嘗て私が救えなかった人々…その中でも特に思い入れの強く…忘れる事の出来ない存在…それが私にとってのイリヤスフィールだった…いや、過去形では無い。私は今でも彼女の事を引き摺っている…そんな彼女が今再び目の前にいる…
「…それで何故、君はここに?」
「それが…実は良く分からないの…気が付いたら私はここ、シロウとキリツグの家にいた。混乱したわ…私の最後の記憶はあの時自分が死んだ時の物だけ…部屋の中を回って更に驚いたわ…カレンダーを見たら私が死んだ時よりずっと時間が経ってるのが分かったから…」
「…ふむ。」
……罪悪感はあるが彼女の全てを信じるわけにもいかない。彼女自身が確かにイリヤスフィールだとして、彼女本人に害意は無くとも…彼女を創った魔術師がそうとは限らない…だから何かヒントになりそうな事は無いかと思って聞いたが…この分だと本当に彼女は何も知らないようだ…
「でもね…少し安心した所もあるの。」
「何がだね?」
「シロウの事だから…リンや皆の事を置き去りにして擦り切れるまで…壊れるまで走り続けると思ってた…そしてここには帰って来ないと思った…バーサーカーもいないしここに一人でいる心細さも感じてたけど…それ以上にシロウが心配だった…でも安心したの。この家にはつい最近まで確かに人の生活してる形跡があったから…」
「ここで、大事な物を見つけた…いや、最初からあったのに気付かなかった…でも、気付けた…大丈夫だ…私は…いや、俺はもうアーチャーの様にはならない…」
「…良かった…私ね、自分が殺される瞬間もずっとシロウが心配だったから…」
「安心してくれ。俺はもう心配要らない…」
「…うん。」
俺は…彼女の為に何が出来るだろうな…?
翌日…
「…で、私に買い出しに行って来いって?」
「すまない、頼めるか?」
今のイリヤは実質戸籍も無いも同然。しかも彼女を創った魔術師の動きが分からない以上、下手に外に出すわけにはいかない…ただ、外に出られないからと言ってイリヤにずっと着の身着のままでいさせる訳にはいかないし、家に篭っている間の食事を作るための食材もずっとホテルにいたため無い…保存の効く食材もまだ残りはあるがそう量がある訳でも無い…まさか普段自炊をしていたのがここで仇となるとは…なので彼女が生活するのに必要な物の買い出しを凛に頼む事にした…
「まあ私にとっても身内みたいなものだし、あんたに女の子の服とか下着とか買いに行かせるのも不安しかないから私が行くのは当然かもしれないけど…まさか一人で行けって?」
「…シロウ…私は大丈夫だから…」
「すまないな、今のイリヤを迂闊に一人に出来そうも無いのでね…」
今のイリヤは魔術が使えないらしい…ホムンクルスは大抵魔術回路を持った状態で創るものでは無いのだろうか…?創った奴の思惑がまるで分からないな…
「…そういう事なら仕方ないか…なら、桜誘って行くわね。」
「…すまないな、彼女にも伝えておいてくれ、親子の時間を邪魔してすまないと。」
「はいはい。じゃあ行ってくるわね。」
「…ごめんね、リン…」
「気にしなくて良いわ。…どうせ文句は全部こいつに言うから。」
「ああ。ちゃんと埋め合わせはするとも。」