前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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「よ、っと。やほ! みんな久しぶり!」


私を先頭に、トニー。ストレンジ、そしてピーターが門をくぐる。

最期の彼は未だちんぷんかんぷんみたいだけどこっから先ずっとそんな感じだから許してほしい。多分サポートAIのカレンちゃんに解説を頼めば何とかしてくれると思うから……、頑張って。

ちなみに私のスーツ、外装の方はあの船に置いて来た。どっちみちまた戻る予定だし、船守は必須。ジュノーには『好きにしてていいよ。』って言ってあるし、まぁ何とかなるでしょう。つまり今の私はナノスーツ。黒いぴっちりスーツにところどころ青いリアクターの光が灯っているいる服装ってわけで……。おっと!


『ママだー!』

「お~、コーン。元気してたか?」

『うん! おじちゃんたちに遊んでもらってた!』


良かったねぇ、と言いながら頭を撫で、抱き上げてやる。かなり重いがこの子のボディは小さい方だ。かなり若い子だしソレぐらいしてあげないと。

そんなことを言いながら私の左手、すべての石が嵌められたそれを見せつけながら門を閉める。もちろん『空間(スペース)』の力を使って、だ。

バナー博士はスペースに、それ以外の人はマインドへと視線が集中する。本来二つ存在しないはずのものがここにある。


「さて、じゃあみんな困惑してるみたいだから早めにお話ししたいんだけど……。」


『『遅れて申し訳ありません、母よ。』』


この部屋のドアが開けられ、娘たちの声が響く。迎えに行ってもらってた子たち、ニックとマリアの元S.H.I.E.L.D.コンビとソコヴィア協定の後その速度で行方をくらましたクイックシルバーことピエトロちゃん&アベンジャーズ結成時メンバーの一人、とっても強くてすごいお父さんのホークアイのご到着だ。

元S.H.I.E.L.D.お二人は大体二人でいるから捕まえやすそうだったけど、ピエトロはよく捕まえたねぇ。彼滅茶苦茶早いから捕まえて連れてくるのも一苦労だったろうに。いくら速度特化にチューンアップしても限界があるし……、連れて来てくれた子は後でご褒美かな? 


「気にしなくていいよ。……さて、みんな揃ったね。」


「ちょっとだけ時間もらうよ。」




吐露

 

 

 

じゃ、今の現状を整理しよっか。

 

現在サノスっていう紫イモみたいなエイリアンがこの手に収まってる石、インフィニティ・ストーンを集めている真っ最中。彼が現在持っているのがパワーとスペースで、多分近いうちにリアリティも手に入れる。つまり彼が六つの内三つ手に入れてるわけだね。

 

んでこれが全部集まるとなんでも願いが叶えられるわけで、奴が望むことはこの宇宙に存在する生命体を半分にすること。それ以外は全部消し飛ばしちゃえって感じだね。

 

それを阻止するためにはそこのマントのおじさん、魔術師のドクター・ストレンジが持つタイム・ストーンとヴィジョンが持つマインド・ストーンを死守しながらサノスやそれに連なる敵を殺しつくす必要がある。あ、サノスだけ殺すってのは意味ないからね。全部消し飛ばしてあげないと彼ら目的に向かって進み続けるから。……ニンジャかな? まぁ生存戦争って感じだね。

 

つまりサノスの勝利条件は奴らの誰かが全ての石をそろえること、こっちの勝利条件は敵を全部殺しつくすか撤退するまで石をそろえさせないこと。

 

 

「ま、そんな感じかな? なんか質問ある人~! 」

 

「……ツグミ。」

 

 

あ、この石の話? まぁそうだよね気になるよね! ソウル・ストーンはこの世界のものなんだけど他のストーンは違う世界から借りてるのよ。こっちの世界大変だから貸してねー? って感じで。まぁ正確に言うとこのうち四つは勝手にもらってきた奴なんだけど……、後でちゃんと返しに行くから! うんうん、みんな心配しなくていいよ!

 

 

「……ツグミ!」

 

 

え、内訳? も~! だから大丈夫だって! ちゃんと借りたのはタイムで元々の持ち主だったエンシェント・ワンっていうお婆ちゃん……、いやお姉さんに貸してもらってるの。そこにいるおヒゲマントの魔術師さんの先代さんね? あとは全部借り、いや強奪してきた、うん! リアリティはコレクターのとこから盗んできたし、スペースとマインドは受け取り係の人の代わりに私が受け取っちゃって……

 

 

 

「ツグミ!!!」

 

 

 

トニーに、止められる。

 

 

「ツグミ、僕たちが聞きたいのは、そういうことじゃない。」

 

 

「……あぁ、うん。そうだね。」

 

 

……ひとつひとつ話すとさ、内容が散らばっちゃうから。

 

 

全部、最初から。聞いてもらっていい、かな。

 

 

「あぁ。」

 

「大丈夫だ。……みんな、ずっと君が話してくれるのを待っていた。」

 

 

トニー、キャプテン……。ありがとう。

 

 

ほんとに、ほんとに最初から。

 

 

私が生まれたところから。……私は最初から、この世界にとっての異物だった。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

私は、記憶をもって生まれた。今私たちが生きるこの世界を娯楽の一つとしてみていた世界の記憶。コミックとか、映画とか、アニメとか、この世界のことをそういった一つの物語としてみていた世界。

 

あっちで死んで、こっちで生まれ変わって。最初はこの世界が何なのか分からなかったけどテレビの画面の中でトニーを見つけた。

 

それでやっとこの世界が、前世で私が大好きだった世界と同じってことが解った。

 

だけど、私が見たものに私は。大宙つぐみはそこにいない。

 

今まで色々、私がしていたことがあったでしょう? ニックなら解るよね、私が事前に起きる出来事に対して大体対応策を用意してたってことに。みんなも薄々感じてたでしょ?

 

それも前世で見た記憶が原因、わたしはこの世界がどういった道を進むのか、全部じゃないけど知っていた。

 

チタウリのことも、ウルトロンのことも、そして今サノスが来ることも。全部知ってた。

 

やろうと思えばそれを事前に止めることはできた、みんなに話せば何か違う道を歩めたかもしれない。……でも、私が唯一信じられる記憶を十全に使うにはできるだけそれに沿うことが必要だった。

 

 

……まぁ、そもそも私がいたせいでこんな記憶意味のないものだったんだけど、ね。

 

 

私が知る物語の世界では、私も、ユキもいなかった。そもそも日本について詳しい描写はされてなかった。……私は、日本にいるニンジャのことは全くと言っていいほどわからなかった。彼らと似たような存在がいる、ってことは知ってたけどこの世界について示された物語に奴らはいなかった。

 

私、みんなに関わらないで欲しいって言ってたでしょ。日本のことは私がする、だから世界のことはみんなに任せる。手が空いた時は絶対手伝いに行くから、って。

 

怖かった、何かが変わることが。私の知らない存在が、私の知る未来と混じったらどうなるのか。私が頼りにしてた記憶はどうなるのか。そもそも奴ら自体の力量がとても高かった、もし。もし私がみんなに助けを求めたせいで、誰かを死なせてしまったら。未来で絶対に必要な人を私のせいで死なせたら、大事な仲間を私のせいで死なせたら。

 

一体、私はどうすればいいんだろう、って。

 

 

 

うん、解ってる。多分もっと早い段階で相談すべきだったんだろう、ってことは。私はこの世界についての知識があった。アベンジャーズが結成される前から戦う人がたくさんいたことも知ってた。ニックが知る彼女も、ドクターが所属してる魔術師のことも、その他にもたくさん戦える人がいた。頼ろうと思えば頼れる人がいた。

 

それをしなかったせいで、私は全部失った。

 

 

二年前のこと、あの世界中にニンジャが攻めてきた日。私は全部……。

 

 

アメリカから、日本に帰ってきたとき。私の実家で、両親は殺されていた。

 

町が攻撃されてて、急いで助けに向かったけど、この手から零れ落ちていく命。

 

その時はまだ、私の大事な人、ユキは無事で。

 

何とか合流して無事を喜んだ。

 

未だ町は戦火に飲まれてて、少しでも犠牲を減らすために色々手を打った。

 

人を呼んで、私に従ってくれてた子たちに命令して、あのソコヴィアの時のヘリキャリアも呼んだ。

 

……全部、死んだ。殺してしまった。

 

奴が、ツラヤバが。奴らの頭に、殺された。

 

何も残せずに、この指輪と、呪術と、私のせいで、みんな死んだ。

 

もう、どうしようもなくって。

 

そこまでたどり着くまでにボロボロになってて。

 

ヘリキャリアを一瞬で消し飛ばせるような奴と戦って生き残れるとは思わなかった。

 

 

 

……ユキが、自分を犠牲にして、逃がしてくれた。

 

あの時、無理してでも彼女と一緒に逃げられれば。私が代わりになっていれば、なれていれば。どれだけよかったか。……今でもずっと思う。

 

 

逃げ延びた私は、ドクター。あなたのお師匠様であるエンシェント・ワンに出会う。……初対面じゃない、一度会ったことがあった。

 

それで、私のせいで世界が大変なことになりかけてるってことを知った。

 

……みんなはさ、並行世界ってわかる?

 

今じゃ実証はできないけどちゃんとした学説になってるアレ。私が実際に見た光景なんだけど……、ちょっと見せるね。

 

宇宙のような世界に浮かぶ球体たち、一つ一つが輝きを持ってる。この球体が世界。ここから見える全部が並行世界なんだ。……みんなは夢。見たことあるでしょ? 夢のはずなのに実際に体験したと思えるほどにリアルな夢。トニーだったら……、最近子供が生まれる夢を見たでしょう?

 

それが並行世界、マルチバース。

 

エンシェント・ワンは私に教えてくれた。

 

私が本来持つ力は、そのマルチバースを拡大させ、そして縮小させる力。二年前一度だけ顔合わせしたときの私の眼、黄色かったでしょう? あれが力の証。

 

私が可能性を望むほどに並行世界が増え、私が絶望し悲観するほどに並行世界は消えていく。それが私の力。

 

ツラヤバが操る呪術は人の負の感情によって強化される、彼にとって並行世界が消滅することは世界一つ分の感情が手に入ることに他ならない。……だから、私を追い込んで追い込んで。全部の世界からエネルギーを得ようとしていた。

 

 

……奴を殺すために、私は力を得ようとした。それがこの石。

 

 

この世界と同じような道筋を通った世界なら同じ場所にこのインフィニティ・ストーンは存在しているはず。実際私が前世で見た物語でもそうだった。

 

だから、過去へ飛んだ。

 

時間を選択して、過去へ戻って、同じ時間に帰ってくる。そうすれば時間はかからない、私がどれだけ長い時間を費やしたとしてもこの世界において時間は進んでいない。

 

量子世界を経由して、だよ。不可能じゃない話。映画のように同じ時間軸ってわけじゃないけど私は過去の時間へと飛べた。そして集めてきた。ソウル・ストーン以外を。

 

ソウル・ストーンを入手するためには自分にとって大事な人の命を差し出さないといけない。私にはそれができなかった。……ストーンは六つ全部集めたとしても世界一つを自由にできる力しかない。ツラヤバはすでにいくつもの世界を滅ぼしてた。どうやっても足りなかった、でも、私にはそれしかなった。

 

どうあがいても奴を殺せるか分からなかった上に、私はユキを放っておくことができなかった。あの時はまだ、彼女の命があることは解ってたから……。せめて彼女だけでも助けないといけない、そう思って。

 

 

石を集めて、頼りない体を少しでもまともにできるように過去で手に入れた超人血清を打ち込んで。多分十年はいってなかったと思う。……私の時間をそれだけ払って、やっとユキの元へ向かえた。

 

待っていたのは、その体をツラヤバに奪われた彼女。

 

もう、どうしたらいいのかわからなくなって。

 

何かに縋る様に、私は石の力を使った。

 

マインド・ストーンで彼女の精神を呼び戻せないか、彼女に巣食う奴を消し飛ばせないか。

 

 

結果として、成功はした。彼女の精神を一時的に戻すことはできた。でも……

 

 

 

「彼女は、死を選んだ。これ以上私の重荷になりたくないから。」

 

 

呼び戻した精神が保てたのはほんの一瞬、多分奴の本体を殺さないとあれは解けなかった。……だからこそ、私の邪魔になるくらいなら。そう、彼女は考えた。

 

……本当に、本当に。

 

 

ううん、なんでもない。

 

そのあと、私は奴を殺すために。まぁ色々無理をした。

 

この石は一つの力を引き出すだけでもこの身を蝕む。超人血清で強化してたからまだましだったけど、それでも過剰な使用は私の体を徐々に壊していった。

 

奴と戦うには力が必要で、力は体を壊さないと手に入らない。

 

あの時はもう死んでもいい、そう思って戦ってた。

 

私が集めてきた石と、他の並行世界の人たちが必死の思いで私に託してくれた石。たった六つで世界を自由にできる石を無数に集めて、私は命と引き換えに奴を殺すつもりだった。

 

 

……それを、ユキが止めてくれた。

 

ソウル・ストーンは大事な人の命を引き換えに手に入れることができる。……ほんとは特定の場所でしか手に入らないものなんだけど、あの場所はすべての可能性を肯定してくれる場所だった。だから、本来あり得ないことが起こった。

 

魂だけの存在になったユキとソウル・ストーンが私の目の前に。

 

百を超える石のエネルギーの反動をすべて彼女が引き受けてくれて、私は生き残った。

 

……代わりに、彼女の魂は砕けた。

 

 

 

 

これが、私が二年間音信不通だった理由。簡単に言うと精神に異常をきたしてたの。死んだはずの彼女がまだ生きていると思い込んで、誰にも会わないように月に引きこもって。

 

そもそも私はあそこにたどり着くまで石の力を使い過ぎていた、最後の反動をユキが変わってくれたおかげで死ななかったけどストーンを使ったという事実は変わらない。超人血清によって増加した身体能力の低下、思考能力の低下、記憶力の低下、いろんなものが私に圧し掛かった。

 

それでも、まだ。私は彼女が死んでいることを理解できるぐらいには物事を考えることができた。……逃げるように、気が付かないように。私は娘たちを、コーンや貴方たちを連れてきた子たちを作った。

 

 

そんな逃げることも、今日で終わり。

 

 

この世界は私が知る通り、サノスの来襲が控えている。だから、無理矢理私は精神を元に戻した。おかげさまで寿命はあと一月ぐらいだけど、昔みたいにちゃんと考えられるし、話せる。

 

 

「……私のお話は、これでおしまい。」

 

 






ここまで、長かったけど。全部話しちゃったらなんか……、不思議な気持ち。

受け止めてくれなくても、私は頑張れるから。


まだ、私の居場所はありますか?









遅くなりまして申し訳ございません。

この度、しらねぇよ様よりまたまたAIイラストの方頂きました。この場をお借りしてご紹介の方させていただきます。


【挿絵表示】


Ultronのパーティに出席した際の「オシャレスーツお嬢様withユキピ」


【挿絵表示】


「酔っ払い上機嫌お嬢様」

こちらの二枚を頂きました。二人の魅力と言いますか可愛らしさと美しさがとてもすごくて、とてもすごかったです(語彙力)とってもしゅき。こんなかわいい人がお酒でぶっ壊れるなんて誰が考えたんでしょうねぇ……?



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