前世から愛をこめて   作:サイリウム(夕宙リウム)

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「      」

 

 

「にしても先輩、ね。……それでドロッセル、でいいのかしら。何ができるの。」

 

 

対サノス戦において心強い味方、キャプテン・マーベル。サノスと対峙している中、タイフォイドに上げたのと同じタイプのインカムを投げ渡しながら、彼女からされた質問になんて返答するか、どういえば伝わるかを軽く考える。まぁそんなことよりも、私も聞きたいんだけどさっきの『思ったより多いのね。』って私に対して? それともサノス? まぁ私と娘たちの体は設計者も思想もほぼ同じだから似るし、サノスはサノスで別世界の同じ存在だから似ているわけで。……両方か?

 

 

「あ~、なんだろ。歩く戦闘機かな? あ、私と黒の子がメインでそのほかサポートで行くから。」

 

「了解、じゃあ合わせて頂戴!」

 

 

全身から金の光を発し、その身に宿る力を開放した彼女が両手からフォトンブラスト、光子ビームを放ちながら突貫する。相手は瓜二つ、正確には瓜八つのサノス君たち。石持ちだし連携を取らせないように暴れまわるのは最適解だ。まぁその中に突っ込んで戦うのがすごい難しいって問題点があるんだけど。ほらやっぱり初対面だからわからないとこもあるじゃん?

 

 

「行くよ!」

 

『はい、ママ!』

 

 

ま、こちとらずっと個性豊か過ぎるアベンジャーズで鍛えられてるし、私も似たような動きするから中に入り込めない訳ないんだよね! ワンテンポ遅れてこちらもサノスの集団へとなだれ込んでいく。

 

石の数はあっちの方が上、それによって強化された身体能力も上。だけど数は圧倒的にこっちの方が勝ってる、サノスは皆地球人より一回りも二回りも大きい。つまり的がでかい、ってわけだ。

 

青い光に紫の光、そして緑の光を体に纏わせているサノスにリパルサーでの牽制をする。同時に石を使っているせいか、思っていたように光線が止められ、湾曲し、強化されて跳ね返ってくる。

 

 

『吸収します。』

 

 

体を加速させながら前へと進み、イヴが左手に生成したエネルギー変換装置で受け止める。同時に目の前にいるサノスが使う石と同じものを取り出し、軽めに相殺。他のサノスも使ってるし、私もジュノーも使用している。若干このあたりの磁場というか空間が可笑しくなってきているような気もするが気にしない。こっちは一時的にその厄介な石のシールドを剥げればいい。

 

石の力が一瞬だけ打ち消さる。瞬時に守りの壁が生成され直されるが、一度生じた歪みは消えない。その隙間を縫うように右腕を押し込み。

 

 

「イグニッションッ!」

 

 

右肘に噴射機構を生成、さっき吸収したエネルギーをそのまま爆発させる。

 

握った拳の目標はその大きな紫の顎。ずっと隣にいてくれた相棒のおかげで、寸分たがわず吸い込まれるように目標へと到達し。殴り飛ばす。

 

その飛ばされた先に待つのは私の娘たち、『戦いは数だよ母上ェ!』といういつの間に覚えたのかわからないチャットを私に送り付けた後、まるで虫が這い寄る様に数で埋め尽くしていく。……うん、見た目はアレだけど効果抜群だもんね。真っ先に石を奪い取りその生命活動を終わりへと導く、他のサノスが助けようにも他の娘達やジュノーにキャロル。あぁキャプテン・マーベルのことね。彼女たちに邪魔されてどうしようもない。

 

比較的私に近い位置にいて、私が攻撃しやすいように両手両足に娘たちが張り付いているサノスの腹部に全力で蹴りを入れる。すぐに拘束は剥がされるがもう遅い、八人目のサノス。ご臨終。あと七人!

 

 

『多重ナノバインド、合わせ。今!』

 

 

私の肩、そしてさっきサノスを拘束していた娘たちの各部からイヴの声に合わせてナノマシンの縄が放射される。瞬時にスペース・ストーンによる空間の保護で防御されるが想定済み。奴の体に纏わりつくために放射されたソレは瞬時に目的を変更。奴の体ではなく空間に張り付き、ナノマシンによる即席の檻を作り上げる。

 

 

「小隊集合!」

 

 

すぐに破られるのは解っている、だからこそ攻撃を置いておく。さっき殺したサノスから奪ったスペース・ストーンを娘の一人が使用し拘束中のサノスから空間の力を取り上げる。これで取れる手段は三つ、力で押し通すか、時間を巻き戻すか、檻を空想のモノにするか。どれもすぐに彼を脱獄させてくれるだろう、その場から逃げることはできないが。

 

彼が何とか拘束を振り届こうとしている間に子供たちを集合させ、その体を変化させる。小隊規模は4。左腕と右腕に二人ずつ抱き着く形になったそれは瞬時に大口径のエネルギー放射装置に生まれ変わる。娘たちの体を一つで十全に動かせる縮退炉が四つ、私のスーツから捻出したエネルギーを補助と制御に使い、残り全ては破壊のためだけに使用する。

 

 

「撃ェ!」

 

 

ナノマシンの檻が吹き飛ばされるのと、充填が完了しこっちが光弾を発射したのはほぼ同時。サノスよりも二回りほど大きな光球は船の床や天井を消し飛ばしながらサノスを飲み込み、その影すらも光に飲み込まれていった。残り6!

 

 

「キャプテン! 補給どうぞ!」

 

 

射線上にいた娘たちに避難警報を出しながら、大先輩に向かってコールをしておく。彼女が抑えててくれてたサノスの付近にいた娘たちからの支援砲撃もあり、すぐにその場から反転したキャロルパイセンは黄金の光を靡かせながら私が放射した光弾に突っ込む彼女。

 

その身に宿るバイナリー・パワーが作動し、単純なエネルギーの集合体だったソレは彼女の力へと変換される。太陽のようにあたりを照らしていた光弾は瞬時にその体へと吸収され、先ほどまで纏っていた力よりもより大きな反応が出現する。吸収し、増幅する。溢れ出る単純な力が漏れ出すように、キャプテンの眼には強い眼が灯っていた。

 

 

「はぁぁああああ!!!」

 

 

そのエネルギーを両腕に集中させ、放たれるのはフォトンブラスト。先ほどまで彼女が見せていたものとは桁違いのエネルギー量、口径。そしてその二本の光柱が狙い打つのはもちろんサノス。石が嵌められたガントレットによって防御を試みるが、それを許してくれるほど戦場は甘くない。

 

攻撃を受けていない残り4人からの先輩に向かっての攻撃が飛ぶが、上がって来ていたジュノーに全て弾かれ、私や他の娘たちの妨害に合いそれどころではなくなる。

 

光杭を打ち込まれているサノスたちも最初は態勢を崩されながらも、踵で地面をえぐる様に後退することで何とか受け流しに成功する。だがそんな無防備な状態を放っておく子は一人もいない、受け流していた腕部や、脚部に攻撃を加えられすぐに姿勢を崩してしまうサノス。その隙を見逃さずに押し込むようにさらに出力を上げたキャロルによって消し飛ばされてしまった。残り、4人。

 

 

「それ、どこから持ってきたの?」

 

 

攻撃を終えた先輩が私の横に飛び降りながらそう聞いてくる。まぁ確かに縮退炉なんか地球のテクノロジーじゃ絶対に無理な代物だもんね。先輩が知ってる地球の時代ってポケベル全盛期なわけだし、彼女が過去に乗ってた四次元キューブを利用したエンジン。ライトスピード・エンジンだったけ? 資料でしか知らないけどそれより上だからねぇ。

 

 

「自作~! おひとつご所望ですか?」

 

「やめとく。さ、押し切るわよ!」

 

 

というか正直これに関してはこの宇宙の誰にも負けてない自身がある。だから暴発とかしないし、普通に壊れるだけだったら無差別に全て消滅させるとかない安心安全のエンジンなんだけど……。あんまりお気に召さなかったかな? まぁ確かに一つ間違えれば太陽系が目じゃない範囲がブラックホールに飲み込まれちゃうんだけどさ。

 

 

『だからでは?』

 

「むぅ! 暴発しないもん!」

 

『まぁ敢えてしない限りはありえませんものね。それと報告です、地球からの援軍のおかげで当宙域にいた残存兵力の消滅を確認。残るはこの船と敵増援のみです。』

 

「お! ほんとに!」

 

 

イヴによってディスプレイに被害報告が上げられる、ウチの子たちが限界まで頑張ってくれたおかげで数が増えれば後はどうにかなったみたい。増援後の被害報告がほとんど0に近い、ナノマシンでの自動修理に任せていいレベルだ。

 

ニックたちの方も戦闘機がいくつか落とされたぐらいで艦船の方へのダメージは軽微、撃墜されたパイロットも娘たちが率先して救助したから人的被害は驚異のゼロ、怪我人が出たぐらいってのはちょっとできすぎじゃないの? あはは! ちょっと神様ひいきにし過ぎでしょ! もっとこっちに贔屓しろ! 一流の悲劇よりも読む価値もない何もない日常の方が好みなんだよ私は!

 

 

「ニック! 今倒した奴の大体9倍弱くらいの増援が迫ってるからそっちの方お願い! 残った母艦はこっちで処理する! 遅延戦闘中の子に通信開くから連携頼んだ!」

 

『了解した。聞こえてたな! 全艦敵を待ち構えるぞ!』

 

「それとニックが呼んでくれた彼女! 最初のアベンジャーがもう来てるよ!」

 

『フッ、そうか。なら進んだ地球の科学力って奴をお披露目しようか。』

 

 

それを最後に通信が切られる、同時に動き出す地球防衛艦隊。細かいところまではちゃんと見てないからわからないけど、私やイヴから隠れながらこそこそ作ってたであろう戦艦たち、地球の技術の粋を集めて地球で建造された船。多分カタログスペックだけ見れば私が作った奴の方が性能はいいだろう。……でも、不思議とあっちの方が強そうに見える。何せしょっちゅう破壊されたヘリキャリアじゃなくてスペースキャリアらしいし。忌み名を捨て去ったキャリア君は多分強いのだ!

 

 

『……多分これ名前つけたのハイツレギスタ系の開発者ですよね、完全に響きで選んでますもん。なんで宇宙運んでるんですか?』

 

「あはー! ちょっと余裕出てきたねぇイヴ! さぁ残りもさっさと掃除しちゃいましょう!」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

部屋の中央に奴らを押し込み、全方位から波状攻撃を仕掛けていく。本音を言えばさっきまでみたいに各個撃破したかったんだけどさすがに4人、ほんの少しの時間で半壊すれば固まって耐え忍びながら突破策を練ろうとするのも仕方のないことだろう。

 

この船、サンクチュアリⅡだけどもちろんサノス以外に敵がわんさか乗っている。チタウリやアウトライダーだけじゃなく、ブラック・オーダーには入れなかったけどウチの娘達でも苦戦するような相手がたくさんね? 普通なら自分のご主人様がどんどん死んでるのに助けに来ないのはおかしいんだけど……、誰一人として救援は現れず! 人望ナシ! ……だったら面白かったんだけどね? 普通にうちの子たちが頑張って足止めをしてくれている。

 

そんな姉妹たちの体を作る生産工場は三つ、月と火星と木星。艦船とかを作ってたラインを全部止めて全力で体を作っている工場たちのおかげで、どれだけ破壊されても時間さえあれば娘たちは復帰してくる。それにある程度習熟した子なら一人で複数の体を操れるし、頑張ればイヴみたいに私のサポートをしながら大隊規模を動かすってことも。

 

彼女たちのおかげで今サノスたちと戦ってる部屋には敵の増援はやってこない上、こっちの増援はちょっとずつ増えていってるってのが現状。サノスがスペース・ストーンでお仲間を呼べれば話が違ったんだけど……、殺したサノスから頂いた奴があるからね。拾った子が目ざとく察知してすぐに打ち消している。

 

 

『出力安定、いつでもどうぞ!』

 

 

サノスの頭をミンチにした脚部兵器を作ってくれた娘の一人、マールが託してくれた長物片手にサノスに向かって叩き込む。彼らも学習してくれたおかげで遠距離兵装が効かなくなってきた。こうやって固まっている分まとめて吹き飛ばしたいところちゃんではあるが、多分それをやったら手堅い反撃を喰らうだろう。奴らの勝利条件は私の持つソウル・ストーンを手に入れるということだけ。私が一瞬でも隙を見せてしまえば終わりだ。

 

まぁその分囮としては最上級のモノになるんだけどね? イヴにはバレてるけど絶対よくは思ってないってのがひしひしと伝わってくるよ。いつの間にか無人機、正確にはイヴが操る遠隔操作ボディで私の周り固められてるし。何かあった時がコレを壁にして私を守る気だ。よくやるよほんと。ありがとね!

 

棒で敵の攻撃を受け流し、そのまま全力で胴体への突き。これまでの戦闘の疲労か、インフィニティ・ストーンの過剰使用によるダメージか、それとも次々と自身が死んでいく様を見せられた精神的な動揺か。何かは解らないがあっけなくその攻撃は通り、彼一人を壁際まで吹き飛ばす。

 

 

「そろそろ降参してッ! みんなのいる地獄に帰ったらどうですか!」

 

「我らの理想を実現するまで! 終われん!」

 

 

私が最初に使った近接武器、スティック。言ってしまえばただの棒だ。スイッチ一つで展開し、持ち運びが簡単。殺傷能力も振り回して叩く、もしくはリアクターのエネルギーに頼った電撃のみ。今の私からすれば玩具みたいなものだ。

 

けど、何かとその使いやすさと携帯性から結構な期間使い続けていた武器でもある。それを彼女は理解していたのだろう。

 

 

手に、馴染む。

 

 

今の身長に合わせて長くなったソレを振り回しながらサノスの持つ大剣を弾き、流していく。おそらく目の前にいるサノスはこの世界の存在。奇しくも使用する武器は原作と同じ、中央に持ちてが付いた上下両方から刃が飛び出している大剣で。その使い方は今の私と同じ。

 

中央に手を置き起点に、腰の周りをなぞる様に回転させ速度を上げる。そしてそこから上段からの打ち込み。

 

 

「電気ってお好き?」

 

 

金属と金属がぶつかる音。ただの棒からナノマシンと強化合金によって強化されたソレはもちろん放電能力も強化されている。新しい機能を付けずに、単純に性能だけを押し上げる。文字にしてみれば簡単なことだが、実際にやって見せるのは結構違うのだ。

 

おそらくサノスも電気対策はしていたのだろうが、それでも無力。青白い光がスティックから放出され、視界を白で埋める。それと同時にセンサーが目の前の奴の腕が電気によって焼け焦げたことを教えてくれる。徐々にダメージを与えている、もう時間の問題かな?

 

 

「ッ!」

 

「今なら楽に殺してあげるけど?」

 

 

マヒした奴の顎をスティックで叩き上げ、一瞬だけ意識を刈り取る。すぐに現実に戻ってくる彼だったが与えられたダメージは大きい。そのまま倒れ伏した奴の首に棒の先端を当て、最後の問いを投げかける。

 

 

「……犠牲なくして、世界を救うことは出来んのだ!」

 

 

何かしてくる。どっちみちすぐに殺すのは決めていた。行動を起こされる前に殺し切る、スティックの出力を最大にし、その首へと叩き込む、が。

 

 

 

 

「ガァァァあああああ!!!!!」

 

 

 

 

落とせない、その先端をガントレットでつかみ、苦痛を挙げながらも電流に耐える。

 

 

ガントレットは左手、この世界のサノスが持つ石はパワー、リアリティ、スペースのみ。

 

 

そこに嵌るのは、二つ。青と赤。

 

 

ッチ、最初からそのつもりか!

 

 

 

 

叫び声を挙げながら空いたもう片方の腕、左手の中に握られているのは紫の物体。電流による痛みか、生身で活性化したパワー・ストーンを持つ痛みか。その二つを乗り越えたサノスはその力を行使し、同時に握りつぶす。

 

世界の一要素がそこではじけ飛び、奴もろともすべてを吹き飛ばした。

 

 

 

「ッ!」

 

『シールドッ!』

 

 

イヴが急いでナノマシンを生成してくれたおかげで直撃は避けられたけどこれはちょっとまずい、いくら異世界から大量に持ってきたとはいえあの石はこの世界独自の物。それがぶっ壊れたせいでこの宙域も同時にぶっ壊れた、ただでさえ石の大量使用に無理やり石同士で相殺とかしてたんだ、元々無茶苦茶不安定だった場所にこんな爆発が起きればそりゃ壊れる。

 

後ろに吹き飛ばされながら、確認のため指輪から石を取り出す。そこから出てきたのは文鎮ぐらいにしかならなそうなただの石ころ。光が完全に失われている。この世界が壊れたわけじゃない、でも一時的に切り離されたってのが正しいか。

 

 

『地上でのストーン使用は問題なしとメリタ・トルネア両名からの報告あり、じきに回復するとは思われますが……。』

 

「どっちみちこれの対処は無理ってわけか。」

 

 

最期のあがきと言うべきか、おそらく暴発させたサノスは相手側にタイムストーンがある限り復活してくるだろうが、地球付近の宙域で戦っていたことが裏目に出た。パワー・ストーンが壊れる寸前に遺した命令はこの船の移動。

 

信じられない速度で加速し始めたサンクチュアリの目標は地球、このまま衝突させる気だ。

 

 

「全員退避! 地球軌道上で落とすよ!」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「だらっしャァ!」

 

 

両腕に炎を纏わせながらアウトライダーの一体を殴り飛ばす、吹き飛ばされたソレは同胞たちを巻き込み、引火。もう一度彼女が手を振ることで一つの山が全て塵と化した。

 

 

「おぁもう! あの婆さんはまだ来てねぇし! よくわからん奴はうじゃうじゃいるし! なんだこの戦場は! もっとマシな仕事寄越せェ!」

 

「……あの子知り合い?」

 

「いえ全然、でもまぁ味方じゃない?」

 

 

文句を言いながら敵を捌いていく彼女を見ながら、ワカンダの親衛隊隊長を務めるオコエが近くにいたワンダに問いかける。彼女が求めていた言葉ではなかったが、見るからに地球人で、エイリアンを倒している。おそらく敵ではないだろう。急に現れた光の門から飛び出してきて、両手から火が出ているあたり人間かどうかわからないが。

 

 

「とにかく、今は少しでも戦力があった方がいい。話は終わった後だ。」

 

 

宇宙での戦いで優勢になったことにより、地上での戦いも絶望的な状況からは離れている。敵はまだ多いが、空から落ちてくる増援は宇宙で戦う者たちのおかげでなくなった。これ以上増えることはない。こちら側もかなり疲弊しているがソーという心強い救援に、エネルギーがなくなるまで戦い続けられる彼女の子供たち、そして身元不明だが炎を操る能力者もいる。

 

決して、絶望的な戦況ではなくなった。

 

だが。

 

 

 

「おい、なんかアレ。落ちて来てねぇか?」

 

 

 

アライグマの彼のつぶやきで、手の空いたものが皆空を見上げる。

 

空に浮かび、うっすらと見えていたはずの存在が。

 

 

より、濃くなってきている。

 

 

徐々に、その色を強く表し始めている。

 

 

明らかに“ここ”に落ちる。

 

 

 

『陛下! 落ちてきます!』

 

「被害予想範囲を出せ! 総員退避!」

 

 

 

あれだけの質量が落ちてきた場合、いくらワカンダが誇るバリアでも防ぎきることは不可能。ここで戦い続け、敵と共に押しつぶされるべきではないと判断した彼は後方へ下がることを選択する。幸いにも原作よりも早い段階で避難が進められていたこともあり、都市にはもう避難すべき民はいない、ならば今度は今ともに戦ってくれている民を守るべきだ。

 

敵は自分たちが下敷きにされることを理解しているのかどうかはわからない、だがまともなコミュニケーションが成立しなさそうな化け物や機械の尖兵たちは変わらずこちらへと攻撃をし続ける。きっと死ぬまでそれは同じなのだろう。

 

 

自身を殿とし、仲間たちを後方へと下がらせる。

 

キャプテンやソーなどが多くの敵を引きつけ、時間を稼ぐ。

 

クイックシルバーやトルネアたちが逃げ遅れた者をつかみ、後ろへと送り出す。

 

 

 

そんな彼らの決死の行動をまるで気にせず、サンクチュアリは落ちていく。

 

一つの大都市ほどの大きさを誇るそれは大気の壁を易々と突き破り、重力へと惹かれていく。石の使えない不安定な宙域はすでに通り過ぎた、だがもう手遅れだ。石を使って跳ね返そうにも内部にいるであろうサノスに相殺される。物は高いところから落とせば、下に落ちる。子供でも分かるようなことが、目の前で起きていた。

 

消し飛ばそうにも船が大きすぎて間に合わない、重力を反転させようにも速度が逆転するころにはすでに地表に接触してしまう。

 

 

地上から上がる雷撃に光弾、そしてミサイル。宇宙から降下してきた者たちによる光弾に光柱。

 

 

その攻撃も全て無意味。

 

 

 

 

サンクチュアリは、地面に激突した。

 

 

 

幸いにも都市には激突しなかったが、それでもその質量は莫大。

 

生じる衝撃波と振動。木々をなぎ倒し、土煙と共にやって来たそれは瞬時にワカンダのシールドを吹き飛ばし、都市を飲み込んでいく。まるで砂嵐のようにすべてを視界を奪いながら、この世に存在するものすべてを薙ぎ払っていく。世界の終わりを幻視するような光景が、訪れていた。

 

 

 

ドロッセルの子供たちや、ドロッセル本人が石の力とナノマシンによる防壁を生成し、そしてその上からストレンジが魔術による補強を行う。だがそれでも守れたのはその場にいた戦士たちのみ。

 

背後に聳え立っていた美しいワカンダの首都は守り切れず、それまで築き上げてきたものは全て吹き飛ばされてしまう。

 

 

そして。

 

 

 

「…………。」

 

 

 

無言で、そして無傷で降り立つサノスたち。

 

 

その背後に、サンクチュアリで待機していた兵たちが。スペース・ストーンで連れてこられた兵たちが、整列する。すぐに相殺されるが、敵が満載した巨大なポットは数え切れないほど降下されてしまった。シールドは、もうない。

 

半壊した母船から、次々と飛び出してくるリヴァイアサン。その腹部からニューヨークを苦しめたチタウリ達が投下されていく。

 

 

 

「……一番いやな展開になっちゃったな。」

 

 

 

吹き飛ばされてしまった何もない荒野に、降り立つ。足裏に母なる大地を感じながら、顔を外気に触れさせる。

 

こうなってしまった以上、後はどっちが死ぬかまでの戦い。それに私の子供たちもみんなこっちに連れてくることはできない、まだ敵の増援の掃討は終わっていない。そっちを打ち漏らしてしまえばさらに敵は増える。これ以上この星に落とさず、すでに落ちた分は殲滅する。

 

もうこの都市を守っていた壁はない、単なる、平面。

 

味方はいる、いるけど。

 

 

「さすがにちょっと、劣勢かな。」

 

 

娘たちが宇宙空間上で抑え込めていたのは船の中という空間の制限があったから、この広い荒野ではそんなものはない。360度戦場だ。私たちがサノスと戦っている際に嫌と言うほど理解したけど、戦いに置いて数の差は圧倒的な力の差がない限り覆せない。

 

数は圧倒的にあっちの方が上、どんなに頑張ってもどこかで崩れてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、数を増やしましょう。」

 

 

門が、開かれる。

 

 

「少々遅れてしまいましたが……、間に合ったようで何よりです。ツグミ。」

 

 

振り返ったそこには、数多くのゲートが開かれていて。大勢の魔術師や武装した人たちがその先で待機している。

 

 

「ワンさん!」

 

「おっと、もしかして『左から失礼』とでも言った方がよかったですか?」

 

「……あは! じゃあやり直して!」

 

 

二年前、一緒に戦ってくれた至高の魔術師が。

 

 

「全く、何かあったら言いなさいと言わなかったか、ツグミ。」

 

「ウェンウーさん! ……うん、ごめん!」

 

 

青ではなく、黄金の光を灯したテンリングス。それを両腕に収めた男が。

 

 

「おっと、忘れるところでした。呼ばないとまた厄介なことになりますからね。」

 

 

そう言いながら、もう一つ大きな円を生成するワン。

 

繋がる先は。

 

 

 

 

 

 

 

……忘れもしない。

 

私たちの町。

 

 

「……また辛気臭い顔してるな、お嬢。」

 

 

あの時から何も変わっていない廃墟、私が生まれ、育ち、愛し、愛され。すべてがなくなってしまった場所、オオサカ。……勝手に死んだと思ってた。奴らにすべてを奪われたと思ってた。……まだ、生きててくれたんだね。

 

 

「あの時死に損なってよ。ウザったい奴らも多くて、昔みたいに地下でコソコソ隠れてたわけよ。」

 

「……石井っち。」

 

 

忘れるわけがない、彼も。その後ろにいる子たちも。みんなちゃんと覚えてる。私のために、みんなのために戦ってくれた、ファイアボールのみんな。最初からいる子も、途中でついてきてくれた子も。

 

私が、守れなかったのに。救えなかったのに。責められることを恐れて、逃げちゃって、全部忘れてちゃってたのに。

 

 

「それで、お嬢。まだあんたの下は空いてるかい?」

 

「……私なんかで、いいの。」

 

「当たり前だろ、俺は前に出る方が性に合ってるんだ。後ろにいるこいつらもそんなもんだ。」

 

 

後ろで控えてた子たちが、声を上げてくれる。誰も、私を責めたりしてない。誰も、私に怒ってなんかない。みんな、みんな私の元で戦いたいって、この星を守りたいって、言ってくれてる。

 

 

「そうですぜお嬢! それに次の新刊出るまでこちとら死ねねぇんですわ!」

「やはりサークル参加か! ならば私も参加しよう!」

「花京院! 生きていたのか!」

 

 

 

 

「……ッっぱ! なんだよそれ! あはは!」

 

 

思わず、声を上げて笑ってしまう。……そっか、みんな、そう言ってくれるんだね。

 

 

「そうそう、やはりあなたは笑顔の方が似合いますからね。ほらスマイルスマイル。」

 

「うん、ありがとう……。って住職!?」

 

「そうですよー! みんな大好き住職ちゃん! 実は私も結構戦える口なので末席にでも、と。」

 

 

音もなく私の前に立って顔を弄ったと思ったら後ろに下がってどこから取り出したのか、錫杖をぐるぐる回し始めた住職。ウチが昔寄進してた尼寺の……、いや只者ではないと思ってたけど来ちゃったのね。

 

『ねぇワン、このゲート壊すけどいい?』

『ダメに決まってるでしょう、アントマンにワプスも来るのですから。』

『……アレ? もしかしてお取込み中? 俺、邪魔だったり?』

『いえ大丈夫ですよ、ようこそ戦場へ。』

 

……うん、しかも昔と変わらず門嫌いだし。というかそのゲートもダメなんですか住職。え、何? 一般戦闘花京院くん。あの人滅茶苦茶強いからこの二年間訓練してもらってた? 地下で? そうなのか……。

 

 

 

 

『よかったですね、マスター。』

 

「……ほんとに、ね。」

 

 

 

ずっと後ろを眺めていたい、話したいことは山ほどある。

 

でも、今は戦わないと。

 

前を向き、構え直す。もう気合を入れる必要もない、すでにやる気はみんなからもらった。

 

 

それに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、パーティーにはまだ遅れてないよな?」

 

 

通信が、つながる。

 

鈍い金属の音が鳴り響き、赤と金の鎧を纏った彼が、私の前に降り立つ。

 

 

「いつも君は突っ走るからな、たまには歩調を合わせてくれ。」

 

 

 

 

「キミもだぞ、トニー。」

 

 

大きな、足音。青いヘルメットに、大きな星。すべてを守る盾と共に。

 

 

「確か囲んで叩く、だったか。作戦通りだ、後は棒を用意しなきゃだな。」

 

 

 

 

「棒か……、斧でもいいか?」

 

 

雷神が、雷鳴と共に降り立つ。怒りを胸に、しかしそれには溺れず、前へ。

 

 

「あぁ、でもこの柄の棒はいい棒だ。友が用意してくれた。」

 

 

 

 

「おっと、なら弓もOKかい?」

 

 

銀の光に運ばれて、弓兵が到着する。狙いは、外れない。

 

 

「新しいオモチャの具合が良くてな、参加させてくれ。」

 

 

 

 

「そういう話じゃないでしょ?」

 

 

緑の巨大な機兵の腕から、黒い衣を身に纏う彼女が降り立つ。

 

 

「でも、まぁ……。嫌いじゃないわ。」

 

 

 

 

そして。

 

 

「ハルク、いつまでも逃げてちゃだめだ。」

 

『……嫌だ。』

 

「敵は目の前にいて、みんな君の力を必要としている。それに僕だっている。キミ一人で勝てなくても、みんなと力を合わせれば絶対に勝てる、僕が作戦で、君が力だ。そうだろう?」

 

『……本当?』

 

 

彼の、彼の中にいるもう一人の彼が。こちらに目を向ける。

 

答えを、求めるように。

 

 

 

「一緒に戦お!」

 

 

 

答えは、言わなくても解るよね。

 

 

 

『ブルース。』

「あぁ、行こう! ハルク!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、本当に。

 

後ろを振り返らなくても解る、みんなの、息吹が。

 

あとは、号令だけ。

 

たのんだ、キャプテン。

 

 

 

 

 

 

「アベンジャーズ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッセンブル!」

 

 

 

 

 

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