「悪かった…」
私がそう言うと奴は傍らにあった新しい酒を開け、そのまま口を付け、一気に飲み干し、空になった瓶をテーブルに置くと息を吐いた…奴から殺気が消えていく…
「…あいつの両親は知っての通り豪胆なタイプだし、俺の過去を知っても普通に俺を息子と呼ぼうとするお人好しだ…そもそも人の死が身近にあった連中だしな…だがな、兄貴は平和なこの国の生まれで…本当に真面目で…大馬鹿者なんだ…腕っ節は親父譲りで俺も…弟も…悪さする度にぶん殴って反省させられた…その癖親父に報告する時は自分も一緒になって頭を下げやがる…それでいて自分は絶対問題を起こさねぇ…冗談じゃねぇ…兄貴が俺の過去を知ったら勝手に責任取って自殺でもしかねねぇんだよ…」
そこまでなのか…
「だから…今回は間違っても変な気は回すんじゃねぇ。…俺はお前を何が何でも殺すしか無くなる。」
「ああ。例え君の兄が誰か分かっても、私からは何も言わないと約束しよう…私たちが共に死ぬ分には勝手かもしれんが…無関係な君の兄を死なせるわけには行かない。」
「その言葉、信じるぜ?……シラケちまったな…今日はもうお開きにしようぜ。」
「…そうだな…時間も丁度いい…後はやっておこう…君はもう休み「ざけんな。ここは俺の店だ。」…そうか、そうだな…」
私たちは酒瓶を袋に入れ、グラスを洗うと、明日の仕込みに入った…
「…何かアンタたち…今日はギクシャクしてると思ってたけど…昨日私がいない間にそんな事になってたのね。」
「ああ…」
翌日…店の閉店後…私は凛と共に家に帰り昨夜の事を話していた…
「…敢えて言わせてもらうけど…全面的にアンタが悪いわよ。」
「やはり…そうなのか…」
「アンタ、人の事に首突っ込み過ぎなのよ。何時かこういう時が来るんじゃないかと思ってたわ…良かったわね、相手が身内で。これがもし、赤の他人の話だったら…多分もっと拗れてたと思うわ。」
「……」
「あ~もう!辛気臭い顔しないの!あいつの事なら大丈夫よ。」
「…何故…そう言い切れる…?」
「忘れたの?今日はルヴィアがいたのよ?」
…あっ…
「勘の良いルヴィアがあいつの様子が可笑しいのに気付かないわけないし、放っておくわけないわ。」
「…一つ不安な事があるのだが…」
「何よ?」
「ルヴィアは…私以上に余計な気を回すんじゃないか?…どうなるかは…分からんぞ…?」
「あいつが無関係な犠牲を出すわけないでしょ。最もあいつらは意見が平行線を辿るだろうから…明日はまた店が無くなってるかもしれないわね…」
「なら、止めた方が良いのでは無いか…」
「あの二人の戦いに乱入して被害を拡大させない自信あるわけ?」
「……」
「良く言えば、被害は店が無くなるくらいで済むのよ…後のことはそこで考えましょう。」