「…全く…戦地にいた割に大して変わってないな…向こうで一体何を見て来たんだ…?」
「るせぇ!テメェに何が分かんだ!」
「…ねぇ?そろそろ止めなくて良いの…?」
「……二人に致命傷を与えずに止めるのは難しい…奴は条件次第とはいえ、私を圧倒する事が可能だし、相手はその奴とほとんど互角だからな…どうせ店を開けるまでまだかなり時間がある…気の済むまでやらせてやろう…」
一時間前…
「…?…すまない…まだ準備中なのだが…」
「ああ…それは分かっている…店主に用があってね…休みの日にも何度か来ているのだが居留守を使われるのでね…こうして営業日に来てみたわけだ…」
「奴に用…?」
「…あいつの兄だと言えば分かるか…?」
「…成程。そういう事なら…奴なら今は厨房で仕込みをしている…行ってくると良い…」
「忙しい時にすまない…」
その後彼が何を言ったのか分からないが奴がキレてこうして喧嘩が始まったわけだ…
「そうは言っても…ちょ…!アレ目潰し!?」
「それなりのスピードのコンビネーションを同じ組み合わせで何度も繰り出して、覚えさせてから更に速いスピードで混ぜてきたな…相当にタチが悪いが…」
「何だ?この指は…?…全く…お前と言う奴は…」
「いってぇえええ!!!?てんめぇえええ!!!?」
「…あの程度の小細工が通用する様な相手なら当の昔に沈んでいるだろう…」
「容赦無く折ったわね…」
「兄弟だろうが何だろうが、あそこまでタチの悪い攻撃をする相手に手心を加える必要は無いだろう…これで奴はしばらく厨房には立てんな…」
「クソが!殺してやる!」
「やってみろ…そう簡単に私は死なんぞ?」
「…殺すとか言ってるけど、アイツ確か、自分の兄を死なせたくないから過去の事を黙ってたんじゃ…」
「…奴の場合、相当度数の高い酒でもそれなりの量を飲まなければ記憶が飛んだりしないが…頭に血が上ると数分前に言った事でさえ、忘れるタイプだからな…」
「…あの?何の騒ぎですか、これ?」
声をかけられ、振り向くとバイト君とイリヤが立っていた…
「…来てくれたか。イリヤも一緒だったんだな…」
「すぐそこで会ったの。で、本当に何なの、これ…」
「……簡単に言えば長年生き別れだった兄弟が殴り合いの喧嘩をしている所だ。」
「ちょっと…そんな雑な説明「「あー…」」今ので納得したのアンタたち!?」
「いやまあ…あの人の性格的に身内に殴られるくらい疎遠であっても全く不思議では無いですし…」
「私も…そういう事もあるかなぁって…」
「…とまぁそういうわけだ…それで申し訳ないんだが…」
「大体分かります…どうせ仕込みも途中でしょう?…後はイリヤさんと二人でやっておきますから…」
「…すまんな…この場を離れてもし、何かあっても困るからな…取り敢えず万が一営業時間になっても既にルヴィアが認識阻害の結界を張っているから問題は「ちょっと!?」どうした?」
「イリヤはともかくこいつ一般人でしょ「言ってなかったか?…彼は魔術師の家の生まれだぞ?…私も聞かされたのはつい最近だが」嘘!?」
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。とっくの昔に没落して本来の家名すら分からなくなってる家ですし…ちなみに家族と違い、僕は先祖返りらしく一応魔術回路を持ってますが、正式に習ったわけじゃないから魔術は一切使えませんしね。…それじゃあ行きましょうか、イリヤさん。」
二人は店に入って行った。
「…何かもう色々驚き過ぎて…」
「深く考えなければ良い…ありのままを受け入れるのが結局一番楽だぞ?」
「そんな簡単に納得出来ないわよ…」