「…お前が父親の墓に寄った後、俺にお前はこう言った…『正義の味方になる』…と。そして俺はこう問うた…『それは本当にお前の夢か?』…とな。」
「…俺は何も答えられなかった…」
「そして俺は言った。『自分の道を探せ』…見つかった様だな?」
「…見つけたよ…少々遠回りをし過ぎたがな…」
「そうか…」
「…今度ここに来ると良い…私が今やってる店だ…残念ながら店主は私では無いし、訳あって店は再建中だがね…」
俺は持ち歩いてる手帳に店の住所と私の携帯番号も書くとページを千切り一成に渡す。
「…有難いが俺はもう仏門に入った身だ「ウチなら精進料理も対応出来るぞ?」…そう、か…なら店が再建されたら連絡をくれ…ほら、携帯の番号だ…」
一成の方も手帳に番号を書き手渡して来る…
「…積もる話もあると思って誘ったが…案外何も話題が無いものだな…」
「…そう、だな…隣は騒がしいが…」
嫌な沈黙では無い…せいぜいお互い苦笑が滲み出る程度だ…会いたくなかったのも事実だが俺が身構え過ぎたのかもしれんな…
「…衛宮…」
「…ん?」
「妙な遠慮をするな…お前が自分をどれだけ卑下しようと俺はお前を友人だと思っている…」
「…やはり…分かるか…?」
「…俺には見えている…お前に憑いてる物がな…だが俺はお前を否定せんよ…」
「…そう、か…」
敵わないな、こいつには…それにしても…
「さっきから思ってたんだが何かお前丸くなったんじゃないか…?」
「……俺の伴侶は、どんな奴だ?」
……成程…
「…察した。お前も苦労してるんだな…」
「…お前程じゃない…遠坂と結婚するんだろう…?俺以上に苦労するだろうよ…」
「…違いない…」
その話を皮切りに俺たちの話は昔話に移行して行き、俺は漸く目の前の旧友と腹を割って話せた気がした…