「彼女の病気は肺炎です。」
そう言って医師が口を閉じる。肺炎…それを聞いて口の中に苦い物を感じた…
「…海外への渡航経験がお有りですか?」
「っ!…何故だ?」
「…日本国内で生を受け、生きて来た人間で肺炎でそこまでの深刻さを顔に出す人は少ないです。重症化する事も有る、と言われても結局ピンと来ない人が大半ですから。」
「……」
「…その様子だと、風邪と肺炎の詳しい違いについてもご存知ですか?」
「…風邪の原因は鼻や喉に微生物が感染して炎症を起こすもので、肺炎は細菌やウイルスが酸素と二酸化炭素を交換する肺胞に感染して炎症を起こすものと言う定義なら存じている…」
「…正解です。…重症化した場合にこの説明をするのがこちらも中々大変なのですよ、風邪から派生したと思われている場合…結果大した事は無いと思われている方が多いので…話が早くて助かります。」
「…それで、凛の病状は…」
「現在は小康状態を保っていますが、いつ悪化しても可笑しくないですね…暫くは油断の出来無い状態が続くでしょう…」
「そうか…」
「彼女にはこのまま入院して貰う事になります…一度家に戻った方が良いでしょう…」
「分かった…」
「こちらに来たら受付に一声かけてください、それと…携帯の番号を教えて貰えますか?」
そう言って、携帯を出して来る…私も自分の携帯を出した。
『とにかくリンは見つかったのね!?良かった…』
「だが予断を許さない状況の様だ…暫くはこちらのサポートが必要になるだろうな…」
『そうだよね…でも、どうしたら…』
「……」
イリヤに何もしなくて良い、と言うだけなら簡単だ…だがそれでは納得しないだろう…
「昼間の面倒は私が見るさ…ルヴィアには基本的に奴の専属でいてもらうしか無い…奴にも、世話をする人間が必要だからな…」
『それは分かったけど…お店は?』
「……」
そこで私も口を噤んでしまう…
『自分のせいでお店閉める事になったら多分、リンはとても気にすると思う…』
「…開けるしか無いだろうな、最悪夜は私かルヴィアが見に行く事になるだろう…」
負担をかけまいと、ルヴィアにそう言えば彼女は反発して寧ろ私にも一切手は出させなくなるだろう…そうでなくても、女性にしかしてやれない事も有る筈だ…
「とにかく詳しい話は私がそっちに戻ってからするとしよう。」
『分かった…ルヴィアも呼んでおくね?』
「ああ…申し訳無いが、ついでにウチのバイト君にも連絡を頼めるか?」
『うん……早く帰って来てね…?』
「ああ、出来るだけ早く戻る…」
電話を切る…さて、桜と慎二にも連絡するか…下手すると私たちより色々忙しい二人に何かと頼む事になるのは気が引けるが…そうも言ってられん…そうでなくても桜は凛の妹なのだからな…