「その時はまだ私の覚悟が足りなかった為、お互いの事について話せた事はそう多くない…ただセイバーの真名とその正体、それと宝具については聞く事が出来た…」
そこで私は三人の顔を見回す…ルヴィアには正体については話してあるし、イリヤについては彼女の前でセイバーが宝具を使っているので薄々は勘づいているだろう…この場で知らないのはバイト君だけになるか…
「彼女の真名はアルトリア…アルトリア・ペンドラゴン…宝具は聖剣エクスカリバーだ。」
「!…という事はその人は…」
「彼女は女性である事を隠して嘗てブリタニアの王として君臨していた…アーサー・ペンドラゴン、そう名乗ってな。」
アーサー王物語については創作である、とは言われるが…アーサー・ペンドラゴンと言う王が実際に居たのかについては今でも議論の的だ…まぁ極端な話、実在で有るのかはこの場合問題では無い。多くの人間が知っている話として存在さえするなら、実際にその生涯を生きた英霊として座には登録されるからな…
「…当時無知とも言える私でも、さすがにアーサー王物語くらいは聞きかじった程度だが知っている…まぁ最も、女性であったとは予想もしていなかったがな…ただ、重たい西洋剣をまるで小枝のようにブンブン振り回しているんだ。サーヴァントとしての実力は申し分無いとも言えよう…そもそも彼女のクラスは最優と言われるセイバーだ…少なくとも女性であるアルトリアをあまり戦わせたくないと言う私の弁は封殺されるな。」
「と言うより、それを実際に口にしたのが私には驚きですわ…」
耳が痛いな…
「今思えば私も良くそう口に出来たものだと思う…何せ昨晩はまるで役に立っていなかったしな…しかも彼女は戦乱期の一国の王にして、騎士だ。そんな人物に平和な世界での価値観でものを言えば例えマスターと言えど…その場で首をはねられても何ら不思議は無い。」
「聖杯戦争を戦うどころか、いきなり自滅してた可能性もあった訳ですね…」
「生きていた時代も置かれて来た状況も私とはまるで違う…彼女の信念を完全に否定する事を言った事に気付き、私もさすがにその場で謝罪はしたな…」
まぁ本来の衛宮士郎で有れば価値観のみで口にした私と違い、それを信念として掲げて反論し続けるのが想像に難く無い…私ですらあの時点でそれなりに怒りを買った事を思えば確実に話が平行線のまま拗れると思うが…一体アーチャーはどうやって聖杯戦争で生き残ったんだろうな…
「まぁとにかくだ…取り敢えずいつも通り朝食の準備を始めるか、そう考えていた所で来客が有った…」
「このタイミングでお客さんってなると…リン?」
「セイバーに聞いたら『翌朝また来るとの事でした』との話だったからな…一瞬何故先に言わないのかと言いそうになったが、そもそもこの時点でまだ話が進んでいないのは気絶した私が悪いからな…取り敢えず桜はしばらく来れないと聞いていたから四人分の食事の用意を始めたんだ。」
「?…何故そこにサクラが出て来ますの?」
そうか、ルヴィアにも言った事が無かったか…
「当時の桜は訳あって間桐…自分の家に居づらい様でな…私に料理を習う名目で良くウチに来ていたんだ…魔術の鍛錬中土蔵で眠ってしまい、朝になってウチを訪れた彼女に起こされていたのを…今でも覚えているよ。」
「……一応聞くけど、土蔵に暖房は?」
「無いな、壊れたストーブなら有ったが。」
「良く凍死しませんでしたわね…」
「私も…今ならそう思う…」
外よりマシとは言え、土蔵は家の中に比べれば寒い…そう考えると私は相当に運が良いのだろうか……いや、私も衛宮士郎で有る以上そんな事は無いか…