朱と紅の軌跡 作:アルトリア顔推し
アークライト・ライゼ・アルノール
彼の生涯は実に数奇で波乱に満ちたモノであったと言えるだろう。
そして帝国貴族制度を真っ向から否定し、緩やかに、だが確実に民主主義へと移行させた立役者であるなど彼の功績を挙げたらキリがないが、最たる物はコレと言えるだろう。無論その偉業を成したのは彼1人ではなく、周りの人間や“妻達”による物もあるのを忘れてはいけないだろう。
また、彼の妻は非常に多かったことで知られる。正妃、ミルディーユ皇妃殿下以下両手では足りないほどの数でいずれも才女であり女傑であった。
一時期夫が体調不良で公務に取りかかれない日は率先して名代としてその場に赴き公務を執行し仕事をこなしてみせた。
そしてアークライト皇帝はまた武勇にも優れていた。若かりし頃は前線にて皇家に伝えられる武具達を使い敵を一掃し、皇帝として将の立場に就くと、直接の戦闘が避けるもののその采配を奮った。
だが、これはまだ先のお話。今はまだ誕生してまもない小さな命。物語はそこから始まる。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
皇宮バルフレイム宮。
白亜の城の中の一室。厳重な警備に守られたその部屋の奥のベビーベッドの中にいる赤子は周りを興味深そうに見ているが、内心では違った。
『これどうなってんのーー!?』
そのこの子は普通の子供ではなかった。所轄前世持ちという奴である。
と、ここまでならテンプ……ゲフン!見慣れた物だがこの赤ん坊は少し違っていた。
『いやこれヤバくね?しかもなんか俺とは別の記憶まであるんだけど!?なにこれ?』
と、この赤ん坊の普通の前世持ち違う点は前世が二重の前世という。奇怪な状況であった。
『なんだこの記憶?俺…いや僕か、エミル・リーヴェルト。ふーん、お姉さんがいたのね。また美人な姉ちゃんだなぁ』
記憶の中にポツポツと写真のように現れる家族との光景にどこか他人事な
赤子─アークライトは自分を僕呼びすることに違和感を覚えなかった。
『こういう時は近頃掲示板があるみたいなこと聞くけど、さっきからやってるけど無理そうだな』
見た目は赤子。精神は思春期の男の子+別の前世の記憶………オッサンではないだろうか?
『なんかひどいこと言われた気がする』
気のせいである。
『……まぁいいや…………とりあえず。周りの状況を確認しよう』
と言っても、赤ん坊の周りは警護の軍人と世話役メイドはいるだけで、空気も張り詰めたモノでとても情報収集が出来る空気でもない。
『無理だー!!なんだこの厳戒態勢!って俺皇族か……こういうもんなのか?』
幸い、アークライトは今世の自分の産まれだけはエミル・リーヴェルトの前世から把握していた。
自分の家のアルノール家とはエレボニア帝国の皇族。父が皇帝、母が皇妃。少なくとも腹違いの兄が1人いるくらいは知っていた。
『誰か来てー!』
アークライトは祈ることと寝ることくらいしか出来なかった。
そして祈っている間に昼寝落ちしを挟み夕方祈りが通じたのか遂にアークライトの両親こと皇帝夫妻が部屋のドアを開けた。
『来た!パパぁー!ママァー!コイツらどうにかしてぇ!具体的に言うと息が詰まりそう!』
母、プリシラに抱かれながらアークライトは赤ん坊の言葉で必死に訴えるがいかんせんやはり赤ん坊。そんなことは届かない。
「あらあら、元気ね。アークライト、いい子にしてた?」
「アークライトはどうかね?」
皇帝ユーゲント3世が目の前のメイドに目線を向ける。
「その、殿下は日中一度も泣かずにとても静かでして」
「そう、アークライトは偉いわね」
『うん。赤ん坊3回目ってなるともう慣れたもんさ』
全く自慢もクソもないしょうもないことである。
『やっぱ誰か俺のことバカにしてんだろ!?』
おっと……では今回はこのくらいにしておこう。また次回。