「だから大丈夫だって言ってるでしょ。」
「駄目だってば!」
ホテルに入り、すっかり顔馴染みになってしまった従業員に挨拶をしてイリヤたちのいる部屋に入ってみれば、風邪で寝ている筈の凛がイリヤと言い争いをしていた。
「…凛、どうしたんだ?」
「ん?士郎…あら、ルヴィアもいたの…二人からもイリヤに言ってよ、私は本当にもう大丈夫なんだってば。」
「だから駄目だってば!ほらベッドに戻って!」
「…二人とも落ち着きたまえ「私は落ち着いてるわよ」…良いから。イリヤ、最後に測った時、凛の体温はどうだったんだ?」
一応メールでも見ているが念の為イリヤに確認する。
「…メールで送ったのが最後よ。三十八度五分。」
「ほら、大して高くないでしょ?」
「…つい、二、三時間前までもう少し高かったの。」
「ふむ…」
普通なら休む一択だが…今の凛は冷静な判断力を失っている様だ…
「…シェロ、宜しいですか?」
「む…どうしたんだ?」
「私がリンを説得しますわ。」
「……大丈夫か?」
ルヴィアなら間違い無いとは思うが…
「…問題ありませんわ。彼女の性格は心得ておりますから。」
「…分かった、君に任せよう。」
「…はい、お任せ下さい。」
ルヴィアがソファに座る凛に歩み寄る。
「…リン?」
「何よ。」
「…貴女なりの矜持は良く分かっておりますが、今回は駄目です。しっかりと休んでください。」
「でも、私は「私たちに移す分には良いです」え?」
「私たちに移して治るのならお好きに…そうなったら貴女が看病してくれるのでしょう?」
「そりゃあ…もちろん「なら、分かるでしょう?借りを作ろうとしない貴女の事を私は尊敬していますが、イリヤスフィールに迷惑をかける今の貴女は頂けません」分かってるけど…」
「それに、さっきも言いましたが…私たちに移す分には良いのです…最悪誰も店に出られなくなったら一時店を閉めるだけで良いのですから…ですが…今貴女が無理に店に出てお客様に移してしまったらどうします?」
「……それは…」
「それに、風邪で判断力の落ちた貴女は確実にミスをするでしょう…細かいミスならまだしもお客様に怪我でもさせたら、貴女は責任を取れるのですか?」
「…無理ね…ごめん、ルヴィア…ちょっと「謝罪なら私では無くイリヤスフィールに」…そうね、ごめん…イリヤ…」
「…もう良いよ…とにかく分かったなら大人しくベッドに戻って。」
「分かった…それじゃあ私、寝るから…」
「ゆっくり休むと良い…何、君なら精々二、三日もあれば全快するさ。」
「…当然でしょ?こんなのすぐに治してみせるわ「ほら、良いから早く戻って」…ハイハイ。分かったから押さないでよ、イリヤ。」
寝室に入って行く凛を見て、私は溜め息をついた…やれやれ…体調を崩しても彼女は変わらないな…