空を見上げて   作:世界 新

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世界政府の放送

 

 

 

 フブキさんが、飯田の店主にテレビを見せてくれるように掛け合うと、潔く見せてくれた。

 

 

 

『世界中の方々。おはようございます』

 

 

 

 画面の中の美人キャスターがそう言うと、至るところから同じ言葉が聞こえ始める。

 まぁ。世界政府の重要報告なので、そうなるのは当たり前のことなのだが……一体、何の報告だ?

 

 

 

『仕事をされている方。テレビで番組を楽しまれていた方等々、突然の報告で申し訳ありませんが、一度手を止めていただき、テレビやラジオをご覧ください。世界政府より緊急報告です』

 

 

「なんだ? 緊急報告なんて、珍しいな」

「しっ。スバル静かに」

 

 

 

 キャスターの言葉に対して、隠すことすらせずスバルが嫌そうな顔でそう呟くと、あくあが静かにするよう人差し指を鼻につけて言う。

 

 

 たしかに。スバルの言うように、あまり緊急報告なんてしないからな。

 

 

 気にはなる。

 

 

 

『先日おきました東の国の都市。渋谷のレベル3収容施設の件について、続報です。首謀者は、およそ5名だったとのことで、少数の部隊に壊滅的打撃を受けたことを重くとらえた世界政府は、七星剣(セブンスター)を緊急招集しました。これからお見せする映像は、会議の決定事項関に関する報告でございます』

 

 

 

 …………おい。

 渋谷収容施設レベル3って……。

 

 

 

「気まず……」

「あくたん。静かに」

 

 

 

 俺と同じことを思ったらしいあくあが、パーカーの帽子を深く被りつつそう言うと、今度は、フブキさんがあくあに注意する。

 

 

 うんうん。

 わからなくないぞあくあ。

 これは、当事者としてかなり気まずい。

 

 

 

『初めまして、人類の皆様。私は、七星剣の第三席、ライデン・ロータスといいます。本来ならば、きちんとした放送でもってお話するべき内容なのですが……いまだ、我々の脅威となっているバーチャルアイドルや、西の国との問題によって、録画映像での報告となったこと、深くお詫びいたします』

 

 

 

 キャスターの言葉によって、映った映像は、青いマントに、銀の狩人のバッチをつけた金髪碧眼の青年ーーライデン・ロータスというらしいーーが、壇上にて話をしているものへと変わった。

 

 

 こいつが、七星剣の第三席……。

 

 ただでさえ七星剣は、なかなかメディアに顔を出さないこともありーー周囲の人々が、ざわつき始める。

 

 

 

「へぇー。意外と、カッコいい顔つきしてるねー。執行人くんより」

 

 

「そっ、そうかな~。わてぃしは、執行人くんの方がカッコいいと思うけどな~」

「無理するなよあくあ。顔に、カッコいいって書いてあるぞ」

 

 

「おい。遠回しに俺に対して攻撃をするな」

 

 

 

 

 ライデンのイケメン顔に、なにやら好評らしいバーチャルアイドル達が、軽く俺の顔面にたいして言葉の暴力を振るってきた為、一応睨みつけておいてやる。

 

 だが……くそっ。

 たしかに、整った顔つきをしていやがる。

 

 

 あれこそ、本物の白馬の騎士ってやつだろうな。

 

 

 

『それでは、時間も限られていますので、本題に入らさせていただきます。皆さんもご存じかと思いますが、先日渋谷のレベル3収容施設が壊滅的な打撃を受けてしまった件について、我々七星剣は、ある事柄を決定いたしました。まずは、首謀者の中に、一年前に皆様を恐怖のドン底へと突き落とした『北の国のバベル事件』にて、特A級指名手配とされていた星街すいせい。ならびに、現在各国にて、被害を出し続けている『鬼の通り魔』百鬼あやめの両名が関わっていたことを、この場を持って報告させていただきます』

 

 

「チッ。何が、北の国のバベル事件だ。あれは、お前らのせいだろうが」

 

「おい、執行人。気持ちはわからなくないけど、あまり大声で言うなよな。一応、スバルとお前も参加していたんだからさ。目立つだろ?」

 

 

「僕も参加していたけど?」

「わてぃしは、してないよ」

「言わなくていいから! わかってるっつーの!」

 

 

「お前のツッコミの方がデケーよ。目立つだろうが」

 

 

 

 北の国のバベル事件……。

 それは、北の国に存在していた仮想高層建築施設ーー通称バベルの塔でおきた、そらさんの身体を奪還するための戦いだ。

 

 

 あの時は、俺とスバル。そして、ちょこ先生の三人で奪還作戦を決行したのだが、偶然が重なりに重なりーーほとんどのホロライブのアイドル達が、助けに来てくれた。

 

 

 そのかいあって、そらさんの身体を奪還することができたのだがーー同時に、特A級指名手配者になってしまった人達もいて、すいせいさんなんてのは、そのさいたる例だ。

 

 

 などと、昔のことを振り返っていると、画面上のライデン・ロータスが、耳を疑う言葉を口にする。

 

 

 

『今回、特A級の二名が関わっていたこともあり、我々は、奴らの確保に全力を尽くすため、今日。現時刻より、特A級指名手配者を匿う、もしくは手助けをする都市や人物に対しても、同様の処置をすることを決定いたしました」

 

 

 

 ……はぁ?

 

 

 

『なお。奴らの手引きによって脱獄したバーチャルアイドル。港あくあに関しても、本日より特A級指名手配とします。詳しい処罰については、各国々の代表者達に配布しました書類を見ていただきーー』

 

 

 

 ーーなんだと?

 あくあも、特A級?

 

 

 ライデンの映像が流れ続ける中、俺達の視線は、自然とあくあへと集中する。

 そして、その視線に対して、ダラダラと無表情で汗を流しだすあくあ。

 

 

 手助けする者と、匿う者も同様の処置をするーー。

 つまりは、今やフブキさんのみならず、この都市そのものが、処罰の対象になるということだ。

 

 

 ことの重大さ故か、ロボットのようなぎこちない動きをすると、何故か正門へと向かい始めてしまうあくあ。

 

 

 

「ちょいまち。どこ行く気だよあくあ」

「はっ、離してスバル! ののの、野宿するよ野宿! みんなに迷惑かけられないもん!」

 

 

「お前が野宿なんて、できるわけないだろ。まずは、落ち着けって」

「いやはや。手をうつのがずいぶんと早いね。こちらの動きが読まれていたのかな?」

 

 

「困りましたね。俺達だけならまだしも、この桜神社の人々も巻き込むわけには行きませんし」

 

 

 

 アワアワしつつ、出ていこうとするあくあを引き留めるスバルを見ると、大きくため息をつくフブキさん。

 

 

 

「ねぇねぇ。お姉ちゃんは、犯罪者さんなの?」

 

 

 

 と、突然の事態に、俺とフブキさんが頭を悩ませていると、一人の少女が、あくあへとそう質問してしまう。

 

 

 子ども故の、純粋な質問。

 だが。その言葉により、周囲の人達の視線が、一気に俺らへと集まってしまった。

 

 

 

「あの子って、七星剣が言っていた子?」

「おい。それって、まずいだろ」

「嘘でしょう? それじゃ、あの子がいる限り、ここが軍に攻められちゃうってこと!?」

 

 

 

 などと、ガヤガヤと俺らに対する不満が溢れ始める。

 

 気持ちはわからなくない……が。

 これは、まずいな。

 

 

 ヘタをすれば、実力行使で追い出されかねないぞ。

 

 

 

「うぅぅ……」

「あくあ。大丈夫だよ」

 

「……フブキさん。いろいろしてくれて申し訳ありませんが、俺らはここから出ていきます。無実の人達を巻き込むわけにはいきませんから」

 

「まぁ。待ちなよ執行人くん。その決断は、早計ってやつさ」

 

 

 

 と、周囲の人達の言葉に耐えられなくなったのか、パーカーを深く被りつつしゃがみこんでしまったあくあに対して、寄り添うように抱きしめるスバル。

 

 

 さすがに、その姿を見ていられなかった俺が、フブキさんへと立ち去ることを告げると、なぜか平然とした顔で、待つように言ってくるフブキさん。

 

 

 その意外なフブキさんの反応に、俺は、自然と首を傾げてしまう。

 

 おかしいーー。

 白上フブキという人は、ホロライブの中でも、かなり優しい分類に入る人だ。

 

 

 そのフブキさんが、今のあくあを見て、平然としていることなんて無理だと思うのだが……どういうことだ?

 

 

 

「うろたえるな!!」

 

 

 

 などと、俺が思っていると、突然可愛らしい声が町中へと響きわたる。

 

 すると、ザワザワと騒ぎ始めていた周囲の人達が、皆いっせいに発生源と思われる中央の神社へと、視線を向ける。

 なんだ?

 

 

「みんな、一度落ちつくにぇ。突然の方針で驚く気持ちはわかるけど、ここで慌てる必要はない」

 

「みこ様だ」

「みこ様だ」

 

 

 

 何事かと視線につられるようにそちらへと俺も向くと、神社へと続く階段に、いつの間にか一人の女性が立っていた。

 濃いピンクのロングヘアーに、白とピンクを基調としたゴスロリーーレースなどがついている派手な衣装のことだーーのノースリーブの巫女さんのような衣装に、腰に巻かれている大きなリボンからは、これまた大きな鈴が二つ垂れ下がっている。

 

 

 ーーあぁ。懐かしいな。

 あの人こそーーあれこそ、さくらみこさんだ。

 

 

 

「今回の政府から発せられた新たな方針は、みこもきちんと拝見した。そのため、読んだ上であえて言おう。クソであると!」

 

 

 

 くっ、クソ!?

 と、みこちさんから出るとは思えない言葉に、俺がポカーンとしていると、そんなこと知らぬとばかりに、みこちさんは続ける。

 

 

 

「特A級指名手配者が、みんなの恐怖の対象であることは、みこも重々承知しているにぇ。しかし、彼女または彼らが、真に危険な存在かと言われれば、みこは、そうは思わない! むしろ、善意で動いた人間にも罰を与えるなど、言語道断!! そのような行為は、軍による暴走だにぇ!」

 

 

 

 おぉー。と、周囲の人々から歓声の声が上がる。

 

 

 

「ここにみこは、宣言する! この町は、自由の町! 例え犯罪を犯したものであっても、受け入れる。その者がみんなに被害を与えるのならば、みこが神に変わって罰を与える!! 賛同するものは、拳を上げよ!」

 

 

「おぉー!!」

 

 

 

 力強く宣言をしたみこちさんの言葉に、すぐさま多くの人物が拳を突き上げる。

 しかも、老若男女問わずだ。

 

 

 すっ、すごい熱量だな。

 あれほど混乱していた人達を、たったの数分で沈静化させてしまった。

 まさか。これが、カリスマ性ってやつなのか?

 

 

 

「ね? 早計だったでしょ?」

「フブキさん……こうなるってわかっていたなら、早く教えてくださいよ」

 

 

 

 と、にっこりと俺に微笑んで言ってきたフブキさんへと、俺がそう返せば、肩をポンポンと叩いてくる。

 

 

 すると、みこちさんの言葉で周囲の人々も混乱が収まったのか、あくあに対して謝罪を言う人や、気遣いの声をかける人など、すでに受け入れる体制に変わっていく。

 

 切り替えが早い。

 それほど、みこちさんの影響力が強いってことか。

 

 

 

「白上フブキ。彼女達をみこの神社に連れてくるにぇ」

「はーい」

 

 

 

 と、どうやら、俺達の様子をきちんと見ていてくれたのかーー。

 最後にそう言ったみこちさんは、その場から跳躍すると、自身の神社へと戻っていく。

 

 みこちさん……ありがとうございます。

 

 

 

「それじゃ、神の使いから言われた通りにしようかね。はいはい、みんなごめんねー」

 

 

 

 俺達のために、わざわざ公衆の面前で言ってくれたのであろうみこちさんの優しさに、感謝を心の中でした俺は、フブキさんが、あくあの近くに集まっていた人々に解散を宣言するのを、すぐさま手伝うのだった

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