錬鉄の英雄の居る店   作:三和

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紅茶を運び終え、皆が一息吐いたところで私は話を再開する事に。

 

「…刺されて死んだと思っていた私は、何故かその場で再び目を覚ましていた…夢かとも思ったが、制服に付着した血の跡と、地面の一角を染めるそれは…間違い無く私は一度刺された事を示していた…まぁ身体には傷一つ無いし、制服にも破れた跡の一つすら無かったがね。」

 

「…誰かに、助けられたの?」

 

「…凛だ、さっき見たサーヴァントの内…赤い男のマスターで有った彼女が私を生かした……まぁ、あの時は私が魔術師だとは知らなかったからだろうな…その後俺は傍らに落ちていた赤い、拳大の大きさの宝石を何故か拾い、制服の血の跡を気にしつつも帰路に着いた…まぁ帰ってすぐ狐につままれたような気分でいた私は目を覚ます事になるんだがな…」

 

「…ターゲットが生きてるのは向こうもすぐ判断出来る筈、そうなると敵は再び狙って来ますわね…」

 

ルヴィアのその言葉に私は頷き、続きを話す。

 

「…帰ってすぐ明かりも点けず、部屋の床に横になった所で視界に奴が入って来た…何処から入って来たのか、天井からこちらに槍を向けて落下して来た奴を咄嗟に床を転がって躱した。」

 

「『解放こそしなかったが、確かに心臓を刺した筈だ…お前、何で生きてる?』…奴からはそう言われたが、そもそも理由なんて私が聞きたい。黙っている私に『まぁ良い、同じ相手を日に二度も殺すなんて思わなかったが、コレも運命だと思って諦めてくれ』…もちろん、私にそんな運命を受け入れる気なんて更々無いからな…咄嗟に部屋に有ったポスターを掴み、丸めて強化を施したそれで、奴の槍を強引に逸らした。」

 

「サーヴァントの振るう槍を一魔術師が逸らしたんですの!?」

 

「…私自身素質は無いと切嗣に言われていたし、三流と評して良いレベルだったが…強化魔術だけは当時自信が有った…最もあの時は…向こうがこちらを侮って手を抜いてくれなかったら確実に失敗して、私は再び死んでいただろうがね…」

 

「『お前、魔術師だったのか?』そう聞きながらも奴は私に槍を振るって来る…正直、私はそれを逸らすので精一杯で奴の質問に答える余裕すら無かったがね…」

 

「…最も、強化そのものは今まで一番の手応えだったとは言え…元々何の変哲も無いポスターを強化しただけの物だ。今度はそれ自体が槍と合わせるごとに劣化して行く…このままではジリ貧だと感じた私は、カウンターを狙った…奴の槍が狙って来る場所を見極め、下から振り上げたポスターで奴の槍を強引に振り上げた…油断したのだろうな…ほんの一瞬の出来事とは言え、それは明確な隙になった。私は破れたポスターを放り捨てて奴の横をすり抜ける様にしてその部屋から脱出した。」

 

「…まぁ上手く行ったのはこの瞬間だけだったよ。当然の如く私は追われ、状況は更に悪くなった。普段から魔術の鍛錬をする際に使っていた土蔵に逃げ込み、逃げ場の無くなった私が死を覚悟したところで…もう一人闖入者がその場に現れた…さっき見た赤い外套を身にまとった男だ。」

 

「サーヴァントの方を注視しつつ…マスターからの帰還命令が出ていると言った青い服を纏った槍使いはその場から姿を消した。…運が良かったとは言い難いが、結果的に私は助かったんだ…大変なのはこれからだったがね…」

 

そこまで喋って溜め息を吐いた私はカップに口を付ける…ふむ、まだまだ私はアーチャーやオーギュストさんに及ばないな…最もウチの店主とはさすがに互角だと思いたいがな…

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