前方に向かって放射状に小型ミサイルを撃ちだし、空へと飛びあがる。この地上での戦いも重要だが、どっちみち宇宙空間上にいる奴らを排除しなければこの戦いに終わりはない。けどこのまま放置すればソーがいたとしても劣勢なのは確か。
やるべきことはすぐにこの戦場を一度安定させて、空へと飛びあがること。
私の補給自体は月かこの上で戦ってる娘の誰かからナノマシンを分けて貰えば何とかなる、となるとヤルことは一つ。最低限のナノマシンだけ残して全弾放射の大パーティーだ。ついでにタイタンでサノスを三人倒したおかげで奴らが持ってた石を使っている、っていう体で石も使い放題。まぁやり過ぎたら寿命なくなるのでほどほどだけどね?
「みんなも頑張ってるし、私も頑張らないと!」
私がやらかしたり隠してたせいで色々あったけど、昔からの憧れで、その上一緒に戦ってきた仲間と戦場にいるってことはやっぱり気分がよくなってしまうみたい。ちょっとだけいつもよりも上がったテンションに心地よさを感じながらも敵を減らすために行動を始める。
タイタンに出張してた面々も事前にワカンダが戦場になっているのを伝えてたおかげか、それともヒーローとしての行動なのか、まぁ後者だろうけどすぐに攻撃を始めてくれている。私がやるのはその間を縫うように敵の数をできるだけ0に近づけること。
使えるすべてのナノマシンを放出し、ミサイルへと変えていく。さらにそこからリアリティ・ストーンを使用して同じミサイルを大量に複製し、現実として固定する。後はパワー・ストーンでロックオンした敵を地面に張り付けて全弾放射。ブラックオーダー級の敵になるとちょっと殺し切れないかもしれんけど、雑兵相手なら確殺。よし、これでいい。
「メリタ、トルネア! 石を持ってるあなたたちがブラックオーダーの相手をしなさい!」
『『かしこまりました、お母様。』』
「ポップちゃんたちはそのままシールド外部での戦闘を続けて! 最悪体は捨てちゃって、新しいのに変えて来てもいいからね!」
『Pー1了解、行動に移します。』
「コーンはプログラム送るから一旦後方に下がってドローンの生成を! ナノマシンが足らなくなったらワカンダの人からもらって、空中に足場を作りなさい!」
『う、うん! わかった!』
娘たちへ簡単な指令だけを送り、そのまま原作通りに空いたバリアの隙間から空へと飛びあがる。
二本のTailを変形させ、円錐状に。空気抵抗を減らしてそのまま大気圏を飛び出し宇宙空間まで戻ってくる。
空気抵抗でさっきまで真っ赤になっていたTailを元に戻し、内装のナノスーツの設定を対宙用に切り替えて置く。外装だけでも密閉はできるけど破壊された時酸素が持ってかれるとヤバいからね。
ここからの戦いは私のスタミナ、というよりも酸素をどうやって確保するのかも重要になってくる。一応ナノマシンで酸素とか熱とかを無理やり作ることもできるっちゃできるけど、そう言った生命維持に振り分けすぎると戦闘がおろそかになる。気を付けていかないと。
自身の体はまだ無理が効くけど、ないものを生み出すにはそれ相応のコストが必要になる。そういうのは昔から嫌なほど理解している。……サノスの一人を尋問してある程度情報を得たからこそ、今のこの現状。サノスがわざわざ不吉な数字になるまで増えてくれた理由。
そう言うのは全部“私”に起因しているってこと。
この私も、他の私も、全部含めて私だ。ただでさえ並行世界の問題は奴のおかげで色々ややこしくなっているんだ。後始末ができてないのはある程度解ってた、そのしわ寄せが今来たってことだ。
「ッ!」
っと、上がってきたらすぐに攻撃が飛んできた。さっさと数を減らしていかないと。駆逐艦サイズの敵船から飛んできた実体弾を避けそのまま攻撃に転じる。リパルサーやTailをバスターキャノンあたりに変更して破壊するのにはちょっと大きすぎるサイズ。だったらもうバラバラにするしかない。
二本のTailから小型の照射装置、まぁファンネルだね。それを複数飛ばして対を作らせる。対になったファンネル同士の間に生成されるのは真っ赤なレーザー。トニーが使っている200ペタワットのレーザーカッターと同じような奴だね、まぁあれよりもかなり強化されてるけど。
この子たちを回転させながらそのまま投げつける。そうすれば一気に駆逐艦のところてんが出来上がるわけだ。ま、消費電力が大きいせいで一回使ったら充電しなきゃだし、ファンネルが落とされる可能性もあるから使いにくい部類なんだけどね?
「マスター!」
「お、イヴ。」
「補給のナノマシンです!」
「あいよ! こっち追加の石!」
真っ黒な外装に紫のラインが入るスーツ、『エンプレス』を纏う彼女から白いTail、丸々全部ナノマシンで出来たソレを受け取る。それをそのままスーツに押し込み、溶かすように取り込ませていく。それをしながら指輪から取り出した石を彼女に渡す。『エンプレス』は遠隔操作特化型のスーツ、操作している側に影響が行かないようなプロテクトは作ってあるし、何より私が全ての石を手に入れた後に作ったものだから石の使用に対しての耐性がある。
まぁ耐性自体は娘たち全員の体についてるんだけど……。ま、今のイヴなら有効に使ってくれるでしょう。サノス相手にやるときは石の無力化が基本戦術だしね。
「残敵は?」
「敵母艦9、サノスも同数になります。また遅延戦闘を行っていた艦隊ですが全損。手の空いている妹たちは月面から体が完成次第反攻中です。」
「了解、とりあえず合流される前にできる限り削るよ!」
二人とも、色々話したいことがあるけど目の前の敵をどうにかするのが先。ちょっと離れたところではヴィジョンが戦ってるし、他の娘たちも自分の体や艦船を使って戦ってるときに休憩とかしてる場合じゃない。何より頑張って木星・火星艦隊が押しとどめてくれてた敵の本隊が来てしまう。
母船を落とすのは難しいとしても、コバンザメのように張り付いている他の艦艇とかは急いで削る。それぐらいはできるし、メインエンジンと兵装さえ破壊できればただの置物兼武器にもなる。実際敵の駆逐艦級を振り回して戦ってる娘いるし。
イヴから補給を受けたのち、右端と左端を分け持つように二手に分かれる。彼女から受けた補給のついでで渡された戦況と敵情報を確認しながら右端から削っていく。
「ジュノー! サポート大変だと思うけど頑張りなさい!」
『はい!』
高速で動き回るこういった宇宙上の艦隊戦の予測演算は非常に面倒、重力の計算がない分空中戦よりは楽かもしれないけど敵と味方の数がこれまでの戦場とは段違いだ。私は私で攻撃や回避に専念しないといけないから、全体の把握とその予測はジュノーの仕事になる。
私の隣でずっと経験を積み続けたイヴなら両方こなしながら、追加で他の子のサポートもできるがジュノーは目の前に広がる全部が初めて。スペックはあれどもその使い方が完璧じゃない、経験不足な子に任せるのは忍びないけど、やってもらうしかない。
「サブ・リパルサー展開!」
敵の攻撃を回転しながら回避し、補充したナノマシンでファンネルみたいなリパルサーを多数生み出す。
ジュノーが把握したチタウリや敵戦闘機にリパルサーを放射して数を減らし、付近の敵濃度が減れば自身の両手にあるリパルサーとサブを合わせて攻撃を集中、敵艦船の砲台やエンジンに向かって放射させる。色々な並行世界からやって来た船たちだ、それぞれに独特な設計方針があってみているだけでも面白いっちゃ面白いが……。
容赦なく落としていく。まぁどんな船でも動力を破壊してしまえば動かなくなるし、上手いこと燃料部分に引火したり、暴発させたり、核分裂させたりすると船ごとあたり一帯が吹き飛ぶから結構楽。サノスの部下としてこの戦場にやって来た不幸を呪ってもらうってことで。
「ッと! 危な!」
そうやって色々暴れていると私の周囲に紫のパワー・ストーンが集中。360度全方位からの残骸を用いた攻撃だ。さすがにこの量はよけきれないのでこっちもパワー・ストーンを使用し攻撃の受け止めではなくストーンが及ぼす世界への影響自体を消し飛ばす。
こうすれば余計な加速もしないし、瓦礫自体にかかる強度バフも消える。ブラスターをふかし隙間を縫うように回避、避けきれない物はリパルサーで打ち落としておく。
「……お呼ばれしたことだし、こっちの数も減らしておこうか。」
私たちがサノスに押されている理由は単に数の差、ってのもあるけど何よりこっちの攻撃の大半がサノスの持つ石に無力化されてるってのが大きい。この効果はこっちの誰か、ウチの娘たちか私が対応する石を持っていれば無効化することができる。
まぁ数が数だし奪われると相手の戦力が上がっちゃうから取扱いに注意しないといけないんだけどね。それに打ち消せるのは一つの石で一つまで、つまりサノスが二人同時にパワー・ストーン使った場合私が効果を打ち消せるのは一人分だけ、ってことだ。そうなると奴らが全員集合されると困るわけで。
「いい感じに分散してるときに殺したいんだけど、まぁそんなにうまくいかないよね!」
こっちが母艦に向かっているのを察知したのか、エネルギー弾やミサイル、実体弾など大量の物が飛んでくるのを避けながら前へと進む。他の子からの学習データ共有もある為か、ジュノーのサポートも短時間で結構滑らかになってきた。
「どこにガモーラちゃんいるかわからんし、すぐに母艦を落とすのはできないけど……。サノスは殺しちゃダメっていわれてないからね、っと!」
ナノマシンを脚部に集中させ、円錐状。ドリルのようなパーツを生成し、回転させる。狙いはサノスの母船、サンクチュアリの外装。
「……あぁ、なるほど。当たりか。」
運がいいのか悪いのか。
とりあえずクイル君との約束は守れそうだ。
◇◆◇◆◇
全てを突き破り、目的地まで直線距離。天井を突き破って降り立つのは彼らにとっての玉座の間。ナノマシンを溶かし待機状態へ、着地の瞬間に軽くブースターを吹かすことで衝撃を緩和する。
私が察知している反応は大きく分けて、二つ。一つはこの世界の彼女かどうかわからないが別の部屋で捕まっているガモーラちゃんの反応、イヴが集めたのであろう彼女の種族・ゼボベレイのデータとクイルたちの船に残っていた彼女の生体データを参照に索敵してるからまぁ間違いはないだろう。並行世界の彼女、って可能性もあるけど。
もう一つの反応は石の反応。パワー、スペース、リアリティの三つの反応。
……私たちが持っているこの世界の石は、ソウル、マインド、タイム。
すでに力を持たない私だけど、何となく目の前にいるこいつは。
当たりな気がする。
「二年前、私の知らぬところで世界の危機が起こっていた。」
「この世界のみならず、他の世界も同時に。数多くの並行世界が全て、消滅の危機に瀕していた。」
「その危機は人知れず終わり、我らが生きるこの世界を含めた数多くの世界が今を生きている。……名も知らぬ数多くの世界、生き残った世界よりも多くの並行世界の尊い犠牲のおかげで。」
「愚かにも私は、彼らがこの世界に来てくれるまで全くそれを知らなかった。ただ石を集め、世界をより長く存続させるための時間を稼ぐことができれば。今の世界よりも素晴らしい世界を作ることができると。」
「我が理想を理解してくれるものがいれば、世界の延命はより長く、より何度も行われることになるだろう。長く時間を稼げば稼ぐほど、未来に生きる者たちが私には思いも付かなかった解決策。人口増加による食糧不足、貧富の差の拡大、世界に人が増えすぎたことで生じる問題をいずれ過去のものにできるだろうと。」
「……だが、それも世界そのものが残っていなければ意味がない。」
彼が、スペース・ストーン。青き空間の力を開放する。相殺は、できない。今この世界に働きかけている空間の力は一つじゃない、全部で、九つ。私が相殺できるのは目の前にいる奴の一つだけ。
彼の横に並ぶように、八つの青き門が開かれる。
そこから現れるのは、別世界の彼たち。
「まずは、この世界を救ってくれたことに感謝しようドロッセル。」
「だが、貴様の持つ力によって滅ぼされた世界のことを忘れてもらっては困る。」
「この世界の貴様に。そして自身の世界の貴様に、我々は多くの物を奪われた。世界そのものを奪われたもの、世界を救うために必要だった石を奪われた者、家族を、部下を、すべてを奪われたもの。皆、貴様に思うところがある。」
「……だが、我らは復讐者ではない。」
「せめて残った世界だけでもより長く、より多くの命が生き残り、幸せを享受する選択を選ぼう。」
「我々が手に入れることのできなかった最後のピース、ソウル・ストーン。そして貴様の持つ並行世界を操る力。」
「散ってしまった友たちの願いを叶えるためにも、貴様の手に余るその力。」
「譲ってもらおうとしよう。」
「……あぁ、そうだ忘れていた。貴様らの言葉では世界のために戦う者たちをこう言っていたのだった。」
「我らも貴様たちと同じ。アベンジャーズだ。」