「傷が無かった、と言えば嘘にはなるだろうが…客観的に見ても普通の子供だったと言えるだろうな私は…」
「……」
ルヴィアが何事か言おうとして口を閉じる…まぁ恐らくは以前話したアーチャーと今聞いた私の幼少期の違いについて口に出そうになったのを抑えたのだろう…(イリヤはともかく、彼は本当に何も知らないからな…今言われては私も困る…)
「その状況に変化が有ったのは何処かと言われればやはり、養父…衛宮切嗣が亡くなった時だろうな…」
「キリツグは…どんな風だった…?」
「月明かりの下、縁側で二人で話をした…その時に嘗て正義の味方になろうとしていた事を語ってくれた…」
「…シロウは何て言ったの…?」
「…諦観と後悔を滲み出させる切嗣に戸惑いながらも俺は…その夢は絶対に間違ってないとは何とか口に出来たな…」
「…それだけ?」
「ああ。」
そう、そこがアーチャーとの大きな違いの一つだ…俺は…じいさんの夢を継ぐ、形にするなどと口にする事は…俺には出来無かった…それはあくまで切嗣が嘗て抱いた大切な願いで…少なくとも俺みたいなガキが安易にそう口にすればむしろ汚す事になる…あの時は、何も分からないながらにそう思った。
「…私の言葉を聞いた切嗣は『そうか…僕は間違ってなかったんだ…安心したよ…』…そう言って、そのまま眠る様に息を引き取った。」
「そう…」
「……衛宮切嗣。」
「ルヴィア、思う所が有るのは分かる…ただ…魔術師が倫理的に真っ先に駆逐されるのは…君も分かるだろう?」
「そう、ですわね…」
「結局…一体どんな人だったんですか?」
「生前の…私と出会うまでのキリツグについては私自身実はそう詳しいわけじゃない。それに、今は完全に余談になる。機会が有れば私の知る事をいずれ君にも話そう。」
こうして私の事を話すと決めた以上、コレも避けられない事だ…
「分かりました。」
「…では、続きを話す…と言っても、高校に入り聖杯戦争に巻き込まれるまで特別な動きは無いな…まぁ私自身は確かに変化は有った…何せ心の拠り所になる家族を失ったのだからな、今思えば当然だ。」
「ねぇ?結局シンジってどんな奴だったの?」
確かにこの流れだと慎二の事を話さないで進んでしまうか…
「そうだな…初めて会ったのは中学生の時だが…まぁ客観的に一言で言えば、嫌な奴だ…」
「それは今とそんなに変わりないのでは?」
思わず吹き出してしまった…過去のアイツを知らないと自然とそう感じるだろうな…
「…いや、アレより酷かったんだ。自分より出来が悪いと判断した奴はとにかく絡んで馬鹿にするしな… 」
「やっぱり今と変わらない気がするけど…」
「改善された方なんだ、アレでも本当に…それに嫌な奴とは言ったが私は当時からそんなに嫌ってなかったしな。」
「何で?」
「アイツが馬鹿にするのはそもそも明らかに改善する気が無い奴だけだからな…アイツなりの発破の掛け方だったんだよ…結局いつも意図を理解されずに空回りしてたがな。」
「…どちらにしろ、言われる方にはたまったものでは無いと思いますわ。」
「もちろん本当にそれだけなら私も敬遠しただろうが、人に言う分ちゃんと結果は出すし、自分の恵まれた能力に驕らず努力もする奴だったからな…だから嫌えなかったんだ。」
最もアイツ自身は努力なんてしてないと今でも言い張るだろうがな…
「…さて、これ以上アイツの事を話すとまた脱線するからここまでにしておこう。ここからが本題になる…」
私は今でも昨日の様に思い出せる…聖杯戦争に巻き込まれたあの日の事を…