空を見上げて   作:世界 新

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百鬼あやめ

 

まずは、奴らの警棒を無力化する。

スパナイフは、なんでもというように、本当にあらゆる物を切断することができる優れものだ。

 

このナイフは、一見普通のナイフのように見えるが、刃の部分を、小さな粒子が絶え間なく往復しており、その振動によって、チェーンソーのような仕組みになっている。

 

その為、刃こぼれは愚かーー鉄だって切断することができるのだ。

 

一人目の男が、警棒を上段から振るってくるが、それを真横に一閃して真っ二つにした俺は、回転蹴りをくらわせることで、真横へと蹴りとばす。

 

そして、俺の反撃する姿に硬直している奴らの警棒を、次々可能な範囲で真っ二つにして使えなくしてやると、格闘技でもって無力化していく。

 

胸・顎・股関などーー人体の急所など、探せば山ほどある。

 

そこを、格闘技ならば禁じ手であるが、肘や膝による攻撃でもって当てていき、粘りそうな奴らは、スパナイフで、足の筋を切断して、立てなくしてやる。

 

 

 

「うぉおら!! こいやー!」

 

 

 

一応、二人のことも時々視界に入れつつ、必要があるなら助太刀しようかと状況確認をしていたがーースバルはさすがの一言につきるな。

 

警棒を拳や蹴りで折ると、容赦なく関節技で手足を極めたり、打撃で折ったりなどして、瞬く間に、戦闘不能にさせて行っている。

 

あれは、もはや一種の台風だな。

と思いつつ、顔に対する拳の攻撃を避けた俺は、その手を掴み、空いている手でアッパーカットを顎へと叩き込み、接近してきた男の方へと、そいつを蹴りとばしてやる。

 

スバルは、あのまま任せてもよさそうだ。

だが、ちょこ先生はどうだ?

 

チラリと、そちらを横目で確認してみると、なんとか攻撃を避けつつ、隙をみて例の注射器を刺すことで、軍警察の奴らを倒しているーーが、あまり優勢とは言えないな。

 

まぁ。ちょこ先生は、もともと格闘よりも癒す方を得意としているから、無理もないことだが……。

 

などと思いつつ見ていると、早速ちょこ先生の背後から一人の敵が襲いかかろうとしていた為、スパナイフをそいつの肩にめがけて投擲し、すぐさま妨害してやる。

 

 

 

「ちょこ先生! 後ろだ!」

「ナイス執行人!」

 

 

 

俺と同じタイミングで、フォローに入ろうとしていたらしいスバルが、敵から奪ったであろう警棒を振りかぶりつつ、そう誉めてくれる。

 

ーー俺が間に合わなかったら、それを投げるつもりだったのか? あいつ。

 

 

 

「いっ、今だ! 武器がない今、奴を抑えろ!」

 

 

 

俺の手から武器がなくなったのをチャンスと考えたらしい一人が、そう言いながら強気に出てくる。

 

……別に、素手でもお前らに負ける気なんて、まったくしないが?

 

だが。変に調子に乗せると、後々やっかいではあるので、上段からの振り下ろしにあわせて、腕をクロスしつつ手首をホールドし、攻撃を受け止める。

 

そして、そのまま流れる動作で手首を逆さへと捻って、警棒を強制的に手放させた俺は、それを空中で掴み取ると、膝裏・脇腹へと間髪いれずに攻撃し、膝をついたところへ振り上げで顎をかち割わってやる。

 

 

「武器ならどこからでも手にはいるぞ? さぁ、次はどうする?」

 

 

 

右足を一歩前にだしつつ下段に警棒を構え、残り一人の敵へとそう言ってやると、ガチガチ歯を鳴らしながら、後退りする。

 

……そうだ。それでいい。

こっちも、好きこのんで殴りたいわけじゃない。

戦意喪失してくれれば、それが一番だ。

 

 

 

「うっ、ううぅ。くそー!!」

 

 

 

撤退してくれるかも? と思ったが、なにやら最後にいらない勇気を振り絞ってくれたらしく、俺へと突撃してきた。

 

なので、手首のスナップで警棒の持つ手首を叩いて手放させた俺は、すぐさま太ももへと一撃をいれ、胸への突きでもって沈んでもう。

 

よし。

次は、ちょこ先生のところだな。

 

ある程度片付け終えた俺は、ちょこ先生を狙っている一人に対して、後頭部に警棒をぶん投げて当てつつ、先ほど投擲したナイフへと吸盤を跳ばしてくっつけると、鞭のようにそれを振いながら、ちょこ先生までの道を強制的に開けさせる。

 

 

 

「お待たせしました。援護します」

「執行人くん! 助かるわ。私、近接戦闘は、得意じゃないのよ」

 

 

 

吸盤からナイフを外し、手に取った俺がそう言うと、ホッとした顔をするちょこ先生。

得意じゃないわりには、よく頑張った方だと思うけどな。

 

 

 

「そういえば、その注射器の中身って、いったい何なんですか?」

 

 

 

俺がナイフを手にしたことで、むやみに攻撃を仕掛けられなくなったのかーー軍警察の連中が少し距離をとってくれた為、余裕ができた俺が、実は気になっていたことをきいてみるとーー。

 

 

 

「これ? 魔界で人気のよいドレ酒よ」

「なっ、何ですかそれ?」

「ただのお酒よ。甘いお菓子にも合って、とっても美味しいの。ただ、人間の身体には合わないみたいで……少量でも、全身が倦怠感に襲われちゃうみたい」

 

 

 

などと、ゾッとすることを微笑みつつ言うちょこ先生に、ひきつった笑みしか返せない。

 

合わないみたいって、どうやって知ったんだ?

確実に、誰かで実験したろ。

 

 

 

「ちょっと執行人くん。何その顔。失礼ね」

「すっ、すいません」

「おっっりゃ!!」

 

 

 

つい思っていたことが顔に出ていたのか、ちょこ先生がジト目を向けてきた為、慌てて敵の方へと視線を向けると、突然真横から人が飛んでくるや、俺の目の前の敵を巻き混みつつ倒れていく。

 

人が飛んでくるって、何があったらそうなるの?

 

 

 

「シュバール!」

 

 

 

などと、ヒーローのようにダイブしながら跳んできたスバルは、一気に二人の男を両脇にそれぞれヘッドロックすると、頭突きでもって、すぐさま一人を昏倒させてしまう。

 

 

 

「執行人。いつも言っているだろ? 一対多数の場合は、片手で一人を相手にしろって」

「いだだだっ!?」

 

「いつも言っているが、お前と俺のステータスを一緒にするな。とりあえず、抱えてる奴を寝かせてやれよ。痛がっているぞ」

 

 

 

両脇に成人男性二人を抱えつつ、俺に注意をしてくるスバル。

てか、もともとの力量が違うんだ。無茶を言うな。

 

 

 

「なるほどね。それもそうか」

 

 

 

と言いつつ、気を失っている方を壁へとぶん投げると、もう一人を、割と加減なく地面へと叩きつけるスバル。

 

ほらみろ。

人を投げ飛ばせるって、どういうことだよ。

 

 

 

「ばっ、化け物かこいつら!? 数は、こっちの方が上なのに!」

「誰が化け物よ。こんな美女二人を相手にしておいて。失礼しちゃうわ」

 

「まったくだよ。なんで、スバルが怖がられないといけないわけ? 逆だろ逆」

「数秒前の自分を思い返せよスバル。人を投げ飛ばしてるんだぞ。お前」

 

 

 

やっと、自分達が勝てない勝負をしていることに気がついたらしい軍警察が、徐々に後退を始める。

 

よしよし。

それじゃ、そろそろ詰めといきますかね。

 

 

 

「スバル。残りを任せるぞ」

「えぇー。男のお前が残りだろ」

 

「確実をとるんだよ。ちょこ先生。例の注射器を一つください」

 

 

 

俺よりも格闘技術に優れているスバルに残りを任せた俺は、倒れている一人を強制的に覚醒させると、詰めの尋問へとはいる。

 

 

 

「単刀直入にいう。メイド服のバーチャルアイドルの居場所を言え。嘘やハッタリを言えば、お前の命はない」

「ひっ! わっ、わかった! 確かーー取調室にいたと思う。出て左に進んだところにある鉄の扉がそうだ。今もいるかは、わからんが」

 

「そうか。ご苦労。お前は、いい選択をした」

 

 

 

俺らの恐ろしさが十分伝わったらしく、簡単に口を開いてくれた男を、約束通りちょこ先生からもらった注射器でもって、楽にしてやる。

さて。場所はわかったな。

 

 

 

「スバル、終わったか? あくあの場所がわかった。他の奴らは捨てて、すぐにそこに行こう。ちょこ先生もーー何してるんです?」

 

 

 

あくあの場所がわかったので、もうここに用はないと考えた俺は、すぐに二人に目的の場所に行こうと提案するが、なにやらちょこ先生が、一人の男に膝枕をしてあげつつ、優しく頭を撫でていた。

ちょこ先生……。

 

 

 

「そいつに、優しさなんていりませんよちょこ先生。明日には、見逃してもらった恩も忘れて、同じことをするクズですから」

 

「そうね……でも、この人執行人くんのナイフが刺さっていた所から出血が激しいのよ。だから、そこだけでも治しておかないと」

 

「いや。そんなの運が悪かったと」

「はいはい、ストップ執行人。あそこからは、ちょこ先の信念だからさ。口出し厳禁な」

 

「口出し厳禁って……どうせ、裏切られるのがオチだ。助けてやる義理なんてないだろ」

 

 

 

そうさ。

こいつらを助けたところで、何も変わりやしない。

明日には、けろっとして、また罪のない人達を投獄するに決まっている。

 

だから、それをあえて口にすることで意味がないことを伝えるが、困ったような顔をしたスバルは、俺の肩をポンポンたたいてくるだけで、ちょこ先生を止めようとしない。

 

 

 

「……うん。これで、大丈夫そうね。お待たせ、二人とも」

 

 

 

優しい声でそういい終えたちょこ先生は、これまた優しくそっと横に寝かせてあげると、こちらへと戻ってくる。

 

ちょこ先生のアイドル(パワー)愛の力は、万病を癒す(ヒーリング・オブ・ハンド)』は、触れている人の傷や、病を治す力だ。

 

その優しい力を、あいつに使う必要があったのだろうか?

 

 

 

「執行人くん。確かに、彼らはちょこ達のしてあげたこと。したことなど忘れて、酷いことをしてくると思うわ。でもね。だからこそ、優しくしないとダメなの。だって、私達が彼らと同じことをしてしまったら、それは、彼らの作った法律を後押ししてしまうことになるでしょう? それに、私は保健の先生だから……酷い怪我は、さすがに見過ごせないわ」

 

「……行きましょう」

 

 

 

なるほど。

確かに、ちょこ先生の言い分は、その通りだ。

俺も、実際に頭では、理解している。

 

人を助けるのと見捨てるのは、どちらが間違っているのかなど、小学生でもわかる道徳の問題だ。

 

だがーーそれでも、やはり俺は、あいつらに優しくなどできない。

 

ちょこ先生の言葉に、否定も肯定もせずに走り出した俺に対して、何も言わずついてきてくれる二人。

 

 

 

「でも、執行人のおかげでスバル達が、優しくしていられるのは、実際あるんだよな~」

「そうね。変わりにそこまで怒ってくれるなら、こっちの怒りも収まるもん」

 

 

 

などと、突然ケラケラと笑いつつ言うスバルに、ちょこ先生も同様に笑いながら同意する。

 

……きっと、俺が怒っているから、二人とも気を使って言ってくれたのだろう。

そう考えると、俺がいかに幼稚だったか身にしみる。

 

次から気をつけなければーー。

そう心に決め、先ほどの男が教えてくれた鉄の扉まであと少しというところで、突然強烈な鉄の臭いがしてくる。

 

 

 

「ちょこ先生!」

「えぇ。間違いない。()()のにおいね」

 

 

 

強烈な鉄の臭いに対して、俺が確認の為にちょこ先生にきいてみると、間髪いれず即答してくれる。

まさかーーあくあの身に何かあったのか?

 

バキン!

最悪な予想がよぎった中、後方から何かが割れる音がしたかと思えば、次の瞬間には、俺の隣を通りすぎる鮮やかな色ーー。

 

スバルが、瞬き間に俺を一瞬で追い抜いたのだ。

あの割れるような音は、おそらく床を蹴った音だろう。

スバルも、俺と同じ予想をしたのか……。

 

 

 

「スバル! どうだった!?」

「……」

「おい。黙ってたらわからなーー」

 

 

 

追いついた俺がスバルの背中へとそう話しかけるが、なにも答えない為、その肩を掴みつつ中へと入ってみるーーと。

 

正直、言葉を失った。

なぜなら、取調室の中は、何かで切りつけられたかのような傷ばかりがあり、そこに軍警察の二人が傷だらけで倒れていたからだ。

 

これは……なんだ……。

まるで、襲撃された跡じゃないか!

 

 

 

「どうなってんだよ! あくあは!?」

「落ち着いてスバル。ここに、あくたんがいないなら、無事なはずよ」

 

 

 

あまりの惨状に、混乱するスバルをなだめるちょこ先生。

しかし……この周囲の傷。

もしかしてーー刀傷か?

だとしたら、仲間割れという線は、ないな。

 

軍警察は、基本警棒と拳銃を携帯しているから、刀傷などつくはずがない。

なら、すいせいさん?

 

とも思ったが、こちらもあり得ない。すいせいさんの戦闘は、何度か見たことがあるが、刀など使っている場面を見たことがないし、何よりこんな惨劇をするはずがない。

 

この必要なまでの傷つけ方……。

まるで、軍警察そのものを恨んでいるかのようだ。

 

 

 

「まさか、第三者がいる?」

 

 

 

俺の言葉に、ちょこ先生とスバルが、驚きの顔で振り返ってくる。

だって、そうとしか考えられないぞ。

 

すいせいさんでもなければ、仲間割れでもないというなら……俺らの認識していない第三者がいて、そいつが俺らより先にここへときたってことになる。

 

 

 

「第三者だって!? どこのどいつだよ!」

「スバル! 落ち着きなさいって! 執行人くん。わかりやすく、説明してちょうだい」

 

「はい。この惨劇からみて、まず、すいせいさんはあり得ません。かといって、仲間割れにしては、ここまでやる意味がわからない。なによりこの傷ーーおそらく刀傷だと思います。そして、これは、俺の印象ですがーー第三者は、軍警察に恨みを持っているような気がします」

 

「その根拠は?」

「刀傷が、床や壁にまでついている。そこの倒れている奴らを切るだけなら、そんな必要は、ないはずです」

 

 

 

と、俺の印象の根拠をのべると、静かに頷くちょこ先生。

 

 

 

「なら、味方だってぇの!? こんなことした奴が、スバル達の!?」

「味方なのかは、わからない。ただ、軍警察に恨みがあるなら、少なくともあくあに被害をくわえることないはずだ」

 

「くそ! とりあえず、あくあだ!!」

 

 

 

あまりの展開に、冷静さが失われているらしいスバルが、踵を返して出ていこうとするーーので、その手を掴むことで、強制的に止める。

 

気持ちはわからなくないが、今のスバルを行かせるのは、危険だからな。

 

 

 

「なんだよ! 離せ!!」

「少し落ち着けスバル。冷静な判断ができないと、手痛い失敗につながる。まずは、深呼吸だ」

 

「こんな臭いところで、できるか!」

「そのツッコミ最高。こいつらの傷から見て、まだそれほど遠くには、行ってないだろう。だから、一度落ちついて考えるぞ」

 

 

 

やれやれ。

ツッコミができるくらいには、まだ冷静な部分があったか。

 

と、スバルの状態がわかった俺は、とりあえず手を離してやる。

さて、あくあはどこだ?

 

もし、この惨劇をした犯人と二人で行動しているなら、早めに見つけ出して損はない。

 

 

 

「スバル。お前だったら、軍警察を滅ぼしたいくらいに恨んでいたら、どうする?」

「はぁ? うーん。とりあえず、会った奴らから殴りまくるかな?」

 

「……それでいこう。幸運なことに、俺らが来た道は、誰もいなかったからな。行っていない道を探すぞ」

「よし。それなら、スバルが先行して探してくる」

 

「ちょっと待って!」

 

 

 

俺とスバルが、あくあのことをどうやって探すかを考えている中、ずっと倒れている軍警察の様子を見ていたちょこ先生が、突然待ったをかけてくる。

 

ずいぶんと焦った声だが……どうしたんだ?

 

 

 

「なんだよちょこ先? 急がないと」

()()()()()()()! どんなに力を使っても!」

 

 

 

……なんだって?

ちょこ先生の能力で、傷が治らない?

 

 

 

「どういうことだよ?」

「わからないけど、いくらやっても治らないの。まるで、私の力を邪魔しているみたいに」

「……最悪だな。スバル、ちょこ先生。もし、第三者と戦闘になったら、絶対に斬られないようにしてくれ。おそらく、それが相手の力だ」

 

 

 

斬りつけた箇所が、治らない能力……。

考えただけでも、最悪だ。

 

生物である以上、血液がなくなれば、いずれ死に至る。

この能力は、それに対して最高に都合がいい。

 

 

 

「ちょっと待て執行人。能力ってーー謎の人物は、スバル達と同じバーチャルアイドルってことか?」

「その可能性が高いと思う」

 

「っ! とりあえず、出血だけでも抑えておかないと!」

「ちょこ先生。今回は、諦めた方がいい。おそらく、能力者を何とかしないと無理だ」

 

 

 

先ほどの言葉通り、何とかして助けようとするちょこ先生だが、おそらく、それは厳しいだろう。

それに、あくあのこともある。

 

 

 

「……ごめんなさい。二人で、先に行ってくれるかしら?」

「ちょこ先……」

 

「必ず、追いつくから」

「わかりました。ですが、5分までにしてください。ここは、敵地の中ですから……それ以上は危険なので」

 

 

 

俺の言葉に、コクりと、小さく頷くちょこ先生。

本当ならついてきてほしいがーーちょこ先生にも、譲れないものがあるのだろう。

 

さすがの俺も、さっきの今で同じ間違いはしないさ。

 

 

 

「行くぞ。スバル」

「おう。がんばれよ! ちょこ先」

 

 

 

スバルも俺と同じ気持ちなのか、去り際に応援の言葉をかけると、俺と共に先へと進むため走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

第三者の居所は、意外とすぐにわかった。

というのも、この人物ーー驚くほど、通り道に傷をつけているのだ。

 

それほどの恨みがあるのか、それとも、俺らにわかるようにわざとつけているのか……。

 

どちらにしても、好都合なのに変わりはない。

スバルと共に傷跡を追っていると、たどり着いたのは、管理室。

 

扉が不用心にも空いており、そこの前で一度立ち止まった俺達は、先にスバルが入るというジェスチャーをしてきた為、先制を任せ、俺は、腰から殲滅銃を抜く。

 

優先順位としては、まずは、あくあの奪還。

そして、必要なら戦闘だ。

 

まず、スバルが跳び前転をしつつ機材の方へと侵入ーー拳銃で打たれても機材を盾にするための位置だーーしたため、タイミングを合わせて乗り込んだ俺は、すぐさま正面の人影に殲滅銃をむける。

 

薄暗い室内だったこともあり、少し目がなれるのに時間がかかってしまっ……た?

 

 

 

「うっ……嘘だろ?」

 

 

 

目がなれて最初に出た言葉が、それだった。

当然、スバルも同じ気持ちなのか、絶句して言葉すら発していない。

 

室内に立っていたのは、主に二人。

あとは、軍警察の人間が、複数人倒れているのみであった。

 

その二人の内の一人は、俺らが探していたあくあだ。

少しだけ頬が腫れていは、いるもののーーそれ以外に目立った外傷は、特になさそうである。

 

そして、俺らが驚いている原因である、もう一人の人物。

 

 

 

「こんなきり~。久しぶりだねぇ~スバル」

 

 

 

人間ではあり得ない、額に生えている二本の角。

そして、真っ白な肌を隠すように着ている和服。

その愛らしい笑顔で、多くの人間を魅了した鬼のバーチャルアイドル。

百鬼(なきり)あやめが、そこに立っていた。

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