空を見上げて   作:世界 新

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ハロー。グッバイ

 

 

「フブキちゃーん!!」

「おぉぉ!?」

 

 

 

 みこちさんに言われた通り、神社の中へ来てみると、意外やいがい。

 

 

 中は近代的になっており、大きな窓ガラスによって町を一望できるだけでなく、床板がほのかに暖かいことからーーこの広い部屋には、床暖房が備えつけていることがわかる。

 

 

 そして、その部屋の上座ーー床の間がある方が基本的に身分の高い人が座る場所であり、そこの場所を言うーーに座っていたみこちさんが、俺らがつくや、もうスピードでフブキさんに突進してきた。

 

 

 しかも、その突進力は、フブキさんが支えきれず後ろに倒れるほどである。

 

 ……かなりの威力だな。

 

 

 

「みこ寂しかったよー。もうさ。世界政府は、あれをしろ! これをしろ! 言ってくるしさー」

 

「おぉ。そうかそうか。てか、重いよみこち」

「重くないよ! やめて!!」

 

 

 

 グリグリと、フブキさんに顔を擦りつけつつ言うみこちさんに、まさかの辛口コメントをするフブキさん。

 

 というかーーギャップがすごい……。

 さっきまでの頼れるみこ様は、どこに行った?

 

 

 

「それより、みこち。スバルちゃんと、あくたんを連れてきたんだけど……大丈夫かな? まさか、あんな方針になるとは、思ってもみなくてねぇ」

 

 

「あぁ、大丈夫大丈夫。何とかなるなる。スバちゃん! あくたん! 大変だったにぇ~! 会いたかったよぉ!!」

 

 

 

 と、フブキさんの言葉に対して、世界政府の決定など、心底どうでもいい。とでもいうかのような顔で言ったみこちさんは、今度はスバルへと突撃。

 

 

 それを寸前でよけたスバルだが、ちょうど真後ろにいたあくあは、もちろんそんなことなどできるはずもなく「ぐぇ!」と、アイドルとしてあるまじき声をもらしつつ、背後へと倒れこんでしまった。

 

 

 鈍い音がしたが……あくあ。

 もしかしなくても、頭打ってないか?

 

 

 

「避けてやるなよスバル。フブキさんが支えきれなかったのに、あくあが支えきれるわけないだろ」

 

「いや。真っ正面から見てみろよ! 怖いぞあの速度!」

 

 

 

 と、フブキさん同様、グリグリされているあくあを見つつ、俺がスバルにそう注意してやれば、高速で首を真横に振るスバル。

 

 

 それなら、一緒に避けてやればいいものを。

 

 

 

「いや~。こうして、みんなが会いに来てくれると、なんだか嬉しいにぇ~。ほらほら。三人とも座って! お菓子とお茶もあるからさ!」

 

 

 

 やっと喜びを発散できたのかーーあくあを解放すると、何やら近場にいた巫女さん達に指示をだしたみこちさんは、初めに座っていた場所へと戻る。

 

 

 そして、ウキウキを隠せずにいるのかーー小さく前後へと揺れ始める。

 

 

 解散してから二年……だもんな。

 嬉しいのは、無理もないことか。

 

 などと思いつつ、座布団やらお茶やらがセットされていく様子に視線を向けていた俺だが、そこで、はてと気がつく。

 

 

 俺達は、四人でここに来たのだ。

 だが。セットされているのは、三人分だけ。

 本来ならば、四人分必要なはずだと思うのだが?

 

 

 

「あの、みこちさん。俺達四人なんですけど……」

 

 

 

 と、もてなしてもらう立場から、言うのは失礼かもと思ったがーーみこちさんが間違っているだけかもしれないし。と思いつつ、俺が控えめにそう言うとーー。

 

 

 

「あぁ、執行人。お前は、別に呼んでないにぇ」

 

 

 

 と、驚くほどウキウキ顔から、口をへの字にしたみこちさんが、そんなことを言ってくる。

 ……へっ?

 

 

 

「悔い改めよ。愚か者め」

 

 

 

 

 と、唐突な言葉に、俺が反応できず唖然としていると、いつのまに出てきたのかーー天井から伸びていた紐を引っ張るみこちさん。

 

 

 そして、突然左右へと割れる俺の足元。

 ーーはぁ!?

 

 

 

「反省しろ。おバカめ」

 

 

 

 という、みこちさんの、ちょっと怒気のきいたその声と共に、俺の身体は強制的に下へと落下。

 

 

 

「あぁぁぁあぁぁぁ!!」

 

 

 

 ーー人間。突然の恐怖に襲われると、自然と大声が出るらしい。

 

 

 真っ暗な世界へと落ちた俺は、すぐさま地面に足がついたかと思えば、今度はスベリ台よろしく、もうスピードで滑っていく身体。

 

 何とか、止まろうと試みてみるーーが。

 これが、嫌がらせの如く、周囲がツルツルで掴むことすらできない。

 

 

 おい! なんの嫌がらせだ!?

 

 

 と、結局何もできずに大声で滑り落ちていった俺は、最終的に、これまたご丁寧に川へと誘われ、キレイに着水するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 さて。

 現在の俺は、何をしているのかというと、同じ横一文字の傷が何度もついている木と、絶賛にらめっこをしている真っ最中である。

 

 

 あのあと、濡れた服を適当に絞った俺は、とりあえずみこちさんの所に戻って文句を言おう。と、森の中へと入ったのだが、腹立つことに、この場所から抜け出せていないでいる。

 

 

 というのも、この森ーー。

 みこちさんの住んでいた神社の後ろにあるらしく、外壁がぐるりと囲っているのだ。

 

 

 どこかしらに出入り口があると思いたいがーー探せど探せど、それが一向に見つからない。

 というか、あるのかすら怪しくなってきたぞ。

 

 

 

「腹減った……ここどこだよ……」

 

 

 

 歩き回ったこともあり、肩に担いでいたロングコートを力なく地面へと落とした俺は、力なく木へと寄りかかる。

 

 

 最悪だ。

 すでに日も傾きつつあることから、もうすぐ夜になってしまうだろう。

 

 

 あの場には、スバルやあくあも居たため、可能性として助けに来てくれるかも……と、少し考えたりもしたが、落とした本人が、あのみこちさんだし、それも望みが薄いと思う。

 

 

 あの二人にとっては、大先輩だからな……みこちさん。

 きっと、俺の何かが気にくわなかったのだろうが……。

 

 

 

「わからん。二年ぶりに会ったのに、何か嫌われることをしたのか?」

 

 

 

 てか、身体中生臭いんですけど?

 

 人間は、飲まず食わずでも三日は生きれるとかテレビで聞いたことあるがーーそれと精神的ダメージは、話が違う。

 

 というか、助けに来てくれるのかすらわからないのだ。

 下手をすれば、このまま一ヶ月とか、あり得なくないぞ。

 

 

 

「……疲れで、ネガティブ思考になっているな。ポジティブにいけ。俺よ」

 

 

 

 そうさ。

 

 川があるということは、魚だっているはずだ。

 

 むしろ、森の中に放り込まれたのだ。

 その気になって探せば、木の実だってあるはず。

 絶望するには、まだ早いぞ。

 

 

 などと、自分を鼓舞しつつなんとなく空を見上げてみればーーあることに気がつく。

 

 昼間は、空など見る余裕がなかったため、気がつかなかったのだがーーある場所から白煙があがっているのだ。

 

 

 まさか、ここにきて火事か? 

 とも一瞬考えたが、それならばもっと煙があがると思うので、あの白煙は、人為的なものだろう。

 

 

 ということは、つまりーー。

 俺以外に、この森の中に誰かがいるという可能性があるということだ。

 

 

 と、そこまで考えついた俺は、すぐさま白煙へと向けて動きだし、時々周囲を観察しつつーー近場にある木へと、傷をつけていく。

 これで、帰る時に迷わなくて済むはずだ。

 

 

 そうしてたどり着いた場所は、コテージのような一軒家。

 

 どうやら、そこの煙突から白煙はあがっていたらしく、しかも目の前では、狼が(まき)割りをしている最中であった。

 

 ーーいや。

 あれは、人狼(じんろう)か?

 

 

 とにかく、狼の尻尾と耳が生えている少女が「うんしょ」とか「ほっ」とか言いつつ、斧で薪割りをしているのだ。

 

 

 普通に考えれば、ついに頭がおかしくなってしまったのかと思うところだがーー。

 俺は、近場で彼女のような人物を見たことがあるからこそ、幻覚などではないだろうと結論付ける。

 

 

 

「ほっ! ……クンクン。おや?」

 

 

 

 と、身近な白狐の姿を頭の中で思い出していると、何やら周囲を嗅ぐように顔を上に向けた彼女は、すぐさま俺の方へと顔を向けてくる。

 

 ……まさか。今の動作は、俺の場所を探っていたのか?

 

 

 

「おぉ! 来た来た。今回は、思ったより早かったねぇ。夜になっても来なければ、探しに行こうかと思っていたんだけどーー怪我もなさそうだし、よかったよかった!」

 

 

 

 などと、斧を置きつつにっこりと笑いながら、俺にそう言って手を振ってくる狼娘。

 

 この人……やけに、人当たりが良さそうだな。

 

 

 

「どうしたの? とって食べたりしないからおいでー」

 

 

 

 と、彼女のあまりの元気さに、俺が疑問をもって立ち止まっていると、どうやら怖がって近寄れないと勘違いしたらしく、両手で手招きをしてくれる。

 

 

 これは、俺の勝手な印象なのだがーー。

 彼女のように、見た目が人間とかけ離れた存在のバーチャルアイドルは、世間の風当たりが他のバーチャルアイドルよりも強いため、人間に対する警戒心が高いことが多いのだ。

 

 

 そのためか、夜の町中でも、時々彼女のような人達を見かけたことがあるがーー。

 そのほとんどが、目が会っただけで逃げてしまい、話しかけることすらできない始末。

 

 

 それほど、俺ら人間を、恐怖の対象として見ているはずなのだ。

 

 だが……彼女は逃げるどころか、むしろ笑顔で俺が近づくのを待ってくれている。

 

 

 まぁ。あの桜神社に住んでいる人達からして、他とは特殊だったからな。

 あり得なくもないといえば、その通りなのだが。

 

 

 

「むむっ。意外と警戒心高いねー。キミ」

 

「あぁ、すいません。ちょっと考え事をしていまして。今、そちらに行きますね」

 

 

「あれら? 今度は、意外とすんなり来たね」

「いや。そちらがよんでくれたので」

 

 

「うーん。今までの人達と少し違うなー。まぁ、いいや。お腹減ったでしょ? おいでおいで」

 

 

 

 と、いざ彼女のもとへ駆け足で向かうと、なぜか難しい顔つきをしながら、家へと招き入れてくれた

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