錬鉄の英雄の居る店   作:三和

93 / 113
93

各々が紅茶をあらかた飲み終え、一応お代わりを用意し、二杯目の紅茶を少し飲んでから私は再び口を開いた。

 

「良く分からないが助かった…そう安堵していた私の元に例の赤い外套の男…アーチャーを押し退け、私の元にほとんど顔見知り程度の関係だが、見覚えの有る少女がつかつかと歩いて来た…もちろん凛だ。」

 

「…私に対して魔術師としての正体を隠していた事を詰り、私も聖杯戦争に参加してるのかと聞いて来る凛だが…そもそも当時の私は本当に何も知らんからな…それ以上に普段は有り得ない姿のクラスメイトに色々困惑してて何も答えられなかったよ…」

 

「ちなみに有り得ない姿と言うのは…"アレ"ですか?」

 

ウチのバイト君がそう聞いて来る…そう、"アレ"だよ…とは言えだ…

 

「…正直に言うと君が初めて彼女に会った頃より…まぁ何と言うかとんでもなかったよ……詰られた私がもうそのギャップで気絶しそうになる程にな…今だから言えるが、偽りの姿の彼女に私は憧れていたしな…」

 

猫を被る、と言う慣用句が有るが…その程度の表現では最早正鵠を射るとは言い難い…何せあの時は本当に目の前に居るのは顔の同じ別人か、双子か何かなのかとそんな言葉が浮かんで来たくらいだからな…おや?

 

「ルヴィア?どうかしたのかね?」

 

「いえ。結局の所…私には最初から勝ち目が無かったのだと思いまして。」

 

「……ああ、そう言う意味か。」

 

確かに私は初めから凛…あの頃は遠坂と苗字で呼ぶ事の方が多かった彼女に強く惹かれていた…そう言う意味では後からアプローチをして来たルヴィアには私が目を向ける事は最初から無かったのだとも言える…まぁ実際はこうして凛と付き合う身になった今だから言える結果論に過ぎんが。

 

それ以前にルヴィア…彼女との最初の出会いで私が彼女に抱いた印象自体あまり良くなかった…

 

「シロウ?続きは?」

 

「!…すまない、それでだ…完全に困惑している私の前に居た凛をアーチャーが退けて、投影した剣を私の首筋に当てて来て『何を回りくどい事をしている…コイツがマスターで有るなら危機に陥れば守護してる奴が勝手に出て来るか、あるいはコイツが自分で呼ぶだろう…』…殺気を向けられ、息の詰まる私にアーチャーが畳み掛けて来る『どうした?早くサーヴァントを呼んだらどうだ?』」

 

「かろうじて私が言えたのは『サーヴァントって何だよ…遠坂もお前も何なんだよ…』口から絞り出せたのはコレだけだ…後は只管モゴモゴ言っていただけだな…正直、当時それ以上何と口にしたのかすら覚えていない。」

 

「それで…どうなったんですか?魔術師は簡単に人を信じる事は無い…普通に考えればそれはもう詰みですよね?」

 

「それなんだが…どうやら私はプレッシャーに負けて、そのまま勝手に気絶したらしいな…まぁ情けない話だが、当時の私は最低限の魔術の知識しか無く扱う技術そのものもはっきり言って大した事は無い…精神もほぼ一般人とそう変わらんからな…仕方の無い話でも有る…」

 

「ま、とにかく私は気絶し目覚めた時には既に凛と勝手に主従契約させられていたよ……そうだな、同意無しで下僕になる事を誓わされたとでも言おうか。」

 

周りがさすがにドン引きしてる空気を感じながら私は更に口を開く。

 

「…そして、凛の聞いて来るまま真実を口にさせられた…と言っても話せば話す程私から告げられる話の内容に凛は険しい顔になって行ったがな…どう考えても普通の魔術師なら有り得ない程何も知らず…且つあの一件も本当に偶然巻き込まれただけである事……そして、私が切嗣に会う前の事には一切答えられなかったからな…」

 

「シェロは幼少期の記憶がありませんものね…」

 

その言葉に頷きながら続きを口にする。

 

「契約を盾に脅しを掛けられ様が…覚えてない物は覚えてないのだからな…寧ろしまいに私の方が反発してしまったよ…まぁその時の私は凛にはもう逆らえ無い訳だが。」

 

本来なら、な…

 

「最終的に私に同盟を持ち掛ける凛にそもそも私は今この街で何が起きてるのも含めて何も知らない事…そして私を守るサーヴァントとやらも居ない事を伝えた…まぁ私にろくに何も説明しないまま結論を急いだのは彼女のいつものうっかりだろうな…最も、もう説明をする必要が無いと言えば無い、何せ既に凛と私の間に主従関係は結ばれていたからな…断れはしない…と、本来ならそうなる筈が…そこが凛の魔術師らしからぬ甘さだろうな…主従契約と言っても実際は私の意志そのものはある程度残しての契約だったからな…少なくとも同盟に関しては断ろうと思えば断れるし、私が本気で強く拒絶すれば私の意思でちゃんと契約も切れる様になっていた…最もそれすらうっかり故か説明されてなかったが。」

 

この"遠坂のうっかり"は本当に一種の呪いか何かかと思う…歳を重ねればある程度は予防出来たり、不測の事態もどうにか出来るんだろうが…当時の凛にそれを期待する事は出来無い…結果、今度は凛の方がキレた。

 

「まぁそこら辺を聞いた辺りで寧ろこの街に魔術師として居るのに何故聖杯戦争を知らないのか?と怒り始めたんだがな…そんな事を言われても知らんものは知らん…結局外で見張りをしていたアーチャーが止めに来るまで言い争いになってしまったな…」

 

「まぁ何と言うか…彼女らしいと言えば良いのか…シェロ?何か?」

 

「いや、何でも無いよ。」

 

出会った当初はある意味凛と同レベルで抜けている事の有ったルヴィアがそう発言したので思わず微妙な視線を向けてしまう…やれやれ自覚が無いとは困ったものだ…まぁ今は昔よりずっとマシになっているし、言うのは止めておこう…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。