「コラ!」
「っ!」
後頭部に強い衝撃を受け、後ろを向けば先の刑事が会った時よりも顔を顰めて立っていた…どうも殴られたらしい…
「何をす「騒ぐなって言ったろ!ここは病院で嫁さんも寝てんだろうが」「刑事さん、貴方もですよ」「こ、こりゃどうもすみません…」……」
看護師に頭を下げる刑事を見ていると自然と心は落ち着いて来た…途端に羞恥に駆られつつ私は看護師に話しかける。
「…騒がしくして申し訳無い…それで彼女の容態は…?」
「…貴方は?…詳しい病状は申し訳有りませんが家族にしか話せません。先程そこの刑事さんは嫁と言っていましたが…旦那さんですか?」
「…いや、まだ婚姻関係には至っていない…婚約者では有るつもりだが、それではいけないか…?」
「…そういう事なら良いでしょう。先生を呼んで来ます、詳しくはその時に聞いてください。」
「…了解した。ではこちらで待たせて頂こう。」
看護師が頭を下げて病室を出て行く時に失態に気付き、顔を顰める…外人部隊を除隊し戦場を回っていた頃、良く承諾の意思を現す表現として私はいつの頃からか自然と『了解した』や『承知した』を良く使っていたが、客観的に見ればそれはアーチャーと同じなのだ…嫌気が差してはいたものの変に情ばかりを見せては"仕事"に支障が出るし、事務的な方が話は円滑に進む…それに結局根は同じだから似て来ても仕方が無い…
…そう、ずっと言い聞かせて来た。だが奴と店を営業する様になって少しして…
『衛宮、ちょっと良いか?』
『何かね…?見ての通り片付けの最中だが?』
『いや俺もやってるだろうが。そのままで良いから聞け。…お前、注文受ける時とか良く了解したとか、承知したとか言うよな?』
『……そうだな、それがどうかしたのかね『それ止めろ』…何故かね?』
『…戦場にいる軍人相手ならともかく、ここは一般人が来る飲食店だろうが。その口調は事務的で硬すぎる…客が萎縮すんだろうが。』
…その言葉が有って私は『了解した』とは言わなくなった(まぁ、あの時は結局『君の方が客商売にしては口調があまりにも乱暴ではないかね?』…と、つい言い返してしまい軽い口論に発展してしまったが…)
「おい!衛宮!聞いてんのか!?」
「…っ!…すまない、考え事をしていた…何かね?」
刑事の怒鳴り声が聞こえ、私は過去から帰還する…やれやれ…凛が大変な事になっていると言うのに何をやっているんだ私は…!
「全く…俺は暇じゃねぇって言っただろうが。電話でも言ったが俺は仕事抜けて来てんだ…」
「…凛がここにいる事を教えてくれた事には感謝する…だが、それなら私もこうして来た事だし、戻ってはどうかね?」
「チッ…本当に一々ムカつく野郎だな、テメェは…俺だって帰りてぇがな、テメェに嫁さんがここにいる経緯を説明しない訳には行かねぇだろうが。」
「……確かに。すまない、説明を頼む。」
「…最初っから素直にそう言えってんだ、全く…先ずな、この近くの派出所に連絡があったんだよ。『女性が道で倒れていて、病院に搬送された』ってな…」
「それが凛だったと言うわけか。」
「ああ…んでな、事件性が有るかもしれないって事で連絡が行ったんだが…受けたのがたまたまお前らの店の常連で、且つ俺が前に面倒を見た事がある奴だったんだよ…んで倒れていた女の特徴を聞いてすぐピンと来たらしい…『ひょっとしてあの店で働いてる女性では無いのか?』ってな。」
「そうだったのか…」
「…で、そいつは俺とお前らに面識が有る事も知ってた。だから俺に電話して来たってわけだ。」
「そうか…すまない、迷惑をかけた…その警官にもそう伝えてくれ…」
「自分で言いな、一段落したらそいつの個人的な方の連絡先を教えてやる。」
「分かった…」
「じゃ、俺は帰るからな?全く…あんま面倒起こすんじゃねぇぞ?」
刑事は頭をガシガシと掻きながら病室を出て行った。