「しかし、私が方針を決めてもいいのだろうか?」
「構わないぞ我が友よ。我々のことを考えてくれるのはありがたいが、所詮我らは異邦人。気にする必要はないとも、駒として使ってくれたまえ。」
この世界を生きるサノスに、他の世界からやって来たサノスがそう答える。異邦人たちの技術レベルや所有する石の数、戦闘能力や年齢など違ったところはあるが皆同じ理想の元に動いている。そして他の世界の者から石を借りるためにやって来たのに、元々その世界に住んでいた自身に礼を払わないほど愚かでもない。
今いる世界で、“自身”の理想を実現した後に、石を借りて自身の世界を救う。手を貸すことでより確実に石を揃えられる、そのために動いているのに指揮系統の混乱を起こしてしまうのは本意ではない。
「……感謝する。では皆から聞いていた奴からの招待状もあることだ、皆であの星を攻め込もうと思う。何か意見はあるだろうか?」
「では、少しいいか?」
かといってこの世界のサノスも助けられている身だ。自身が持つ戦力と同等の力を持つ自身が10人以上、そして自身より未来を体験した者たちからの情報提供もある。あらかじめ奴の脅威を知ることができたということもあり、指揮権を任せられたとしても礼を尽くすのが道理であると考えていた。
そのためにいらぬ諍いが起こらないように、大枠の目標を定め意見を求める。それに反応したのは自身よりも年齢を重ねたサノスだた。
「確か貴殿の部下が乗ったQシップがタイタンへと向かっていたと思う、それはどうするのだ?」
「部下に任せようと思っていたが……、私が行った方がいいだろうか。」
地球に派遣したブラック・オーダーが乗るQシップは二隻。多くの世界で片方が帰還し、もう片方が地球での攻撃を行っていたらしい。この世界でも同じようになるようだ。経験した友の話では部下の一人がタイム・ストーンをもって帰還する、もしくはトニー・スタークをはじめとするアベンジャーズの一部とガーディアンズを名乗る例の集団が待ち伏せしているとのことだ。
我々が必要とするストーンは『ソウル・ストーン』ただ一つ。それ以外は私が持っていなくとも、私以外の私が所有している者から借りることができる。そうなればタイタンへと向かうあの船に気を配らずとも地球に戦力を回した方がいいと考えていたのだが……。
「いや、私はあの地で石を砕かれてしまった。君が行くとしても一人はまずいだろう。」
「ふむ……、だが地球にもかなりの戦力が用意されてるはずだ。わざわざこちらを呼ぶということは罠が敷かれているに違いない。生半可な戦力では危ういぞ。」
質問を投げかけた私に、違う私が意見を提示する。
なるほど、彼はこの世界のことを考えていてくれたようだ。確かにインフィニティ・ストーンはぞれぞれこの宇宙の重要な要素を司っている。石が砕ける程度でこの世界に何か起こることはないが、砕かれてしまっては二度と目的を果たせることができなくなる。
もし地球ではなくタイタンにソウル・ストーンが存在していて、こちらが奪う前に砕かれてしまえばもう自身にこの世界を救うことも、他の世界を救う手助けもできなくなる。タイム・ストーンしかなかったとしても私が指を鳴らすまで安全とは言えない。指を鳴らす直前に時間を巻き戻され、ソウル・ストーンを奪取されてしまう可能性もある。
すでに自身の責任はこの世界のみではない、目の前にいるすべての者たちの世界も救わねばならないのだ。少しでも危険性があるのならそれを排除する必要があるだろう。
やはりこの世界の石をすべて入手しておくべきだ。
「かといってタイタンに少数も危ういのではないか? 何人か経験したと思うがあの場にはタイム・ストーンの持ち主とトニー・スタークが来るはずだ。我々の知らぬ敵が隠れているやもしれん。」
「我らの中から三人ほど送るのはどうだろうか。石を持つ我らが集まれば最悪の事態にはならないだろう。」
自身が考えをまとめている間に、私たちの会議は徐々にまとまってきている。この場にいる13人のうち3人がタイタンへと向かい、石の受け渡しもしくは奪取を行う。そして残りの10人はタイタンへと向かった者たちの軍を引き連れ地球へと移動。全兵力を投入し、ソウル・ストーンを奪取する。
では、誰が向かうのかだが……
「……ならば私が立候補しても良いだろうか。」
顔の半分が莫大な熱量によって焼かれたような跡が目立つ私が手を上げる。今の私のように五体満足で活動する者も多くいたが、彼のように何らかの戦傷を持つ者もいる。その中の一人がタイタンへ向かうことを希望していた。
「構わないが……、理由を聞いても?」
「勘だ、奴があの場に来るような気がする。……私は奴にすべてを奪われた。この世界の奴と私の世界の奴は別の存在であることは解っている。だが……。この世界の私よ、殺しても構わんな?」
彼自身の口ではなく他の私から聞いた話だが、彼は石も、自身の部下も、家族も奴に奪われたらしい。そして痛々しく残るその傷跡も奴につけられたもの、失意の中敗走しているところを他の私に拾われここにいる。彼の目的は世界の救済であるが、奴への復讐でもあるのだろう。
「……あぁ、貴殿の気持ちが解るとは言わない。だが想像はできる。」
「感謝するぞ、私。」
彼に引き続き、残り二人の者が立候補し全員の役割がすぐに決まる。
これまでこのような会談を行うことはあったが、自身と同じ理想を同じ立場で実行するなどということはなかった。いわばここにいるすべての私が初めての友であり、兄弟でもある。
我々が救うのは自身の世界のみではない。
「ではそのように、後は地球への侵攻に参加しない者の軍は我らが分担して指揮を行う。では……、皆ですべての世界を救おう。」
◇◆◇◆◇
「ど、どうなってるの?」
地球から船に乗り込んで少し経った後、ピーターの声が艦橋に響く。この船は窓の代わりに巨大なディスプレイが使われているが、そも言語が違うし私たちが作るようなUIじゃないせいでどれをどうするか全然わからん。画面を見ても情報を得ることができない。まぁ一応何となくで理解することはできるが、さっきからずっと非日常で混乱してるだろう後輩君に解れというのは酷だろう。
「ついたようだな。」
「……自動パーキング機能があるとは思えない。操縦桿は……、これか。」
性格はちょっとアレだけど基本優しいストレンジ先生がピーターに捕捉してくれる。Qシップについては全く詳しくないし、こっちで勝手に調べたのは効率的な破壊方法ぐらい。もしかしたらいい感じに着陸させる方法があるのかもしれないが、私たちが解らない限りどうしようもない。つまり……
「あ~、さすがに不時着な感じね。」
「ピーター、そっちを持て。せーので行くぞ。」
トニーが近くにいたピーターと協力して巨大な操縦桿を操る。サノスのような巨漢が両手を装置に突っ込んで操作するタイプの操縦桿。文化圏が違い過ぎてどう動かすのか実際にやってみないとわからなさそうなものだが、トニーはそうでもないらしい。ピーターに指示を飛ばしながらできるだけ被害を少なく不時着させようとしている。
「当機は着陸機能が存在しないため不時着いたします、お手元のアーマーなどでお体を保護してくださ~い!」
徐々に迫るタイタンの地面。
私の声に合わせて、ってわけじゃないだろうけど皆が自身の体を守る為にアーマーを起動する。トニーとピーターがナノアーマーを。ストレンジが私たちを囲う大きな球体の盾を。私はさっきからずっとスーツ着てるからドクターの張ったオレンジ色のバリアの内側から青い光、ナノマシンでの防御膜を張っておく。
ちょっとだけ防御力が上がった私たちは原作通り思いっきり船を破壊しながら不時着する。
何かの風車みたいな羽にぶつかってドーナツ状の船が半分に成ったり、フラフラ思いっきり揺れたり、まぁ色々しながら頭から地面に突っ込む形の不時着。
「うん、キレイな不時着だね。」
ま、多分私が防御膜張ってなかったらちょっとした擦り傷出来そうな感じだったけど、この世界ではみんな何事もなく着陸できたのでキレイ、ということにしておこう。船の3/4が消失してる上に私が保護してなかった部分が瓦礫の残骸になってるのを気にしなければ完璧だ。
「そうか? まぁいい。魔法の盾か? 防御ありがとうドクター。」
「ありがとね~!」
「構わない、君のものも助かった。」
うんうん、みんな仲良し。まぁ一回地球帰ってるし、エネルギー補給にご飯みんなで食べたしね。トニーの方は私とかキャプテンとかと顔を合わせてからかなり精神的に安定してるっぽいし、ストレンジ先生もまぁちょっと心変わりがあったのだろう。彼が知らない師匠のこと、ワンさんについて私が知ってるってのもあるかもしれないけどさ。ちゃんと全部終わったら話すからね~。
そんな感じでお互いの働きに感謝してるところに後輩君がちょっと不安そうに声を上げる。
「ね、ねぇもしエイリアンに卵植え付けられて僕がみんなを食べちゃったらごめんね。」
「この先もずっと映画のネタを挟んでくる気か? やめてくれ。」
「……何そのネタ。卵植え付けられんの?」
あ~うん。また私の知らない映画! 多分前世にもあったのかもしれないけど知らない奴じゃん。多分ピーターが言うぐらいだから有名な奴なんだろうけど、昔の私はマーベルとかしか興味なかったし、今はそんなの見る暇あんまなかったからねぇ……。
というかエイリアンそんな感じじゃないって説明して……、なかったね。サノスが紫イモってぐらいしかこの子解ってないや。多分後輩君の頭の中じゃ紫のお芋さんからミミズみたいな触手が出てるような奴を思い浮かべてたりするんかね……。
ガーディアンズと合流した後ちょっと時間あるだろうし、デフォルメした敵の姿でも見せてあげといたほうがいいかな?
「まぁその時は私がエイリアン引き抜いてあげるよ、それに治療はドクターがいる。」
「……私がか?」
「? やらないの? ほらナノマシンで手術道具も作れるよ。」
「便利だな。」
ナノマシンを少し動かしてメスとか鉗子とかを作って見せる。まぁドクターが使ってたようなもうちょっとハイテクな機器は作るのに時間かかりそうだけど、大体なんでも用意できるよ。まぁ医療で無理だったら最悪頭だけ引っこ抜いて新しい体用意してあげるから……。
マスクの下で多分顔を青くしてた彼から『け、結構です。』とやんわりとした拒絶を受け取る。まぁそうだよね。脳さえ何とかなれば体はどうにでもなる、ってことを証明するために出そうとしてた私の体の作成記録とかユキのとかタイフォイドちゃんとかのデータをひっこめる。
と、そんなことしてたら彼からもう一つ言いたいことがあるようだ。
「あ、じゃあ本題に入るね。何か来るよ。もしかしてあっちで言ってたお仲間?」
カツン、と金属と金属がぶつかる音のあと、ボール状のモノが転がる音。私たちの目の前に現れたのは……、う~ん、赤いランプがチャームポイントの爆弾さんですね。
瞬間、爆発。
その場にいた皆が吹き飛ばされる。全員が防御態勢を取っていたおかげか、炸薬量が少なかったのか、それとも両方だったのかはわからないがそこまでダメージはない。っと、あんまりここで戦闘が長引いたり変なケガをしちゃうのは申し訳ないからさっさと制圧しちゃいましょう。ってことで私は一人で透明化します。
私の姿が完全に掻き消えたのと、襲撃者たちがやってくるのは同時。
「サノス!」
現れたのはガーディアンズの三人。クイル君にドラックス君、そしてマンティスちゃんだ。ここにソーとかがいたらまぁ面白いっちゃ面白いけど完全に戦力不足になっちゃうのでまぁちゃんと三人いてよかった。まぁある程度把握してたけど、ここで映画通りにしてくれるってことは結構な安心感がある。
そんな私の気持ちをよそに、ドラックス君が声を上げながら攻撃開始、ストレンジに向かってナイフを投擲してくる。私が隠れているので彼らから見れば三体三、一対一の状況が三つできることになる。が、残念なことにドラックスくんとドクターの相性は最悪。投げナイフをすぐに魔術の盾に防御され、マント君が先生の代わりに突撃。頭に巻き付いて一時行動不能。
「くたばれ! 悪魔の毛布め!」
まぁ確かにマント君の材質結構もふもふしてるからね。ってことで暴れてる彼の後ろからちょっとピリッとしますよぉ?
バチッという音と共に一瞬だけ彼の意識を刈り取る、だらんと垂れた腕を拘束する形でナノマシンによって作られた縄をくるっと巻き付けて無力化完了。私のナノマシンが青色に発光することはドクターも知ってる。透明化した私がやった、ってことはすぐ気が付いてくれたね。
(ほい、次!)
お次はクイル君ことスター・ロード。レーザー系の二丁拳銃を扱いながらちょっとした装備で空を駆ける彼。単純な地球人じゃ無理な挙動をしているあたりやっぱハーフってだけでも結構違うんだなぁと思う。
映画通り彼の相手はトニー、残骸をうまく使いながら攻撃する彼。ちょっと反撃されちゃうけどうまい具合にトニーの胸へととある爆弾を取り付ける。ほらあのくっつくやつだ。起動したら強力な電磁石になるやつ。
(ま、意味ないんだけど。)
トニーのスーツからすぐにナノマシンが動き出し、取り付けられた爆弾を取り込む。それと同時に無力化、ポイっとお外に吐き出される形に。もちろんトニーのスーツにそんな機能はついてなかった、私が地球で勝手に仕込んだ強化パッチのおかげってわけ。
「おい、マジかよ! それ高かったんだぞ!」
「あ、そう? じゃあもっと高いのあげるね。」
宙を飛ぶ彼の目の前に移動し、光学迷彩を解除する。彼から見れば急にこの白い体が浮き上がったように見えるだろう。使い物にならなくなった爆弾君は後で新しいのあげるとして、多分それよりも高価なナノマシンをプレゼントしてあげる。あい、二人目拘束完了!
「うわぁ、卵植え付けられちゃう!」
おっとマンティスちゃんと忘れるところだった。ピーターの方に顔を向けると彼女から蜘蛛のように高速で逃げようとするピーター。いやまぁ確かに昆虫っぽいお顔してるけどマンティスちゃんかわいいじゃん……。もしかして後輩君って虫嫌い?
おっと、さっさと止めないと。
「マンティスちゃん~?」
「……私?」
「そう、キミ。私たち、アベンジャーズ。ソーの仲間。おけ?」
映画では色々あったけどそこら辺はややこしいし、時間がもったいないのでカットだ。多分一番これが早い。
◇◆◇◆◇
「……もしかしてあんたら敵じゃない?」
「そうそう。さっきから言って……、はないね。クイル君? スターロード? まぁいいや、愛しのガモーラちゃんはここにいないよ。というかこんな墜落船にいるわけないけないじゃん。あとサノスも同様。は~い、じゃあ仲間の補充もできたしサノス殺しに行きましょうねぇ~。」
捕まえた彼らと、おとなしくしてくれててるマンティスちゃんに並んでもらって状況の説明を簡単にやっておく。あ、クイル君のマスクは私が勝手に取り外して置いたよ? ついでにちょっとした強化も。
あ、トニー。私ここらの瓦礫吹き飛ばすから詳しい説明よろちゃん!
「あ~、クイルだったか? わるいな、ウチの子はちょっと悪ぶるのが好きなんだ誤解したならすまない。」
「え~、私って誰からどう見ても悪女だけど~?」
「悪人ならあのハゲはアベンジャーズに入れないだろ。」
「ほんとかなぁ?」
ドロッセルちゃん悪い子ですのにねぇ? ……あ、ジュノー? 今のはほら、違うからね? 冗談よ冗談。だから変なこと考えなくていいからね? ママ、ジュノーにはいい子でいてほしいなぁって。
「あなたたちってほんとにアベンジャーズ?」
「うんうん! ほらみんなテラの人間だよ、地球のスーパーヒーロー集団ってソー言ってたでしょ? アスガルドの雷神さまね。金髪の。……あ、拘束もういらない?」
船の残骸をスキャンしながらマンティスちゃんの疑問に答える。あとついでに拘束してた二人も暴れなさそうなので、解除。固定していたナノマシンのリングがパチンと外れ、地面へと落ちる。あ、わざわざ拾って返してくれるのマンティスちゃん。ありがとね~。
「そこの船長さん風に言うと……、『背は高いが見た目はイマイチ』な人でしょう? ガモーラちゃん取られると思って変なことしてたよねぇ。声低くして『俺が船長だ!』」
「ブホォ!」
私の声まねで、ドラックス君が噴き出す。マンティスちゃんもちょっと笑ってるね。ふふふ、受けたようで何より。
「なぁ、あの白いお仲間さんって、もしかして心読んじゃう感じ?」
「あ~、まぁなんだ? ちょっと違うが大体知られてると思った方がいいぞ。」
「……マジかよ。」
なんか後ろでトニーとクイルが話してる気がするけどまぁいいや。ほいほい、今ちょうど外に繋がる穴リパルサーで開けたからさっさと出ますよ~。
「あぁ、そうそう。クイル君だけどさ、多分無事だと思うよ。」
「……本当か?」
彼女が死ぬ理由、それはサノスがソウル・ストーンを手に入れるために彼女の命を使ったということ。すでにこの手にこの世界のソウル・ストーンがある以上、ヴォ―ミアに行こうとレッドスカルのおっちゃんが『ソウル・ストーンはすでにここにはない』って言うだけのアトラクションになってるからね。
レッドスカルの熱狂的なファンじゃない以外はうれしくも何ともないし、あの場所に石がないってわかった以上サノスが向かうのは地球かタイタンの二択。
「っと、外は明るいのね~。」
地球に来た場合はワカンダに控えてるアベンジャーズとワカンダの民、そしてウチの娘たちと合流してそのまま撃破。こっちに来た場合はいい感じに弱らせた後、地球に叩き落して首チョンパ。そうすることで敵の雑兵たちにトップが死んだことを見せつけるわけですね。そこで引いてくれればよし、引いてくれなければ殲滅戦だ。
ま、こっちは私がいるから何とでもなるし、地球の方もヴィジョンをいい感じに強化してあげた上に娘たちもかなり強いから安心だ。
「さぁって、じゃあサノス君をぶち転がす作戦でもみんなで……ッ!」
私たちの目の前に、青い門が開かれる。
力は使ってない、私のスペース・ストーンじゃない。
……違う、違う! 私の記憶にこんなのはない! 参考にもなってない!
「構えて!」
青い光の中から、ゆっくりと人影が浮かび上がってくる。
一人。
二人。
三人。
私の知らない奴らが、サノスたちが、そこにいた。
「久しぶりだな、ドロッセルよ。」