「あ?正義の味方?」
「ああ。」
部隊が同じでも仕事の振り分けなどの関係も有り、奴個人とだけ顔を合わせる事は少ない…必然的に親睦を深めようとすれば料理の時だけになる。何度か怒鳴られながらも粘り強く奴に水を向け続け、且つ会話をしても効率は落ちないのを奴に証明した結果…何とか多少の会話位なら乗ってくれる様になった。
「それがお前の夢だってのか?」
「そう「嘘だな」……何で、そう思うんだ?」
「鏡でも見ながらそう言ってみな、そしたら分かるだろうよ。」
……馬鹿正直に実践してみた私も私だが、結局奴があの時嘘だと断言した理由は分からなかった。…最も、切嗣の夢を形にしようとは思えず、アーチャーの記憶から本来衛宮士郎が抱えていた筈の物を知ってしまった私が抱いてしまったそれは…夢とも呼べない憧れに過ぎなかったのだろうが。
その後も私が奴に話しかけ、奴が答える…それだけの関係性が続き、漸く奴から蟠りが消えたのは私が部隊を抜ける日の事だった(相当に時間がかかったがな…)
「お前、辞めるってのは本当か?」
「ああ。俺は夢を実現させたいんだ。」
「…衛宮、人間ってのはほんの少し見方を変えるだけで善にも悪にも変わるし、人の心は脆い…それを分かった上で言ってんだな?」
「…もちろん分かってる。簡単じゃないのは…でも俺はやれる所までやってみたいんだ。」
「……なら良い、俺から言う事は何もねぇ。ただ自分で決めたんだ、簡単に潰れんじゃねぇぞ。」
「ああ…何か、色々ありがとな…」
「止せよ、気色悪い。ま、もう会わない事を願ってるぜ…じゃあな。」
最もその後何度も奴と出会い…私が現実に押し潰されるよりも先に奴の方が絶望し壊れ、その姿が何度も頭を過ぎる様になり…それが原因で私が正義の味方を辞めたのは…一体何の皮肉なのだろうな…
余計なお世話だと思いつつ…辞める事を決めた後も当然奴の事が真っ先に頭に浮かんでいた。
苦労して探し当てた奴がこの平和な国…しかも私の故郷で店をやっていて平穏無事に暮らしていると知った時…私は本当に安心したものだ…最も店に行って奴に会ってみれば…性格はあの頃よりは驚く程に丸くなっていたものの何処か危うさを感じた…
半ば強引に従業員として入り込んだのは私としても当然の行動だった…奴からしたらありがた迷惑だったのかも知れないが、私は確かに奴に恩を感じていたのだから…
最も、接客態度の宜しくない奴を厨房に押し込んだら客足が伸びたのだから正直感謝して欲しいのだがな…(店が有名になった事で、客としてやって来た凛と再会したのは全く持って予想外だったが…)
「むっ?」
思考に埋没していたらやかんが沸騰した事を知らせるピーと言う音で我に返った。さて、先ずはポットとカップを温めるのが先だな…