錬鉄の英雄の居る店   作:三和

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自分で入れた紅茶を口に入れ口内を少し湿らせてから口を開く…

 

「最終的に仲裁してくれたとは言え、やって来たアーチャーはさすがに当初困惑していた…が、あまりにも噛み合わない私たちの会話に事態を悟ったのだろうな…その場で溜め息を一つ吐いてから私たちの間に入り『凛、いつまでもその無知な愚か者にかかずらっていても仕方無いだろう…そいつの令呪の有無は既に確認しているのだろう?ならばそいつは本人が何と言おうとこの時点ではまだ参加者の一人だ、仮に棄権するとしても先ずは監督役の元に連れて行き説明を受けさせるべきではないかね?』」

 

そこまで言ってからハッとする…あの時の私は目の前の凛の言葉で頭に血が上り、反論ばかりしていた割にやけにアーチャーの行動を覚えているものだと…まぁ今なら理由は分かる…奴の芝居がかった動きや、間の取り方が上手いせいも有るが…今思えば無意識にあの時の私はあの男を自分とは相容れない人物として強く認識していたのだろう……その癖、自分では決して至れないであろうその在り方に憧れてもいたのだろうと…

 

「シェロ?」

 

黙りこくったせいか、私に声を掛けて来たルヴィアの声で私は我に返る…そうだな、その辺は今考えても仕方が無い…続きを話せばな…

 

「すまない、続けよう…いきなり愚か者と言われて怒る私を無視して凛は私に着替えて出掛ける様促して来る…今回の聖杯戦争の監督役の居る教会に連れて行くから、とな…詳しい事は向こうでそいつに聞くと良い、ともな。」

 

「そう言われて、釈然としないものの…私は部屋に行って血の着いた制服を脱ぎ、私服に着替え始めたよ…正直短い時間で色々有り過ぎて頭の中はぐちゃぐちゃだったが私の動きは止まらず普通に用意は終えて、凛とアーチャーの居る居間に顔を出した。」

 

「そこでの話もそこそこに私たちは家を出て、凛の案内で教会に向かって歩き始めた…例のサーヴァントとやらを俺は呼ばなくて良いのかと凛に聞くと渋い顔をした…」

 

「それでも気になって更に深く聞こうとしたら霊体化していたアーチャーが突然私の横に現れてな…驚く私に『このたわけが…聖杯戦争のルールすらろくに知らん所か、未だ参加の意思すらはっきり決まってない貴様がサーヴァントなど呼んでまともに意思疎通など取れる訳無いだろうが…最悪、呼んだ直後に首をはねられるぞ…最も自殺願望でも有るなら話は別だがな…私は止めん、ライバルが減るのはマスターの凛とサーヴァントである私にとっては好都合だからな、好きにするが良い。』」

 

……つい、かなり力を入れて当時のアーチャーの真似をしてしまったが…周りがさすがに困惑しているのが分かる…とは言え実際に当時私が抱いた感情そのままだ、分かりやすくて良いだろう。

 

「…ほとんど早口でしかも一気にここまで言い切られた私は最早唖然としてしまい、何の反論も出来無かった…まぁ後に理由は分かるが、アーチャーは何故か最初から私に対してとても辛辣だったのだよ…まぁ私自身、最初に奴を見た時から…どちらかと言えば苦手なタイプだろうと感じてはいたのだがな…」

 

この場でアーチャーの正体を知らないのは実はバイト君だけになるが、一応空気を読んだのか他二人は黙ってくれている…詳しく説明しないとならない相手は彼だけで良いとは言え話がややこしくなるからな、正直助かる…

 

「まぁさすがにその後黙ってしまった私を見かねた凛がフォローを入れたりしている内に教会には着いた。そこで聖杯戦争の説明を聞いた…」

 

周囲を一応見渡すが、当然この場の全員聖杯戦争については当時の私以上に詳しく知っている筈…今更おさらいする必要は無いだろう…

 

「そして参加意志の有無を問われたが、その時の私は未だ答えを持てなかった…そんな私に監督役…言峰綺礼が私にしたのは前の聖杯戦争…第四次聖杯戦争に養父衛宮切嗣が参加したと言う話だった…」

 

「『君の父がそこで見た物…君も知りたくないかね?』…そう問われ、私は参加の承諾を決めてしまった…今思えばそれでも断るべきだったのだろうがな…最も、だからこそ今の私が居るのだとは言える…」

 

「シロウはその…本当に後悔してない?初対面の私にまでいきなり殺されかけて…本当に「しないな、少なくともイリヤ…君に出会えたのは私…俺にとって救いの一つだ…俺は…親父の事について知れた事はほとんど無かった…君と言う娘、俺にとっては義姉が居たのだと知れた事…それは確かに俺の救いになった……まぁ最初に会ったのが敵だったのは悲しかったが、そんなもの些細な話さ」……そう言われるの、私としてはすごく嬉しいけどさ…シロウ?言葉はもう少し選ぼうね?」

 

「むっ?…どう言う意味かね?」

 

「自覚無し、ですか…コレは振り回された人多いでしょうね…」

 

「あのシェロ?聞きようによってはそれ、口説いている様に聞こえますわよ?」

 

「……そうなのか?」

 

「義姉の部分が有ってもその顔と声で堕ちちゃうかな…ねぇシロウ?私とはその…付き合えない?」

 

……潤んだ瞳を向けられて一瞬揺れてしまったが、すぐに凛の顔が浮かんで来た。

 

「すまないな…私はもう凛を選んでいる…代わりと言っては何だが、私は君が幸せになれる様に手を貸そう。」

 

「……あ~あ…振られちゃった…うん、分かった!じゃあシロウ?ちゃんと私を幸せにしてよね?」

 

「もちろんだ、必ず君を幸せにすると誓おう…」

 

「……私から言って何だけどソレ…直さないといい加減リンに刺されるわよ?」

 

「最早わざとやっているんじゃないかと思いますね…」

 

「シェロ…」

 

「……キザなのはきっと奴に似たんだ、仕方無い。」

 

この口調がいつの間にか染み付いている事も有り、最早どの部分が問題なのかも良く分からないまま咄嗟にアーチャーのせいにしてしまったが、平行世界の話になるとは言え…結局は同一人物だ…似ても仕方無い……何処からか『このたわけが!』と、罵倒する声が聞こえた気がしたがここは無視する事にしよう…

 

「あの…奴とは…?」

 

「…後で分かる。」

 

暈していたのについ、私から墓穴を掘った事に今更気付く…まぁ本当に後で分かるのだが…

 

「分かりました、今は聞きません。」

 

バイト君の言葉に頷き、私は続きを口にする。

 

「参加を決め、外に居た凛に同盟の話を受けると言った…まぁ本当に参加する気なのかと念押しされたがな…寧ろ私の方が『と言うか…お前はそれで良いのか?』と聞いてしまったがな…何せ私はまだサーヴァントを召喚出来ていないからな…仮に今サーヴァントが襲って来たら何も出来無い…どう考えても凛には何もメリットが無い。最早私以外得しない同盟だ…」

 

「…普通同盟と言うのは利害が一致してこそ成り立つ物だからな…まるで条件が釣り合っていない。本人は私の召喚するサーヴァントに期待するとの事だったが…聞けばサーヴァントを召喚するにはその人物に関連する物…触媒が必要で、それが無かれば召喚される英雄はランダムだ…どんな人物が出て来るか分からない以上、皮算用も良い所で相当に分の悪い賭けになる…何ともまぁ無茶な話だと思ったよ……もちろん、今は守って貰う以外無い私にはそう口にする事は出来無かったがな…最も、明らかに私を目の敵にしているアーチャーに護衛されるのかと考えたらさすがに溜め息の一つも吐きたくなったがな…」

 

ここでまたカップを傾け…むっ…もう空になっていたか…仕方無く私はカップを置いた。

 

「そんな事を考えていたら私たちの前に有る人物が現れたんだ…」

 

「…そのタイミングだと私だね…一応ここからは私も話した方が良いかな? 」

 

「そうだな…その方が良いかも知れん…」

 

「分かった…でもその前に、紅茶のお代わり…貰っても良いかな?」

 

「承った。一応君たちの分も入れよう…少し待っていたまえ。」

 

私はポットを持ってキッチンへ向かった。

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