「アンタ…こんな所で何してるの?」
「いや、君にどうしても話して置きたいことがあってね…」
翌朝、私は凛とルヴィアに奴の兄貴の危険性を話すため病室の外で待っていた…
「…用があるなら病室で待ってれば良かったでしょうが。何でこんな所で待ち伏せする必要があんのよ?…取り敢えず入っていい?アンタが使う物、さっさと置きたいんだけど。」
凛が手に持った袋を掲げながら言う…わざわざ入院生活に必要な物を持って来てくれた凛には悪いが今病室に入れるわけにはいかない。
「いや、取り敢えず話をだな…」
「…何をそんなに焦ってるのか知らないけど、先ずこっちの話を聞きなさいよ。何でこんな所で荷物持って立ち話しなきゃいけないのよ?早くドアを開けてよ、両手塞がってるのが見えないの?」
「…確かにその状態で立ち話をさせるわけにはいかんな…ではこっちに…」
私は凛の腕を引っ張った。
「ちょ…!何すんのよ!痛い!引っ張らないで!」
「…と、すまなかった…」
そんなに強く引っ張ってしまったのか…私は凛の腕から手を離した…
「…本当にどうしたのよ?アンタさっきから変よ?昨日何かあったの?」
「すまない…」
「謝らなくて良いから何があったのか…あ~もう…分かった…話なら聞くから、とにかく病室じゃなきゃ良いんでしょ?何処か座れる所に行きましょ。」
「そう言えば、ルヴィアはどうしたんだ?」
「…アンタ今日頭の回転鈍くない?アイツの病室行ったわよ…アイツの病室は個室だし、何だかんだアイツはルヴィアの事避けてるから今日は多分、ここぞとばかりに居座るでしょうね。」
「そうか…」
ルヴィアには特に話しておかなければならないのだが…後で凛に話してもらえば良いか。
「いや、さっさと本題入ってよ。一体何?」
「…そうだったな、実は…」
私は奴の兄の事を話し始めた…
「……」
「…とにかくだ、しばらくは私の病室には近寄らない方が良い…じゃあ、私は戻る「ちょっと待って」ん?」
「勝手に話進めないで。アンタ、その話何か可笑しいと思わないの?」
「何がだ?」
「…いや…何が、じゃなくて可笑しいでしょ。」
「…何処が可笑しいんだ?」
「いや、本当に分からないの…?どう考えても一連の話に整合性が取れて無いんだけど…」
「何処ら辺がだ?」
「……アンタ今日は本当に鈍いわね…それじゃあ先ずアイツの兄の話だけど、本人の口から出たんだし、死生観についての話については問題無いでしょ…あっ、先に言っておくけど異常か、正常か、とかの話はこの場ではしないからね?…問題は弟であるアイツの話よ。」
「奴の話…?何が問題なんだ?」
「…他人の事を口頭で説明する場合、主観が入って当たり前だと思うけど…アイツって戦場にいただけあって割とリアリストよね?」
「…確かに…そうだが…それが?」
「…ここまで言って分からないの?…アイツは自分の兄の事を自殺志願者で一度喧嘩を始めたら自分が倒れるか、相手が再起不能、もしくは死んでも攻撃を止めないとか言ったのよね?…で、その上で敵対者には本当に容赦が無いからルヴィアに手を出さない様に伝えろとか言ったのよね?」
「ああ…で、それが?」
「良く考えてみなさいよ…そんなイカれた奴この平和な国にそうそういると思う?…いるとしたら間違い無く真っ当な社会生活送れてるわけないでしょうが。…要するに今回の話はリアリストのアイツにしては現実味が無いのよ。もっと簡単に言うなら話を盛りすぎって事。」
「……奴が嘘を付いていると?そんなメリットは「これは多分メリット、デメリットの話じゃないわよ。アイツのトラウマみたいなのが原因じゃない?」何?」
「わざわざ注意喚起をすると言う事はそれだけ危険視してると言う事…で、裏を返せばアイツは強がってるだけで今も考え方が異常な自分の兄が怖いのよ。そうなると話半分で聞くのが普通でしょ?人間は自分の苦手な物の理由を説明する時、必要以上に悪い言い方をしたりするじゃない?」
「確かに…では奴の話は…」
「少なくとも信用出来る様な話じゃないわね…というか、アンタやルヴィアが何を怖がる必要があるの?」
「…どういう意味だ?」
「…鈍いのは勝手だけど…少しは考えなさいよ…確かにアイツの兄と正面切って戦うのは難しいけど、一介の刑事くらいなら社会的に抹消するのは簡単でしょ?」
「あっ…」
「つまりアンタもルヴィアも、アイツの兄を大して警戒する必要が無いって事になるわね。」
「……」
「もう良い?今日は何か、もう疲れたから帰るわ…店開ける準備もしなきゃいけないし、荷物は自分で持って行って。」
そう言って席を立つ凛に声をかける。
「ルヴィアの所には行かないのか「自分から馬に蹴られに行く趣味は無いわよ。仕込みくらいならイリヤたちもいるから問題無いし…最悪、店開けるまでに戻って来れば取り敢えず私は気にしないわよ。アンタも下らない話をしに行ってルヴィアの邪魔しないようにね」……」