「…さて、そろそろ店を開けないといけない時間か…私は病院に行って来る…申し訳ないが後の事を頼むぞ?」
「それは良いけど…良いの、アレ?」
「……良く考えてみればギャラリーが増えて困るのはあの二人の方だ、さすがに衆人環視の中、殺し合いは出来ないだろう…」
…そうなると私のした事は…いや、時間稼ぎが出来ていなければ今頃どちらかが死んでたかもしれないからな…ん?
「…折れた、か…」
音のした方を見ると二人の振っていた干将莫耶が根元からへし折れたのが見えた。
「武器が無くなって、また殴り合いに戻ったわね…」
「放っておこう…もう心配は無い。」
……贋作とはいえ、宝具の剣が折れるほど剣戟が続いたとなると…やはり私がしたのは無駄な事だったのかもしれない…そもそも私が不用意に二人に武器を用意しなければここまで事態がややこしくならずに済んだ筈だ…全く…儘ならないな、本当に。
さて、私の傷だが知り合いの医者に見せたらすぐに入院を言い渡された…そこまで酷いのかと聞いたら散々説教をされてしまった…全て遠き理想郷を既に手放しているのに未だに私は自分の怪我への認識が鈍い様だ…私の性格を良く知っている彼に他人に置き換えて説明されなければ未だに深刻さが分からなかっただろう…
……ちなみにあの二人は最後は結局、ダブルノックアウトで二人とも沈んだらしい…全く何と言うか…私はその結末を聞いてため息しか出なかった…
「本当にすまない…」
「いや、もう良い…入院費も肩代わりしてくれるんだろう?なら、私からこれ以上文句を言う事は無いさ…」
……その日の内に運ばれて来て、隣りのベッドに寝かされた患者が奴の兄貴だったのはどんな偶然なのだろうな…
「頭は…冷えたのか?」
「ああ…無関係の君たちに散々迷惑をかけてしまって本当に申し訳ないと思っている…」
そう言って頭を下げる…奴とは似ても似つかない誠実さだな…戦いの歳の苛烈さは良く似ているとも思えるが…
「結局…何が原因だったんだ…?」
「……命を懸けて止めようとしてくれた君には非常に申し訳ないのだが…実は分からないんだ…」
「というと?」
「アイツと話をしていた時、突然アイツが激高し始めてね…一体何がアイツの逆鱗に触れてしまったのか…」
「……」
経緯を聞こうと思ったが、結局私は何も聞かなった…正直…しばらくは奴の問題に首を突っ込みたくない…まあどうせすぐにまた何かやらかすだろう…
「ところで聞かないのかね…?」
「何かな?」
「あの時の世界について。」
「聞いたら教えてくれるのかな?」
「……」
「正直に言えば…あまり興味は無いんだ。難しい話は苦手だしな…」